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STIフードHD Research Memo(5):中間期は目標数量未達・減益だが、修正が進む
配信日時:2025/09/22 13:05
配信元:FISCO
*13:05JST STIフードHD Research Memo(5):中間期は目標数量未達・減益だが、修正が進む
■STIフードホールディングス<2932>の業績動向
1. 2025年12月期中間期の業績動向
2025年12月期中間期の業績は、売上高が18,395百万円(前年同期比10.2%増)、営業利益が1,400百万円(同6.1%減)、経常利益が1,416百万円(同5.2%減)、親会社株主に帰属する中間純利益が1,502百万円(同48.6%増)となった。子会社化により第2四半期から連結した浜信の業績(2025年4~6月の3ヶ月)は期初予想には織り込まれておらず、これを除いた既存事業である食品製造販売事業の前年同期比較は増収増益だが、調整額を考慮すると厳しい決算だったといえよう。ただし、原因究明はすでに済んでおり、現在では修正が進んでいる。なお、親会社株主に帰属する中間純利益が大幅な増益となったのは、特別利益に計上された負ののれん発生益(不動産時価評価益)が要因である。
日本経済は、インバウンド需要や雇用・所得環境改善の効果もあり、緩やかな回復基調で推移した。一方、幅広い分野における物価上昇の影響による実質賃金の減少が継続しており、個人消費においては節約志向が強まった。世界経済においては、米国の関税政策の転換、中国経済の停滞、国際紛争の長期化など、依然として先行き不透明な状況が続いた。食品業界では、円安などを背景とする原材料・資材価格の高止まりや人件費・水道光熱費の上昇により製造コストの増加が続くなか、多様化する消費者ニーズや節約志向に対応した商品企画が求められた。こうした環境下、同社は「持続可能な原材料・製造への取り組み」「フードロスの削減への取り組み」「環境への配慮」「原料調達から製造・販売まで一貫した垂直統合型の展開」「健康志向と魚文化を重視した中食への取り組み」を基本方針に掲げ、中長期的な企業価値向上と持続的な成長の実現に取り組むとともに、食品メーカーとして消費者と従業員の安全と安心のために安定した製造・供給を継続すべく、グループをあげて社会的に重要な使命の遂行に取り組んだ。
この結果、タイムパフォーマンス(調理時短)を重視する消費者ニーズを捉えた、簡便に再加熱調理ができる焼魚・煮魚やすぐに食べられるカップサラダ商品の販売個数が伸長、ホタルイカ等の新製品がヒットしたものの、同社が目標としていた数量には至らず、食品製造販売事業の売上高は1ケタ増にとどまった。なお、新規事業となるリテール事業では、百貨店やエキナカ店舗などでの店頭販売商品に加え、お中元や父の日など季節性ギフト商品の販売が堅調に推移、全体の売上高では2ケタ増を確保した。利益面では、前期に実施した値上げや今期新商品の効果はあったものの、売上数量の未達に加え、円安、鮭・タコといった水産物を中心とする原材料価格の高騰、関西新工場立ち上げ時の償却や一時的効率低下といった負担の影響などにより売上総利益率が低下した。一方、関西新工場の稼働によって物流効率を大きく改善することができたため、販管費は既存事業ベースで横ばいを維持することができた。リテール事業では、食品製造販売事業とのシナジー効果の発揮を目指して、原材料の共同購買や販路の拡大といった取り組みを実施した。この結果、営業利益は1ケタ減にとどめることができた。
不本意な業績への対応策に着手
2. 業績低迷の原因と対策
中間期決算における目標数量の未達と減益は、商品の価格と価値のバランスを欠いたこと、生産効率が低下したことが要因である。後者は、関西工場が稼働するまでは各工場でフル稼働だったため自然と効率がよくなっていたのだが、このため現場任せにもなっており、関西工場の稼働により生じた余裕がかえって一貫生産の不徹底など効率低下につながった。とはいえ、不徹底などを是正すれば一時的な影響にとどめることができるため、現在、一貫製造や効率化を徹底しているところである。一方、前者はより深刻といえる。原価高騰のなか前期に値上げしたものの値頃や採算を意識して重量を抑制したため、価格と価値のバランスを欠いたのである。特に重量やサイズ、魚格(魚種にあった価値)に関しては、消費者が同社に期待する重要感やサイズ感、質感があり、それがスーパーマーケットなどとの差別化要因にもなっていた。しかし、原材料高騰で小ぶりになった仕入れに対して規格を再設計した際に、従来の標準重量を下回る規格へと変更してしまった。結果的に、値上げと重量抑制を同じタイミングで行うことになり、価格と価値のバランスが崩れて一定数の消費者が離れてしまったのである。とはいえ、第1四半期に前年同期比20%近い増収だった売上高が、新規格が投入された第2四半期は1ケタ増収にとどまり、それも投入1週間で発覚するほど顕著な変化であったため、早期に気づくことができたことは不幸中の幸いであった(セブン-イレブンの情報システムのおかげでもある)。
