日本特有の株式持ち合い、野村が信託商品で解消支援
[東京 17日 ロイター] - 企業統治の妨げになるなどと批判されてきた日本特有の商慣行、株式持ち合いの解消を後押しする信託商品を野村証券と野村信託銀行が開発した。東京証券取引所が定めた新市場区分の流通株式基準を満たす必要に迫られる企業などからも、一定の需要があるとみている。
発行会社によって設定された信託が、大株主らの保有する株式を取得。需給をみながら時間をかけて市場で売却する。一気に放出して株価が急落するリスクを回避できるメリットがある。
手放す側にとっても、信託が取得する前日の終値での売却が可能となる。証券会社が機関投資家などに市場外で転売する通常のブロック取引では、市場価格よりも低い水準で買い取られる場合が多い。
株式の持ち合いは1960年代に日本で広がった商慣行で、取引相手などと互いに支配権を伴わない程度の株式を保有し、信頼関係を築くためのもの。外国人投資家が増え、企業統治への関心が高まる中で、「物言わない株主」などと批判されてきた。
4月からの東証再編も、持ち合い解消の動きを後押ししている。3つに再編される市場のうち、最上位のプライムに上場するには流通株式時価総額100億円以上、流通株式比率35%以上という基準を満たす必要がある。
東証が1月に公表したデータによると、プライムを選択した1841社のうち、296社が上場基準を満たさないものの、経過措置を使って同市場に残留するという。
野村証券エクイティ・プロダクト・ソリューション部の宮島亮マネージング・ディレクターはロイターとのインタビューで、「今後3年でプライム基準充足を目指す企業の1割程度に活用してもらえるのではないか」と述べた。
プライムを選択したものの、流通株式の時価総額が基準を満たしていないクロス・マーケティンググループは、すでに野村の信託商品を利用している。デジタルマーケティングなどを手掛ける同社は14日、信託を設定したことを適時開示した。
(新田裕貴、山崎牧子)