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RSテクノ Research Memo(3):再生ウェーハは精緻な検査・研磨技術による再生利用可能回数の多さが強み
配信日時:2021/10/13 16:03
配信元:FISCO
■会社概要
2. 再生ウェーハとプライムウェーハについて
RS Technologies<3445>が主力事業としているシリコンウェーハの再生加工事業及びプライムウェーハ事業における同社の強みや成長ポテンシャル等を理解するために、半導体製造プロセスやシリコンウェーハの役割、その製造方法等について以下に簡単に説明する。
(1) シリコンウェーハ
半導体とは電気を通す導体と電気を通さない絶縁体の中間の性質を持つ物質で、この性質を生かして高密度に電気回路を形成した集積回路(Integrated Circuit)が製造されている。PCの頭脳に当たるMPU(Micro-Processing Unit)や情報を記憶するためのメモリ(フラッシュメモリやDRAM)などが代表的な半導体で、家電製品や情報通信デバイス、自動車電装品など様々なアプリケーションに搭載されており、“産業のコメ”とも呼ばれている。
こうした半導体の基板には、求める性能に応じて様々な材料が使われており、なかでも幅広く使われているのがシリコンとなる。多結晶シリコンを溶融して純度の高い単結晶シリコンのインゴット(塊)を引き上げ、それを円盤状にスライスしたものを「シリコンウェーハ」※と呼ぶ。半導体メーカーはシリコンウェーハ上に微細な回路を形成し、半導体チップを製造する。
※12インチウェーハの1枚の厚さは775μm±25μmと決まっており、1本のインゴットから数百枚のシリコンウェーハが得られる。
シリコンウェーハは現在、サイズ別に直径5インチ(125mm)、6インチ(150mm)、8インチ(200mm)、12インチ(300mm)と複数サイズが量産化されている。高集積化(微細化)が求められる最先端の半導体は、12インチウェーハで量産されている。微細化とともに半導体設備投資額が増大するなか、1枚のシリコンウェーハからより多くの半導体チップを製造することで、1個当たりの製造コストを抑制することが可能となるためだ。ウェーハサイズの大口径化とともに、ウェーハの製造技術も難易度が上昇しており、参入障壁も高くなる傾向にある。
また、半導体製造ラインに投入されるシリコンウェーハは、すべて半導体チップの製造用として使われているわけではない。半導体はシリコンウェーハ上に微細な配線パターンを繰り返し形成していくことで完成するため、工程ごとに仕上がり状態をチェックするためのテストや評価を行いながら製造プロセスを進めている。こうしたテスト・評価用途のシリコンウェーハを「テストウェーハ」や「ダミーウェーハ」「モニタウェーハ」などと呼んでおり(以下、当レポートではこれらを総称して「モニタウェーハ」の用語で統一する)、再生ウェーハが利用されている。一方、実際に半導体チップに加工されるウェーハのことを一般的に「プライムウェーハ」と呼んでいる(同社の事業セグメント名では「プライムシリコンウェーハ」という呼称となっているが、同じ意味である)。
(2) 再生ウェーハ
モニタウェーハの使用量は、半導体製造ラインに投入される全ウェーハ量の約20%と見られている。モニタウェーハも新品のウェーハを投入することが基本ではある。しかし、半導体メーカーは少しでも半導体製造コストを下げるため、一度使用したモニタウェーハを同社のような再生加工業者で再生して再度利用している。再生ウェーハの価格は新品ウェーハの約25%と安いため、ウェーハの投入枚数が同じであれば、モニタウェーハに再生ウェーハを利用するだけでウェーハの投入コストが大幅に削減できることになる。
