注目トピックス 日本株

エレマテック Research Memo(3):多数の商材・取引先を生かして安定成長、“高付加価値型ビジネス”に力点

配信日時:2021/12/14 15:13 配信元:FISCO
■会社概要

2. 特長と強み
エレマテック<2715>の特長としてまず挙げられるのは、多数の取引先と商材を抱える点だ。仕入先は約6,800社(メーカー)にのぼり、一方で約6,600社の販売先(ユーザー)に対して、電子材料や電子部品を中心とする広範囲で多様な商材の取引を行っている。個別の仕入先及び販売先は開示されていないが、主な販売先上位10社で売上高の45%(2021年3月期)を占める。このように仕入先や販売先、取扱商品が分散されているため、業績は特定の顧客や製品の動向に大きく左右されることが少なく、安定した成長の持続が可能となっている。

また多数の商材、顧客を抱えていることから機敏に新しい成長分野への展開を行えるのも同社の強みだろう。同社は現在、スマートフォンから自動車、完成品ビジネス等へ事業の軸足を移す過渡期にあたる。言うまでもなく、それぞれの市場の成長性の変化に対応したものだ。中国経済がいち早くコロナ禍の影響から脱却したことや、自動車生産が回復してきたことから足元の業績は堅調に推移している。事業環境と成長市場という2つの変動要因を巧みにコントロールし業績面で大きな谷間を作ることなく、変化の波を乗り切ろうとしていることに同社の本領が発揮されていると言えるだろう。

同社が提供しているのは、最適な部材の供給、信用供与・ファイナンス、納期・在庫の管理といったエレクトロニクス商社としてのベーシックなサービス・機能だけではない。企画開発・設計、製造サービスなど、より高度で付加価値の高いサービス・機能も提供している。同社は以下のような5つのサービス・機能を掲げているが、こうした機能があるからこそ、多様な商材をビジネスにつなげ、業績に落とし込むことができているということだ。

同社は今後、自社の有する特長・強みと、独立系技術商社としての機能・知見とを組み合わせ、「高付加価値型ビジネス」の取り組みを強化する方針だ。これまでは、成長市場への機敏な対応という「横展開」が収益成長の牽引力であったが、今後はこれに加えて、高付加価値型ビジネスという「縦展開」(深掘り)でさらなる成長を目指す方針だ。

3. 5つのサービス・機能
(1) 企画開発・設計:真のニーズにマッチした製品の企画開発・設計
顧客の購買部門だけでなく、設計・開発部門などとも深い関わりを持ち、真のニーズを掘り起こしている。ちょっとしたヒントからでもニーズを汲み取り、営業部門・開発部・技術部が一体となって検討を重ね、新しいパーツやユニットなどを企画開発・設計する。技術部では、機構及び電気回路設計などの専門家と、3D CAD・3Dプリンター・NC工作機械などの試作設備も保有している。これらリソースの活用に加え、長年培ってきたノウハウや最先端の専門知識をもとに、膨大な営業基盤を生かして、顧客のニーズにマッチした製品を提供する。

(2) 調達代行サービス:顧客が求める品質・コスト・納期に最適な部材の調達代行
多数の調達先管理、煩雑な発注・納期管理など、顧客の業務効率化とコスト低減を実現するため、同社が調達業務を代行する。長年培ってきたノウハウ・専門知識を駆使して、国内外問わず部材を調達し、品質管理や納期管理を徹底し、また、指定された部材の取り扱いだけでなく、世界中の多くの仕入先それぞれが持つ得意分野をしっかり把握したうえで、より適した調達先を選定し提案する。万が一の品質問題等の発生時にも、ワールドワイドで拠点を生かして迅速に対応する。

(3) 製造サービス:高品質な製造サービスを提供し、個別のカスタマイズにも対応
世界中の拠点ネットワークを通じて集められる、顧客の製品開発情報や最新技術情報をもとにして、顧客ごとに個別に企画開発・設計されたカスタマイズ品やモジュール品を製造するために、同社では国内1ヶ所(横浜)、海外2ヶ所(大連、無錫)に加工工場を設けている。また、自社工場ばかりでなく、優良な技術やコスト競争力を持った国内外の外部製造委託先とタッグを組んで、カスタマイズ品・モジュール品に加え、完成品(ODM)も提供することができる。「情報」「技術」「モノの作り方」を理解し、グローバルなサプライチェーンを構築している。

(4) 品質・環境マネジメント:高品質な製品の提供と高度な品質管理体制の確立
顧客からの高度な品質要求に応えるため、様々なサービスを提供している。顧客の監査要望書に基づき、成分分析などの環境対策や製品が基準を満たしているかを検査するのはもちろん、試作から量産に移行する際に、安定した量産が行えるかも確認している。また、万が一不良品が発生した場合には、顧客とともに不良品の識別、解析を迅速に行い、改善計画を立案して実施し、再発防止に取り組むなど、環境・品質保証部を中心にあらゆる面からサポートしている。

(5) 海外ネットワーク:ワールドワイドなネットワークを使って、スムーズなグローバル物流を実現する
グローバル化が進んだ今、日本を経由しない、いわゆる三国間ビジネスが拡大している一方で、世界的なビジネスの潮流も、「世界の工場」と呼ばれてきた中国から、ASEANを中心に生産移管が進むといった変化が起こっている。同社のワールドワイド・ネットワークはこうした流れにも対応できる。日本国内の拠点と海外現地法人ばかりでなく、海外現地法人同士が密な連携を図ることに加え、国内外を問わずいつも顧客の身近にいることで、時差も、言葉の壁も超えて、より迅速でスムーズなコミュニケーションや物流を実現している。

以上のように、同社は単なる部品商社ではなく様々なサービスや機能を有している。言い換えれば、上記の「5つのサービスや機能」を提供することで単純な商社機能に付加価値を加え、その結果として相対的に高い粗利率を維持している。今後も「5つのサービスや機能」をより活用していくことで、同社の粗利率はさらに向上していくはずだ。


商社に求められる機能をしっかりと発揮し、収益成長へとつなげてきた
4. 長期業績推移
同社の長期的な業績推移を振り返ると、浮沈の激しいエレクトロニクス業界に身を置きながら、経済サイクルや製品サイクルなどの波を乗り越えて安定成長を果たしてきたと言えるだろう。2000年代初めは携帯電話関連で伸びたが、その中身はFPC(プリント配線板)の部材や基板実装、光学フィルムなどが主要な商材だった。2010年前後は地デジ移行などもあって液晶テレビ関連の部材が大きなビジネスとなった。また、2010年以降はスマートフォンやタブレットが急成長商品として台頭し、同社はそこに各種フィルム類やガラス類などを販売してリーマンショックからの迅速な回復と、連続最高益の更新を達成した。ここ数年は今までのスマートフォン市場が成熟化したことで業績の踊り場を迎えた形となっているが、ここにきて同社にとって次の成長市場は自動車関連と海外顧客攻略に移行しつつある。仕入・販売の両側で多数の取引先と多様な商材を有する同社にとっては、一段と商機が拡大すると期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)


<ST>

Copyright(c) FISCO Ltd. All rights reserved.

ニュースカテゴリ