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和田興産 Research Memo(8):2026年2月期を最終年度とする中期経営計画を推進(2)
配信日時:2024/11/19 15:08
配信元:FISCO
*15:08JST 和田興産 Research Memo(8):2026年2月期を最終年度とする中期経営計画を推進(2)
■和田興産<8931>の中長期の成長戦略
2. セグメント別の事業展開
(1) 分譲マンション販売
同社の強みを生かしつつ、足元の環境を踏まえて成長機会を創造する。強みは、地元地域に精通しており、圧倒的な存在感・ブランド力や、常設マンションギャラリーを活用した販売力を有することだ。外部環境は、需給の安定化、世帯数の増加(世帯当たりの人員の減少)、建築コストの増加などが想定される。成長機会・事業戦略としては、地域拡充、共同事業(JV)への取り組み、再開発などを挙げている。引渡戸数目標として2,000戸目途(3期間合計)を掲げる。
2025年2月期上期には、新たに大阪府堺市での2棟目となる分譲マンションを発売するなど、エリア拡大に向けて実績を上げている。
(2) 戸建て住宅販売
ワコーレブランドを活用し、分譲マンション販売事業を補完する。事業戦略として、重点エリアの設定(神戸市以西の設定)、建築コスト上昇への対応、自由設計住宅の取り組みを挙げる。引渡戸数目標として、前3期間の実績に対して1.5倍増、第1段階として年間50戸体制の確立を目指す。
2024年2月期には、2009年から開始した「ワコーレノイエ」が累計供給戸数700戸を突破し、購入者の安心につながるアフターサポートの充実を目指したリフォーム事業を開始している。
(3) その他不動産販売等
ここ数年間における成長分野であり、インカム及びキャピタルゲインで収益を安定確保している。これまで培った用地仕入・賃貸付けのネットワークを最大限活用し、マンションに不向きな土地でも開発できることを強みに、事業戦略として建築コストの上昇を踏まえ最適用地を厳選し、保有年数の最適化(売却時期の検討)を推進している。引渡戸数目標は、販売戸数は600戸超(3期間合計)、保有戸数800戸前後、年間賃貸収入6億円としている。
(4) 不動産賃貸収入
創業時から続く事業であり、レジデンス系を中心とした収益安定性の確保、中小型物件を中心としたリスク分散、恒常的に95%超の高稼働率を強みとしている。成長機会・事業戦略として、既存築古物件の建替え・他事業への転用、借地物件の取り組み、プロパティタイプの拡充などを掲げ、計画最終年度の保有戸数目標を約2,200戸としている。
(5) その他の事業方針
2023年4月の組織改正により、CS事業部を設置した。既存顧客からのニーズを汲み上げ、ビジネス機会の創造に着手している。また、従来のアライアンス先との関係を強化し、協業体制による新たなビジネスモデルの構築を図っている。
同社は、長年、日本有数の住宅地である神戸市、明石市、阪神間を中心に展開する分譲マンション事業を柱に成長を続けてきた。当面は、現在のビジネスモデルで成長を続けると考えられるが、事業環境を見ると、住宅地の基準地価は上昇し、原材料価格の高止まりや労務単価の上昇に伴い建築費が高水準で、戸当たり平均価格は上昇傾向にある。建築費の高騰には2025年の大阪・関西万博の影響もあるという。同社では、形の良い土地を厳選し、付き合いの長い建築業者を使うことで建築費を抑える対応を取っている。他方、変動型住宅ローン金利も各行が引き上げており、今後さらに借入金利が上昇すると、マンション購入者には購入が厳しくなることも懸念される。こうした事業環境を考えると、同社も分譲マンション事業だけでなく、なるべく早期に新たな成長ドライバーを構築することが不可欠であろう。
2025年2月期上期までに、新たな事業として、金融機関店舗の跡地での共同事業、系統用蓄電池事業への投資、老人ホームの開発など、新規事業への取り組みが進展しているが、さらなるスピード感をもって、同社の強みを生かせる新規事業の育成が必要であろう。短期間に新規事業を育成するためには、アライアンスやM&Aの活用も検討すべきであると弊社では考える。また、2026年2月期は中期経済計画の最終年度になることで、同社では次期中期経営計画の策定に入る予定だ。今後の金利上昇の可能性や高水準の建築コストも踏まえて、保守的な計画を策定すると予想される。
3. サステナビリティ
ガバナンスの強化として取締役会等の責務と人的資本投資を掲げる。具体的な取り組み方針として、取締役会等の責務では、実効性評価の実施による取締役会における議論の活性化、取締役の報酬制度の見直し(退職慰労金廃止・業績連動報酬導入)、スキルマトリクスに基づく取締役会の機能強化、取締役メンバーの多様性確保(事業分野、専門性、性別、独立性)などを目指す。人的資本投資では、人材の多様性確保に向けた女性管理職の登用・拡充、社員の成長に資する新評価制度の定着化や研修制度の拡充などを掲げている。また、サステナビリティでは、サステナビリティ基本方針の策定、環境性能への対応、古民家再生事業への取り組み、SmaGO(スマートごみ容器)の設置などを行った。
