後場の投資戦略
悪材料顕在化で深押し、押し目買いは時期尚早
配信日時:2022/02/14 12:16
配信元:FISCO
[日経平均株価・TOPIX(表)]
日経平均;26970.34;-725.74TOPIX;1923.00;-39.61
[後場の投資戦略]
本日の日経平均は世界的なリスク回避ムードの高まりから免れることはできず、700円超安と、一気に27000円を割り込んできている。先週末に回復したばかりの25日移動平均線を再び大きく下放れた。日足チャートでは目先の下値支持になる目安が見当たらず、週足では一目均衡表の雲下限(26796.62円)が唯一サポートとして期待される位置にある。ここを下回ると、短期的には1月27日に付けた26044.52円を目指す展開が想定される。先週末に、ザラ場ベースとはいえ、1月5日の29388.16円から1月27日の26044.52円までの下げ幅の半値戻しを達成したばかりだっただけに、チャート形状の再悪化は下落トレンド長期化を想起させるようで、印象が悪い。
相場急落のきっかけは従来から懸念されていた悪材料の顕在化、すなわち、米国をはじめとした主要各国中央銀行による金融引き締めとウクライナ情勢を巡る地政学リスクだ。先週、米1月CPIが予想を上回り、40年ぶりとなる最大の伸びを記録したことで、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締め加速化を正当化させるとの思惑から、幅広い年限で米国債利回りが急上昇し、米長期金利は10日に2%を超えた。週末11日には、ウクライナ情勢を巡る地政学リスクの強まりを受けて、安全資産である債券に買いが入ったことで、2%を割り込んだが、金利先高観は根強い。
ロシアのウクライナ侵攻が実際に行わることがあれば、短期的には相場は一段と深押しするだろうし、仮に侵攻が行われず、地政学リスクが後退したとしても、今度は再び金利先高観が相場の頭を抑えるだろう。FRBだけでなく、利上げに消極的だった欧州中央銀行(ECB)までもが利上げを検討するなか、市場では米長期金利の2%超えは通過点に過ぎず、年内に2.5~3.0%まで上昇するとの予想も多くなっている。
サマーズ元米財務長官は、FRBは臨時会合を即時開催し、インフレ抑制への決意を強調するべきだと主張しているほか、米民主党のマンチン上院議員は、FRBがインフレとの闘いで「煮え切らない態度をやめ」、「真正面から取り組む」必要があると言及していることが伝わっている。FRBへのプレッシャーは日に日に増している。こうしたプレッシャーに耐え切れず、FRBが引き締めペースを加速させれば、それ程にまでFRBは追い詰められているのかと、市場に動揺を与えかねない。一方で、そうした後手に回っている感を与えないために、引き締めを漸進的に進めることに固執すれば、インフレ高進が続いた場合、将来払う代償は大きくなる。FRBは非常に苦しい立場に置かれており、投資家は、「FRBはこの難局を切り抜けられる」、「実際に利上げすればあく抜けで上昇」などと、高を括らない方がよいだろう。
16日には米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録(1月開催分)が公表される。市場では利上げについての織り込みは急速に進んでいるものの、量的引き締め(QT)に対しては依然として不透明な部分が多く、織り込みが十分に進んでいるとは考えにくい。FRBの金融引き締めを反映する短中期の金利が急上昇するなか、将来の景気減速も反映しつつある長期金利は相対的に上昇ペースが鈍く、長短金利差が縮まってきている。
逆イールドの発生は景気後退のシグナルとされ、FRBにはこれを避けたいとの考えがあるだろう。イールドカーブの一段のフラット化を避けるために、市場では、FRBが長期の年限の債券を売却するのではないかとみる向きもいる。FRBは償還のきた債券の再投資をしない自然減でのバランスシート縮小を検討しており、売却の可能性は低いだろうが、市場の思惑はくすぶる。
米国では15日に米1月生産者物価指数(PPI)が発表予定で、こちらは伸びの鈍化が予想されている。予想通りとなれば、相場は、一旦は落ち着きを取り戻すかもしれないが、16日のFOMC議事録を確認するまでは神経質な展開が想定され、積極的な押し目買いは期待しにくいだろう。
前場の東証株価指数(TOPIX)の下落率が2%を超えたことで、日銀の上場投資信託
(ETF)買いが見込まれる。こうした思惑から、後場の日経平均はやや下げ渋ることも想定されるが、週明けの米株市場が下げ止まるか見極めたいとの思惑もあり、積極的な押し目買いには期待しづらいだろう。心理的な節目の27000円を回復できるかが短期的な焦点となろう。
