注目トピックス 日本株
ミライトワン Research Memo(5):幅広い社会インフラ領域において、社会課題解決に貢献する企業を目指す
配信日時:2025/06/13 14:05
配信元:FISCO
*14:05JST ミライトワン Research Memo(5):幅広い社会インフラ領域において、社会課題解決に貢献する企業を目指す
■中長期的な成長戦略
1. 「MIRAIT ONE Group Vision 2030」及び第5次中期経営計画の方向性
ミライト・ワン<1417>は、2022年5月に2030年を見据えた長期ビジョン「MIRAIT ONE Group Vision 2030」を公表した。パーパスとミッションを改めて定義したうえで、通信だけでなく、ICT、電気、土木、建設など幅広い社会インフラ領域で、企画から設計・施工・運用までトータルに提供する「フルバリュー型モデル」の実現と、「超・通建」に向けた事業ポートフォリオ変革を本格化する方向性を描いている。また、同時にスタートした第5次中期経営計画(5ヶ年)では、1) 人間中心経営、2) 事業成長の加速、3) 利益性トップクラス、4) データインサイト経営、5) ESG経営基盤強化の5つの事業変革に取り組んでいる。特に今後の注力領域として、「街づくり・里づくり/企業DX・GX」「グリーンエネルギー事業」「ソフトウェア事業」「グローバル事業」からなる「みらいドメイン」を定義し、経営資源を集中することで成長を加速する戦略である。
2. 5つの事業変革とその進捗
(1) 人間中心経営
人的資本への投資→ミライト・ワン流ワークライフスタイルの確立→働きがい・エンゲージメントの向上→会社の成長→人的資本への投資、といった好循環を目指す。特に、人的資本投資による事業成長に向けて、「通信基盤ドメイン」から「企業/環境社会基盤ドメイン」へ1,000名の人財流動を図るとともに、そのための戦略的人財育成(企業内大学「みらいカレッジ」等)や、柔軟な人事制度(JOB型雇用・社内副業の拡大、多様化の推進等)、健康経営(エンゲージメント向上等)などを推進している。これまでの進捗を振り返ると、人財流動実績(700名強)をはじめ、みらいカレッジ講座数及び利用実績、エンゲージメントスコア、健康法人経営などの各KPIにおいて順調に成果を積み上げることができている。
(2) 事業成長の加速
1) 「みらいドメイン」への取り組み、2) 西武建設及び国際航業との三位一体シナジーの創出のほか、3) 需要が拡大しているデータセンター事業の拡大により事業成長を加速する考えだ。1) 「みらいドメイン」への取り組みでは、「街づくり・里づくり/企業DX・GXの推進」(売上目標300億円)、「クリーンエネルギー事業の拡大」(売上目標300億円)、「グローバル事業の拡大」(売上目標500億円)の達成に向けて、それぞれ順調に実績を上げることができた。特に、「街づくり・里づくり/企業DX・GXの推進」では大型スポーツ複合施設工事※1等が業績の上振れに寄与した。2) 三位一体シナジーの創出についても、西武建設との共同営業や相互受発注などに取り組んだほか、国際航業を加えた3社連携においても国際航業が持つ自治体向けネットワークやノウハウを生かし、ゼロカーボンシティ事業(自治体施設ZEB化等)及び公益インフラマネジメント事業(自治体向け道路包括管理事業等)などにおいて計画を上回る受注実績を上げることができた。3) データセンター事業戦略では、シンガポール子会社を軸とするアジア12ヶ国・地域への展開(DCケーブリング等)のほか、国内においても人財流動を進めることで、通信設備、電気、空調、コンテナDC、O&M※2から建物に至るまでの「フルバリュー型」で受注額を目指す。
※1 スタジアム建設等。
※2 Operation(運用)及びMaintenance(保守)の略。なお、同社は関西において自前のデータセンター運営も行っている。
(3) 利益性トップクラス
1) 3社統合効果※1、2) バリューチェーン改革、3) 組織再編による効率化に取り組んでいる。1) 3社統合効果については、通信費、保険契約見直し、研修内製化等の経費削減策を推進し、最終年度目標40億円に対して着実な成果を上げることができた。2) バリューチェーン改革についても、役割分担・重複業務の見直し、間接業務のエリアフリー化、固定・モバイルの多能工化推進などを通じて「通信基盤ドメイン」の粗利率改善が図られた。3) 組織再編による効率化では、ミライト・ワン・ネクスト発足※2によるNTT固定事業の重複事業の集約とビジネス領域の拡大に取り組んだ。
※1 2022年に行ったミライト・ホールディングス、ミライト、ミライト・テクノロジーズの3社統合による合理化効果等。
※2 2025年1月に東日本アクセス子会社5社の統合により発足した。
(4) データインサイト経営
1) DX人財育成、2) 生成AI活用、3) データインサイト施策に取り組んでおり、それぞれ順調に進捗している。特に、1) DXコア人財育成については2,500名規模(中期目標2,000名)となり、既に前倒しで達成できた。
(5) ESG経営基盤強化の取り組み
