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クオールHD Research Memo(7):中期目標の売上高3,000億円、営業利益250億円を目指す
配信日時:2021/12/23 15:07
配信元:FISCO
■中長期の成長戦略と進捗状況
1. 中期成長戦略の全体像
クオールホールディングス<3034>が掲げる中期目標とそれに向けた成長戦略は従来から一貫しており変更はない。中期的な計数目標としては、売上高3,000億円、営業利益250億円という業績目標を掲げている。事業セグメント別では、保険薬局事業の売上高が2021年3月期比で1.7倍増となる2,500億円、医療関連事業で同3.8倍増となる500億円とし、営業利益ではそれぞれ125億円を目標としている。医療関連事業の内訳としては、CSO、CRO、医療系人材紹介派遣事業で売上高200億円、営業利益40億円、医薬品製造販売事業等の新規事業で売上高300億円、営業利益85億円となる。保険薬局事業で着実な成長を図りながら、医療関連事業の規模拡大と収益性を高めていくことで、将来的にバランスの取れた収益ポートフォリオの構築を目指していく戦略だ。
成長戦略として、保険薬局事業については1)戦略的出店による規模の拡大と、2)薬局の価値創出、の2軸で臨む方針で、この点も従来から変更はないが、2021年度は重点施策として「在宅調剤の強化」「DXの推進」に注力している。一方、医療関連事業については、営業利益率を20%以上に引き上げていく意欲的な目標となっている。主力のCSO事業、医療系人材紹介派遣事業の積極展開に加えて、医薬品製造販売事業については製造品目数の増加に向けた設備投資拡大やM&Aの活用、大手製薬企業との連携を強化しながら規模の拡大と収益性向上を図る戦略となっている。
以下ではそれぞれの事業セグメントの成長戦略と進捗状況について述べる。
「在宅調剤の強化」と「DXの推進」を重点施策として取り組む
2. 保険薬局事業の成長戦略と進捗状況
保険薬局事業では、「戦略的出店による規模の拡大」と「薬局の価値創出」を基本戦略として成長を目指していく。
(1) 戦略的出店による規模の拡大
店舗数については自力出店とM&Aにより年間50~70店舗のペースで出店し、2023年3月期に1,000店舗に拡大することを目標としていたが、2021年3月期以降はコロナ禍の影響によりM&Aによる店舗数拡大ペースがやや伸び悩んでいる状況から、1,000店舗の達成は一年先にずれ込む可能性もある。出店ターゲットとするエリアは、3大都市圏等人口の多いエリアが中心で、ドミナント出店により効率的な店舗数拡大を目指している。M&Aについても同様で、主要都市部において地域連携を取りやすいところを対象に進めていく。また、薬科大学が近隣にある地域についても薬剤師の採用が進みやすいことから対象としている。
店舗形態としては、同社が強みとするマンツーマン薬局での出店を継続し、M&Aの対象についても同様となる。異業種連携による新業態薬局の店舗数については、2021年9月末時点で41店舗となっている。内訳は、ローソン協業店が36店舗、ビックカメラ内店舗が5店舗である。このうち、主力のローソン協業店については認知度の向上によって、収益力も向上しており、今後も在宅調剤事業を拡大するなかでの差別化戦略として注力していくことにしている。具体的には、訪問服薬指導と合わせて一般用医薬品やその他の商品を顧客の注文に応じて配送する移動販売サービスを有料老人ホーム等の高齢者施設に向けて開始している。利用客にとっては医薬品と合わせて、日用品等もまとめて購入できることから利便性が高く、競合他社との差別化要因となっている。