<AK>
日経平均;26970.34;-725.74TOPIX;1923.00;-39.61
[後場の投資戦略]
本日の日経平均は世界的なリスク回避ムードの高まりから免れることはできず、700円超安と、一気に27000円を割り込んできている。先週末に回復したばかりの25日移動平均線を再び大きく下放れた。日足チャートでは目先の下値支持になる目安が見当たらず、週足では一目均衡表の雲下限(26796.62円)が唯一サポートとして期待される位置にある。ここを下回ると、短期的には1月27日に付けた26044.52円を目指す展開が想定される。先週末に、ザラ場ベースとはいえ、1月5日の29388.16円から1月27日の26044.52円までの下げ幅の半値戻しを達成したばかりだっただけに、チャート形状の再悪化は下落トレンド長期化を想起させるようで、印象が悪い。
相場急落のきっかけは従来から懸念されていた悪材料の顕在化、すなわち、米国をはじめとした主要各国中央銀行による金融引き締めとウクライナ情勢を巡る地政学リスクだ。先週、米1月CPIが予想を上回り、40年ぶりとなる最大の伸びを記録したことで、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締め加速化を正当化させるとの思惑から、幅広い年限で米国債利回りが急上昇し、米長期金利は10日に2%を超えた。週末11日には、ウクライナ情勢を巡る地政学リスクの強まりを受けて、安全資産である債券に買いが入ったことで、2%を割り込んだが、金利先高観は根強い。
ロシアのウクライナ侵攻が実際に行わることがあれば、短期的には相場は一段と深押しするだろうし、仮に侵攻が行われず、地政学リスクが後退したとしても、今度は再び金利先高観が相場の頭を抑えるだろう。FRBだけでなく、利上げに消極的だった欧州中央銀行(ECB)までもが利上げを検討するなか、市場では米長期金利の2%超えは通過点に過ぎず、年内に2.5~3.0%まで上昇するとの予想も多くなっている。
サマーズ元米財務長官は、FRBは臨時会合を即時開催し、インフレ抑制への決意を強調するべきだと主張しているほか、米民主党のマンチン上院議員は、FRBがインフレとの闘いで「煮え切らない態度をやめ」、「真正面から取り組む」必要があると言及していることが伝わっている。FRBへのプレッシャーは日に日に増している。こうしたプレッシャーに耐え切れず、FRBが引き締めペースを加速させれば、それ程にまでFRBは追い詰められているのかと、市場に動揺を与えかねない。一方で、そうした後手に回っている感を与えないために、引き締めを漸進的に進めることに固執すれば、インフレ高進が続いた場合、将来払う代償は大きくなる。FRBは非常に苦しい立場に置かれており、投資家は、「FRBはこの難局を切り抜けられる」、「実際に利上げすればあく抜けで上昇」などと、高を括らない方がよいだろう。
16日には米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録(1月開催分)が公表される。市場では利上げについての織り込みは急速に進んでいるものの、量的引き締め(QT)に対しては依然として不透明な部分が多く、織り込みが十分に進んでいるとは考えにくい。FRBの金融引き締めを反映する短中期の金利が急上昇するなか、将来の景気減速も反映しつつある長期金利は相対的に上昇ペースが鈍く、長短金利差が縮まってきている。
逆イールドの発生は景気後退のシグナルとされ、FRBにはこれを避けたいとの考えがあるだろう。イールドカーブの一段のフラット化を避けるために、市場では、FRBが長期の年限の債券を売却するのではないかとみる向きもいる。FRBは償還のきた債券の再投資をしない自然減でのバランスシート縮小を検討しており、売却の可能性は低いだろうが、市場の思惑はくすぶる。
米国では15日に米1月生産者物価指数(PPI)が発表予定で、こちらは伸びの鈍化が予想されている。予想通りとなれば、相場は、一旦は落ち着きを取り戻すかもしれないが、16日のFOMC議事録を確認するまでは神経質な展開が想定され、積極的な押し目買いは期待しにくいだろう。
前場の東証株価指数(TOPIX)の下落率が2%を超えたことで、日銀の上場投資信託
(ETF)買いが見込まれる。こうした思惑から、後場の日経平均はやや下げ渋ることも想定されるが、週明けの米株市場が下げ止まるか見極めたいとの思惑もあり、積極的な押し目買いには期待しづらいだろう。心理的な節目の27000円を回復できるかが短期的な焦点となろう。
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