サステナビリティについては、持続的な企業価値向上に向けた対応として、サステナビリティ経営をより積極的に推進するため、新たにサステナビリティ基本方針を策定し、基本方針に基づき実現したい未来に向けて重点的に取り組む9つのマテリアリティ(重要課題)を特定した。2025年2月期からサステナビリティ経営を実施し、重要課題への取り組みにより、企業理念「共生(ともいき)」の実現を目指す方針だ。
さらにESGへの取り組みとして、「環境」においては、省エネ設備のZEHマンションの導入、系統用蓄電所の開設、スマートごみ容器「SmaGO」の設置などを実施している。「社会」では、住宅再建共済制度「フェニックス共済」への加入、令和6年能登半島地震災害義援金1,000万円の寄付、賃貸マンションへの非常食セットの設置、「こどもの居場所応援自動販売機」の設置、全国高等学校・中学校ゴルフ選手権春季大会への特別協賛をはじめとした青少年育成支援、古民家再生プロジェクト、企業版ふるさと納税などを行っている。「ガバナンス・人的資本」では、役員退職慰労金制度の廃止及び株式報酬制度の導入、指名委員会及び報酬委員会の設置、働きやすい職場環境づくりなどに取り組んでいる。
このように、同社では業績拡大を目指すだけでなく、ESGにも積極的に取り組んでいる。欧州投資家を中心に世界的に企業のESGへの取り組みを考慮した投資が拡大しており、わが国でも近年はESG投資が急拡大していることから、今後も同社の取り組みが注目される。
4. 利益配分方針
会社の継続性及び収益性を確保するため、既存事業及び新規事業への再投資を中心としつつ、株主還元策の拡充及びESG、SDGsの観点も含めて利益の配分方針を明確化している。具体的には、事業再投資の水準を50~70%とし、収益性、効率性及び市場動向の把握を通じ、成長性なども加味して既存事業への再投資を図る。配当性向の水準は20~30%とし、株主への適正な還元が求められるなか、30%の配当性向を目指す。サステナブル関連の水準は10~20%とし、新たな事業領域への投資も含めて環境面への対応、人的資本への投資に充当する。
同社では2022年2月期以降、配当性向の引き上げに向けて増配を続けている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
<HN>
2. セグメント別の事業展開
(1) 分譲マンション販売
同社の強みを生かしつつ、足元の環境を踏まえて成長機会を創造する。強みは、地元地域に精通しており、圧倒的な存在感・ブランド力や、常設マンションギャラリーを活用した販売力を有することだ。外部環境は、需給の安定化、世帯数の増加(世帯当たりの人員の減少)、建築コストの増加などが想定される。成長機会・事業戦略としては、地域拡充、共同事業(JV)への取り組み、再開発などを挙げている。引渡戸数目標として2,000戸目途(3期間合計)を掲げる。
2025年2月期上期には、新たに大阪府堺市での2棟目となる分譲マンションを発売するなど、エリア拡大に向けて実績を上げている。
(2) 戸建て住宅販売
ワコーレブランドを活用し、分譲マンション販売事業を補完する。事業戦略として、重点エリアの設定(神戸市以西の設定)、建築コスト上昇への対応、自由設計住宅の取り組みを挙げる。引渡戸数目標として、前3期間の実績に対して1.5倍増、第1段階として年間50戸体制の確立を目指す。
2024年2月期には、2009年から開始した「ワコーレノイエ」が累計供給戸数700戸を突破し、購入者の安心につながるアフターサポートの充実を目指したリフォーム事業を開始している。
(3) その他不動産販売等
ここ数年間における成長分野であり、インカム及びキャピタルゲインで収益を安定確保している。これまで培った用地仕入・賃貸付けのネットワークを最大限活用し、マンションに不向きな土地でも開発できることを強みに、事業戦略として建築コストの上昇を踏まえ最適用地を厳選し、保有年数の最適化(売却時期の検討)を推進している。引渡戸数目標は、販売戸数は600戸超(3期間合計)、保有戸数800戸前後、年間賃貸収入6億円としている。
(4) 不動産賃貸収入
創業時から続く事業であり、レジデンス系を中心とした収益安定性の確保、中小型物件を中心としたリスク分散、恒常的に95%超の高稼働率を強みとしている。成長機会・事業戦略として、既存築古物件の建替え・他事業への転用、借地物件の取り組み、プロパティタイプの拡充などを掲げ、計画最終年度の保有戸数目標を約2,200戸としている。
(5) その他の事業方針
