ランチタイムコメント
日経平均は4日ぶり反発、ウクライナ情勢に配慮した金融政策は長期不安材料?
配信日時:2022/03/09 12:08
配信元:FISCO
日経平均は4日ぶり反発。182.78円高の24973.73円(出来高概算7億1692万株)で前場の取引を終えている。
8日の米株式市場ではNYダウが184.74ドル安と4日続落。バイデン大統領によるロシア産原油禁輸計画の発表を控えた警戒感から寄り付き後下落。その後、ウクライナのゼレンスキー大統領がNATO(北大西洋条約機構)への加盟を断念する可能性を示したとの報道を受けて、停戦期待から一時買戻しが加速し大幅上昇に転じた。しかし、不透明感を払しょくできず、また、燃料価格上昇に伴うインフレ高進への懸念も重しとなり、引けにかけて再び下落した。ナスダック総合指数も-0.27%と4日続落となった。前日までの3日間で1800円近くも下落していた日経平均は、自律反発狙いの買いも入り、85.54円高でスタート。時間外取引の米株価指数先物の上昇を追い風に前場中ごろには25000円を回復。しかし、戻り待ちの売りに押され、前引けにかけては上げ幅を縮め、再び25000円割れとなった。
個別では、ソフトバンクG<9984>と日立<6501>が6%超と急反発。三菱UFJ<8306>やオリックス<8591>も大幅に反発。JAL<9201>、コマツ<6301>、アサヒ<2502>などの上昇率も際立つ。そのほか、INPEX<1605>、三菱商事<8058>、住友鉱<5713>などの資源関連株や、郵船<9101>、川崎汽船<9107>などの海運株も買われた。国内グループ会社で募集した早期退職に過去最大規模の3031人が応募したと発表した富士通<6702>は来期の固定費削減への期待から大幅高となっている。一方、日本電産<6594>、リクルートHD<6098>、ベイカレント<6532>、SHIFT<3697>などグロース(成長)株の一角が軟調。原油高が懸念されて東京電力HD<9501>も大幅安。パナソニック<6752>、TDK<6762>など電子部品の一角も安い。業績予想を下方修正したUTGROUP<2146>は急落し、東証1部下落率上位に顔を出している。
セクターでは空運業、ゴム製品、鉱業などが上昇率上位に並んだ。一方、電気・ガス業、精密機器、医薬品などが下落率上位に並んだ。東証1部の値上がり銘柄は全体の68%、対して値下がり銘柄は26%となっている。
本日の日経平均は反発。米国がロシア産原油禁輸計画を発表した一方、ドイツなど欧州は慎重な姿勢を示していることで、ロシアへの経済制裁を巡る目先の悪材料は一先ず出尽くしたとの見方が強まったもよう。また、ウクライナがNATOへの加盟を断念する可能性を示唆したことで、停戦期待が高まったことも支援要因となった。
しかし、ウクライナでの戦闘は止んでいない。停戦のためには、ロシアのプーチン大統領はウクライナに「中立化」とは別に「非軍事化」も必要と求めているが、これが満たされる可能性は低い。ロシアと西側諸国の間の隔たりは依然大きく、予断は許さない。WTI原油先物価格も1バレル=125ドル台と高止まりしており、市場は先行き警戒感を解いていない様子。日経平均も25000円回復を維持できず、反発よりも上値の重さが印象付けられる。このまま戻りが鈍いと、逆に戻り待ちの売りを誘いやすくなろう。
期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は8日、2.90%と前の日から0.13ptと大幅に上昇し、連日で過去最高を記録した。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は3月15-16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)
で0.25ptの利上げを支持している。しかし、市場はウクライナ情勢を巡るロシアへの経済制裁の長期化や、世界経済のブロック化によるグローバル化の逆戻り、これらに伴うインフレ高進の長期化などを警戒しているようだ。
また、3月FOMCでの0.25ptの利上げでは足元のインフレ沈静化には焼け石に水とみているもよう。ビハインド・ザ・カーブ(後手に回る)に陥ったFRBが将来、大幅な利上げを強いられる可能性などを懸念しているようだ。本日の東京市場でも、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利が一段と低下しているが、マザーズ指数は続落しており、東証1部の主力グロース株も軟調なものが散見される。
明日10日には欧州中央銀行(ECB)の定例理事会が開催される。今年に入ってから、利上げに消極的だったECBが年内の利上げの可能性を排除しない姿勢へと大きく転換してきたが、ウクライナ情勢を受けた景気減速懸念が強まるなか、そうした姿勢に変化があるのかが注目される。足元でスタグフレーション(景気後退と物価高の併存)リスクが高まっているなか、仮に再び利上げなど金融引き締めに慎重な姿勢が示されれば、短期的には株式市場に安堵感をもたらす可能性がある。しかし、上述したFRBのようにビハインド・ザ・カ−ブに陥るリスクもあり、長期的な視点からみれば、手放しで喜べることでもないだろう。
後場の日経平均は25000円手前に上値の重い展開となりそうだ。ウクライナ情勢を巡る不透明感がくすぶるなか、明日10日には上述のECB定例理事会のほか、米2月消費者物価指数(CPI)が発表予定。3月FOMC前の最後の物価関連指標ということもあり、注目度も高い。積極的な買いに転じる材料がほとんど見当たらないなか、戻り待ちでじりじりと値を下げる展開が想定されよう。
