ランチタイムコメント
日経平均は反発、パウエル証言「本当の」市場解釈は?
配信日時:2022/03/03 12:26
配信元:FISCO
日経平均は反発。215.18円高の26608.21円(出来高概算6億1000万株)で前場の取引を終えている。
2日の米株式市場でNYダウは3日ぶりに大幅反発し、596ドル高となった。ロシアとウクライナが2回目の停戦協議を計画していることが明らかになったほか、2月のADP雇用統計で非農業部門雇用者数が市場予想を上回る伸びとなったことも好感された。また、注目されたパウエル連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言は、3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25ptの利上げを支持する姿勢を示したことなどから、ハト派的な内容と受け止める向きもあった。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は+1.62%。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで235円高からスタートすると、寄り付き直後には一時26704.85円(311.82円高)まで上昇した。ただ、引き続きウクライナ情勢などを巡り先行き不透明感が残ることから上値追いの動きは鈍く、伸び悩む場面も見られた。
個別では、米金利上昇を受けて三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>といった金融株が買われている。その他売買代金上位ではレーザーテック<6920>、郵船<9101>、商船三井<9104>、任天堂<7974>などが堅調。NY原油先物相場の大幅続伸でINPEX<1605>は3%超の上昇となり、住石HD<1514>や三井松島HD<1518>は商いを伴って急伸し、東証1部上昇率上位に顔を出している。一方、ソフトバンクG<9984>、ファーストリテ<9983>、信越化<4063>、ファナック<6954>といった日経平均への寄与が大きい値がさ株はさえない。ファーストリテは2月の国内「ユニクロ」既存店売上高が7カ月連続の減収となった。公募増資や株式売出し、ヤフーとの提携見直しを発表したSREHD<2980>はストップ安を付けている。
セクターでは、全33業種がプラスとなり、鉱業、石油・石炭製品、保険業、銀行業、卸売業などが上昇率上位だった。一方、情報・通信業や精密機器は小幅な上昇にとどまっている。東証1部の値上がり銘柄は全体の78%、対して値下がり銘柄は19%となっている。
前日の米株が大幅反発した流れを引き継ぎ、本日の東京市場でも買いが先行したが、日経平均は寄り付き直後を高値に伸び悩む展開となっている。日足チャートを見ると、26500円台に位置する5日移動平均線水準でもみ合いの様相。ここまで下降する25日移動平均線に上値を抑えられているだけに、値動き良化への期待が高まりづらいのかもしれない。売買代金上位や業種別の騰落状況を見るとかなり堅調な印象を受けるが、値がさ株がさえず日経平均を抑制している。前日の先物手口ではBofA証券などの外資系証券が日経平均先物を売り越ししていたが、本日もそうした流れが続いている可能性はあるだろう。前引けの日経平均が+0.82%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+1.27%。ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまりで、前日までと比べ少なくなってきた印象を受ける。
新興市場ではマザーズ指数が-1.22%と続落。こちらも朝方買いが先行したが続かず、マイナスに転じる展開となっている。一方、このところ米金融引き締め観測の後退とともにマザーズ銘柄のリバウンドに期待する市場関係者の声が聞かれ、下値では押し目買いも入っているようだ。マザーズ売買代金が1日、昨年12月28日以来の2000億円台乗せとなった際はまとまった投資資金が入った印象を受けた。ただ、翌2日は1791億円となり、資金流入が加速しているとは言いづらい。マザーズ指数が740pt台に位置する25日移動平均線を上回ってきたところで、今後の方向感を見極めたいと考える個人投資家が多いものと考えられる。
なお、本日マザーズ市場に新規上場したイメージマジック<7793>は公開価格比+60.9%という堅調な初値を付けた。好需給のIPO(新規株式公開)銘柄にはなお物色の矛先が向きやすいようだ。
さて、直近FRB高官から「3月FOMCで0.5ptの利上げ検討」といった発言が出ていたうえ、前日の米株がハイテク関連を含め大幅反発したこともあり、パウエルFRB議長の議会証言はハト派的だったとする市況解説が散見されたが、実際に金融市場の受け止め方がそうだったかという点には疑問がある。
前日の米債券市場の動向を見ると、国債利回りが幅広い年限で上昇。10年金利が1.87%(+0.13pt)となったほか、金融政策の影響を受けやすい2年金利も1.51%(+0.17pt)となった。利回り曲線(イールドカーブ)の平たん化(フラットニング)は一段と進行。期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.71%(+0.09pt)に上昇した。商品市場では原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI4月物)が1バレル=110.60ドル(+7.19ドル)と大幅に3日続伸。こうした金融市場全体の動向が示唆するパウエル氏証言の解釈は「金融引き締め姿勢を再確認したが、それはインフレ進行に追いついていないのでは」というものだろう。
実のところ、スワップ取引で見た3月FOMCでの利上げ織り込みは前の日までに0.25pt弱まで後退していたという。既に「金融引き締め観測の後退を想定する局面」ではなく、「改めて金融引き締めを織り込む余地がある局面」だったということだ。これを踏まえ、一昨日の当欄「中小型グロース株高の構図に持続性は?」で述べたことも再強調しておきたい。
米国では今晩の2月ISM(サプライマネジメント協会)非製造業景況指数や4日の2月雇用統計といった重要経済指標の発表が控えており、ロシアとウクライナの停戦協議の行方も見通しづらい。引き続き方向感の出にくい相場展開となりそうだ。
