注目トピックス 市況・概況
国内株式市場見通し:日経平均3万円回復なるか、東エレクに注目
配信日時:2021/11/13 14:30
配信元:FISCO
■決定的な材料に欠け、週間でほぼ変わらず
今週の日経平均はほぼ往って来いの展開。結局週間で1.60円安の29609.97円となった。週前半と後半で動きが一変した。
週初は、米国での新型コロナウイルス感染症治療の飲み薬の開発進展や、議会下院が1兆ドル規模のインフラ法案を可決したことを追い風に、日経平均も上昇スタート。しかし、節目の3万円手前では売り圧力も強く、朝高後に失速し結局下落。
その後、債券の売り方の買い戻しが続くなか米10年国債利回りが一段と低下し、これが相場のサポート要因となった一方、対ドルでの円高進行が輸出関連株の重しとなり、日本株全体としては影響がニュートラルに。新規材料難のなか、アジア市況や時間外のNYダウ先物の下落に押される展開が続き、9日は大規模な自社株買いによるソフトバンクグループ<9984>の急伸もあったが、日経平均は221.59円安に、10日も178.68円安となり、29106.78円まで下げた。
一方、11日からは反発局面に。10日の米国市場では、10月消費者物価指数(CPI)が市場予想を大幅に上回る伸びを見せ、インフレや早期利上げへの懸念が再燃。米国債利回りが幅広い年限で急上昇するなかハイテク株中心に下落。こうした流れから、日経平均は29000円割れが警戒されたが、前日までの下落に伴う値ごろ感もあり、予想に反して朝安後は押し目買いから切り返す展開に、結局171.08円高と5日ぶりに反発。さらに、12日は、MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)指数構成銘柄見直しの発表やオプション11月物の特別清算指数(SQ)算出といったイベント通過に伴う需給懸念の後退が買いを誘い、332.11円高と大幅に続伸した。
■日本株高の独自材料が少ない
来週の日経平均はもみ合いか。決算発表が一巡し、足元の業績が完全に織り込み切れていない銘柄などへの断続的な物色が続きそうだ。
東京証券取引所が発表する投資主体別売買動向によると、11月第1週(1~5日)、海外投資家は日本株を、現物で3週ぶりに買い越した。しかし、買い越し金額は1300億円程と大きくない。また、今週は決算発表が終盤だったなか東証1部売買代金が減少傾向にあった。恐らく第2週も海外勢は大きくは買い越していないだろう。決算を受けても、海外勢の日本株への投資姿勢が積極的になっていないとなると、今後の日経平均のバブル崩壊後高値の更新は容易ではないと思われる。
一方、米国株は好調で主要株価3指数は史上最高値付近での推移が継続中。米株高を受けた投資家のリスク選好の強まりのほか、バリュエーションの割安感くらいしか、独自要因で日本株が上昇する材料が見当たらないのは気懸かりだ。
今週末の大幅高についても、想定外という感想を抱く関係者が多く、はっきりとした要因は分かっていない。MSCIリバランスやオプションSQといった需給イベントが同時に解消されたことによる短期的なあく抜け感が主体だとすれば、持続性には疑念が残る。
また、根強く残るインフレにも引き続き注意を払う必要がある。10日に発表された10月の米消費者物価指数(CPI)は総合だけでなく、変動の激しい食品・エネルギーを除いたコアでも、前月比で市場予想を大幅に上回る伸びとなり、インフレ加速への警戒から、改めて金融当局による早期利上げ懸念が強まった。指標結果を受けて幅広い年限の米国債利回りが急上昇し、米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)も2.70%と10月高値を上抜き、歴史的な高値更新となった。金融当局がいつ、政策スタンスの変更を迫られるかという懸念が今後もつきまとう。名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は足元マイナス1.1~1.2%と、昨年2月以降のコロナ相場におけるレンジボトム付近まで下がっている。実質金利の一段の低下は想定しにくく、今後は実質金利の上昇による相場調整も考えられよう。
そのほか、来週は経済指標が相次ぐ。中国や米国での10月鉱工業生産や小売売上高といった注目度の高いものから、米国では11月のニューヨーク連銀景気指数やフィラデルフィア連銀製造業景気指数などの景況感を示す指標も発表される。企業業績を受けて強気ムードが漂う米株市場が一段と上値を試す展開となるのか注目される。
■半導体関連企業の決算反応に注目
週末に発表された東京エレクトロン<8035>の7-9月期決算は引き続き好調で、通期計画は市場予想を超える水準にまで上方修正された。会社側からは顧客の設備投資計画が拡大傾向にあることや、需要鈍化が懸念されていたメモリーについても引き続き堅調に推移する見込みとの言及があった。さらに、週後半には米国でエヌビディアやアプライド・マテリアルズの半導体関連企業の決算が予定されている。指数寄与度の大きい半導体関連株が勢いづけば、相場全体の支援要因にもなろう。
■米中小売売上高・鉱工業生産、NY連銀景気指数など
来週は15日に7-9月期国内総生産(GDP)速報値、中国10月鉱工業生産、中国10月小売売上高、米11月ニューヨーク連銀景気指数、16日に米10月小売売上高、米10月鉱工業生産、17日に10月貿易収支、9月機械受注、米10月住宅着工件数、18日に米11月フィラデルフィア連銀製造業景気指数、19日に10月全国消費者物価指数などが予定されている。
