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NANO MRNA Research Memo(5):高成長が見込まれる第2世代mRNA医薬領域へシフト
配信日時:2025/07/15 15:05
配信元:FISCO
*15:05JST NANO MRNA Research Memo(5):高成長が見込まれる第2世代mRNA医薬領域へシフト
■NANO MRNA<4571>の成長戦略とビジネスモデル
1. 研究開発の方向性
(1) RNA医薬品動向
医薬分野における2024年の主なライセンス契約51件のうち、約半分が初期開発段階(探索・非臨床試験)のプロジェクトで占められている。これは、企業が将来性のある候補を早期に獲得しようとする「青田買い」の傾向が続いていることを示唆している。
モダリティ(医薬品の種類)別では、mRNA関連が3件、核酸医薬が2件と、核酸領域のライセンスが一定数確認され、同社が展開するmRNA創薬領域において、世界的にライセンス活動が活発に行われている状況が窺える。
直近ではmRNA、siRNA、ASOなど計13のRNA医薬品が新たに承認された。このうちASOに関しては、DDSを利用した製品が2剤承認されている。これまでASO製剤は、DDSを伴わない市販品が主流だったが、状況に変化が見られる。今後のASO開発においてDDSの活用がより重要になる可能性がある。
(2) DDS技術の進化と核酸医薬へのシフト
片岡一則博士に由来するDDS技術は、前身のナノキャリアにおいて開発してきた複数のDDS抗がん剤の臨床開発は、いずれもは既に終了している。これらの製剤は、ナノミセル製剤と呼ばれる親水性のポリエチレングリコール(PEG)と疎水性のポリアミノ酸からなるポリマーを活用した製剤であった。
その後、2020年9月1日付でアキュルナを吸収合併したことにより、アキュルナが保有していたsiRNA、ASO及びmRNAのポリマーDDS技術を引き継いだ。この技術も片岡博士の研究成果に由来し、ナノキャリアの技術との連続性を有するものである。
現在、TUG1 ASOやPRDM14 siRNAに適用されているDDS技術は、従来のナノミセルとは異なるユニットポリイオン複合体(Unit polyion complex)と呼ばれるものである。これは分岐鎖ポリエチレングリコール(Y-shaped PEG)を用いたYBCポリマーで構成されており、薬物動態の改善やがん組織への浸透性向上が確認されている。同社のDDS技術が、従来のナノミセル型DDSから複合体型DDSへと技術的に進展していることを示している。
このように、同社はナノキャリアから現在に至る変遷のなかで、形を変えながらDDS技術を継承し、現在のsiRNA医薬、ASO医薬及びmRNA医薬の研究開発へ発展させている。
2. mRNA医薬の成長領域へのステップアップ
mRNA医薬市場は現在、大きく2つの領域に分けられる。第1世代mRNAは、新型コロナウイルス感染症などの予防ワクチン、遺伝性疾患、組織再生などが中心である。この領域では、ファイザーやモデルナといった世界的な大手製薬メーカーが市場シェアを占めており、特に感染症ワクチン領域では新規ベンチャー企業の参入余地は少なくなっている。
第2世代mRNAとされる新領域には、mRNAエンコード抗体、ゲノム編集、in vivo CAR-Tといった革新的な治療領域が含まれる。mRNA技術とさまざまな先進技術を組み合わせることで、高付加価値な医薬品の創出を目指す領域であり、2030年に向けて高い成長が期待されている。世界のmRNA医薬関連企業は、こうした分野への基礎研究や研究開発投資を積極化させている。たとえば、米国のin vivo CAR-T細胞治療分野ではmRNAを用いて体内でCAR-T細胞を誘導する新たな治療法の研究が進んでおり、約30社の企業が競っている。一方、日本企業の研究活動は限定的であり、現時点では後れを取っている状況にある。
このような状況のなか、同社は独自のDDSプラットフォームを基盤に第2世代mRNA医薬への本格参入を加速しており、既に複数の製薬企業やアカデミアとの共同研究及び評価プロジェクトを進めている。
3. RNA医薬の開発と第2世代mRNAへの本格的参入に向けた新成長戦略「NANO MRAN2.0」
同社は、2023年にmRNA創薬を中心に据えたビジネスに転換し、新しい治療技術mRNA医薬の創製を目指したIPGモデルの確立を図る成長戦略「NANO MRNA1.0」を推進してきた。そして2025年から、これを「NANO MRNA2.0」へと進化させ取り組みを開始している。
NANO MRNA2.0は、次の4つの重点項目から構成されている。1) TUG1 ASO及びRUNX1 mRNAのPOC確立を加速する。2) 臨床POCが確立した独自DDS製剤のGMP製造体制をパートナーと協力して確立することにより価値を最大化する。3) mRNA医薬パイプラインを協業により第2世代へシフトする。4) 開発経験豊富ながん領域への再注力し、RNA医薬パイプラインを創出する。
これまで述べてきたとおり、独自の核酸DDS製剤を活用したRNA医薬の臨床開発は順調に進捗しており、DDS製剤の価値が高まっている。これに伴い、DDS技術の基盤として活用されるYBCポリマーの大量供給体制が整備されたことは重要な進展である。従来、GMP基準に準拠した製造能力の制限が課題であったが、製造委託先の供給量増強について見通しが示され、供給体制における制約が解消されることになった。この結果、DDSプラットフォームへのアクセスが容易になり、協業や、PRDM14 siRNA及びTUG1 ASOのsuccessorなどのがん領域を中心としたRNA医薬への再注力を通じて、パイプラインの拡充とともに、DDSプラットフォームそのものの価値の向上も期待される。
