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Jトラスト Research Memo(5):2021年12月期第2四半期の営業利益は前年同期比大幅増益(3)
配信日時:2021/09/17 08:35
配信元:FISCO
■Jトラスト<8508>の業績動向
(3) 東南アジア金融事業
東南アジア金融事業には、銀行業のJトラスト銀行インドネシア(以下、BJI)、債権回収業のPT JTRUST INVESTMENTS Indonesia(以下、JTII)、マルチファイナンス会社のJTO、韓国からインドネシアに進出している金融機関からの債権買取などに強みを持つターンアラウンドアセットインドネシア(韓国のサービサーであるTAアセットの子会社。以下、TAID)、さらにカンボジアで銀行業務を行うJTRBが含まれる。
2021年12月期第2四半期の営業収益は7,714百万円(前年同期比2.4%減)、営業損失は2,084百万円(前年同期は2,894百万円の損失)となった。インドネシア金融事業では、BJIの営業損失幅が大幅に縮小したことから損失幅が縮小した。また、JTRBは貸出残高を順調に積み増し、営業損益を下支えした。なお、通期予想に対する営業収益の進捗率は41%、営業損失は通期予想(4,389百万円の損失)に対して2,084百万円の損失と、依然として損失を計上しているものの予想を上回るレベルで推移しており、損失幅も改善傾向にある。
a) JTRB
定期預金、当座/普通預金ともにキャンペーンや新商品投入効果により、預金残高は1,045億円(2021年6月末)と増加傾向にある。COF(Cost of Funds)は預金獲得のため戦略的に上昇を容認しつつも、依然として絶対水準としては低位で推移している。また、貸出残高はプノンペン等のロックダウンを受け、2021年4月は前月比で3億円減少したものの、5月以降は増加傾向にあり、6月は861億円まで回復している。一方で、NPL比率は引き続き低位安定で推移している。
なお、JTRBはデジタルバンキングにも積極的に取り組んでいる。カンボジアで電子マネー取り扱い最大の「Wing Bank」との提携により新たな顧客層を開拓し、デジタルバンキングを推進している。銀行支店のない地方、農村、労働者、銀行口座開設ができないカンボジア人口80%の金融包摂を企図し、マイクロ貯蓄預金を2020年5月以降提供している。また、富裕層顧客拡大と預金獲得を目的に、2021年6月15日に新普通預金商品のPremier Saving Plus※1を発売した。出足は好調で、6月末の預金残高は30百万ドル弱に達した。さらに、JTRBが低金利預金獲得のために投入した新商品「Goal Saving」※2及び「The One」※3も好調に推移している。
※1 最低預金額5万ドル、預金額に応じた優遇金利、プレミア ラウンジ(全6か所)における専任マネージャーを窓口とした接客対応が特徴。
※2 2021年2月リリースした普通預金の貯蓄専用口座。カード発行はしないが、金利は優遇した商品。
※3 2020年2月リリースした普通預金。最低預金額を1ドルに下げ、従来の口座維持手数料等を撤廃した商品。
JTRBの今後の戦略としては、堅実な貸出の実行による融資残高の拡大を図るとともに、COFを意識した低金利預金の獲得を強化する。また、新規顧客層の開拓のほか、コスト削減などを目的としたコアバンキングシステム運用の内製化も検討している。
b) BJI
長期間にわたって預金保険機構の管理下にあったBJIについては、同社グループでは最優先課題の1つとして再生に取り組んでいる。これまでに、同行の増資を行うとともに、不良債権の回収に特化した新会社JTIIを設立して、同行から不良債権を切り離して譲渡することにより、財務体質の改善を図るなど銀行再生を加速してきた。ただ、銀行再生が計画どおりに進まなかったことから、2019年3月期決算において抜本的な対応に踏み切った。すなわち、BJIでは買収前からの負の遺産を含めた不良債権を前倒しで一括処理することを決断した。このように抜本的な不良債権処理を断行することで、東南アジア金融事業の業績急回復を実現するための基盤を整えた。
足元の状況としては、預金量は2020年6月の854億円を底に増加傾向が持続しており、2021年6月には1,055億円まで回復している。また、CASA比率の上昇などからCOFはインドネシア進出以来の最低水準を更新中で、インドネシア進出直後の9.30%から5.32%(2021年6月末)まで低下している。なお、新規預金口座の獲得件数も順調に推移している。大口預金に頼らず低利な小口預金の獲得に注力する戦略を継続中だが、その効果もあり、2021年に入ってからの新規預金口座獲得件数は各月における過去最高を更新し、2021年6月末には2,037件となった。
