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NANO MRNA Research Memo(3):重点開発品2件は着実に進展。新たに3テーマをパイプラインに追加
配信日時:2025/07/15 15:03
配信元:FISCO
*15:03JST NANO MRNA Research Memo(3):重点開発品2件は着実に進展。新たに3テーマをパイプラインに追加
■開発パイプラインの動向
NANO MRNA<4571>の重点開発品であるTUG1 ASO(対象疾患:膠芽腫)は第I相臨床試験が進行中、RUNX1 mRNA(対象疾患:変形性膝関節症)については第1相臨床試験段階にあり、開発が順調に進捗している。同社は、2030年に向けた成長を見据え、mRNA医薬の世界的な技術革新と市場競争を踏まえた新たな事業領域への展開を図る。このため、2026年3月期を成長戦略「NANO MRNA2.0」の起点と位置付け、RNA創薬事業の拡大を目指す。重点項目であるがん領域への再注力の一環として、研究開発パイプライン改革に着手し、新規3テーマをパイプラインに追加した。
(1) TUG1 ASO(膠芽腫)
TUG1は、がん細胞の増殖ストレスを緩和する働きを持つたんぱく質に翻訳されない長鎖非翻訳RNAであり、脳腫瘍の中でも悪性度の高い膠芽腫に多く発現していることが知られている。TUG1 ASOは、TUG1に対するASOであり、TUG1の働きを阻害することで、がん細胞に複製ストレスを蓄積させ、細胞死へと誘導する。
TUG1 ASOの医師主導第I相試験は2024年2月に、安全性・忍容性及び有効な投与量を検討することを目的に開始した。被験者への投与量は段階的に4段階まで増量する計画であり、すでに最終段階に到達している。患者登録は累計12名で、これまでに重篤な副作用は報告されていない一方で、長期投与例が確認されている。患者登録は2025年度に完了する見込みである。
ライセンスアウトに向けた取り組みも進行しており、2025年は国内外の学会やビジネスイベントへの参加を通じて、技術発表や情報発信を積極的に展開している。京都(2月)、上海(4月)、ボストン(6月)、シンガポール(10月)などで開催されるイベントに参加し、候補品の認知向上と事業化の機会創出に努めている。なお、TUG1 ASOと同様に、TUG1 ASOで使用しているYBCポリマーを用いるDDSプラットフォームについても、TUG1 ASOとともに事業化の機会創出に努めている。
今後の臨床試験の予定は、2026年までは第I相臨床試験経過を継続的にフォローし、2027年には他社主導(導出に至った場合)、あるいは自社主導での第II相臨床試験への移行を目指している。
(2) RUNX1 mRNA(変形性膝関節症)
RUNX1 mRNAは、ヒト転写因子RUNX1のmRNAを膝関節腔内に直接投与することで、損傷した軟骨の再生を促進する新しいタイプの変形性膝関節症治療薬である。子会社(株)PrimRNAが、第I相臨床試験完了までの開発資金を(国研)日本医療研究開発機構(以下、AMED)から得て、研究開発を進めている。
臨床試験は当初、国内での実施を計画していたが、PMDAとの臨床試験に関する協議が長期化したため、2025年3月にAMEDから実施国をオーストラリアに変更する承認を得た。既にオーストラリアでの治験実施施設やCRO(医薬品開発業務受託機関)は選定済みで、治験関連文書の作成も完了し、2025年7月に倫理委員会(HREC)へ治験開始に向けた審査申請を提出した。
(3) mRNA(眼科)
千寿製薬(株)との共同研究により進めているmRNA技術を応用した眼科疾患治療薬の開発は、順調に進んでいる。同社は今回のパイプライン見直しにおいて、開発順位の3番目に引き上げ、優先的に取り組むべきmRNA医薬プロジェクトと新たに位置付けた。
(4) mRNA(免疫寛容)
花王との共同研究テーマであるアレルギー疾患向けmRNA医薬は、花王が持つ免疫制御技術を応用している。同社は2025年中に、最新の競合状況や技術的優位性を踏まえ、免疫制御技術の免疫寛容領域における競争優位性を総合的に評価し、開発候補品としての採否を判断する予定である。
(5) 新規テーマ
TUG1 ASO(膠芽腫)及びPRDM14 siRNA(乳がん)の臨床試験により、同社の独自DDS技術であるYBCポリマーの臨床における有用性が確認された。この結果を踏まえ、YBCポリマーを共通の基盤技術とする後続プロジェクトとして、TUG1ASO successor及びPRDM14 siRNA successorの2件の研究開発を開始した。3件目はmRNAとゲノム編集と融合した遺伝子転座を有するがんを対象とするプロジェクトである。なお、パートナーは非開示となっている。
i) TUG1 ASO successor(固形がん)
従来のTUG1 ASOは膠芽腫を適応対象としているが、新たに始動した次世代のTUG1 ASO successorプロジェクトでは膵臓がん、卵巣がん、膀胱がんなど膠芽腫以外の固形がんへの適用拡大を目指している。TUG1 ASO同様に名古屋大学の近藤豊(こんどうゆたか)氏と共同研究として進めている。
ii) PRDM14 siRNA successor(固形がん)
PRDM14 siRNA(第1世代)は治験を終了した。PRDM14 siRNAの開発者である金沢大学がん進展制御研究所の谷口博昭(たにぐちひろあき)氏は、AMEDによる次世代治療・診断のための創薬基盤技術開発事業の支援を受け、新たにPRDM14 siRNA successor(第2世代)の研究を継続しており、同社も分担機関として参画している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
