注目トピックス 日本株
エムアップ Research Memo(7):ファンクラブサイトを軸に安定した業績や財務基盤を維持(2)
配信日時:2022/02/04 15:37
配信元:FISCO
■決算動向
2. 2022年3月期上期決算の概要
エムアップホールディングス<3661>の2022年3月期上期の業績は、売上高が前年同期比7.0%増の6,314百万円、営業利益が同40.1%増の775百万円、経常利益が同43.7%増の838百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同44.6%増の516百万円と、コロナ禍の影響を受けながらも引き続き増収増益を確保した。また、通期計画(特に利益面)に対しても順調に進捗している。
「コンテンツ事業」のうち、主力の「ファンクラブ・ファンサイト事業等」は、コロナ禍により減少していた会員数が下げ止まり増加に転じたことで増収を確保した一方、「EC事業」については、前年同期における特需(開催が延期・中止となったコンサートグッズ等の需要増)の剥落により反動減となった。また、「電子チケット事業」については、コロナ禍によるライブ・コンサートの減少や動員制限等の影響を受けながらも、電子チケットの強み(感染予防対策など)を生かした取扱枚数の伸び(チケットトレードを含む)や、周辺サービス(オンラインくじ等)を付加した顧客単価の向上により約2倍の規模に拡大し、売上高全体の成長に大きく寄与した。
利益面でも、収益性の高い「EC事業」※の反動減による影響を受けたものの、「電子チケット事業」の伸び(黒字転換)により大幅な増益を実現し、営業利益率も12.3%(前年同期は9.4%)に大きく改善した。
※「EC事業」の売上高は販売手数料で構成されるため、原価率は極めて低い(粗利益率が高い)。
財政状態については、「のれん」等の償却や「投資有価証券」(純投資目的)の売却により固定資産が減少した一方、「現金及び預金」や「売上債権」「前払費用」(著作権料の前払い)の増加等により、資産合計は前期末比438百万円増の12,199百万円に拡大した。自己資本についても内部留保の積み増しにより同513百万円増の4,768百万円に拡大したことから、自己資本比率は39.1%(前期末は36.2%)に改善した。また、有利子負債はゼロの状態が続いているうえ、流動比率も122.9%を確保していることから、財務の安全性に懸念はない。
主なセグメント別の業績は以下のとおりである。
(1) コンテンツ事業
売上高は前年同期比1.7%減の5,234百万円、セグメント利益は同10.4%減の874百万円と減収減益となった。そのうち、主力の「ファンクラブ・ファンサイト事業等」については、コロナ禍により減少していた会員数が下げ止まり、増加に転じたことから、同1.3%増の4,831百万円と増収を確保した一方、「EC事業」については、前年同期における特需(開催が延期・中止となったコンサートグッズ等の需要増)の剥落により同27.8%減の403百万円となった。もっとも、「EC事業」についても、コロナ禍前(2020年3月期上期)と比較すると約1.4倍の水準を確保していることから、デジタルシフトへの流れに乗って着実に収益基盤の底上げがされているとの見方もできる。損益面でも、収益性の高い「EC事業」の反動減により減益となったものの、セグメント利益率は16.7%(前年同期は18.3%)と高い水準を維持した。
活動面に目を向けると、「ファンクラブ・ファンサイト事業等」では新規15サイトを開設するとともに、「FanplaKit」※1による新たなアーティストの獲得も順調のようだ。また、ファンクラブのアプリ化(アーティストアプリの展開)に加え、生配信視聴アプリ「FanStream」※2やVRでのライブ配信もコロナ禍をきっかけに好評を博しており、特にアーティストアプリ内でのECサイト連携や「FanStream」の配信など、様々な機能の集約により利便性やファンコミュニケーションの強化を図っている。また、「EC事業」についても、新規13ストアを立ち上げるとともに、会場受取や会員限定販売などファンニーズに寄り添ったサービスを展開し、ツアーグッズ・配信ライブグッズなどを幅広く販売した。
※1 アーティストの規模にかかわらず、初期・導入費用不要でファンクラブの立ち上げができ、会員管理はもちろんファンクラブ運営に必要な機能がパッケージされているSaaS型プラットフォーム。2021年9月末時点で新人アーティストを中心に141組が登録している。
※2 生配信を観ながらコメントやギフティング(投げ銭)によってアーティストの応援ができる機能を搭載した視聴専用アプリ。
(2) 電子チケット事業
