ランチタイムコメント

日経平均は7日続伸、ストーリー出現で潮目は変わった

配信日時:2021/09/07 12:18 配信元:FISCO
 日経平均は7日続伸。235.03円高の29894.92円(出来高概算6億3000万株)で前場の取引を終えている。

 6日の米株式市場はレーバーデーの祝日で休場だったが、欧州市場では主要株価指数が全般堅調だった。また、東京市場では先週末の菅義偉首相の退陣表明を受けて次期政権への期待が高まっており、本日の日経平均は224円高からスタート。朝方には一時
30048.23円(388.34円高)まで上昇し、取引時間中としては4月9日以来およそ5か月ぶりに3万円台を回復する場面があった。ただ、ここまでの急ピッチの上昇だったこともあり、節目の3万円に乗せた後は利益確定の売りが出て上値を抑えた。

 個別では、ソフトバンクG<9984>が売買代金トップで5%超の上昇。5月以降軟調な展開が続いたが、日経平均の大台回復もあってインデックス買いが入っているとの見方がある。日経平均への採用が発表された村田製<6981>やキーエンス<6861>も大きく上昇し、任天堂<7974>はしっかり。トヨタ自<7203>は1万円台を回復する場面があった。レノバ<9519>などは引き続き政策期待で活況。また、決算が好感されたACCESS<4813>やアイル<3854>は東証1部上昇率上位に顔を出している。一方、郵船<9101>
や商船三井<9104>といった海運株が軟調。OLC<4661>は2%超下落しているが、日経平均に採用されなかったことで売りが出ているようだ。また、除外銘柄となった洋缶HD<5901>や日清紡HD<3105>は東証1部下落率上位に顔を出している。

 セクターでは、倉庫・運輸関連業、空運業、陸運業などが上昇率上位で、その他も全般堅調。一方、海運業、金属製品、パルプ・紙の3業種が下落した。東証1部の値上がり銘柄は全体の60%、対して値下がり銘柄は34%となっている。

 本日の日経平均は7連騰し、200円を超える上昇で前場を折り返した。8月27日終値からここまでの上昇幅は2200円を超える。朝方にはおよそ5か月ぶりに3万円台を回復する場面があり、東証株価指数(TOPIX)に至っては既にバブル崩壊後の高値を連日で更新する勢いだ。個別では、日経平均への寄与が大きいソフトバンクGがインデックス買いを交えてリバウンドを試す展開となっており、新規採用に絡んで村田製やキーエンスも高い。再生可能エネルギー発電を手掛けるレノバなどは前日の急伸で利益確定売りが出つつも、なお堅調に推移している。ここまでの東証1部売買代金は1兆7000億円あまりで、やはり終日で3兆円に乗せるペースだろう。新興市場ではマザーズ指数が+1.10%と続伸している。

 さて、筆者は3月以来、「日経平均の緩やかな上値切り下げトレンド」を予想するなど慎重姿勢を示していたが、先週末3日の後場を境に明確にトレンドが変わったと述べておきたい。こうして記述が遅くなったことは担当曜日の都合のためご容赦頂きたい。

 2日の当欄「パウエルラリーの続きを日本株で」で述べたとおり、8月31日にかけて相次いだ観測報道を受けて、高値警戒感がくすぶる米国株から政局が流動化しつつあった日本株に軸足を移したうえで、緩和マネーによるラリー継続を期待する向きはあった。筆者は「政権筋」とする各種報道に懐疑的だったが、結果的にこれが9月3日の菅首相の退陣表明につながるとまではさすがに考えていなかった。

 これ以降、17日告示・29日投開票の自民党総裁選に向けて立候補を模索する各候補の動きが一段と活発化し、株式市場でも大きな投資論点となっている。しかし、特に市場が注目しているのは、菅首相の退陣表明で出馬の意向を明確にした現職閣僚の河野太郎規制改革相だろう。週明け6日の取引では再エネ関連銘柄や脱ハンコ(電子契約)関連銘柄が急動意を見せる一方、原発政策の不透明感から電力各社の下げが目立ったが、いずれも河野氏の過去の発言や取り組みに沿ったものだ。また、日経平均先物が夜間取引で3万円台に乗せた場面では、石破茂元幹事長が河野氏の支援を検討しているとの報道が観測された。

 政局とは「一寸先は暗黒」のため断定的な判断は避けたいが、共同通信が4~5日に実施した世論調査で次の総理に「誰がふさわしいか」聞いたところ、河野氏が31.9%
でトップに立った。安倍晋三前首相の退陣時と違い、早々に派閥単位で有力候補の支持を打ち出す動きが見られないなか、世論調査で先行する河野氏が有利との見方は妥当なように思われる。

 ここ数日、夜間取引での日経平均先物の強い動きが目立ち、昨晩も30200円まで上昇する場面があった。これまで売り持ちに傾いていた海外投資家が多かっただけに急速な買い戻しによるものとの見方が多いが、売買高を大きく膨らませての急伸劇は海外勢が買い持ちに傾いてきた証左と考えた方がいいだろう。規制改革に意欲を見せる河野氏は海外から高く評価されやすいタイプに映る。

 一方、これまで当欄で指摘してきたとおり現物株投資家はかなり買い持ちに傾いていたし、株価急伸に伴い年金基金等からはリバランス(資産配分の再調整)目的の売りが出るだろう。日中の現物株指数が夜間の先物ほど上昇しないのは、こうした売りが上値を抑えているからと考えられる。しかし、過去のデータを見ても株式相場全体の方向感を決定づけるのは海外勢だ。総裁選を巡る情勢を注視しつつも、当面は「河野氏による規制改革」というストーリーのもと、海外勢の日本株買いが相場を押し上げる展開となる可能性はあるだろう。
(小林大純)
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