(小林大純)
<AK>
2日の米株式市場でNYダウは3日ぶりに大幅反発し、596ドル高となった。ロシアとウクライナが2回目の停戦協議を計画していることが明らかになったほか、2月のADP雇用統計で非農業部門雇用者数が市場予想を上回る伸びとなったことも好感された。また、注目されたパウエル連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言は、3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25ptの利上げを支持する姿勢を示したことなどから、ハト派的な内容と受け止める向きもあった。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は+1.62%。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで235円高からスタートすると、寄り付き直後には一時26704.85円(311.82円高)まで上昇した。ただ、引き続きウクライナ情勢などを巡り先行き不透明感が残ることから上値追いの動きは鈍く、伸び悩む場面も見られた。
個別では、米金利上昇を受けて三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>といった金融株が買われている。その他売買代金上位ではレーザーテック<6920>、郵船<9101>、商船三井<9104>、任天堂<7974>などが堅調。NY原油先物相場の大幅続伸でINPEX<1605>は3%超の上昇となり、住石HD<1514>や三井松島HD<1518>は商いを伴って急伸し、東証1部上昇率上位に顔を出している。一方、ソフトバンクG<9984>、ファーストリテ<9983>、信越化<4063>、ファナック<6954>といった日経平均への寄与が大きい値がさ株はさえない。ファーストリテは2月の国内「ユニクロ」既存店売上高が7カ月連続の減収となった。公募増資や株式売出し、ヤフーとの提携見直しを発表したSREHD<2980>はストップ安を付けている。
セクターでは、全33業種がプラスとなり、鉱業、石油・石炭製品、保険業、銀行業、卸売業などが上昇率上位だった。一方、情報・通信業や精密機器は小幅な上昇にとどまっている。東証1部の値上がり銘柄は全体の78%、対して値下がり銘柄は19%となっている。
前日の米株が大幅反発した流れを引き継ぎ、本日の東京市場でも買いが先行したが、日経平均は寄り付き直後を高値に伸び悩む展開となっている。日足チャートを見ると、26500円台に位置する5日移動平均線水準でもみ合いの様相。ここまで下降する25日移動平均線に上値を抑えられているだけに、値動き良化への期待が高まりづらいのかもしれない。売買代金上位や業種別の騰落状況を見るとかなり堅調な印象を受けるが、値がさ株がさえず日経平均を抑制している。前日の先物手口ではBofA証券などの外資系証券が日経平均先物を売り越ししていたが、本日もそうした流れが続いている可能性はあるだろう。前引けの日経平均が+0.82%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+1.27%。ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまりで、前日までと比べ少なくなってきた印象を受ける。
新興市場ではマザーズ指数が-1.22%と続落。こちらも朝方買いが先行したが続かず、マイナスに転じる展開となっている。一方、このところ米金融引き締め観測の後退とともにマザーズ銘柄のリバウンドに期待する市場関係者の声が聞かれ、下値では押し目買いも入っているようだ。マザーズ売買代金が1日、昨年12月28日以来の2000億円台乗せとなった際はまとまった投資資金が入った印象を受けた。ただ、翌2日は1791億円となり、資金流入が加速しているとは言いづらい。マザーズ指数が740pt台に位置する25日移動平均線を上回ってきたところで、今後の方向感を見極めたいと考える個人投資家が多いものと考えられる。
なお、本日マザーズ市場に新規上場したイメージマジック<7793>は公開価格比+60.9%という堅調な初値を付けた。好需給のIPO(新規株式公開)銘柄にはなお物色の矛先が向きやすいようだ。
さて、直近FRB高官から「3月FOMCで0.5ptの利上げ検討」といった発言が出ていたうえ、前日の米株がハイテク関連を含め大幅反発したこともあり、パウエルFRB議長の議会証言はハト派的だったとする市況解説が散見されたが、実際に金融市場の受け止め方がそうだったかという点には疑問がある。
前日の米債券市場の動向を見ると、国債利回りが幅広い年限で上昇。10年金利が1.87%(+0.13pt)となったほか、金融政策の影響を受けやすい2年金利も1.51%(+0.17pt)となった。利回り曲線(イールドカーブ)の平たん化(フラットニング)は一段と進行。期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.71%(+0.09pt)に上昇した。商品市場では原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI4月物)が1バレル=110.60ドル(+7.19ドル)と大幅に3日続伸。こうした金融市場全体の動向が示唆するパウエル氏証言の解釈は「金融引き締め姿勢を再確認したが、それはインフレ進行に追いついていないのでは」というものだろう。
実のところ、スワップ取引で見た3月FOMCでの利上げ織り込みは前の日までに0.25pt弱まで後退していたという。既に「金融引き締め観測の後退を想定する局面」ではなく、「改めて金融引き締めを織り込む余地がある局面」だったということだ。これを踏まえ、一昨日の当欄「中小型グロース株高の構図に持続性は?」で述べたことも再強調しておきたい。
米国では今晩の2月ISM(サプライマネジメント協会)非製造業景況指数や4日の2月雇用統計といった重要経済指標の発表が控えており、ロシアとウクライナの停戦協議の行方も見通しづらい。引き続き方向感の出にくい相場展開となりそうだ。
(小林大純)
<AK>
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