売上高は前年同期比87.9%増の1,028百万円、セグメント利益は160百万円(前年同期は146百万円の損失)と、大幅な増収により黒字転換を実現した。引き続きコロナ禍の影響(動員制限等)を受けているものの、ほとんどのライブ・コンサートが中止や延期となった前年同期と比べて、各種イベントが徐々に回復傾向にあることに加え、感染予防対策における強み※1を生かすことで、電子チケット取扱枚数(2022年3月期上期実績)は113万枚(前年同期は14万枚)と順調に伸び、通期では230万枚(前期は130万枚)と過去最高枚数を達成する勢いである。また、チケットトレードについても、コロナ禍に対応した二次流通を適正に提供することにより、通期で10万枚(前期は5.1万枚)と過去最高枚数を見込んでいる。さらには、電子チケットに付随した周辺サービス(メモコレ、メモコレくじ等)※2が大きく伸び、顧客単価が約2倍に向上したことも大幅な増収に寄与した。また、電子チケットに加え、オンライン配信事業等※3も堅調に推移し、同社業績はもちろん、アーティストサイドの収益獲得にも貢献したほか、プロ野球等のカードコレクションアプリについても、球団間のコラボ企画や球場との連携などにより着実に伸ばすことができた。利益面でも、大幅な増収により、「のれん」等の償却や新サービスに係る先行費用をカバーし、黒字転換を実現することができた。
※1 非接触の促進につながるとともに、スマートフォン顔認証・体温感知の導入も図っている。
※2 「メモコレ」とは、ライブの思い出をスマートフォンでずっと楽しめるデジタルコンテンツパック(メンバーからのウエルカムメッセージ、公演当日のスペシャルフォト、終演直後に収録したメンバーからのメッセージ、メンバー直筆サイン入りグッズが当たるくじなどが含まれる)のことである。また、「メモコレくじ」は、「メモコレ」内で提供している、豪華賞品が当たるハズレなしのオンラインくじ(ガチャガチャ)を切り出したサービスである。
※3 ライブの生配信やオンライン配信の視聴パスを販売するプラットフォーム「StreamPass」や「MeetPass」(1対1オンライントーク)など。
3. 2022年3月期上期の総括
以上から2022年3月期上期の業績を総括すると、コロナ禍が続くなかでも増収増益を実現したところは、同社の複合的な事業展開や収益基盤の強さを実証したものとして評価することができる。特に、コロナ禍の影響により一旦減少した会員数が増加に転じたことや、市場拡大が期待できる「電子チケット事業」が伸びてきたことは、今後に向けても明るい材料となった。また活動面でも、コロナ禍をきっかけとした環境変化を捉え、ファンサービスのDX化を見据えた方向性を打ち出すとともに、新たな収益モデルとなり得る「NFT事業」への参入に踏み切ったことは、2023年3月期以降の事業拡大を評価するうえで注目すべき成果と言えよう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<NB>
2. 2022年3月期上期決算の概要
エムアップホールディングス<3661>の2022年3月期上期の業績は、売上高が前年同期比7.0%増の6,314百万円、営業利益が同40.1%増の775百万円、経常利益が同43.7%増の838百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同44.6%増の516百万円と、コロナ禍の影響を受けながらも引き続き増収増益を確保した。また、通期計画(特に利益面)に対しても順調に進捗している。
「コンテンツ事業」のうち、主力の「ファンクラブ・ファンサイト事業等」は、コロナ禍により減少していた会員数が下げ止まり増加に転じたことで増収を確保した一方、「EC事業」については、前年同期における特需(開催が延期・中止となったコンサートグッズ等の需要増)の剥落により反動減となった。また、「電子チケット事業」については、コロナ禍によるライブ・コンサートの減少や動員制限等の影響を受けながらも、電子チケットの強み(感染予防対策など)を生かした取扱枚数の伸び(チケットトレードを含む)や、周辺サービス(オンラインくじ等)を付加した顧客単価の向上により約2倍の規模に拡大し、売上高全体の成長に大きく寄与した。
利益面でも、収益性の高い「EC事業」※の反動減による影響を受けたものの、「電子チケット事業」の伸び(黒字転換)により大幅な増益を実現し、営業利益率も12.3%(前年同期は9.4%)に大きく改善した。
※「EC事業」の売上高は販売手数料で構成されるため、原価率は極めて低い(粗利益率が高い)。
財政状態については、「のれん」等の償却や「投資有価証券」(純投資目的)の売却により固定資産が減少した一方、「現金及び預金」や「売上債権」「前払費用」(著作権料の前払い)の増加等により、資産合計は前期末比438百万円増の12,199百万円に拡大した。自己資本についても内部留保の積み増しにより同513百万円増の4,768百万円に拡大したことから、自己資本比率は39.1%(前期末は36.2%)に改善した。また、有利子負債はゼロの状態が続いているうえ、流動比率も122.9%を確保していることから、財務の安全性に懸念はない。
主なセグメント別の業績は以下のとおりである。
(1) コンテンツ事業