ESG経営推進委員会の下でマテリアリティと成長戦略、サステナビリティを連動させた取り組みに注力している。1) 環境については、温室効果ガス(GHG)削減などで着実に成果が上げられた。2) 安全品質についても、引き続き、重大設備事故・重大人身事故のゼロ(常時)を目指す。
3. 投資計画
5年間の成長投資として人的資本投資、オーガニック事業投資、DX投資に合計500億円強を計画しているが、前期までに合計208億円を実施した。また、「みらいドメイン」の成長を加速するM&Aについても1,000億円強を計画しており、そのうち約半分を国際航業のM&Aに活用した。今後も引き続き「みらいドメイン」でのM&Aの推進を検討するとともに、のれんをカバーする事業シナジーの発揮を目指す。
4. 数値目標
「みらいドメイン」を軸とする「企業/環境社会基盤ドメイン」の拡大並びに「通信基盤ドメイン」の生産性向上等を通じてトップライン成長と利益率改善を図り、最終年度(2027年3月期)の売上高7,200億円、営業利益率6.5%以上、EBITDA率8.5%以上、ROE10.0%以上、EPS成長率年10.0%以上を目指す。
5. 弊社による中長期的な注目点
弊社でも、環境変化を見据え、いち早く事業構造改革に踏み切り、成長分野への経営資源のシフトにより成長を加速してきた戦略は、非常に理にかなっていると判断している。何よりも、合目的で良質な大型案件の実現など、ダイナミックに体制を強化してきた実績は大いに評価できる。もちろん、三位一体シナジーを含め、フルバリュー型モデルが本格的に軌道に乗るのはこれからであり、今後の成長性や収益性にどのような変化があるのかを注意してフォローする必要がある。また、残り2年となった中期経営計画の達成に向けては、決して低いハードルではないものの、三位一体アプローチ等により案件の大型化が進んでいることや、国際航業との連携を通じて自治体向け取引の拡大が見込めること、国内外で需要が拡大しているDC案件の取り込みが期待できることなど、いくつかのプラス要因を勘案すれば、トップラインの達成は十分に視野に入ってくるものと見ている。一方、営業利益率(EBITDA率)目標については、案件の高付加価値化と通信基盤ドメインにおける生産性向上がカギを握るであろう。さらに予算枠が半分(約500億円)残っているM&Aの動向にも注目したい。規模やシナジー創出のスピードによっては業績のアップサイドとなる可能性も十分に考えられる。一方、懸念材料としては、案件の大型化に伴うリスクマネジメントの巧拙にある。その点においては、新設したビジネスリスク管理室がいかに事業拡大を妨げることなく、不採算案件の予防や監視機能を発揮していくのかを注視したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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1. 「MIRAIT ONE Group Vision 2030」及び第5次中期経営計画の方向性
ミライト・ワン<1417>は、2022年5月に2030年を見据えた長期ビジョン「MIRAIT ONE Group Vision 2030」を公表した。パーパスとミッションを改めて定義したうえで、通信だけでなく、ICT、電気、土木、建設など幅広い社会インフラ領域で、企画から設計・施工・運用までトータルに提供する「フルバリュー型モデル」の実現と、「超・通建」に向けた事業ポートフォリオ変革を本格化する方向性を描いている。また、同時にスタートした第5次中期経営計画(5ヶ年)では、1) 人間中心経営、2) 事業成長の加速、3) 利益性トップクラス、4) データインサイト経営、5) ESG経営基盤強化の5つの事業変革に取り組んでいる。特に今後の注力領域として、「街づくり・里づくり/企業DX・GX」「グリーンエネルギー事業」「ソフトウェア事業」「グローバル事業」からなる「みらいドメイン」を定義し、経営資源を集中することで成長を加速する戦略である。
2. 5つの事業変革とその進捗
(1) 人間中心経営
人的資本への投資→ミライト・ワン流ワークライフスタイルの確立→働きがい・エンゲージメントの向上→会社の成長→人的資本への投資、といった好循環を目指す。特に、人的資本投資による事業成長に向けて、「通信基盤ドメイン」から「企業/環境社会基盤ドメイン」へ1,000名の人財流動を図るとともに、そのための戦略的人財育成(企業内大学「みらいカレッジ」等)や、柔軟な人事制度(JOB型雇用・社内副業の拡大、多様化の推進等)、健康経営(エンゲージメント向上等)などを推進している。これまでの進捗を振り返ると、人財流動実績(700名強)をはじめ、みらいカレッジ講座数及び利用実績、エンゲージメントスコア、健康法人経営などの各KPIにおいて順調に成果を積み上げることができている。
(2) 事業成長の加速