再生ウェーハの工程は、受入検査を行い、半導体の製造工程で形成された絶縁膜などをすべて除去したあと、クリーンルームにてウェーハ表面を平坦化するための研磨を行い、精密洗浄を行って出荷する流れとなる。同社の強みは、膜除去工程で化学的な加工によりすべての膜をはく離しウェーハ表面のダメージを最小限にとどめて精緻な研磨加工を行うことで、再生利用可能回数を20~30回と業界平均よりも約2倍に伸ばせる技術力を持つ点にある。12インチのプライムウェーハの厚さは約775μmで、モニタウェーハとして利用できるのは630μm程度までと言われている。このため、1回の再生処理で研磨する厚みが薄いほど再生利用可能回数が伸びることになる。例えば、1回の研磨で10μmを削ってしまえば同ウェーハの再生利用可能回数は14~15回にとどまるが、研磨を5μmに抑えることができれば30回近くまで利用が可能となる。そのほかの強みとしては、金属不純物の除去技術を持っていることが挙げられる。特に、銅(Cu)の除染除去については新品ウェーハと同様の清浄度で仕上げられる唯一のサプライヤーとして多くの半導体メーカーから認証を得ている。現状、銅(Cu)使用再生ウェーハの高清浄度が要求される工程への投入を行う需要はそれほど多くないが、今後、ウェーハ需給がひっ迫しコストが上昇するなどの環境変化があった場合に、需要が立ち上がる可能性はある。
(3) プライムウェーハ
プライムウェーハは新品ウェーハと同義となる。ウェーハの製造工程は、インゴットを引き上げるまでの前工程と、インゴットからウェーハを円盤状にスライスし研磨や表面処理を行う後工程からなる(両工程を行うメーカーを「一貫メーカー」と呼ぶ)。それぞれの工程で高い技術力が要求されるが、事業としての成否は特に、前工程での生産歩留まりにかかっている。生産歩留まりという概念は、単に時間当たりの引上本数を上げることにとどまらない。1本の単結晶からいかに多くのプライムウェーハに適した品質の良いウェーハを得ることができるかがより重要となる(同じ新品ウェーハでも、プライムウェーハとモニタウェーハとでは価格が大きく異なるため)。
プライムウェーハは中国の山東GRITEKで製造販売している。強みとしては、前述したように内資企業として様々な優遇制度を活用できること、半導体産業の育成は中国政府の国策となっており様々な施策の恩恵を享受できる可能性があることなどが挙げられる。技術面においては、後工程での研磨・洗浄工程においてウェーハ再生事業で長年培ってきた業界トップクラスの技術力が生かせる点にある。当面は中国内における半導体生産量の拡大に対応するだけで手一杯と見られるが、将来的には、製品の品質をグローバル基準まで引き上げ、同社の販売ネットワークを通じて全世界の半導体メーカーに販売していくことを目標としている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<EY>
2. 再生ウェーハとプライムウェーハについて
RS Technologies<3445>が主力事業としているシリコンウェーハの再生加工事業及びプライムウェーハ事業における同社の強みや成長ポテンシャル等を理解するために、半導体製造プロセスやシリコンウェーハの役割、その製造方法等について以下に簡単に説明する。
(1) シリコンウェーハ
半導体とは電気を通す導体と電気を通さない絶縁体の中間の性質を持つ物質で、この性質を生かして高密度に電気回路を形成した集積回路(Integrated Circuit)が製造されている。PCの頭脳に当たるMPU(Micro-Processing Unit)や情報を記憶するためのメモリ(フラッシュメモリやDRAM)などが代表的な半導体で、家電製品や情報通信デバイス、自動車電装品など様々なアプリケーションに搭載されており、“産業のコメ”とも呼ばれている。
こうした半導体の基板には、求める性能に応じて様々な材料が使われており、なかでも幅広く使われているのがシリコンとなる。多結晶シリコンを溶融して純度の高い単結晶シリコンのインゴット(塊)を引き上げ、それを円盤状にスライスしたものを「シリコンウェーハ」※と呼ぶ。半導体メーカーはシリコンウェーハ上に微細な回路を形成し、半導体チップを製造する。
※12インチウェーハの1枚の厚さは775μm±25μmと決まっており、1本のインゴットから数百枚のシリコンウェーハが得られる。
シリコンウェーハは現在、サイズ別に直径5インチ(125mm)、6インチ(150mm)、8インチ(200mm)、12インチ(300mm)と複数サイズが量産化されている。高集積化(微細化)が求められる最先端の半導体は、12インチウェーハで量産されている。微細化とともに半導体設備投資額が増大するなか、1枚のシリコンウェーハからより多くの半導体チップを製造することで、1個当たりの製造コストを抑制することが可能となるためだ。ウェーハサイズの大口径化とともに、ウェーハの製造技術も難易度が上昇しており、参入障壁も高くなる傾向にある。