このため同社は、基本商品の磨き上げこそが最重要課題だと考え、重量を戻すなど基本商品の規格見直しや開発体制の強化といった取り組みを第2四半期中には開始した。基本商品の磨き上げには、原材料を使い切る商品企画の追求や製造現場で実現可能な理論設計とその徹底が必要となるため、製造からではなく原材料調達からこだわる一貫製造へと進化させ、家やスーパーでは作れない焼魚・煮魚、調理の手間を省いた総菜を家庭に届けるという方針を、改めて徹底することになった。そのため、(1) 魚種ごとのグレードに見合った商品開発、(2) 製造能力の磨き上げ、(3) 新技術の知的財産化の3つの点でどこよりも品位を上げていく方針を再確認した。つまり、養殖や新魚種、海外調達によって調達を多様化し、魚種や魚格に合った価値を訴求するとともに、従来の単品開発から脱却して素材を様々に活用するポートフォリオ型の商品開発を推進することで、顧客ニーズに見合った価値を提供するのである。また、原材料からこだわった一貫製造、品位を安定させる良品製造の徹底、原材料の徹底活用によるフードロスの低減を進めるなど製造能力を磨き上げ、原材料の効率的使用や生産効率の向上を引き続き目指す。さらに、賞味期限延伸やコア技術の周辺展開など新技術の知的財産化による参入障壁化を進め、独自プラットフォームの構築も図る。
加えて、商品開発も根本から見直す方針で、各工場に分散していた開発拠点を本社(南青山)に集約する計画である。これにより、商品開発におけるノウハウの結集と統制の強化により組織力を向上し、あらゆる原材料を徹底的に分解して活用方法を深掘りし、家庭でのタイムパフォーマンスに寄与する新商品の開発、水産総菜とサラダの親和性を活かして「健康+時短+満足感」を具現化した健康志向商品の探求などを行う。また、得意とするデイリーとは違う視点でBtoBへの展開も図る。2,500円の高額弁当を販売する味の浜藤との間で、ブランドの活用や原材料の共同購買、新たな原材料の研究、新ジャンル商品の開発などグループシナジーも最大化する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)
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1. 2025年12月期中間期の業績動向
2025年12月期中間期の業績は、売上高が18,395百万円(前年同期比10.2%増)、営業利益が1,400百万円(同6.1%減)、経常利益が1,416百万円(同5.2%減)、親会社株主に帰属する中間純利益が1,502百万円(同48.6%増)となった。子会社化により第2四半期から連結した浜信の業績(2025年4~6月の3ヶ月)は期初予想には織り込まれておらず、これを除いた既存事業である食品製造販売事業の前年同期比較は増収増益だが、調整額を考慮すると厳しい決算だったといえよう。ただし、原因究明はすでに済んでおり、現在では修正が進んでいる。なお、親会社株主に帰属する中間純利益が大幅な増益となったのは、特別利益に計上された負ののれん発生益(不動産時価評価益)が要因である。
日本経済は、インバウンド需要や雇用・所得環境改善の効果もあり、緩やかな回復基調で推移した。一方、幅広い分野における物価上昇の影響による実質賃金の減少が継続しており、個人消費においては節約志向が強まった。世界経済においては、米国の関税政策の転換、中国経済の停滞、国際紛争の長期化など、依然として先行き不透明な状況が続いた。食品業界では、円安などを背景とする原材料・資材価格の高止まりや人件費・水道光熱費の上昇により製造コストの増加が続くなか、多様化する消費者ニーズや節約志向に対応した商品企画が求められた。こうした環境下、同社は「持続可能な原材料・製造への取り組み」「フードロスの削減への取り組み」「環境への配慮」「原料調達から製造・販売まで一貫した垂直統合型の展開」「健康志向と魚文化を重視した中食への取り組み」を基本方針に掲げ、中長期的な企業価値向上と持続的な成長の実現に取り組むとともに、食品メーカーとして消費者と従業員の安全と安心のために安定した製造・供給を継続すべく、グループをあげて社会的に重要な使命の遂行に取り組んだ。