<HN>
NANO MRNA<4571>の重点開発品であるTUG1 ASO(対象疾患:膠芽腫)は第I相臨床試験が進行中、RUNX1 mRNA(対象疾患:変形性膝関節症)については第1相臨床試験段階にあり、開発が順調に進捗している。同社は、2030年に向けた成長を見据え、mRNA医薬の世界的な技術革新と市場競争を踏まえた新たな事業領域への展開を図る。このため、2026年3月期を成長戦略「NANO MRNA2.0」の起点と位置付け、RNA創薬事業の拡大を目指す。重点項目であるがん領域への再注力の一環として、研究開発パイプライン改革に着手し、新規3テーマをパイプラインに追加した。
(1) TUG1 ASO(膠芽腫)
TUG1は、がん細胞の増殖ストレスを緩和する働きを持つたんぱく質に翻訳されない長鎖非翻訳RNAであり、脳腫瘍の中でも悪性度の高い膠芽腫に多く発現していることが知られている。TUG1 ASOは、TUG1に対するASOであり、TUG1の働きを阻害することで、がん細胞に複製ストレスを蓄積させ、細胞死へと誘導する。
TUG1 ASOの医師主導第I相試験は2024年2月に、安全性・忍容性及び有効な投与量を検討することを目的に開始した。被験者への投与量は段階的に4段階まで増量する計画であり、すでに最終段階に到達している。患者登録は累計12名で、これまでに重篤な副作用は報告されていない一方で、長期投与例が確認されている。患者登録は2025年度に完了する見込みである。
ライセンスアウトに向けた取り組みも進行しており、2025年は国内外の学会やビジネスイベントへの参加を通じて、技術発表や情報発信を積極的に展開している。京都(2月)、上海(4月)、ボストン(6月)、シンガポール(10月)などで開催されるイベントに参加し、候補品の認知向上と事業化の機会創出に努めている。なお、TUG1 ASOと同様に、TUG1 ASOで使用しているYBCポリマーを用いるDDSプラットフォームについても、TUG1 ASOとともに事業化の機会創出に努めている。
今後の臨床試験の予定は、2026年までは第I相臨床試験経過を継続的にフォローし、2027年には他社主導(導出に至った場合)、あるいは自社主導での第II相臨床試験への移行を目指している。
(2) RUNX1 mRNA(変形性膝関節症)
RUNX1 mRNAは、ヒト転写因子RUNX1のmRNAを膝関節腔内に直接投与することで、損傷した軟骨の再生を促進する新しいタイプの変形性膝関節症治療薬である。子会社(株)PrimRNAが、第I相臨床試験完了までの開発資金を(国研)日本医療研究開発機構(以下、AMED)から得て、研究開発を進めている。
臨床試験は当初、国内での実施を計画していたが、PMDAとの臨床試験に関する協議が長期化したため、2025年3月にAMEDから実施国をオーストラリアに変更する承認を得た。既にオーストラリアでの治験実施施設やCRO(医薬品開発業務受託機関)は選定済みで、治験関連文書の作成も完了し、2025年7月に倫理委員会(HREC)へ治験開始に向けた審査申請を提出した。
(3) mRNA(眼科)
千寿製薬(株)との共同研究により進めているmRNA技術を応用した眼科疾患治療薬の開発は、順調に進んでいる。同社は今回のパイプライン見直しにおいて、開発順位の3番目に引き上げ、優先的に取り組むべきmRNA医薬プロジェクトと新たに位置付けた。
(4) mRNA(免疫寛容)
花王との共同研究テーマであるアレルギー疾患向けmRNA医薬は、花王が持つ免疫制御技術を応用している。同社は2025年中に、最新の競合状況や技術的優位性を踏まえ、免疫制御技術の免疫寛容領域における競争優位性を総合的に評価し、開発候補品としての採否を判断する予定である。
(5) 新規テーマ
TUG1 ASO(膠芽腫)及びPRDM14 siRNA(乳がん)の臨床試験により、同社の独自DDS技術であるYBCポリマーの臨床における有用性が確認された。この結果を踏まえ、YBCポリマーを共通の基盤技術とする後続プロジェクトとして、TUG1ASO successor及びPRDM14 siRNA successorの2件の研究開発を開始した。3件目はmRNAとゲノム編集と融合した遺伝子転座を有するがんを対象とするプロジェクトである。なお、パートナーは非開示となっている。
i) TUG1 ASO successor(固形がん)
従来のTUG1 ASOは膠芽腫を適応対象としているが、新たに始動した次世代のTUG1 ASO successorプロジェクトでは膵臓がん、卵巣がん、膀胱がんなど膠芽腫以外の固形がんへの適用拡大を目指している。TUG1 ASO同様に名古屋大学の近藤豊(こんどうゆたか)氏と共同研究として進めている。
ii) PRDM14 siRNA successor(固形がん)
PRDM14 siRNA(第1世代)は治験を終了した。PRDM14 siRNAの開発者である金沢大学がん進展制御研究所の谷口博昭(たにぐちひろあき)氏は、AMEDによる次世代治療・診断のための創薬基盤技術開発事業の支援を受け、新たにPRDM14 siRNA successor(第2世代)の研究を継続しており、同社も分担機関として参画している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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