売上高は前年同期比1.7%減の5,234百万円、セグメント利益は同10.4%減の874百万円と減収減益となった。そのうち、主力の「ファンクラブ・ファンサイト事業等」については、コロナ禍により減少していた会員数が下げ止まり、増加に転じたことから、同1.3%増の4,831百万円と増収を確保した一方、「EC事業」については、前年同期における特需(開催が延期・中止となったコンサートグッズ等の需要増)の剥落により同27.8%減の403百万円となった。もっとも、「EC事業」についても、コロナ禍前(2020年3月期上期)と比較すると約1.4倍の水準を確保していることから、デジタルシフトへの流れに乗って着実に収益基盤の底上げがされているとの見方もできる。損益面でも、収益性の高い「EC事業」の反動減により減益となったものの、セグメント利益率は16.7%(前年同期は18.3%)と高い水準を維持した。
活動面に目を向けると、「ファンクラブ・ファンサイト事業等」では新規15サイトを開設するとともに、「FanplaKit」※1による新たなアーティストの獲得も順調のようだ。また、ファンクラブのアプリ化(アーティストアプリの展開)に加え、生配信視聴アプリ「FanStream」※2やVRでのライブ配信もコロナ禍をきっかけに好評を博しており、特にアーティストアプリ内でのECサイト連携や「FanStream」の配信など、様々な機能の集約により利便性やファンコミュニケーションの強化を図っている。また、「EC事業」についても、新規13ストアを立ち上げるとともに、会場受取や会員限定販売などファンニーズに寄り添ったサービスを展開し、ツアーグッズ・配信ライブグッズなどを幅広く販売した。
※1 アーティストの規模にかかわらず、初期・導入費用不要でファンクラブの立ち上げができ、会員管理はもちろんファンクラブ運営に必要な機能がパッケージされているSaaS型プラットフォーム。2021年9月末時点で新人アーティストを中心に141組が登録している。
※2 生配信を観ながらコメントやギフティング(投げ銭)によってアーティストの応援ができる機能を搭載した視聴専用アプリ。
(2) 電子チケット事業
売上高は前年同期比87.9%増の1,028百万円、セグメント利益は160百万円(前年同期は146百万円の損失)と、大幅な増収により黒字転換を実現した。引き続きコロナ禍の影響(動員制限等)を受けているものの、ほとんどのライブ・コンサートが中止や延期となった前年同期と比べて、各種イベントが徐々に回復傾向にあることに加え、感染予防対策における強み※1を生かすことで、電子チケット取扱枚数(2022年3月期上期実績)は113万枚(前年同期は14万枚)と順調に伸び、通期では230万枚(前期は130万枚)と過去最高枚数を達成する勢いである。また、チケットトレードについても、コロナ禍に対応した二次流通を適正に提供することにより、通期で10万枚(前期は5.1万枚)と過去最高枚数を見込んでいる。さらには、電子チケットに付随した周辺サービス(メモコレ、メモコレくじ等)※2が大きく伸び、顧客単価が約2倍に向上したことも大幅な増収に寄与した。また、電子チケットに加え、オンライン配信事業等※3も堅調に推移し、同社業績はもちろん、アーティストサイドの収益獲得にも貢献したほか、プロ野球等のカードコレクションアプリについても、球団間のコラボ企画や球場との連携などにより着実に伸ばすことができた。利益面でも、大幅な増収により、「のれん」等の償却や新サービスに係る先行費用をカバーし、黒字転換を実現することができた。
※1 非接触の促進につながるとともに、スマートフォン顔認証・体温感知の導入も図っている。
※2 「メモコレ」とは、ライブの思い出をスマートフォンでずっと楽しめるデジタルコンテンツパック(メンバーからのウエルカムメッセージ、公演当日のスペシャルフォト、終演直後に収録したメンバーからのメッセージ、メンバー直筆サイン入りグッズが当たるくじなどが含まれる)のことである。また、「メモコレくじ」は、「メモコレ」内で提供している、豪華賞品が当たるハズレなしのオンラインくじ(ガチャガチャ)を切り出したサービスである。
※3 ライブの生配信やオンライン配信の視聴パスを販売するプラットフォーム「StreamPass」や「MeetPass」(1対1オンライントーク)など。
3. 2022年3月期上期の総括
以上から2022年3月期上期の業績を総括すると、コロナ禍が続くなかでも増収増益を実現したところは、同社の複合的な事業展開や収益基盤の強さを実証したものとして評価することができる。特に、コロナ禍の影響により一旦減少した会員数が増加に転じたことや、市場拡大が期待できる「電子チケット事業」が伸びてきたことは、今後に向けても明るい材料となった。また活動面でも、コロナ禍をきっかけとした環境変化を捉え、ファンサービスのDX化を見据えた方向性を打ち出すとともに、新たな収益モデルとなり得る「NFT事業」への参入に踏み切ったことは、2023年3月期以降の事業拡大を評価するうえで注目すべき成果と言えよう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<NB>
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