調剤薬局業界では、2020年から解禁されたオンライン服薬指導や2021年8月より導入された機能別認定制度に加えて、2023年からは電子処方箋の運用も開始される予定となっている。今後、薬局運営においてもDX化が一層求められる一方、こうした体制を構築していくためには一定規模以上の資金力が必要となり、大手企業による寡占化が進むと見られている根拠の1つとなっている。また、調剤薬局は全国に約6.0万店舗あり、市場規模としては2020年度で約7.5兆円の規模となっているが、このうち、調剤売上高上位10社の合計は1.4兆円程度、市場シェアにすると約19%の水準にとどまっている。ドラッグストア業界が業界再編により上位10社で70%以上のシェアを占めていることを考えれば、調剤薬局業界で同様に業界再編等により寡占化が進んでもおかしくはない。同社ではこうした環境変化を好機と捉えて、自力出店だけでなくM&Aを活用しながら出店を拡大していく戦略を推進していくことになる。なお、M&Aについては売上規模やシナジー効果の有無等、社内で厳格な基準を定めて可否を判断するようにしている。
(2) 薬局の価値創出
同社では「薬局の価値創出」に向けた取り組みとして、国民から求められる質の高い薬局づくりを展開してきた。2016年から制度がスタートした「健康サポート薬局」については2021年11月時点で157店舗が認定されているほか、2021年8月に始まった機能別認定制度における「地域連携薬局」については83店舗、「専門医療機関連携薬局」については7店舗が認定されており、「地域連携薬局」については今後も随時申請を進めていく予定となっている。
また、2021年度の重点施策として在宅調剤事業の強化とDXの推進による薬局機能の構造的な転換に取り組んでいる。厚生労働省の資料によれば、現在の在宅調剤の市場規模は約3,100億円規模、利用者数で29万人と推計されている。調剤市場全体に占める比率は4%強だが、団塊の世代が75歳を迎える2025年以降は「地域包括ケアシステム」により在宅での医療・介護サービスの需要拡大が見込まれるなかで、在宅調剤の需要も一段と拡大していくものと予想される。現在の在宅調剤の9割弱は特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホーム等の施設となっており、こうした施設向けを中心に顧客を開拓していく方針だ。
在宅調剤における差別化戦略として、最新の調剤機器の導入・活用、誤薬防止対策としてのバーコード管理の導入、感染対策支援、在宅調剤特化型店舗、栄養管理士による栄養サポート、スマートフォンアプリ「クオールグループ処方せん送信&お薬手帳」を活用した安全性・利便性の高いサポート等の取り組みを推進しているほか、前述した移動販売サービスもその一つとなる。在宅調剤では在宅患者調剤加算が付くため、同事業の拡大は調剤技術料の単価上昇要因につながることにもなる。在宅調剤の売上高は2021年3月期の約30億円から2022年3月期は約50億円が見込まれており、2024年3月期に100億円を目標としている。
一方、もう一つの重点施策として取り組んでいる「DXの推進」では、薬局内でのIT活用による業務効率化だけでなく、利用客の待ち時間短縮や利便性向上につながる取り組み等も推進している。オンライン服薬指導に関しても、2020年9月に全店で対応できるようにする等、業界のなかでもデジタル技術を積極的に導入し業務改革を推進してきた。また、2021年10月にはインターネットを活用して革新的な医療サービスを提供するエムスリー<2413>と医療分野における業務提携に向けての協議を開始したことを発表している。両社が保有する医療分野におけるデータ資源等の相互利用を図り、デジタル技術を活用して持続可能で効率的かつ安全な医療サービスの実現を目指していくことにしている。具体的な取り組み内容については決定次第発表するとしており、その内容が注目される。
また、医療行政のDX推進策の1つであった電子処方箋については、厚生労働省が運用を開始する2023年1月から始める方針としている。電子処方箋を用いることで、薬局は直接処方箋データにアクセスできるため迅速に薬が準備できるほか、患者は服薬情報をいつでもオンラインで確認できるため患者自身が服薬内容を管理できるとともに、過剰な服薬を防ぐ効果等が期待されており、迅速に対応していくことにしている。同社では300万人以上のクオールカード会員数を保有しており、これら会員基盤のビッグデータを活用してQOL向上に貢献する新たなサービスの創出に取り組み、シェアの更なる拡大を目指していく考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<NB>
