注目トピックス 市況・概況
国内株式市場見通し:下値不安後退も上値追い機運も高まらず
配信日時:2021/10/16 14:54
配信元:FISCO
■長期金利低下などを好感し29000円回復
今週の日経平均は4週ぶりに大幅反発。週間の上げ幅は1019.69円(+3.64%)となり、終値で29000円を回復した。
週初11日の日経平均は449.26円高と大幅続伸。9月米雇用統計での平均賃金の伸びを受けてインフレ懸念が強まり、米10年債利回りが1.6%台へと上昇していたものの、岸田首相が金融所得課税引き上げについて当面触ることは考えていないと発言したことが投資家心理を改善させた。また、中国政府の電力不足解消に向けた石炭確保の動きや、東南アジアでの新型コロナウイルス新規感染者数の減少などを背景に、供給網の混乱が緩和されるとの期待も投資家心理を向上させた。
しかし、週半ば12、13日の日経平均は267.59円安、90.33円安と軟調推移に。NY原油先物相場が7年ぶりとなる高値を記録するなど商品市況の上昇が続き、インフレ懸念がくすぶった。また、米金融大手の経済成長見通し引き下げに続き、国際通貨基金(IMF)が各国の経済成長率見通しを引き下げたことも売りを誘った。
ただ、週末にかけては再び騰勢を強める展開となり、14、15日の日経平均は410.65円高、517.70円高とそれぞれ大幅高。9月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想をやや上回った一方、変動の激しい食品・エネルギーを除いたコア指数は予想と一致。過度なインフレ懸念が後退するなか、30年物国債入札が好調だったこともあり、米長期金利が低下、ハイテク株の買いにつながった。また、国内では14日に衆議院が解散され、衆院選投開票日までは株高になりやすいアノマリーが意識されたことで、海外勢の買い戻しなども進んだもよう。
加えて、9月の米生産者物価指数(PPI)が市場予想を下回ったことで、週末にはインフレ懸念がさらに後退。米長期金利が一段と低下するなか、台湾積体電路製造(TSMC)の好決算も加わり、値がさハイテク株がけん引役となる形で日経平均は上値を伸ばした。日経平均が75日移動平均線に続き、200日線を上抜けたことで、テクニカル面で買い戻しが誘発されたとの指摘もあった。結局、日経平均は週間では3週ぶりに陽線を描き、13週、26週移動平均線を回復した。
■国内決算本格化を前に様子見ムード
来週の日経平均は一進一退か。インフレ懸念の後退や長期金利の上昇一服は引き続き相場の支えになろう。また、27000円台にあった日経平均が29000円を回復したこともあり、売り手の動きも細ってきそうだ。一方、国内では月末から7-9月期決算が本格化するほか、衆院選の投開票日も月末に控えることから、手掛かり材料難のなか様子見ムードが広がりそうだ。
米国の9月のCPIやPPIを受け、過度なインフレ懸念が後退したとの見方から、米長期金利は低下した。しかし、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)はこの間、2.52%へと一段と上昇。商品市況を背景としたインフレ懸念が後退したとはいえない。金利低下は、物価指標の発表を終えたことや国債入札が好調だったことを受け、債券の売り方がポジション調整で買い戻しを入れたことが主因と考えられる。
実際、NY原油先物価格などの上昇は続いている。さらに、今年はラニーニャ現象により日本や米国で厳冬となる確率が高いと指摘されており、冬季シーズンに向け、商品市況の高騰を受けたインフレ加速は一段と進む可能性が残されている。引き続きインフレを巡る思惑や金利動向には注意が必要だろう。
他方、岸田首相の金融所得課税引き上げを巡る発言などをきっかけに、政権に対する過度なネガティブ視は後退。衆院選投開票日までは株高になりやすいアノマリーも再び意識されているようで、海外勢の買い戻しも進んできている。与野党の支持率格差が開いていることで、衆院選後の政権基盤の安定に期待する向きもあり、日本株の下値不安は後退してきた様子。
ただ、岸田政権の掲げる政策については具体性が乏しいとの批判は根強い。歴史的な低水準にある政権支持率が、衆院選後も向上しなければ、来夏の参院選に向けた懸念も残り、政権基盤が安定するとはいえないだろう。選挙期間中の株高ラリーの継続にも強くは期待しにくい。
結局、外部環境や国政に関する不透明感は依然くすぶり、買い材料に乏しい。衆院選の結果判明や企業業績の確認が終わるまでは、相場はこう着感を強めそうだ。
■中国売上比率高い銘柄に注意
週初に中国で9月の鉱工業生産や小売売上高のほか、7-9月期の国内総生産(GDP)が発表される。不動産業の債務問題や電力不足の問題などを背景に、中国の景気減速が懸念されているだけに、注目度は高い。指標が大きく下振れるようだと、改めて中国リスクが意識され、中国での売上比率が高い銘柄には売り圧力となる可能性があるため、注意したい。
■中国9月小売売上高、米ベージュブックなど
来週は18日に9月首都圏マンション販売、中国7-9月期GDP、中国9月鉱工業生産、中国9月小売売上高、米9月鉱工業生産、19日に衆議院選挙公示、米9月住宅着工件数、20日に9月貿易収支、米地区連銀経済報告(ベージュブック)、21日に決算:ディスコ、米9月中古住宅販売、22日に9月全国消費者物価指数などが予定されている。