<AK>
8日の米株式市場ではNYダウが184.74ドル安と4日続落。バイデン大統領によるロシア産原油禁輸計画の発表を控えた警戒感から寄り付き後下落。その後、ウクライナのゼレンスキー大統領がNATO(北大西洋条約機構)への加盟を断念する可能性を示したとの報道を受けて、停戦期待から一時買戻しが加速し大幅上昇に転じた。しかし、不透明感を払しょくできず、また、燃料価格上昇に伴うインフレ高進への懸念も重しとなり、引けにかけて再び下落した。ナスダック総合指数も-0.27%と4日続落となった。前日までの3日間で1800円近くも下落していた日経平均は、自律反発狙いの買いも入り、85.54円高でスタート。時間外取引の米株価指数先物の上昇を追い風に前場中ごろには25000円を回復。しかし、戻り待ちの売りに押され、前引けにかけては上げ幅を縮め、再び25000円割れとなった。
個別では、ソフトバンクG<9984>と日立<6501>が6%超と急反発。三菱UFJ<8306>やオリックス<8591>も大幅に反発。JAL<9201>、コマツ<6301>、アサヒ<2502>などの上昇率も際立つ。そのほか、INPEX<1605>、三菱商事<8058>、住友鉱<5713>などの資源関連株や、郵船<9101>、川崎汽船<9107>などの海運株も買われた。国内グループ会社で募集した早期退職に過去最大規模の3031人が応募したと発表した富士通<6702>は来期の固定費削減への期待から大幅高となっている。一方、日本電産<6594>、リクルートHD<6098>、ベイカレント<6532>、SHIFT<3697>などグロース(成長)株の一角が軟調。原油高が懸念されて東京電力HD<9501>も大幅安。パナソニック<6752>、TDK<6762>など電子部品の一角も安い。業績予想を下方修正したUTGROUP<2146>は急落し、東証1部下落率上位に顔を出している。
セクターでは空運業、ゴム製品、鉱業などが上昇率上位に並んだ。一方、電気・ガス業、精密機器、医薬品などが下落率上位に並んだ。東証1部の値上がり銘柄は全体の68%、対して値下がり銘柄は26%となっている。
本日の日経平均は反発。米国がロシア産原油禁輸計画を発表した一方、ドイツなど欧州は慎重な姿勢を示していることで、ロシアへの経済制裁を巡る目先の悪材料は一先ず出尽くしたとの見方が強まったもよう。また、ウクライナがNATOへの加盟を断念する可能性を示唆したことで、停戦期待が高まったことも支援要因となった。
しかし、ウクライナでの戦闘は止んでいない。停戦のためには、ロシアのプーチン大統領はウクライナに「中立化」とは別に「非軍事化」も必要と求めているが、これが満たされる可能性は低い。ロシアと西側諸国の間の隔たりは依然大きく、予断は許さない。WTI原油先物価格も1バレル=125ドル台と高止まりしており、市場は先行き警戒感を解いていない様子。日経平均も25000円回復を維持できず、反発よりも上値の重さが印象付けられる。このまま戻りが鈍いと、逆に戻り待ちの売りを誘いやすくなろう。
期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は8日、2.90%と前の日から0.13ptと大幅に上昇し、連日で過去最高を記録した。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は3月15-16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)
で0.25ptの利上げを支持している。しかし、市場はウクライナ情勢を巡るロシアへの経済制裁の長期化や、世界経済のブロック化によるグローバル化の逆戻り、これらに伴うインフレ高進の長期化などを警戒しているようだ。
また、3月FOMCでの0.25ptの利上げでは足元のインフレ沈静化には焼け石に水とみているもよう。ビハインド・ザ・カーブ(後手に回る)に陥ったFRBが将来、大幅な利上げを強いられる可能性などを懸念しているようだ。本日の東京市場でも、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利が一段と低下しているが、マザーズ指数は続落しており、東証1部の主力グロース株も軟調なものが散見される。
明日10日には欧州中央銀行(ECB)の定例理事会が開催される。今年に入ってから、利上げに消極的だったECBが年内の利上げの可能性を排除しない姿勢へと大きく転換してきたが、ウクライナ情勢を受けた景気減速懸念が強まるなか、そうした姿勢に変化があるのかが注目される。足元でスタグフレーション(景気後退と物価高の併存)リスクが高まっているなか、仮に再び利上げなど金融引き締めに慎重な姿勢が示されれば、短期的には株式市場に安堵感をもたらす可能性がある。しかし、上述したFRBのようにビハインド・ザ・カ−ブに陥るリスクもあり、長期的な視点からみれば、手放しで喜べることでもないだろう。
後場の日経平均は25000円手前に上値の重い展開となりそうだ。ウクライナ情勢を巡る不透明感がくすぶるなか、明日10日には上述のECB定例理事会のほか、米2月消費者物価指数(CPI)が発表予定。3月FOMC前の最後の物価関連指標ということもあり、注目度も高い。積極的な買いに転じる材料がほとんど見当たらないなか、戻り待ちでじりじりと値を下げる展開が想定されよう。
<AK>
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