貸出残高については、新型コロナウイルス感染者数が過去最高を更新している状況を踏まえ、成長が可能な一部セクターに選択的かつ慎重な貸出を実施した結果、2021年6月末の貸出残高は前月比で微減の595億円となった。またコロナ禍の状況を鑑みて一部の貸出先に対して返済猶予を行っているが、これらの返済猶予債権のなかでも一定条件の債権を前向きに管理区分変更したことで、2021年6月末のNPL比率は5.95%に上昇した。しかしこれは将来に備えた前向きな処理であり、貸倒引当金控除後のネットNPLは3.27%にとどまっている。
なお、BJIの今後の戦略としては、戦略的パートナーシップを結べる業務提携及び資本提携を検討するほか、財務的に苦しい金融機関からの債権買取やM&Aを検討するとともに、大手企業への貸出を伸ばすために当該顧客とパイプラインを持つダイレクターらを招聘し、M&Aがなくても成長できる体制を構築する方針である。
c) JTO
2018年10月に株式60%を取得しグループ傘下に収めたマルチファイナンス会社のJTOは、オートローン業界の老舗として高い知名度があり、インドネシア全土の支店網や取引金融機関との豊富なネットワークを有している。従来の中古車ローンに加え農機具ローンや新車ローンなど新しい商品の提供をはじめてきたが、コロナ禍に伴う市場の変化を考慮し、2020年4月以降は、農機具ローンと小口のマイクロファイナンス以外の新規貸付を一旦停止し、慎重な与信スタンスを継続している。一方で、農業においてはパンデミックの影響を受けておらず、デフォルトリスクが低い農機具ローンに引き続き特化している。
JTOではコロナ禍の影響を考慮し、戦略的に貸付を抑制していることから貸付残高は減少傾向にある。また、NPL金額は低位で推移しているものの、貸付残高が減少しているため、NPL比率は上昇している。ちなみに貸倒引当金控除後のネットNPLは1.05%(2021年6月末)となっている。なお、パンデミック下において事業環境の悪化が顕著であるため、今後は業態転換を含めた事業の方向性を様々な角度で検討する方針だ。
d) JTII
ロックダウン等により登記所や土地局が閉鎖するなど、不動産担保売却に時間を要する厳しい状況が続いており、2021年4月~6月の回収金額は大口の特殊案件のあった前年同期比では減少したが、1月~3月比では11%増となっている。しかしながら、これは手続き上の問題(登記所や土地局の閉鎖や休止)によるものであり、請求残高は積みあがっていることから、これらが解決されれば回収は進むと予想される。なお、コロナ禍により不良債権の増加が予想されることから市場は拡大する見込みである。新たな取り組みとしては、TAIDでフィンテック企業から債権回収業務を受託した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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(3) 東南アジア金融事業
東南アジア金融事業には、銀行業のJトラスト銀行インドネシア(以下、BJI)、債権回収業のPT JTRUST INVESTMENTS Indonesia(以下、JTII)、マルチファイナンス会社のJTO、韓国からインドネシアに進出している金融機関からの債権買取などに強みを持つターンアラウンドアセットインドネシア(韓国のサービサーであるTAアセットの子会社。以下、TAID)、さらにカンボジアで銀行業務を行うJTRBが含まれる。
2021年12月期第2四半期の営業収益は7,714百万円(前年同期比2.4%減)、営業損失は2,084百万円(前年同期は2,894百万円の損失)となった。インドネシア金融事業では、BJIの営業損失幅が大幅に縮小したことから損失幅が縮小した。また、JTRBは貸出残高を順調に積み増し、営業損益を下支えした。なお、通期予想に対する営業収益の進捗率は41%、営業損失は通期予想(4,389百万円の損失)に対して2,084百万円の損失と、依然として損失を計上しているものの予想を上回るレベルで推移しており、損失幅も改善傾向にある。
a) JTRB
定期預金、当座/普通預金ともにキャンペーンや新商品投入効果により、預金残高は1,045億円(2021年6月末)と増加傾向にある。COF(Cost of Funds)は預金獲得のため戦略的に上昇を容認しつつも、依然として絶対水準としては低位で推移している。また、貸出残高はプノンペン等のロックダウンを受け、2021年4月は前月比で3億円減少したものの、5月以降は増加傾向にあり、6月は861億円まで回復している。一方で、NPL比率は引き続き低位安定で推移している。
なお、JTRBはデジタルバンキングにも積極的に取り組んでいる。カンボジアで電子マネー取り扱い最大の「Wing Bank」との提携により新たな顧客層を開拓し、デジタルバンキングを推進している。銀行支店のない地方、農村、労働者、銀行口座開設ができないカンボジア人口80%の金融包摂を企図し、マイクロ貯蓄預金を2020年5月以降提供している。また、富裕層顧客拡大と預金獲得を目的に、2021年6月15日に新普通預金商品のPremier Saving Plus※1を発売した。出足は好調で、6月末の預金残高は30百万ドル弱に達した。さらに、JTRBが低金利預金獲得のために投入した新商品「Goal Saving」※2及び「The One」※3も好調に推移している。
