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富士ソフト Research Memo(9):「企業価値向上委員会」で企業統治検証と経営財務戦略を検討
配信日時:2024/03/28 15:19
配信元:FISCO
*15:19JST 富士ソフト Research Memo(9):「企業価値向上委員会」で企業統治検証と経営財務戦略を検討
■中長期の成長戦略
2. 「企業価値向上委員会」の活動状況
富士ソフト<9749>は前中期経営計画を2022年2月に公表して以降、多くの投資家と建設的な対話を行ってきた。そして2022年8月、そこで得られた多角的な見識を活用しステークホルダーに対するさらなる価値向上を推進するために「企業価値向上委員会」を新たに設置し、取締役会主席者に加え外部アドバイザリーの参画を求めて課題別にワーキンググループ(WG)を開催して課題の検討を進めてきた。主な課題は、システム開発における収益力の強化、最適なグループ運営の検討、不動産の流動化といったものであるが、各課題は各WG内での検討後、委員会で検証された。その後特別委員会での蓋然性検証を経て取締役会で決議され、新中期経営計画として発表された。
3. 「中期経営計画 2028」を公表
同社は2024年2月、新たな中期経営計画として「中期経営計画 2028」を公表した。サブタイトルに「確実な成長と革新とさらなる飛躍への礎作り」、将来ビジョンに「IT×OT分野のシステム/ソフト&サービスを提供するリーディングカンパニー」となるべく、2024年12月期から2028年12月期までを成長継続と収益力重視による企業価値向上を目指す期間と位置付けている。具体的には、現状の課題として収益性面と資本効率面の2点を挙げ、それら課題に対する企業価値向上策を実施することで企業価値向上につなげるものとしている。計画値としては、2028年12月期において、売上高4,350億円、営業利益450億円、親会社株主に帰属する当期純利益320億円、ROE20.0%以上、1株当たり営業キャッシュフローを600円以上としている。
収益性面の課題には「既存事業の収益力強化」と「グループ一体的な施策によるさらなる成長と新事業分野・融合分野の開拓」である。前者はこれまで実施してきた成長サイクル(PDCA)に基づくオーガニック成長(内部資源の活用による成長)に加え、最重要KPIとして「一人当たり営業利益額」を設定し、ROE、EPS、1株当たりキャッシュ・フローといった数値を意識しながら顧客提供価値の向上や生産性の向上等を果たすことで一人当たり営業利益額300万円を目指す。具体的な推進方法としては、これまで培ってきた顧客への対応力や自社で擁する技術力やノウハウにさらに磨きをかけること、新たな技術力の獲得に積極的にチャレンジすることによって顧客への対応力を強化し、案件の大型化やプライム案件比率を高めることで達成を図ることとしている。後者はグループ会社各社が有する個々の強みを活かしたシナジーの発揮によって、グループ総合力によりオーガニック成長を加速させ、顧客ニーズの変化への対応力を高めること、及び主要業務分野の融合により、DX関連分野等、特に付加価値の高い新規事業を創出する方針だ。
新規事業創出は、DXソリューション分野をターゲットとしている。同社がこれまで培ってきたIT×OTノウハウを活かし、研究開発投資やプロダクト投資等によって顧客の高度な要望にも的確に応え、顧客との「協働・協創・協業」を図りながらともに成長していく姿をイメージしている。この方針を具体的に進めるため、「スマート工場」「スマート物流」「ロボットSI」「ローカル5G」「LLM」「働き方改革」「運用保守」「デジタル教育」「介護」の9テーマを選定して活動を開始した。
資本効率面の課題は、不動産流動化による資本効率の改善と、それによって得られた創出キャッシュによる成長戦略投資である。不動産流動化については、「企業価値向上委員会」内のWGで流動化優先度を4段階に分類の上、段階的に流動化を実施することとして計画を実行に移しているところだが、同社としてはキャピタルアロケーション(経営資源としての資金の配分方針)として、固定資産の流動化によって資本効率を改善しながら、それによって得られたキャッシュを成長戦略投資に充てるとしている。投資先としては研究開発、人財投資、新規事業創出のためのM&A投資などに充てる考えだ。
4. 企業価値向上策の検討状況
同社は2024年1月、「企業価値向上策の検討状況に関するお知らせ」のタイトルで、同社株式の非公開化に関する検討状況を公表した。前述の通り、同社では従来から企業価値向上策に関して専門委員会を設置してその検討を行っているが、併せて複数のPEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)から企業価値向上策に関する情報提供を受けている。また、同社株主である3D Investment Partners Pte. Ltd社の依頼に応じた複数のPEファンドから同社株式の非公開化に関する提案を受領している。同社としては経済産業省が公表した「企業買収における行動指針」に則り、取締役会の決議を経て本件に関する特別委員会を設置、非公開化の提案に対する回答への提言・勧告を求めることとしている。
現在の検討状況としては、上場会社としての企業価値最大化を前提として、自社における新中期経営計画の内容と併せ、特別委員会における議論や同社アドバイザーからの助言を踏まえつつ、受領した非公開化に関する提案内容と、新中期経営計画により実現が期待される企業価値向上策を比較検討することを通じて、同社の企業価値最大化のための経営上の選択肢の洗い出しを進めているところである。なお同社としては検討にあたり、株式の非公開化を所与のものとして検討するのではなく、各提案が同社の企業価値を向上させることが可能か否かを適切に判断する必要があるとしており、株式の非公開化ありきでの検討を進めているものではないとしている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 村瀬智一)