2023年4月の組織改正により、CS事業部を設置した。既存顧客からのニーズを汲み上げ、ビジネス機会の創造に着手している。また、従来のアライアンス先との関係を強化し、協業体制による新たなビジネスモデルの構築を図っている。
同社は、長年、日本有数の住宅地である神戸市、明石市、阪神間を中心に展開する分譲マンション事業を柱に成長を続けてきた。当面は、現在のビジネスモデルで成長を続けると考えられるが、事業環境を見ると、住宅地の基準地価は上昇し、原材料価格の高止まりや労務単価の上昇に伴い建築費が高水準で、戸当たり平均価格は上昇傾向にある。建築費の高騰には2025年の大阪・関西万博の影響もあるという。同社では、形の良い土地を厳選し、付き合いの長い建築業者を使うことで建築費を抑える対応を取っている。他方、変動型住宅ローン金利も各行が引き上げており、今後さらに借入金利が上昇すると、マンション購入者には購入が厳しくなることも懸念される。こうした事業環境を考えると、同社も分譲マンション事業だけでなく、なるべく早期に新たな成長ドライバーを構築することが不可欠であろう。
2025年2月期上期までに、新たな事業として、金融機関店舗の跡地での共同事業、系統用蓄電池事業への投資、老人ホームの開発など、新規事業への取り組みが進展しているが、さらなるスピード感をもって、同社の強みを生かせる新規事業の育成が必要であろう。短期間に新規事業を育成するためには、アライアンスやM&Aの活用も検討すべきであると弊社では考える。また、2026年2月期は中期経済計画の最終年度になることで、同社では次期中期経営計画の策定に入る予定だ。今後の金利上昇の可能性や高水準の建築コストも踏まえて、保守的な計画を策定すると予想される。
3. サステナビリティ
ガバナンスの強化として取締役会等の責務と人的資本投資を掲げる。具体的な取り組み方針として、取締役会等の責務では、実効性評価の実施による取締役会における議論の活性化、取締役の報酬制度の見直し(退職慰労金廃止・業績連動報酬導入)、スキルマトリクスに基づく取締役会の機能強化、取締役メンバーの多様性確保(事業分野、専門性、性別、独立性)などを目指す。人的資本投資では、人材の多様性確保に向けた女性管理職の登用・拡充、社員の成長に資する新評価制度の定着化や研修制度の拡充などを掲げている。また、サステナビリティでは、サステナビリティ基本方針の策定、環境性能への対応、古民家再生事業への取り組み、SmaGO(スマートごみ容器)の設置などを行った。
サステナビリティについては、持続的な企業価値向上に向けた対応として、サステナビリティ経営をより積極的に推進するため、新たにサステナビリティ基本方針を策定し、基本方針に基づき実現したい未来に向けて重点的に取り組む9つのマテリアリティ(重要課題)を特定した。2025年2月期からサステナビリティ経営を実施し、重要課題への取り組みにより、企業理念「共生(ともいき)」の実現を目指す方針だ。
さらにESGへの取り組みとして、「環境」においては、省エネ設備のZEHマンションの導入、系統用蓄電所の開設、スマートごみ容器「SmaGO」の設置などを実施している。「社会」では、住宅再建共済制度「フェニックス共済」への加入、令和6年能登半島地震災害義援金1,000万円の寄付、賃貸マンションへの非常食セットの設置、「こどもの居場所応援自動販売機」の設置、全国高等学校・中学校ゴルフ選手権春季大会への特別協賛をはじめとした青少年育成支援、古民家再生プロジェクト、企業版ふるさと納税などを行っている。「ガバナンス・人的資本」では、役員退職慰労金制度の廃止及び株式報酬制度の導入、指名委員会及び報酬委員会の設置、働きやすい職場環境づくりなどに取り組んでいる。
このように、同社では業績拡大を目指すだけでなく、ESGにも積極的に取り組んでいる。欧州投資家を中心に世界的に企業のESGへの取り組みを考慮した投資が拡大しており、わが国でも近年はESG投資が急拡大していることから、今後も同社の取り組みが注目される。
4. 利益配分方針
会社の継続性及び収益性を確保するため、既存事業及び新規事業への再投資を中心としつつ、株主還元策の拡充及びESG、SDGsの観点も含めて利益の配分方針を明確化している。具体的には、事業再投資の水準を50~70%とし、収益性、効率性及び市場動向の把握を通じ、成長性なども加味して既存事業への再投資を図る。配当性向の水準は20~30%とし、株主への適正な還元が求められるなか、30%の配当性向を目指す。サステナブル関連の水準は10~20%とし、新たな事業領域への投資も含めて環境面への対応、人的資本への投資に充当する。
同社では2022年2月期以降、配当性向の引き上げに向けて増配を続けている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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