※1 最低預金額5万ドル、預金額に応じた優遇金利、プレミア ラウンジ(全6か所)における専任マネージャーを窓口とした接客対応が特徴。
※2 2021年2月リリースした普通預金の貯蓄専用口座。カード発行はしないが、金利は優遇した商品。
※3 2020年2月リリースした普通預金。最低預金額を1ドルに下げ、従来の口座維持手数料等を撤廃した商品。
JTRBの今後の戦略としては、堅実な貸出の実行による融資残高の拡大を図るとともに、COFを意識した低金利預金の獲得を強化する。また、新規顧客層の開拓のほか、コスト削減などを目的としたコアバンキングシステム運用の内製化も検討している。
b) BJI
長期間にわたって預金保険機構の管理下にあったBJIについては、同社グループでは最優先課題の1つとして再生に取り組んでいる。これまでに、同行の増資を行うとともに、不良債権の回収に特化した新会社JTIIを設立して、同行から不良債権を切り離して譲渡することにより、財務体質の改善を図るなど銀行再生を加速してきた。ただ、銀行再生が計画どおりに進まなかったことから、2019年3月期決算において抜本的な対応に踏み切った。すなわち、BJIでは買収前からの負の遺産を含めた不良債権を前倒しで一括処理することを決断した。このように抜本的な不良債権処理を断行することで、東南アジア金融事業の業績急回復を実現するための基盤を整えた。
足元の状況としては、預金量は2020年6月の854億円を底に増加傾向が持続しており、2021年6月には1,055億円まで回復している。また、CASA比率の上昇などからCOFはインドネシア進出以来の最低水準を更新中で、インドネシア進出直後の9.30%から5.32%(2021年6月末)まで低下している。なお、新規預金口座の獲得件数も順調に推移している。大口預金に頼らず低利な小口預金の獲得に注力する戦略を継続中だが、その効果もあり、2021年に入ってからの新規預金口座獲得件数は各月における過去最高を更新し、2021年6月末には2,037件となった。
貸出残高については、新型コロナウイルス感染者数が過去最高を更新している状況を踏まえ、成長が可能な一部セクターに選択的かつ慎重な貸出を実施した結果、2021年6月末の貸出残高は前月比で微減の595億円となった。またコロナ禍の状況を鑑みて一部の貸出先に対して返済猶予を行っているが、これらの返済猶予債権のなかでも一定条件の債権を前向きに管理区分変更したことで、2021年6月末のNPL比率は5.95%に上昇した。しかしこれは将来に備えた前向きな処理であり、貸倒引当金控除後のネットNPLは3.27%にとどまっている。
なお、BJIの今後の戦略としては、戦略的パートナーシップを結べる業務提携及び資本提携を検討するほか、財務的に苦しい金融機関からの債権買取やM&Aを検討するとともに、大手企業への貸出を伸ばすために当該顧客とパイプラインを持つダイレクターらを招聘し、M&Aがなくても成長できる体制を構築する方針である。
c) JTO
2018年10月に株式60%を取得しグループ傘下に収めたマルチファイナンス会社のJTOは、オートローン業界の老舗として高い知名度があり、インドネシア全土の支店網や取引金融機関との豊富なネットワークを有している。従来の中古車ローンに加え農機具ローンや新車ローンなど新しい商品の提供をはじめてきたが、コロナ禍に伴う市場の変化を考慮し、2020年4月以降は、農機具ローンと小口のマイクロファイナンス以外の新規貸付を一旦停止し、慎重な与信スタンスを継続している。一方で、農業においてはパンデミックの影響を受けておらず、デフォルトリスクが低い農機具ローンに引き続き特化している。
JTOではコロナ禍の影響を考慮し、戦略的に貸付を抑制していることから貸付残高は減少傾向にある。また、NPL金額は低位で推移しているものの、貸付残高が減少しているため、NPL比率は上昇している。ちなみに貸倒引当金控除後のネットNPLは1.05%(2021年6月末)となっている。なお、パンデミック下において事業環境の悪化が顕著であるため、今後は業態転換を含めた事業の方向性を様々な角度で検討する方針だ。
d) JTII
ロックダウン等により登記所や土地局が閉鎖するなど、不動産担保売却に時間を要する厳しい状況が続いており、2021年4月~6月の回収金額は大口の特殊案件のあった前年同期比では減少したが、1月~3月比では11%増となっている。しかしながら、これは手続き上の問題(登記所や土地局の閉鎖や休止)によるものであり、請求残高は積みあがっていることから、これらが解決されれば回収は進むと予想される。なお、コロナ禍により不良債権の増加が予想されることから市場は拡大する見込みである。新たな取り組みとしては、TAIDでフィンテック企業から債権回収業務を受託した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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