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レジル Research Memo(3):主力は高圧受変電によるマンション一括受電サービス。競合が少ない独自のポジション
配信日時:2025/09/16 12:03
配信元:FISCO
*12:03JST レジル Research Memo(3):主力は高圧受変電によるマンション一括受電サービス。競合が少ない独自のポジション
■レジル<176A>の事業内容
1. 事業概要
同社グループは同社のほか連結子会社2社(レジル電気保安、中央電力エナジー)で構成され、セグメントは分散型エネルギー事業、グリーンエネルギー事業、エネルギーDX事業の3つに分けられる。同社は新電力を展開する企業と混同されるが、主力は電力自由化以前より展開しているマンション一括受電サービス(分散型エネルギー事業)である。マンションで使用する電力を取りまとめて一括購入することで部屋ごとに個別に購入するよりも単価を抑えられるというサービスで、競合の少ない独自のポジションを築いている。グリーンエネルギー事業は、分散型エネルギー事業の仕入機能の強化も目的の1つに立ち上げられた事業である。一部では新電力企業と競合する電力小売も手掛けている。大半の新電力企業は新電力だけで事業を構成しているが、同社は展開する3事業が機能を補完し、シナジーを創出しているので、新電力企業にありがちなリスクは低減されている。2025年6月期の売上構成比(調整前)は分散型エネルギー事業52.7%、グリーンエネルギー事業43.4%、エネルギーDX事業3.9%となっている。
2. 分散型エネルギー事業
分散型エネルギー事業では、電力を調達して顧客マンションへ供給するマンション一括受電サービスを提供するほか、中央電力エナジーが電力調達の一部業務を、レジル電気保安が受変電設備の設置工事・保守・点検業務を行っている。またマンション顧客に対し、マンション一括受電サービスに付随して発生するマンション内にある同社が保有していない各種電気設備の改修工事や、ガスの小売販売・取次販売、また住宅設備等にかかる他社サービスの紹介などのサービスも提供している。ほかに、太陽光発電設備や蓄電池設備など分散型電源設備を提供するマンション防災サービスの提供を2023年4月に開始し、中長期視点で設備の集約・ネットワーク化を推進している。
マンション一括受電サービスは、本来であれば地域の電力会社がマンション内に設置する受変電設備を同社が設置し、マンション単位で商業ビル同様の高圧電力を調達する。これを、受変電設備によって一般家庭向けに低圧電力に変換し、マンション各世帯や共用部分などへ供給するサービスである。同社のサービスを利用しないマンションでは各世帯が低圧電力の電気料金を支払うのに対し、サービスを利用するマンションでは、高圧料金ベースの一括仕入れによって相対的に低額の電気料金で済むうえ、共用部分の電気料金も削減できる。近年指摘されている修繕積立金の不足に対し、電気料金の削減額を共用部分の修繕積立金に充当できる仕組みにもなっている。
既設マンションがメインターゲットのため、顧客マンションへのサービス導入にはマンション管理組合の総会決議に加え、全世帯によるサービス利用申込が必要となる。ただし、初期投資が不要で、大手電力会社と比べてマンション全体で5~10%程度料金が安くなるうえ、修繕積立金の一部に充当できるといったメリットを提示することで、導入のハードルを下げている。いったん導入すれば、同社で検針やメンテナンスも可能であるため、各戸の利用者は同社を電力会社と認識することが多いようだ。また、1棟当たり40戸以上※のマンションに対し800万円~1,000万円の設備機器を設置するため、導入に際しては10年または15年間の長期契約を締結することになる(期間終了後は1年から3年ごとの更新)。同社が設備を資産として保有するため顧客の初期投資が不要となる一方、設備の償却を含めて安い電気料金として回収する仕組みとなっている。このように入居者のメリットが大きいため、近年では新築マンションや賃貸マンション、他社からのリプレイスへと営業領域を拡大している。
※ 1棟当たり40戸が損益分岐点だが、マンション防災サービスのリリースによるターゲットの拡大により、直近では1棟当たり20戸程度でも損益を均衡できるようになったようだ。