1. 中期成長戦略の全体像
クオールホールディングス<3034>が掲げる中期目標とそれに向けた成長戦略は従来から一貫しており変更はない。中期的な計数目標としては、売上高3,000億円、営業利益250億円という業績目標を掲げている。事業セグメント別では、保険薬局事業の売上高が2021年3月期比で1.7倍増となる2,500億円、医療関連事業で同3.8倍増となる500億円とし、営業利益ではそれぞれ125億円を目標としている。医療関連事業の内訳としては、CSO、CRO、医療系人材紹介派遣事業で売上高200億円、営業利益40億円、医薬品製造販売事業等の新規事業で売上高300億円、営業利益85億円となる。保険薬局事業で着実な成長を図りながら、医療関連事業の規模拡大と収益性を高めていくことで、将来的にバランスの取れた収益ポートフォリオの構築を目指していく戦略だ。
成長戦略として、保険薬局事業については1)戦略的出店による規模の拡大と、2)薬局の価値創出、の2軸で臨む方針で、この点も従来から変更はないが、2021年度は重点施策として「在宅調剤の強化」「DXの推進」に注力している。一方、医療関連事業については、営業利益率を20%以上に引き上げていく意欲的な目標となっている。主力のCSO事業、医療系人材紹介派遣事業の積極展開に加えて、医薬品製造販売事業については製造品目数の増加に向けた設備投資拡大やM&Aの活用、大手製薬企業との連携を強化しながら規模の拡大と収益性向上を図る戦略となっている。
以下ではそれぞれの事業セグメントの成長戦略と進捗状況について述べる。
「在宅調剤の強化」と「DXの推進」を重点施策として取り組む
2. 保険薬局事業の成長戦略と進捗状況
保険薬局事業では、「戦略的出店による規模の拡大」と「薬局の価値創出」を基本戦略として成長を目指していく。
(1) 戦略的出店による規模の拡大
店舗数については自力出店とM&Aにより年間50~70店舗のペースで出店し、2023年3月期に1,000店舗に拡大することを目標としていたが、2021年3月期以降はコロナ禍の影響によりM&Aによる店舗数拡大ペースがやや伸び悩んでいる状況から、1,000店舗の達成は一年先にずれ込む可能性もある。出店ターゲットとするエリアは、3大都市圏等人口の多いエリアが中心で、ドミナント出店により効率的な店舗数拡大を目指している。M&Aについても同様で、主要都市部において地域連携を取りやすいところを対象に進めていく。また、薬科大学が近隣にある地域についても薬剤師の採用が進みやすいことから対象としている。
店舗形態としては、同社が強みとするマンツーマン薬局での出店を継続し、M&Aの対象についても同様となる。異業種連携による新業態薬局の店舗数については、2021年9月末時点で41店舗となっている。内訳は、ローソン協業店が36店舗、ビックカメラ内店舗が5店舗である。このうち、主力のローソン協業店については認知度の向上によって、収益力も向上しており、今後も在宅調剤事業を拡大するなかでの差別化戦略として注力していくことにしている。具体的には、訪問服薬指導と合わせて一般用医薬品やその他の商品を顧客の注文に応じて配送する移動販売サービスを有料老人ホーム等の高齢者施設に向けて開始している。利用客にとっては医薬品と合わせて、日用品等もまとめて購入できることから利便性が高く、競合他社との差別化要因となっている。
調剤薬局業界では、2020年から解禁されたオンライン服薬指導や2021年8月より導入された機能別認定制度に加えて、2023年からは電子処方箋の運用も開始される予定となっている。今後、薬局運営においてもDX化が一層求められる一方、こうした体制を構築していくためには一定規模以上の資金力が必要となり、大手企業による寡占化が進むと見られている根拠の1つとなっている。また、調剤薬局は全国に約6.0万店舗あり、市場規模としては2020年度で約7.5兆円の規模となっているが、このうち、調剤売上高上位10社の合計は1.4兆円程度、市場シェアにすると約19%の水準にとどまっている。ドラッグストア業界が業界再編により上位10社で70%以上のシェアを占めていることを考えれば、調剤薬局業界で同様に業界再編等により寡占化が進んでもおかしくはない。同社ではこうした環境変化を好機と捉えて、自力出店だけでなくM&Aを活用しながら出店を拡大していく戦略を推進していくことになる。なお、M&Aについては売上規模やシナジー効果の有無等、社内で厳格な基準を定めて可否を判断するようにしている。