また、半導体製造ラインに投入されるシリコンウェーハは、すべて半導体チップの製造用として使われているわけではない。半導体はシリコンウェーハ上に微細な配線パターンを繰り返し形成していくことで完成するため、工程ごとに仕上がり状態をチェックするためのテストや評価を行いながら製造プロセスを進めている。こうしたテスト・評価用途のシリコンウェーハを「テストウェーハ」や「ダミーウェーハ」「モニタウェーハ」などと呼んでおり(以下、当レポートではこれらを総称して「モニタウェーハ」の用語で統一する)、再生ウェーハが利用されている。一方、実際に半導体チップに加工されるウェーハのことを一般的に「プライムウェーハ」と呼んでいる(同社の事業セグメント名では「プライムシリコンウェーハ」という呼称となっているが、同じ意味である)。
(2) 再生ウェーハ
モニタウェーハの使用量は、半導体製造ラインに投入される全ウェーハ量の約20%と見られている。モニタウェーハも新品のウェーハを投入することが基本ではある。しかし、半導体メーカーは少しでも半導体製造コストを下げるため、一度使用したモニタウェーハを同社のような再生加工業者で再生して再度利用している。再生ウェーハの価格は新品ウェーハの約25%と安いため、ウェーハの投入枚数が同じであれば、モニタウェーハに再生ウェーハを利用するだけでウェーハの投入コストが大幅に削減できることになる。
再生ウェーハの工程は、受入検査を行い、半導体の製造工程で形成された絶縁膜などをすべて除去したあと、クリーンルームにてウェーハ表面を平坦化するための研磨を行い、精密洗浄を行って出荷する流れとなる。同社の強みは、膜除去工程で化学的な加工によりすべての膜をはく離しウェーハ表面のダメージを最小限にとどめて精緻な研磨加工を行うことで、再生利用可能回数を20~30回と業界平均よりも約2倍に伸ばせる技術力を持つ点にある。12インチのプライムウェーハの厚さは約775μmで、モニタウェーハとして利用できるのは630μm程度までと言われている。このため、1回の再生処理で研磨する厚みが薄いほど再生利用可能回数が伸びることになる。例えば、1回の研磨で10μmを削ってしまえば同ウェーハの再生利用可能回数は14~15回にとどまるが、研磨を5μmに抑えることができれば30回近くまで利用が可能となる。そのほかの強みとしては、金属不純物の除去技術を持っていることが挙げられる。特に、銅(Cu)の除染除去については新品ウェーハと同様の清浄度で仕上げられる唯一のサプライヤーとして多くの半導体メーカーから認証を得ている。現状、銅(Cu)使用再生ウェーハの高清浄度が要求される工程への投入を行う需要はそれほど多くないが、今後、ウェーハ需給がひっ迫しコストが上昇するなどの環境変化があった場合に、需要が立ち上がる可能性はある。
(3) プライムウェーハ
プライムウェーハは新品ウェーハと同義となる。ウェーハの製造工程は、インゴットを引き上げるまでの前工程と、インゴットからウェーハを円盤状にスライスし研磨や表面処理を行う後工程からなる(両工程を行うメーカーを「一貫メーカー」と呼ぶ)。それぞれの工程で高い技術力が要求されるが、事業としての成否は特に、前工程での生産歩留まりにかかっている。生産歩留まりという概念は、単に時間当たりの引上本数を上げることにとどまらない。1本の単結晶からいかに多くのプライムウェーハに適した品質の良いウェーハを得ることができるかがより重要となる(同じ新品ウェーハでも、プライムウェーハとモニタウェーハとでは価格が大きく異なるため)。
プライムウェーハは中国の山東GRITEKで製造販売している。強みとしては、前述したように内資企業として様々な優遇制度を活用できること、半導体産業の育成は中国政府の国策となっており様々な施策の恩恵を享受できる可能性があることなどが挙げられる。技術面においては、後工程での研磨・洗浄工程においてウェーハ再生事業で長年培ってきた業界トップクラスの技術力が生かせる点にある。当面は中国内における半導体生産量の拡大に対応するだけで手一杯と見られるが、将来的には、製品の品質をグローバル基準まで引き上げ、同社の販売ネットワークを通じて全世界の半導体メーカーに販売していくことを目標としている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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