料金設定などの経済合理性から解約実績はこれまで1棟のみで、サービス提供戸数を着実に伸ばしており、同社にとって長期かつ安定的な収益を確保するストックビジネスとなっている。電力の仕入れは、時価で市場調達するのが基本の新電力企業と異なり、同社は相対取引を基本に複数年契約でまとめて決めているため、電力会社に対しバーゲニング・パワーを発揮することができる。このため、マンションへのサービス導入までのリードタイムは長くなるが、いったん稼働を開始すれば初年度から利益を生み出し、キャッシュベースであれば4年~5年で投資回収できる収益構造となっている。なお、通電までのリードタイムは、他社の設備をそのまま使えるリプレイスが半年程度、既築マンションが約1年半、新築マンションは設計から入るため約3年となっている。対象のマンションは、毎年供給される新築マンションの約3割が電力会社系などの直接または間接的な請負になっており、残り約7割の新築マンションと、他社からのリプレイスを含めた既設マンションが同社のターゲットとなる。一方、環境問題に絡んで、グリーンエネルギーを意識した新築マンションが増えており、一括受電サービスに対するマンションディベロッパー側の意識も高まっているようだ。
マンション防災サービスは、太陽光発電や蓄電池などの分散型電源設備を設置することで停電時に電力供給を行うサービスである。同社が設備を保有して顧客から受領する電気料金でコストを回収する仕組みになっており、マンション一括受電サービスと併用できる高付加価値サービスとしての位置付けとなっている。蓄電池を使用するため電力料金の時差や地域差を平準化できるうえ、防災や環境といった付加価値を付け加えられるため、新築マンションや既築マンションのリプレイス向け営業の支援材料にもなっている。また、Scope3※への対応にもなるので、マンション販売業者や最近増えているREIT業者にとっても魅力的なプランになっている。
※ Scope3:温室効果ガス削減に関するサプライチェーン排出量のことで、Scope1(購入した製品・サービス)やScope2(資本財)に含まれない、自社の上流及び下流における排出量。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)
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1. 事業概要
同社グループは同社のほか連結子会社2社(レジル電気保安、中央電力エナジー)で構成され、セグメントは分散型エネルギー事業、グリーンエネルギー事業、エネルギーDX事業の3つに分けられる。同社は新電力を展開する企業と混同されるが、主力は電力自由化以前より展開しているマンション一括受電サービス(分散型エネルギー事業)である。マンションで使用する電力を取りまとめて一括購入することで部屋ごとに個別に購入するよりも単価を抑えられるというサービスで、競合の少ない独自のポジションを築いている。グリーンエネルギー事業は、分散型エネルギー事業の仕入機能の強化も目的の1つに立ち上げられた事業である。一部では新電力企業と競合する電力小売も手掛けている。大半の新電力企業は新電力だけで事業を構成しているが、同社は展開する3事業が機能を補完し、シナジーを創出しているので、新電力企業にありがちなリスクは低減されている。2025年6月期の売上構成比(調整前)は分散型エネルギー事業52.7%、グリーンエネルギー事業43.4%、エネルギーDX事業3.9%となっている。
2. 分散型エネルギー事業
分散型エネルギー事業では、電力を調達して顧客マンションへ供給するマンション一括受電サービスを提供するほか、中央電力エナジーが電力調達の一部業務を、レジル電気保安が受変電設備の設置工事・保守・点検業務を行っている。またマンション顧客に対し、マンション一括受電サービスに付随して発生するマンション内にある同社が保有していない各種電気設備の改修工事や、ガスの小売販売・取次販売、また住宅設備等にかかる他社サービスの紹介などのサービスも提供している。ほかに、太陽光発電設備や蓄電池設備など分散型電源設備を提供するマンション防災サービスの提供を2023年4月に開始し、中長期視点で設備の集約・ネットワーク化を推進している。
