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北京五輪ボイコットできない岸田政権の対中友好がクワッドを崩す(1)【中国問題グローバル研究所】

配信日時:2021/12/09 16:19 配信元:FISCO
【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。中国研究の第一人者である筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。

◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。

アメリカの北京冬季五輪外交的ボイコットに対し、岸田首相は同調していない。人権問題を制裁できる法制定も先送りし、超親中の林氏を外相に据えた岸田政権は対中友好満載だ。日本は又しても対中包囲網を崩壊させるのか。

◆バイデン政権が北京冬季五輪の外交的ボイコットを決定
アメリカのバイデン政権は12月6日、「新疆ウイグル自治区で進行中のジェノサイド(集団殺害)や人道に対する罪への意見表明」として来年2月に北京で開催される冬季五輪に対して(政府関係者などを派遣しないという)「外交的ボイコット」を行うと発表した。

その発表が成される前日、中国外交部の趙立堅報道官は定例記者会見(※2)で、ブルームバーグ記者の「CNNが、アメリカが外交的ボイコットをするだろうと言っているし、日本の与党保守派のメンバーが岸田首相にも外交的ボイコットをするよう圧力をかけているが、どう思うか?」という質問に対して、概ね以下のように回答している。

——北京冬季五輪は、主役である選手のためのグローバルイベントだ。IOC(国際オリンピック委員会)をはじめとする国際社会は、その準備作業を高く評価しており、アメリカや日本をはじめとする多くの外国人選手は、中国での競技を熱望している。

冬季五輪は決して政治的なショーや策略のための舞台ではないということを強調したい。招待状も出していないのに外交的ボイコットをするということは、アメリカの政治家たちの自己満足であり、陳腐な政治的操作であり、オリンピック憲章の精神に反する政治的挑発だ。

これは14億人の中国人民に対する侮辱でもあり、もしアメリカがこのようなオリンピック精神にもとる態度を続けるならば、中国は断固とした対抗措置をとる。

米国は、スポーツの政治化をやめ、北京冬季オリンピックへの干渉と妨害をやめるべきであり、そうでなければ、さまざまな重要分野や国際・地域問題における両国の対話と協力にダメージを与えることになる。(引用ここまで)

翌12月7日になると、アメリカの正式発表を受けて中国外交部は定例記者会見(※3)で同様の質問に対して同様の回答をしている。

◆岸田文雄首相の反応
問題は日本がどうするかだ。

12月7日午前、岸田首相は首相官邸で記者団の取材を受け、日本政府の対応について「国益の観点から自ら判断する」と述べた。その上で、「オリンピックの意義や我が国の外交にとっての意義等を総合的に勘案し、国益の観点から自ら判断していきたい。これが我が国の基本的な姿勢だ」と述べた。

つまり、必ずしもバイデン政権の望む通りには動かないということになる。

バイデン政権もまた、他の国に強要するものではないと言ってはいるが、当然のことながらバイデン大統領としては自分の威信を保つためにも同盟国や友好国がアメリカの決定に同調してくれるのを望んでいるだろう。何と言ってもバイデンは大統領に就任するなり「国際社会に戻ってきた」と宣言したのだから。おまけにアメリカ国内ではひたすら支持率が低下し続けている。だから国内的にも「ほらね、私はこんなに反中的で人権重視なんだよ」というところを見せなければならない。

したがって岸田首相には「もちろん日本はアメリカと歩みを共にします!」と、即答して欲しかったにちがいない。

しかし岸田内閣は今のところ、アメリカの望む「反中的」方向には動いてない。

◆林芳正外相の反応
12月7日の日本の外務省報道(※4)によれば、林外相は外交的ボイコットに関して読売新聞記者の質問に対し以下のように回答している(一部抜粋)。

・米国政府の発表については承知をしておりますが、北京冬季大会への各国の対応についてコメントすることは、差し控えたいと思います。北京冬季大会への日本政府の対応については、今後適切な時期に、諸般の事情を総合的に勘案して判断をいたしますが、現時点では何ら決まっておらないということでございます。

・(諸般の事情に人権が入っているか否かという質問に対して)日本としては、国際社会における普遍的価値であります自由、基本的人権の尊重、法の支配、こうしたものが、中国においても保障されることが重要であると考えておりまして、こうした日本の立場については、様々なレベルで中国側に直接働きかけてきております。北京冬季大会への日本政府の対応については、今後そういったご指摘の諸点も含めて、適切な時期に諸般の事情を総合的に勘案して判断をすると考えております。(引用以上)

なんとも曖昧模糊(あいまいもこ)として、ほぼ「逃げている」としか言いようがない。

「北京五輪ボイコットできない岸田政権の対中友好がクワッドを崩す(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。

写真: 代表撮影/ロイター/アフロ

(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://www.fmprc.gov.cn/fyrbt_673021/202112/t20211206_10463052.shtml
(※3)https://www.fmprc.gov.cn/fyrbt_673021/jzhsl_673025/202112/t20211207_10463549.shtml
(※4)https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/kaiken24_000083.html#topic1


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