ランチタイムコメント
日経平均は大幅に4日続伸、リバウンド期待にちらつく懸念のサイン
配信日時:2022/03/17 12:19
配信元:FISCO
日経平均は大幅に4日続伸。767.88円高の26529.89円(出来高概算7億4000万株)で前場の取引を終えている。
16日の米株式市場でNYダウは大幅に3日続伸し、518ドル高となった。注目された連邦公開市場委員会(FOMC)では0.25ptの利上げを決定。今後の政策金利見通しでは今回を含め年内7回の利上げが示され、タカ派的な内容と受け止める向きが多かった。ただ、パウエル連邦準備理事会(FRB)議長が政策の柔軟性や経済の強さを強調した点などが好感されたようだ。また、中国政府が同国企業の海外上場を支持するなど市場安定化を図る姿勢を示したと報じられたほか、ウクライナのゼレンスキー大統領がロシアとの停戦協議を巡り「交渉に現実味が出てきた」と発言したことも安心感につながった。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで408円高からスタート。前場中ごろには一時26702.94円(940.93円高)まで上昇したが、その後はやや伸び悩む展開となった。
個別では、売買代金トップのソフトバンクG<9984>が6%超の上昇で、2位のレーザーテック<6920>も8%超の上昇。ソフトバンクGは投資先の中国企業を巡る懸念が和らぎ、前日の後場から急伸している。レーザーテックは米半導体株高の流れを引き継ぎ、東エレク<8035>も高い。その他売買代金上位ではトヨタ自<7203>やソニーG<6758>が堅調で、ファーストリテ<9983>やリクルートHD<6098>は大きく上昇。中小型株ではスノーピーク<7816>が賑わい、ギフティ<4449>はストップ高を付けている。一方、川崎船<9107>が2%超の下落となり、商船三井<9104>もさえない。「まん延防止等重点措置」の解除が本日決まる見通しだが、OLC<4661>やJR東<9020>は利益確定売り優勢。また、はるやまHD<7416>などが東証1部下落率上位に顔を出している。
セクターでは、精密機器、機械、電気機器などが上昇率上位。一方、空運業、陸運業、鉄鋼などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の72%、対して値下がり銘柄は24%となっている。
米金融引き締め懸念から注目されたFOMCを通過したことに加え、ロ・ウクライナ停戦協議の進展期待、中国を巡る懸念後退なども重なり、本日の日経平均は700円を超える上昇で前場を折り返した。日足チャートを見ると、26300円近辺に位置する25日移動平均線を一気に上抜け。前日からの急ピッチの上昇により目先の利益を確定する売りや戻り待ちの売りが出そうな一方、これまで上値を抑えてきた25日移動平均線を抜けたことでトレンド好転に期待する向きもあるだろう。前引けの日経平均が+2.98%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+1.98%。ここまでの東証1部売買代金は1兆8000億円あまりとここ数日より膨らんでいる。
前日の米市場でハイテク株の上げ幅が大きかっただけに、東京市場でも値がさグロース(成長)株が大きく上昇。半面、海運など市況関連株の一角が軟調なほか、経済活動再開に絡んだセクターも利益確定売り優勢だ。
新興市場ではマザーズ指数が+4.03%と大幅続伸。グロース株高の流れに乗り、メルカリ<4385>が9%の上昇となるなど主力IT株が総じて大幅高だ。中小型・新興株は個人投資家のセンチメント改善の影響も大きいだろう。但し、マザーズ指数は710pt近辺に位置する25日移動平均線を明確に上抜けてはいない。
さて、FOMCでは金融市場が織り込んでいたとおり年内7回(今回含む)の利上げ見通しが示されるなど、ウクライナ紛争による不透明感が拭えないなかで思いのほかタカ派的な姿勢が示されたように感じられた。もっとも、金融政策を巡る不透明感が後退したと受け止められ、一昨日の当欄「原油下げるも『中国』『引き締め』懸念」で述べたようにリバーサル(株価の反転上昇)の動きが出てくる余地はあっただろう。金融引き締め観測からここまで大きく調整してきたグロース株ほどリバウンドへの期待は高まりやすいと考えられる。加えて株価を大きく押し下げてきたウクライナ紛争、中国への懸念の後退もこうした動きを後押しするだろう。
それとやはり一昨日の当欄で触れたが、ここから新年度に向けて配当再投資の動き
(市場推計で1兆円超)や機関投資家の買い、10兆円規模の「大学ファンド」運用開始などが需給面で日本株を支援すると期待する声もある。
ただ、前日の米市場動向を見渡すと不安材料もある。FRBの利上げ見通しを受けて10年物国債利回りは2.19%(+0.05pt)、金融政策の影響を受けやすい2年物も1.94%(+0.09pt)に上昇。一方でFRBのインフレ抑制姿勢から原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI4月物)は1バレル=95.04ドル(-1.40ドル)と3日続落し、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.80%(-0.04pt)に低下した。
インフレ懸念の後退は安心材料かもしれないが、結果的に名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は上昇しており、株式(特にグロース株)にとって本質的には好環境と言えないだろう。また、5年債の利回りが一時10年債を上回ったことも注目されている。こうした「逆イールド」発生は「景気後退の予兆」と言われるだけに、市場関係者からは先行きを警戒する声が依然として少なくない。
「目先のリバウンド継続」の可能性は低くないだろうが、これに乗るかどうかは取引参加者それぞれの投資目的や期間、リスク許容度に応じて冷静に判断していきたい。