<SO>
2. 「企業価値向上委員会」の活動状況
富士ソフト<9749>は前中期経営計画を2022年2月に公表して以降、多くの投資家と建設的な対話を行ってきた。そして2022年8月、そこで得られた多角的な見識を活用しステークホルダーに対するさらなる価値向上を推進するために「企業価値向上委員会」を新たに設置し、取締役会主席者に加え外部アドバイザリーの参画を求めて課題別にワーキンググループ(WG)を開催して課題の検討を進めてきた。主な課題は、システム開発における収益力の強化、最適なグループ運営の検討、不動産の流動化といったものであるが、各課題は各WG内での検討後、委員会で検証された。その後特別委員会での蓋然性検証を経て取締役会で決議され、新中期経営計画として発表された。
3. 「中期経営計画 2028」を公表
同社は2024年2月、新たな中期経営計画として「中期経営計画 2028」を公表した。サブタイトルに「確実な成長と革新とさらなる飛躍への礎作り」、将来ビジョンに「IT×OT分野のシステム/ソフト&サービスを提供するリーディングカンパニー」となるべく、2024年12月期から2028年12月期までを成長継続と収益力重視による企業価値向上を目指す期間と位置付けている。具体的には、現状の課題として収益性面と資本効率面の2点を挙げ、それら課題に対する企業価値向上策を実施することで企業価値向上につなげるものとしている。計画値としては、2028年12月期において、売上高4,350億円、営業利益450億円、親会社株主に帰属する当期純利益320億円、ROE20.0%以上、1株当たり営業キャッシュフローを600円以上としている。
収益性面の課題には「既存事業の収益力強化」と「グループ一体的な施策によるさらなる成長と新事業分野・融合分野の開拓」である。前者はこれまで実施してきた成長サイクル(PDCA)に基づくオーガニック成長(内部資源の活用による成長)に加え、最重要KPIとして「一人当たり営業利益額」を設定し、ROE、EPS、1株当たりキャッシュ・フローといった数値を意識しながら顧客提供価値の向上や生産性の向上等を果たすことで一人当たり営業利益額300万円を目指す。具体的な推進方法としては、これまで培ってきた顧客への対応力や自社で擁する技術力やノウハウにさらに磨きをかけること、新たな技術力の獲得に積極的にチャレンジすることによって顧客への対応力を強化し、案件の大型化やプライム案件比率を高めることで達成を図ることとしている。後者はグループ会社各社が有する個々の強みを活かしたシナジーの発揮によって、グループ総合力によりオーガニック成長を加速させ、顧客ニーズの変化への対応力を高めること、及び主要業務分野の融合により、DX関連分野等、特に付加価値の高い新規事業を創出する方針だ。
新規事業創出は、DXソリューション分野をターゲットとしている。同社がこれまで培ってきたIT×OTノウハウを活かし、研究開発投資やプロダクト投資等によって顧客の高度な要望にも的確に応え、顧客との「協働・協創・協業」を図りながらともに成長していく姿をイメージしている。この方針を具体的に進めるため、「スマート工場」「スマート物流」「ロボットSI」「ローカル5G」「LLM」「働き方改革」「運用保守」「デジタル教育」「介護」の9テーマを選定して活動を開始した。
資本効率面の課題は、不動産流動化による資本効率の改善と、それによって得られた創出キャッシュによる成長戦略投資である。不動産流動化については、「企業価値向上委員会」内のWGで流動化優先度を4段階に分類の上、段階的に流動化を実施することとして計画を実行に移しているところだが、同社としてはキャピタルアロケーション(経営資源としての資金の配分方針)として、固定資産の流動化によって資本効率を改善しながら、それによって得られたキャッシュを成長戦略投資に充てるとしている。投資先としては研究開発、人財投資、新規事業創出のためのM&A投資などに充てる考えだ。
4. 企業価値向上策の検討状況
同社は2024年1月、「企業価値向上策の検討状況に関するお知らせ」のタイトルで、同社株式の非公開化に関する検討状況を公表した。前述の通り、同社では従来から企業価値向上策に関して専門委員会を設置してその検討を行っているが、併せて複数のPEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)から企業価値向上策に関する情報提供を受けている。また、同社株主である3D Investment Partners Pte. Ltd社の依頼に応じた複数のPEファンドから同社株式の非公開化に関する提案を受領している。同社としては経済産業省が公表した「企業買収における行動指針」に則り、取締役会の決議を経て本件に関する特別委員会を設置、非公開化の提案に対する回答への提言・勧告を求めることとしている。
現在の検討状況としては、上場会社としての企業価値最大化を前提として、自社における新中期経営計画の内容と併せ、特別委員会における議論や同社アドバイザーからの助言を踏まえつつ、受領した非公開化に関する提案内容と、新中期経営計画により実現が期待される企業価値向上策を比較検討することを通じて、同社の企業価値最大化のための経営上の選択肢の洗い出しを進めているところである。なお同社としては検討にあたり、株式の非公開化を所与のものとして検討するのではなく、各提案が同社の企業価値を向上させることが可能か否かを適切に判断する必要があるとしており、株式の非公開化ありきでの検討を進めているものではないとしている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 村瀬智一)
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