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今週の日経平均は4週ぶりに大幅反発。週間の上げ幅は1019.69円(+3.64%)となり、終値で29000円を回復した。
週初11日の日経平均は449.26円高と大幅続伸。9月米雇用統計での平均賃金の伸びを受けてインフレ懸念が強まり、米10年債利回りが1.6%台へと上昇していたものの、岸田首相が金融所得課税引き上げについて当面触ることは考えていないと発言したことが投資家心理を改善させた。また、中国政府の電力不足解消に向けた石炭確保の動きや、東南アジアでの新型コロナウイルス新規感染者数の減少などを背景に、供給網の混乱が緩和されるとの期待も投資家心理を向上させた。
しかし、週半ば12、13日の日経平均は267.59円安、90.33円安と軟調推移に。NY原油先物相場が7年ぶりとなる高値を記録するなど商品市況の上昇が続き、インフレ懸念がくすぶった。また、米金融大手の経済成長見通し引き下げに続き、国際通貨基金(IMF)が各国の経済成長率見通しを引き下げたことも売りを誘った。
ただ、週末にかけては再び騰勢を強める展開となり、14、15日の日経平均は410.65円高、517.70円高とそれぞれ大幅高。9月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想をやや上回った一方、変動の激しい食品・エネルギーを除いたコア指数は予想と一致。過度なインフレ懸念が後退するなか、30年物国債入札が好調だったこともあり、米長期金利が低下、ハイテク株の買いにつながった。また、国内では14日に衆議院が解散され、衆院選投開票日までは株高になりやすいアノマリーが意識されたことで、海外勢の買い戻しなども進んだもよう。
加えて、9月の米生産者物価指数(PPI)が市場予想を下回ったことで、週末にはインフレ懸念がさらに後退。米長期金利が一段と低下するなか、台湾積体電路製造(TSMC)の好決算も加わり、値がさハイテク株がけん引役となる形で日経平均は上値を伸ばした。日経平均が75日移動平均線に続き、200日線を上抜けたことで、テクニカル面で買い戻しが誘発されたとの指摘もあった。結局、日経平均は週間では3週ぶりに陽線を描き、13週、26週移動平均線を回復した。
■国内決算本格化を前に様子見ムード
来週の日経平均は一進一退か。インフレ懸念の後退や長期金利の上昇一服は引き続き相場の支えになろう。また、27000円台にあった日経平均が29000円を回復したこともあり、売り手の動きも細ってきそうだ。一方、国内では月末から7-9月期決算が本格化するほか、衆院選の投開票日も月末に控えることから、手掛かり材料難のなか様子見ムードが広がりそうだ。
米国の9月のCPIやPPIを受け、過度なインフレ懸念が後退したとの見方から、米長期金利は低下した。しかし、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)はこの間、2.52%へと一段と上昇。商品市況を背景としたインフレ懸念が後退したとはいえない。金利低下は、物価指標の発表を終えたことや国債入札が好調だったことを受け、債券の売り方がポジション調整で買い戻しを入れたことが主因と考えられる。
実際、NY原油先物価格などの上昇は続いている。さらに、今年はラニーニャ現象により日本や米国で厳冬となる確率が高いと指摘されており、冬季シーズンに向け、商品市況の高騰を受けたインフレ加速は一段と進む可能性が残されている。引き続きインフレを巡る思惑や金利動向には注意が必要だろう。
他方、岸田首相の金融所得課税引き上げを巡る発言などをきっかけに、政権に対する過度なネガティブ視は後退。衆院選投開票日までは株高になりやすいアノマリーも再び意識されているようで、海外勢の買い戻しも進んできている。与野党の支持率格差が開いていることで、衆院選後の政権基盤の安定に期待する向きもあり、日本株の下値不安は後退してきた様子。
ただ、岸田政権の掲げる政策については具体性が乏しいとの批判は根強い。歴史的な低水準にある政権支持率が、衆院選後も向上しなければ、来夏の参院選に向けた懸念も残り、政権基盤が安定するとはいえないだろう。選挙期間中の株高ラリーの継続にも強くは期待しにくい。
結局、外部環境や国政に関する不透明感は依然くすぶり、買い材料に乏しい。衆院選の結果判明や企業業績の確認が終わるまでは、相場はこう着感を強めそうだ。
■中国売上比率高い銘柄に注意
週初に中国で9月の鉱工業生産や小売売上高のほか、7-9月期の国内総生産(GDP)が発表される。不動産業の債務問題や電力不足の問題などを背景に、中国の景気減速が懸念されているだけに、注目度は高い。指標が大きく下振れるようだと、改めて中国リスクが意識され、中国での売上比率が高い銘柄には売り圧力となる可能性があるため、注意したい。
■中国9月小売売上高、米ベージュブックなど
来週は18日に9月首都圏マンション販売、中国7-9月期GDP、中国9月鉱工業生産、中国9月小売売上高、米9月鉱工業生産、19日に衆議院選挙公示、米9月住宅着工件数、20日に9月貿易収支、米地区連銀経済報告(ベージュブック)、21日に決算:ディスコ、米9月中古住宅販売、22日に9月全国消費者物価指数などが予定されている。
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