(小林大純)
<AK>
16日の米株式市場でNYダウは大幅に3日続伸し、518ドル高となった。注目された連邦公開市場委員会(FOMC)では0.25ptの利上げを決定。今後の政策金利見通しでは今回を含め年内7回の利上げが示され、タカ派的な内容と受け止める向きが多かった。ただ、パウエル連邦準備理事会(FRB)議長が政策の柔軟性や経済の強さを強調した点などが好感されたようだ。また、中国政府が同国企業の海外上場を支持するなど市場安定化を図る姿勢を示したと報じられたほか、ウクライナのゼレンスキー大統領がロシアとの停戦協議を巡り「交渉に現実味が出てきた」と発言したことも安心感につながった。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで408円高からスタート。前場中ごろには一時26702.94円(940.93円高)まで上昇したが、その後はやや伸び悩む展開となった。
個別では、売買代金トップのソフトバンクG<9984>が6%超の上昇で、2位のレーザーテック<6920>も8%超の上昇。ソフトバンクGは投資先の中国企業を巡る懸念が和らぎ、前日の後場から急伸している。レーザーテックは米半導体株高の流れを引き継ぎ、東エレク<8035>も高い。その他売買代金上位ではトヨタ自<7203>やソニーG<6758>が堅調で、ファーストリテ<9983>やリクルートHD<6098>は大きく上昇。中小型株ではスノーピーク<7816>が賑わい、ギフティ<4449>はストップ高を付けている。一方、川崎船<9107>が2%超の下落となり、商船三井<9104>もさえない。「まん延防止等重点措置」の解除が本日決まる見通しだが、OLC<4661>やJR東<9020>は利益確定売り優勢。また、はるやまHD<7416>などが東証1部下落率上位に顔を出している。
セクターでは、精密機器、機械、電気機器などが上昇率上位。一方、空運業、陸運業、鉄鋼などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の72%、対して値下がり銘柄は24%となっている。
米金融引き締め懸念から注目されたFOMCを通過したことに加え、ロ・ウクライナ停戦協議の進展期待、中国を巡る懸念後退なども重なり、本日の日経平均は700円を超える上昇で前場を折り返した。日足チャートを見ると、26300円近辺に位置する25日移動平均線を一気に上抜け。前日からの急ピッチの上昇により目先の利益を確定する売りや戻り待ちの売りが出そうな一方、これまで上値を抑えてきた25日移動平均線を抜けたことでトレンド好転に期待する向きもあるだろう。前引けの日経平均が+2.98%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+1.98%。ここまでの東証1部売買代金は1兆8000億円あまりとここ数日より膨らんでいる。
前日の米市場でハイテク株の上げ幅が大きかっただけに、東京市場でも値がさグロース(成長)株が大きく上昇。半面、海運など市況関連株の一角が軟調なほか、経済活動再開に絡んだセクターも利益確定売り優勢だ。
新興市場ではマザーズ指数が+4.03%と大幅続伸。グロース株高の流れに乗り、メルカリ<4385>が9%の上昇となるなど主力IT株が総じて大幅高だ。中小型・新興株は個人投資家のセンチメント改善の影響も大きいだろう。但し、マザーズ指数は710pt近辺に位置する25日移動平均線を明確に上抜けてはいない。
さて、FOMCでは金融市場が織り込んでいたとおり年内7回(今回含む)の利上げ見通しが示されるなど、ウクライナ紛争による不透明感が拭えないなかで思いのほかタカ派的な姿勢が示されたように感じられた。もっとも、金融政策を巡る不透明感が後退したと受け止められ、一昨日の当欄「原油下げるも『中国』『引き締め』懸念」で述べたようにリバーサル(株価の反転上昇)の動きが出てくる余地はあっただろう。金融引き締め観測からここまで大きく調整してきたグロース株ほどリバウンドへの期待は高まりやすいと考えられる。加えて株価を大きく押し下げてきたウクライナ紛争、中国への懸念の後退もこうした動きを後押しするだろう。
それとやはり一昨日の当欄で触れたが、ここから新年度に向けて配当再投資の動き
(市場推計で1兆円超)や機関投資家の買い、10兆円規模の「大学ファンド」運用開始などが需給面で日本株を支援すると期待する声もある。
ただ、前日の米市場動向を見渡すと不安材料もある。FRBの利上げ見通しを受けて10年物国債利回りは2.19%(+0.05pt)、金融政策の影響を受けやすい2年物も1.94%(+0.09pt)に上昇。一方でFRBのインフレ抑制姿勢から原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI4月物)は1バレル=95.04ドル(-1.40ドル)と3日続落し、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.80%(-0.04pt)に低下した。
インフレ懸念の後退は安心材料かもしれないが、結果的に名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は上昇しており、株式(特にグロース株)にとって本質的には好環境と言えないだろう。また、5年債の利回りが一時10年債を上回ったことも注目されている。こうした「逆イールド」発生は「景気後退の予兆」と言われるだけに、市場関係者からは先行きを警戒する声が依然として少なくない。
「目先のリバウンド継続」の可能性は低くないだろうが、これに乗るかどうかは取引参加者それぞれの投資目的や期間、リスク許容度に応じて冷静に判断していきたい。
(小林大純)
<AK>
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