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今週の日経平均はほぼ往って来いの展開。結局週間で1.60円安の29609.97円となった。週前半と後半で動きが一変した。
週初は、米国での新型コロナウイルス感染症治療の飲み薬の開発進展や、議会下院が1兆ドル規模のインフラ法案を可決したことを追い風に、日経平均も上昇スタート。しかし、節目の3万円手前では売り圧力も強く、朝高後に失速し結局下落。
その後、債券の売り方の買い戻しが続くなか米10年国債利回りが一段と低下し、これが相場のサポート要因となった一方、対ドルでの円高進行が輸出関連株の重しとなり、日本株全体としては影響がニュートラルに。新規材料難のなか、アジア市況や時間外のNYダウ先物の下落に押される展開が続き、9日は大規模な自社株買いによるソフトバンクグループ<9984>の急伸もあったが、日経平均は221.59円安に、10日も178.68円安となり、29106.78円まで下げた。
一方、11日からは反発局面に。10日の米国市場では、10月消費者物価指数(CPI)が市場予想を大幅に上回る伸びを見せ、インフレや早期利上げへの懸念が再燃。米国債利回りが幅広い年限で急上昇するなかハイテク株中心に下落。こうした流れから、日経平均は29000円割れが警戒されたが、前日までの下落に伴う値ごろ感もあり、予想に反して朝安後は押し目買いから切り返す展開に、結局171.08円高と5日ぶりに反発。さらに、12日は、MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)指数構成銘柄見直しの発表やオプション11月物の特別清算指数(SQ)算出といったイベント通過に伴う需給懸念の後退が買いを誘い、332.11円高と大幅に続伸した。
■日本株高の独自材料が少ない
来週の日経平均はもみ合いか。決算発表が一巡し、足元の業績が完全に織り込み切れていない銘柄などへの断続的な物色が続きそうだ。
東京証券取引所が発表する投資主体別売買動向によると、11月第1週(1~5日)、海外投資家は日本株を、現物で3週ぶりに買い越した。しかし、買い越し金額は1300億円程と大きくない。また、今週は決算発表が終盤だったなか東証1部売買代金が減少傾向にあった。恐らく第2週も海外勢は大きくは買い越していないだろう。決算を受けても、海外勢の日本株への投資姿勢が積極的になっていないとなると、今後の日経平均のバブル崩壊後高値の更新は容易ではないと思われる。
一方、米国株は好調で主要株価3指数は史上最高値付近での推移が継続中。米株高を受けた投資家のリスク選好の強まりのほか、バリュエーションの割安感くらいしか、独自要因で日本株が上昇する材料が見当たらないのは気懸かりだ。
今週末の大幅高についても、想定外という感想を抱く関係者が多く、はっきりとした要因は分かっていない。MSCIリバランスやオプションSQといった需給イベントが同時に解消されたことによる短期的なあく抜け感が主体だとすれば、持続性には疑念が残る。
また、根強く残るインフレにも引き続き注意を払う必要がある。10日に発表された10月の米消費者物価指数(CPI)は総合だけでなく、変動の激しい食品・エネルギーを除いたコアでも、前月比で市場予想を大幅に上回る伸びとなり、インフレ加速への警戒から、改めて金融当局による早期利上げ懸念が強まった。指標結果を受けて幅広い年限の米国債利回りが急上昇し、米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)も2.70%と10月高値を上抜き、歴史的な高値更新となった。金融当局がいつ、政策スタンスの変更を迫られるかという懸念が今後もつきまとう。名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は足元マイナス1.1~1.2%と、昨年2月以降のコロナ相場におけるレンジボトム付近まで下がっている。実質金利の一段の低下は想定しにくく、今後は実質金利の上昇による相場調整も考えられよう。
そのほか、来週は経済指標が相次ぐ。中国や米国での10月鉱工業生産や小売売上高といった注目度の高いものから、米国では11月のニューヨーク連銀景気指数やフィラデルフィア連銀製造業景気指数などの景況感を示す指標も発表される。企業業績を受けて強気ムードが漂う米株市場が一段と上値を試す展開となるのか注目される。
■半導体関連企業の決算反応に注目
週末に発表された東京エレクトロン<8035>の7-9月期決算は引き続き好調で、通期計画は市場予想を超える水準にまで上方修正された。会社側からは顧客の設備投資計画が拡大傾向にあることや、需要鈍化が懸念されていたメモリーについても引き続き堅調に推移する見込みとの言及があった。さらに、週後半には米国でエヌビディアやアプライド・マテリアルズの半導体関連企業の決算が予定されている。指数寄与度の大きい半導体関連株が勢いづけば、相場全体の支援要因にもなろう。
■米中小売売上高・鉱工業生産、NY連銀景気指数など
来週は15日に7-9月期国内総生産(GDP)速報値、中国10月鉱工業生産、中国10月小売売上高、米11月ニューヨーク連銀景気指数、16日に米10月小売売上高、米10月鉱工業生産、17日に10月貿易収支、9月機械受注、米10月住宅着工件数、18日に米11月フィラデルフィア連銀製造業景気指数、19日に10月全国消費者物価指数などが予定されている。
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