マンション一括受電サービスは、本来であれば地域の電力会社がマンション内に設置する受変電設備を同社が設置し、マンション単位で商業ビル同様の高圧電力を調達する。これを、受変電設備によって一般家庭向けに低圧電力に変換し、マンション各世帯や共用部分などへ供給するサービスである。同社のサービスを利用しないマンションでは各世帯が低圧電力の電気料金を支払うのに対し、サービスを利用するマンションでは、高圧料金ベースの一括仕入れによって相対的に低額の電気料金で済むうえ、共用部分の電気料金も削減できる。近年指摘されている修繕積立金の不足に対し、電気料金の削減額を共用部分の修繕積立金に充当できる仕組みにもなっている。
既設マンションがメインターゲットのため、顧客マンションへのサービス導入にはマンション管理組合の総会決議に加え、全世帯によるサービス利用申込が必要となる。ただし、初期投資が不要で、大手電力会社と比べてマンション全体で5~10%程度料金が安くなるうえ、修繕積立金の一部に充当できるといったメリットを提示することで、導入のハードルを下げている。いったん導入すれば、同社で検針やメンテナンスも可能であるため、各戸の利用者は同社を電力会社と認識することが多いようだ。また、1棟当たり40戸以上※のマンションに対し800万円~1,000万円の設備機器を設置するため、導入に際しては10年または15年間の長期契約を締結することになる(期間終了後は1年から3年ごとの更新)。同社が設備を資産として保有するため顧客の初期投資が不要となる一方、設備の償却を含めて安い電気料金として回収する仕組みとなっている。このように入居者のメリットが大きいため、近年では新築マンションや賃貸マンション、他社からのリプレイスへと営業領域を拡大している。
※ 1棟当たり40戸が損益分岐点だが、マンション防災サービスのリリースによるターゲットの拡大により、直近では1棟当たり20戸程度でも損益を均衡できるようになったようだ。
料金設定などの経済合理性から解約実績はこれまで1棟のみで、サービス提供戸数を着実に伸ばしており、同社にとって長期かつ安定的な収益を確保するストックビジネスとなっている。電力の仕入れは、時価で市場調達するのが基本の新電力企業と異なり、同社は相対取引を基本に複数年契約でまとめて決めているため、電力会社に対しバーゲニング・パワーを発揮することができる。このため、マンションへのサービス導入までのリードタイムは長くなるが、いったん稼働を開始すれば初年度から利益を生み出し、キャッシュベースであれば4年~5年で投資回収できる収益構造となっている。なお、通電までのリードタイムは、他社の設備をそのまま使えるリプレイスが半年程度、既築マンションが約1年半、新築マンションは設計から入るため約3年となっている。対象のマンションは、毎年供給される新築マンションの約3割が電力会社系などの直接または間接的な請負になっており、残り約7割の新築マンションと、他社からのリプレイスを含めた既設マンションが同社のターゲットとなる。一方、環境問題に絡んで、グリーンエネルギーを意識した新築マンションが増えており、一括受電サービスに対するマンションディベロッパー側の意識も高まっているようだ。
マンション防災サービスは、太陽光発電や蓄電池などの分散型電源設備を設置することで停電時に電力供給を行うサービスである。同社が設備を保有して顧客から受領する電気料金でコストを回収する仕組みになっており、マンション一括受電サービスと併用できる高付加価値サービスとしての位置付けとなっている。蓄電池を使用するため電力料金の時差や地域差を平準化できるうえ、防災や環境といった付加価値を付け加えられるため、新築マンションや既築マンションのリプレイス向け営業の支援材料にもなっている。また、Scope3※への対応にもなるので、マンション販売業者や最近増えているREIT業者にとっても魅力的なプランになっている。
※ Scope3:温室効果ガス削減に関するサプライチェーン排出量のことで、Scope1(購入した製品・サービス)やScope2(資本財)に含まれない、自社の上流及び下流における排出量。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)
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