後場の投資戦略
需給状況も8月以前に逆戻り?
配信日時:2021/10/08 12:24
配信元:FISCO
[日経平均株価・TOPIX(表)]
日経平均;28275.52;+597.31TOPIX;1974.51;+34.89
[後場の投資戦略]
本日の日経平均は外部環境を巡る懸念が一段と和らぎ、前場には一時600円を超える上昇となった。米国債の当面のデフォルト回避によるリスクオンの流れから米10年物国債利回りは1.57%(+0.05pt)まで上昇したが、ナスダック総合指数や米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は堅調。東京市場でも値がさグロース(成長)株を中心に買いが入り、日経平均を押し上げている。ネット証券で人気のレーザーテックは、半導体の微細化に寄与する極端紫外線(EUV)を用いた検査装置がDRAMメーカーにも広がっているとの社長インタビューが米メディアに掲載されており、一段と期待を高めているだろう。一方、こうしたハイテク株への投資資金シフトで海運株は軟調。ここまでの東証1部売買代金は1兆8000億円弱と前日より膨らんでおり、取引は活発だ。
新興市場でもメルカリ<4385>などが堅調で、マザーズ指数は+1.75%と続伸。ただ、こちらは10時前に付けた1112.82ptがこの日の高値で、その後はやや上値を切り下げるような恰好となっている。
さて、日本取引所グループが7日発表した投資部門別売買動向によると、外国人投資家は9月第5週(9月27日~10月1日)に現物株を4725億円、東証株価指数(TOPIX)先物を7874億円、日経平均先物を1713億円それぞれ売り越していた。日々の先物手口では、9月29日の自民党総裁選と前後してBofA証券がTOPIX先物の売り越しに転じていたため、おおむね想定どおりの内容だ。8月23日週から9月21日週までの5週累計で外国人投資家のTOPIX先物買い越し額は8100億円あまりに膨らんでいたが、9月第5週の1週間でほぼ同程度売り越していたことになる。
一方、日経平均先物については9月21日週には早々に売り越しに転じており、9月第5週を含めた2週累計の売り越し額は5000億円弱。取引主体は短期筋とみられるだけに、政局相場初期の買い出動もその後の売り転換も早かった。しかし、8月23日週から9月13日週までの4週累計の買い越し額は8900億円近くに上っていたことから、むしろTOPIX先物と異なって一段の売り余地があるだろう。実際、前日の先物手口でもJPモルガン証券が日経平均先物を売り越していた。
自民党総裁選以降の海外勢の売りを「投機筋による材料出尽くし的な、あるいは思惑的なもの」と説明する市場関係者が多いように見受けられるが、実需筋中心とみられるTOPIX先物の売りが先行したという事実が見過ごされているような気がしてならない。
もう1つの市場データにも注目しておきたい。1日申し込み時点の信用買い残高(東京・名古屋2市場、制度・一般信用合計)は3兆5365億円と前の週に比べ2366億円増えた。政局相場で徐々に信用買い残の解消が進んでいたが、その後の株価急落で結局直近ピーク並みの水準に逆戻り。前日の後場に見られたように、信用買い残の増加は戻り売り圧力につながる。
海外投資家が先物を売り、現物株投資家が押し目で信用買いを膨らませる需給状況は政局相場前の2~8月と同じだ。5日の当欄では構造改革期待のはく落により「世界の景気敏感株に逆戻り」と指摘したが、実は需給状況も逆戻りしているとみておいた方がいいだろう。これを踏まえ、当面の日経平均の予想レンジは8月までと同様に27000円弱~29000円強としておきたい。
香港・上海株は朝高後やや伸び悩んでおり、今晩の米国では9月雇用統計の発表が予定されている。前述のとおり戻り待ちの売りが出やすい点を考慮しても、後場の日経平均は上値の重い展開となる可能性がある。
(小林大純)
<AK>
日経平均;28275.52;+597.31TOPIX;1974.51;+34.89
[後場の投資戦略]
本日の日経平均は外部環境を巡る懸念が一段と和らぎ、前場には一時600円を超える上昇となった。米国債の当面のデフォルト回避によるリスクオンの流れから米10年物国債利回りは1.57%(+0.05pt)まで上昇したが、ナスダック総合指数や米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は堅調。東京市場でも値がさグロース(成長)株を中心に買いが入り、日経平均を押し上げている。ネット証券で人気のレーザーテックは、半導体の微細化に寄与する極端紫外線(EUV)を用いた検査装置がDRAMメーカーにも広がっているとの社長インタビューが米メディアに掲載されており、一段と期待を高めているだろう。一方、こうしたハイテク株への投資資金シフトで海運株は軟調。ここまでの東証1部売買代金は1兆8000億円弱と前日より膨らんでおり、取引は活発だ。
新興市場でもメルカリ<4385>などが堅調で、マザーズ指数は+1.75%と続伸。ただ、こちらは10時前に付けた1112.82ptがこの日の高値で、その後はやや上値を切り下げるような恰好となっている。
さて、日本取引所グループが7日発表した投資部門別売買動向によると、外国人投資家は9月第5週(9月27日~10月1日)に現物株を4725億円、東証株価指数(TOPIX)先物を7874億円、日経平均先物を1713億円それぞれ売り越していた。日々の先物手口では、9月29日の自民党総裁選と前後してBofA証券がTOPIX先物の売り越しに転じていたため、おおむね想定どおりの内容だ。8月23日週から9月21日週までの5週累計で外国人投資家のTOPIX先物買い越し額は8100億円あまりに膨らんでいたが、9月第5週の1週間でほぼ同程度売り越していたことになる。
一方、日経平均先物については9月21日週には早々に売り越しに転じており、9月第5週を含めた2週累計の売り越し額は5000億円弱。取引主体は短期筋とみられるだけに、政局相場初期の買い出動もその後の売り転換も早かった。しかし、8月23日週から9月13日週までの4週累計の買い越し額は8900億円近くに上っていたことから、むしろTOPIX先物と異なって一段の売り余地があるだろう。実際、前日の先物手口でもJPモルガン証券が日経平均先物を売り越していた。
自民党総裁選以降の海外勢の売りを「投機筋による材料出尽くし的な、あるいは思惑的なもの」と説明する市場関係者が多いように見受けられるが、実需筋中心とみられるTOPIX先物の売りが先行したという事実が見過ごされているような気がしてならない。
もう1つの市場データにも注目しておきたい。1日申し込み時点の信用買い残高(東京・名古屋2市場、制度・一般信用合計)は3兆5365億円と前の週に比べ2366億円増えた。政局相場で徐々に信用買い残の解消が進んでいたが、その後の株価急落で結局直近ピーク並みの水準に逆戻り。前日の後場に見られたように、信用買い残の増加は戻り売り圧力につながる。
海外投資家が先物を売り、現物株投資家が押し目で信用買いを膨らませる需給状況は政局相場前の2~8月と同じだ。5日の当欄では構造改革期待のはく落により「世界の景気敏感株に逆戻り」と指摘したが、実は需給状況も逆戻りしているとみておいた方がいいだろう。これを踏まえ、当面の日経平均の予想レンジは8月までと同様に27000円弱~29000円強としておきたい。
香港・上海株は朝高後やや伸び悩んでおり、今晩の米国では9月雇用統計の発表が予定されている。前述のとおり戻り待ちの売りが出やすい点を考慮しても、後場の日経平均は上値の重い展開となる可能性がある。
(小林大純)
<AK>
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