この結果、タイムパフォーマンス(調理時短)を重視する消費者ニーズを捉えた、簡便に再加熱調理ができる焼魚・煮魚やすぐに食べられるカップサラダ商品の販売個数が伸長、ホタルイカ等の新製品がヒットしたものの、同社が目標としていた数量には至らず、食品製造販売事業の売上高は1ケタ増にとどまった。なお、新規事業となるリテール事業では、百貨店やエキナカ店舗などでの店頭販売商品に加え、お中元や父の日など季節性ギフト商品の販売が堅調に推移、全体の売上高では2ケタ増を確保した。利益面では、前期に実施した値上げや今期新商品の効果はあったものの、売上数量の未達に加え、円安、鮭・タコといった水産物を中心とする原材料価格の高騰、関西新工場立ち上げ時の償却や一時的効率低下といった負担の影響などにより売上総利益率が低下した。一方、関西新工場の稼働によって物流効率を大きく改善することができたため、販管費は既存事業ベースで横ばいを維持することができた。リテール事業では、食品製造販売事業とのシナジー効果の発揮を目指して、原材料の共同購買や販路の拡大といった取り組みを実施した。この結果、営業利益は1ケタ減にとどめることができた。
不本意な業績への対応策に着手
2. 業績低迷の原因と対策
中間期決算における目標数量の未達と減益は、商品の価格と価値のバランスを欠いたこと、生産効率が低下したことが要因である。後者は、関西工場が稼働するまでは各工場でフル稼働だったため自然と効率がよくなっていたのだが、このため現場任せにもなっており、関西工場の稼働により生じた余裕がかえって一貫生産の不徹底など効率低下につながった。とはいえ、不徹底などを是正すれば一時的な影響にとどめることができるため、現在、一貫製造や効率化を徹底しているところである。一方、前者はより深刻といえる。原価高騰のなか前期に値上げしたものの値頃や採算を意識して重量を抑制したため、価格と価値のバランスを欠いたのである。特に重量やサイズ、魚格(魚種にあった価値)に関しては、消費者が同社に期待する重要感やサイズ感、質感があり、それがスーパーマーケットなどとの差別化要因にもなっていた。しかし、原材料高騰で小ぶりになった仕入れに対して規格を再設計した際に、従来の標準重量を下回る規格へと変更してしまった。結果的に、値上げと重量抑制を同じタイミングで行うことになり、価格と価値のバランスが崩れて一定数の消費者が離れてしまったのである。とはいえ、第1四半期に前年同期比20%近い増収だった売上高が、新規格が投入された第2四半期は1ケタ増収にとどまり、それも投入1週間で発覚するほど顕著な変化であったため、早期に気づくことができたことは不幸中の幸いであった(セブン-イレブンの情報システムのおかげでもある)。
このため同社は、基本商品の磨き上げこそが最重要課題だと考え、重量を戻すなど基本商品の規格見直しや開発体制の強化といった取り組みを第2四半期中には開始した。基本商品の磨き上げには、原材料を使い切る商品企画の追求や製造現場で実現可能な理論設計とその徹底が必要となるため、製造からではなく原材料調達からこだわる一貫製造へと進化させ、家やスーパーでは作れない焼魚・煮魚、調理の手間を省いた総菜を家庭に届けるという方針を、改めて徹底することになった。そのため、(1) 魚種ごとのグレードに見合った商品開発、(2) 製造能力の磨き上げ、(3) 新技術の知的財産化の3つの点でどこよりも品位を上げていく方針を再確認した。つまり、養殖や新魚種、海外調達によって調達を多様化し、魚種や魚格に合った価値を訴求するとともに、従来の単品開発から脱却して素材を様々に活用するポートフォリオ型の商品開発を推進することで、顧客ニーズに見合った価値を提供するのである。また、原材料からこだわった一貫製造、品位を安定させる良品製造の徹底、原材料の徹底活用によるフードロスの低減を進めるなど製造能力を磨き上げ、原材料の効率的使用や生産効率の向上を引き続き目指す。さらに、賞味期限延伸やコア技術の周辺展開など新技術の知的財産化による参入障壁化を進め、独自プラットフォームの構築も図る。
加えて、商品開発も根本から見直す方針で、各工場に分散していた開発拠点を本社(南青山)に集約する計画である。これにより、商品開発におけるノウハウの結集と統制の強化により組織力を向上し、あらゆる原材料を徹底的に分解して活用方法を深掘りし、家庭でのタイムパフォーマンスに寄与する新商品の開発、水産総菜とサラダの親和性を活かして「健康+時短+満足感」を具現化した健康志向商品の探求などを行う。また、得意とするデイリーとは違う視点でBtoBへの展開も図る。2,500円の高額弁当を販売する味の浜藤との間で、ブランドの活用や原材料の共同購買、新たな原材料の研究、新ジャンル商品の開発などグループシナジーも最大化する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)
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