第2世代mRNAでは、先進的な創薬技術との融合のため製薬企業やアカデミアなどとの連携が不可欠となる。同社はすでに複数の共同研究プロジェクトを進めており、将来的には第3世代、第4世代のmRNA医薬へと、段階的に技術進化が続くものと見込んでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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1. 研究開発の方向性
(1) RNA医薬品動向
医薬分野における2024年の主なライセンス契約51件のうち、約半分が初期開発段階(探索・非臨床試験)のプロジェクトで占められている。これは、企業が将来性のある候補を早期に獲得しようとする「青田買い」の傾向が続いていることを示唆している。
モダリティ(医薬品の種類)別では、mRNA関連が3件、核酸医薬が2件と、核酸領域のライセンスが一定数確認され、同社が展開するmRNA創薬領域において、世界的にライセンス活動が活発に行われている状況が窺える。
直近ではmRNA、siRNA、ASOなど計13のRNA医薬品が新たに承認された。このうちASOに関しては、DDSを利用した製品が2剤承認されている。これまでASO製剤は、DDSを伴わない市販品が主流だったが、状況に変化が見られる。今後のASO開発においてDDSの活用がより重要になる可能性がある。
(2) DDS技術の進化と核酸医薬へのシフト
片岡一則博士に由来するDDS技術は、前身のナノキャリアにおいて開発してきた複数のDDS抗がん剤の臨床開発は、いずれもは既に終了している。これらの製剤は、ナノミセル製剤と呼ばれる親水性のポリエチレングリコール(PEG)と疎水性のポリアミノ酸からなるポリマーを活用した製剤であった。
その後、2020年9月1日付でアキュルナを吸収合併したことにより、アキュルナが保有していたsiRNA、ASO及びmRNAのポリマーDDS技術を引き継いだ。この技術も片岡博士の研究成果に由来し、ナノキャリアの技術との連続性を有するものである。
現在、TUG1 ASOやPRDM14 siRNAに適用されているDDS技術は、従来のナノミセルとは異なるユニットポリイオン複合体(Unit polyion complex)と呼ばれるものである。これは分岐鎖ポリエチレングリコール(Y-shaped PEG)を用いたYBCポリマーで構成されており、薬物動態の改善やがん組織への浸透性向上が確認されている。同社のDDS技術が、従来のナノミセル型DDSから複合体型DDSへと技術的に進展していることを示している。
このように、同社はナノキャリアから現在に至る変遷のなかで、形を変えながらDDS技術を継承し、現在のsiRNA医薬、ASO医薬及びmRNA医薬の研究開発へ発展させている。
2. mRNA医薬の成長領域へのステップアップ
mRNA医薬市場は現在、大きく2つの領域に分けられる。第1世代mRNAは、新型コロナウイルス感染症などの予防ワクチン、遺伝性疾患、組織再生などが中心である。この領域では、ファイザーやモデルナといった世界的な大手製薬メーカーが市場シェアを占めており、特に感染症ワクチン領域では新規ベンチャー企業の参入余地は少なくなっている。
第2世代mRNAとされる新領域には、mRNAエンコード抗体、ゲノム編集、in vivo CAR-Tといった革新的な治療領域が含まれる。mRNA技術とさまざまな先進技術を組み合わせることで、高付加価値な医薬品の創出を目指す領域であり、2030年に向けて高い成長が期待されている。世界のmRNA医薬関連企業は、こうした分野への基礎研究や研究開発投資を積極化させている。たとえば、米国のin vivo CAR-T細胞治療分野ではmRNAを用いて体内でCAR-T細胞を誘導する新たな治療法の研究が進んでおり、約30社の企業が競っている。一方、日本企業の研究活動は限定的であり、現時点では後れを取っている状況にある。
このような状況のなか、同社は独自のDDSプラットフォームを基盤に第2世代mRNA医薬への本格参入を加速しており、既に複数の製薬企業やアカデミアとの共同研究及び評価プロジェクトを進めている。
3. RNA医薬の開発と第2世代mRNAへの本格的参入に向けた新成長戦略「NANO MRAN2.0」
同社は、2023年にmRNA創薬を中心に据えたビジネスに転換し、新しい治療技術mRNA医薬の創製を目指したIPGモデルの確立を図る成長戦略「NANO MRNA1.0」を推進してきた。そして2025年から、これを「NANO MRNA2.0」へと進化させ取り組みを開始している。
NANO MRNA2.0は、次の4つの重点項目から構成されている。1) TUG1 ASO及びRUNX1 mRNAのPOC確立を加速する。2) 臨床POCが確立した独自DDS製剤のGMP製造体制をパートナーと協力して確立することにより価値を最大化する。3) mRNA医薬パイプラインを協業により第2世代へシフトする。4) 開発経験豊富ながん領域への再注力し、RNA医薬パイプラインを創出する。
これまで述べてきたとおり、独自の核酸DDS製剤を活用したRNA医薬の臨床開発は順調に進捗しており、DDS製剤の価値が高まっている。これに伴い、DDS技術の基盤として活用されるYBCポリマーの大量供給体制が整備されたことは重要な進展である。従来、GMP基準に準拠した製造能力の制限が課題であったが、製造委託先の供給量増強について見通しが示され、供給体制における制約が解消されることになった。この結果、DDSプラットフォームへのアクセスが容易になり、協業や、PRDM14 siRNA及びTUG1 ASOのsuccessorなどのがん領域を中心としたRNA医薬への再注力を通じて、パイプラインの拡充とともに、DDSプラットフォームそのものの価値の向上も期待される。
第2世代mRNAでは、先進的な創薬技術との融合のため製薬企業やアカデミアなどとの連携が不可欠となる。同社はすでに複数の共同研究プロジェクトを進めており、将来的には第3世代、第4世代のmRNA医薬へと、段階的に技術進化が続くものと見込んでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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