1) 「みらいドメイン」への取り組み、2) 西武建設及び国際航業との三位一体シナジーの創出のほか、3) 需要が拡大しているデータセンター事業の拡大により事業成長を加速する考えだ。1) 「みらいドメイン」への取り組みでは、「街づくり・里づくり/企業DX・GXの推進」(売上目標300億円)、「クリーンエネルギー事業の拡大」(売上目標300億円)、「グローバル事業の拡大」(売上目標500億円)の達成に向けて、それぞれ順調に実績を上げることができた。特に、「街づくり・里づくり/企業DX・GXの推進」では大型スポーツ複合施設工事※1等が業績の上振れに寄与した。2) 三位一体シナジーの創出についても、西武建設との共同営業や相互受発注などに取り組んだほか、国際航業を加えた3社連携においても国際航業が持つ自治体向けネットワークやノウハウを生かし、ゼロカーボンシティ事業(自治体施設ZEB化等)及び公益インフラマネジメント事業(自治体向け道路包括管理事業等)などにおいて計画を上回る受注実績を上げることができた。3) データセンター事業戦略では、シンガポール子会社を軸とするアジア12ヶ国・地域への展開(DCケーブリング等)のほか、国内においても人財流動を進めることで、通信設備、電気、空調、コンテナDC、O&M※2から建物に至るまでの「フルバリュー型」で受注額を目指す。
※1 スタジアム建設等。
※2 Operation(運用)及びMaintenance(保守)の略。なお、同社は関西において自前のデータセンター運営も行っている。
(3) 利益性トップクラス
1) 3社統合効果※1、2) バリューチェーン改革、3) 組織再編による効率化に取り組んでいる。1) 3社統合効果については、通信費、保険契約見直し、研修内製化等の経費削減策を推進し、最終年度目標40億円に対して着実な成果を上げることができた。2) バリューチェーン改革についても、役割分担・重複業務の見直し、間接業務のエリアフリー化、固定・モバイルの多能工化推進などを通じて「通信基盤ドメイン」の粗利率改善が図られた。3) 組織再編による効率化では、ミライト・ワン・ネクスト発足※2によるNTT固定事業の重複事業の集約とビジネス領域の拡大に取り組んだ。
※1 2022年に行ったミライト・ホールディングス、ミライト、ミライト・テクノロジーズの3社統合による合理化効果等。
※2 2025年1月に東日本アクセス子会社5社の統合により発足した。
(4) データインサイト経営
1) DX人財育成、2) 生成AI活用、3) データインサイト施策に取り組んでおり、それぞれ順調に進捗している。特に、1) DXコア人財育成については2,500名規模(中期目標2,000名)となり、既に前倒しで達成できた。
(5) ESG経営基盤強化の取り組み
ESG経営推進委員会の下でマテリアリティと成長戦略、サステナビリティを連動させた取り組みに注力している。1) 環境については、温室効果ガス(GHG)削減などで着実に成果が上げられた。2) 安全品質についても、引き続き、重大設備事故・重大人身事故のゼロ(常時)を目指す。
3. 投資計画
5年間の成長投資として人的資本投資、オーガニック事業投資、DX投資に合計500億円強を計画しているが、前期までに合計208億円を実施した。また、「みらいドメイン」の成長を加速するM&Aについても1,000億円強を計画しており、そのうち約半分を国際航業のM&Aに活用した。今後も引き続き「みらいドメイン」でのM&Aの推進を検討するとともに、のれんをカバーする事業シナジーの発揮を目指す。
4. 数値目標
「みらいドメイン」を軸とする「企業/環境社会基盤ドメイン」の拡大並びに「通信基盤ドメイン」の生産性向上等を通じてトップライン成長と利益率改善を図り、最終年度(2027年3月期)の売上高7,200億円、営業利益率6.5%以上、EBITDA率8.5%以上、ROE10.0%以上、EPS成長率年10.0%以上を目指す。
5. 弊社による中長期的な注目点
弊社でも、環境変化を見据え、いち早く事業構造改革に踏み切り、成長分野への経営資源のシフトにより成長を加速してきた戦略は、非常に理にかなっていると判断している。何よりも、合目的で良質な大型案件の実現など、ダイナミックに体制を強化してきた実績は大いに評価できる。もちろん、三位一体シナジーを含め、フルバリュー型モデルが本格的に軌道に乗るのはこれからであり、今後の成長性や収益性にどのような変化があるのかを注意してフォローする必要がある。また、残り2年となった中期経営計画の達成に向けては、決して低いハードルではないものの、三位一体アプローチ等により案件の大型化が進んでいることや、国際航業との連携を通じて自治体向け取引の拡大が見込めること、国内外で需要が拡大しているDC案件の取り込みが期待できることなど、いくつかのプラス要因を勘案すれば、トップラインの達成は十分に視野に入ってくるものと見ている。一方、営業利益率(EBITDA率)目標については、案件の高付加価値化と通信基盤ドメインにおける生産性向上がカギを握るであろう。さらに予算枠が半分(約500億円)残っているM&Aの動向にも注目したい。規模やシナジー創出のスピードによっては業績のアップサイドとなる可能性も十分に考えられる。一方、懸念材料としては、案件の大型化に伴うリスクマネジメントの巧拙にある。その点においては、新設したビジネスリスク管理室がいかに事業拡大を妨げることなく、不採算案件の予防や監視機能を発揮していくのかを注視したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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