(2) 薬局の価値創出
同社では「薬局の価値創出」に向けた取り組みとして、国民から求められる質の高い薬局づくりを展開してきた。2016年から制度がスタートした「健康サポート薬局」については2021年11月時点で157店舗が認定されているほか、2021年8月に始まった機能別認定制度における「地域連携薬局」については83店舗、「専門医療機関連携薬局」については7店舗が認定されており、「地域連携薬局」については今後も随時申請を進めていく予定となっている。
また、2021年度の重点施策として在宅調剤事業の強化とDXの推進による薬局機能の構造的な転換に取り組んでいる。厚生労働省の資料によれば、現在の在宅調剤の市場規模は約3,100億円規模、利用者数で29万人と推計されている。調剤市場全体に占める比率は4%強だが、団塊の世代が75歳を迎える2025年以降は「地域包括ケアシステム」により在宅での医療・介護サービスの需要拡大が見込まれるなかで、在宅調剤の需要も一段と拡大していくものと予想される。現在の在宅調剤の9割弱は特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホーム等の施設となっており、こうした施設向けを中心に顧客を開拓していく方針だ。
在宅調剤における差別化戦略として、最新の調剤機器の導入・活用、誤薬防止対策としてのバーコード管理の導入、感染対策支援、在宅調剤特化型店舗、栄養管理士による栄養サポート、スマートフォンアプリ「クオールグループ処方せん送信&お薬手帳」を活用した安全性・利便性の高いサポート等の取り組みを推進しているほか、前述した移動販売サービスもその一つとなる。在宅調剤では在宅患者調剤加算が付くため、同事業の拡大は調剤技術料の単価上昇要因につながることにもなる。在宅調剤の売上高は2021年3月期の約30億円から2022年3月期は約50億円が見込まれており、2024年3月期に100億円を目標としている。
一方、もう一つの重点施策として取り組んでいる「DXの推進」では、薬局内でのIT活用による業務効率化だけでなく、利用客の待ち時間短縮や利便性向上につながる取り組み等も推進している。オンライン服薬指導に関しても、2020年9月に全店で対応できるようにする等、業界のなかでもデジタル技術を積極的に導入し業務改革を推進してきた。また、2021年10月にはインターネットを活用して革新的な医療サービスを提供するエムスリー<2413>と医療分野における業務提携に向けての協議を開始したことを発表している。両社が保有する医療分野におけるデータ資源等の相互利用を図り、デジタル技術を活用して持続可能で効率的かつ安全な医療サービスの実現を目指していくことにしている。具体的な取り組み内容については決定次第発表するとしており、その内容が注目される。
また、医療行政のDX推進策の1つであった電子処方箋については、厚生労働省が運用を開始する2023年1月から始める方針としている。電子処方箋を用いることで、薬局は直接処方箋データにアクセスできるため迅速に薬が準備できるほか、患者は服薬情報をいつでもオンラインで確認できるため患者自身が服薬内容を管理できるとともに、過剰な服薬を防ぐ効果等が期待されており、迅速に対応していくことにしている。同社では300万人以上のクオールカード会員数を保有しており、これら会員基盤のビッグデータを活用してQOL向上に貢献する新たなサービスの創出に取り組み、シェアの更なる拡大を目指していく考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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