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アーレスティ Research Memo(9):CO2削減・循環型社会ニーズに軽量化技術とグローバル生産力で貢献
配信日時:2025/07/09 16:19
配信元:FISCO
*16:19JST アーレスティ Research Memo(9):CO2削減・循環型社会ニーズに軽量化技術とグローバル生産力で貢献
■中長期の成長戦略
1. 「2040年ビジョン」と「10年ビジネスプラン」
アーレスティ<5852>は2038年に創業100周年を迎えるが、100年を超えてさらなる発展・成長する企業となるために「2040年ビジョン」を定めた。「軽量化で地球の未来に貢献する」「Ahrestyで良かった!を実現する」「技術探求を続け、唯一を生み出す」ことで「期待を超える2040」を目指す。また、ビジョンを実現するために、2022年度より2030年度までの長期経営計画「10年ビジネスプラン」を策定し、2030年度の具体的な目標を設定した。2030年度の売上高1,800億円、営業利益率6%※を目標に、収益構造改善(固定費削減)、収益確保(原価低減)、収益管理(投資効率等)の観点から稼ぐ力、財務体質を強化し、ROE9%、自己資本比率40%以上、配当性向を35%以上とする目標のほか、事業ポートフォリオシフトの目標として電動車搭載部品比率55%、車体系製品売上高40億円、カーボンニュートラルの目標としてCO2排出量50%削減(2013年度比)、顧客満足度強化の目標として主要顧客からの最上位評価獲得、ダイバーシティの目標として経営幹部の性別・国籍・職歴・年齢などの多様化、国内女性従業員比率20%以上、国内女性管理職比率10%以上、競争力強化のための技術基盤強化の目標として開発リードタイム短縮、先駆的革新技術の開発、カーボンニュートラルダイカストへの挑戦を掲げた。
※ 目標値の見直しについては後述する。
2. 25-27年度中期経営計画の概要
(a) 22-24年度中期経営計画の振り返り
同社では、「10年ビジネスプラン」の最初のマイルストーンとなる2224中計を終え、2025年5月に2527中計を公表した。2224中計では、「低コストで生産性の高いものづくりの確立」「CO2排出量削減活動の推進」「電動車向け部品中心の事業ポートフォリオへの着実なシフト」を戦略の柱に据え、売上高の確保、生産性の向上、稼ぐ力の強化に取り組んできた。2024年度の目標であった売上高1,700億円、営業利益率3.8%、ROA3.3%、ROE7.8%、自己資本比率42.8%など財務指標は達成できなかったが、日本、中国における生産体制の合理化、開発リードタイム短縮、リーンな生産体制の構築など生産性の向上は着実に進み、2224中計期間の稼ぐ力、収益性は大きく向上した。収益性を図る指標として、同社では時間当たり付加価値をKPIとして活動してきたが、コロナ禍前の2019年度を100とした指標では、22-24年度の3年間の平均で110を超え前中期経営計画と比較して大きく改善している。また、2024年度の新規受注部品の開発リードタイムを2021年度比で42%短縮した。ロボット動作プログラムの事前シミュレーションによる準備作業時間短縮、設計時の解析結果と実際の鋳造結果のCAE解析の精度向上による試作回数・評価工数削減、グローバルでの保有設備の使用状況の見える化による仕様決定にかかる工数削減、自動外観検査装置の開発によるヒューマンエラーや判定ばらつき抑制、検査員の人員確保・育成時間短縮などに取り組んだ成果が出た。中国ではBYD向けPHEVのエンジンブロックの受注決定から量産開始までを90日と過去最短での立ち上げを実現し、高い評価を得ている。リーンな生産体制の構築に向けても、生産工程間での無人搬送システム(AGV)、自動フォークリフト(AGF)の利用、ビッグデータやAIを活用した自動外観検査装置の導入などによる自動化・省人化も進めた。また、業務・技術の標準化により同一品質・同一生産性を確実なものにし、「ワンプリントマルチロケーション」の強みをさらに強化しているほか、グローバルで地域の受注変動に対応するために製品、生産設備の補完を進めた。日本、中国、メキシコから、労務費が高騰し慢性的な人手不足に陥っている米国への製品補完拡大、日系自動車の需要の低下により生産余力の生まれた中国からインドへの生産設備の移管、米国からメキシコへの金型移管などを実施した。加えて、品質面では、日系だけでなく中国資本系も含めた主要顧客から品質優秀賞、ベストパフォーマンス賞など品質に関わる多くの表彰を国内外の核拠点が受賞しており、受賞件数は前中計期間を上回り、グローバルで品質の高さが評価された。
電動車売上比率は2027年度で42%(2025年5月時点)と目標の45%に対してやや未達ではあるがおおむね目標どおり推移しており、受注も好調に推移している。メキシコでは欧米系Tier1向けE-Axleケースを2025年初めから量産しており、インド工場では日系Tier1向けE-Axleケースを2025年より量産予定であり、バッテリーケースも2024年9月より量産している。中国では中国資本系OEM/Tier1とのビジネスにおいても、同社の高い品質が評価され信頼を得られており、複数の顧客からPHEV用ブロックの受注が拡大している。カーボンニュートラルへの取り組みでは、2024年度において2013年度比で35%削減し、目標であった29%削減を上回った。
(b) 25-27年度中期経営計画の概要
2025年5月に公表した2527中計では、基本的には2224中計の注力項目を継承していくが、2項目をさらに強化し、1項目を新規項目として掲げる。強化する項目は、前中計で向上させた稼ぐ力とカーボンニュートラルへの取り組みだ。いずれも収益を十分に意識した取り組みとしていく方針だ。稼ぐ力をさらに強化するために「SMART(賢い、高効率、素早い、すばらしい)なものづくり」に注力し、従来とは異なる「収益が出るように工夫して良品を作る」ものづくりを構築する。生産数量増からロスコスト低減に着眼点を変更するとともに、品質ロスでも製品、工程によってもロスの金額が異なるため、どこの品質ロスから優先的に取り組むか収益目線で取り組んでいく。自動外観検査装置の導入拡大、可視化したデータ分析へのリソース移行により省人化・省力化をさらに進めていくとともに、生産性を高めても生産能力に空きがあっては意味がなく、どこの生産性を高めれば総付加価値を高められるかを考えていく。また、3Dデータを活用した人依存の見積業務の効率化、生産設備の仮想空間でのモデル化シミュレーションで生産状況の検証スビートアップ、新規ライン設置検討時の工程最適化の事前検証、既存量産ラインの改善を行うなど、DXの活用により業務を効率化し、総労働時間を下げていく。
カーボンニュートラルについても、収益をさらに意識した省エネ活動をさらに加速させる。太陽光発電は2024年度設置可能な国内全事業所への導入を完了し、各工場での溶解時のエネルギー源も重油からLNGへ、灯油から天然ガスへ、天然ガスから電気(将来のグリーン電力化を目指す)へと順次転換を進めている。中計では、各事業所で収益を意識して独自に取り組み目標を設定していく(塗布、エアブローなどの時間短縮による電気使用量削減、コンプレッサーの稼働時間見直しやエア漏れ改善などによる電気使用量削減、稼働率の低い鋳造機での生産を他の鋳造機に集約、溶解工程における不適合改善など再溶解重量の削減など)。また、人的資本については、2224中計から取り組んできたダイバーシティ、従業員エンゲージメントの強化の継続に加え、新規項目として、グローバルで活躍するものづくりの人財(スペシャリスト)の育成プログラムを強化することとした。2527中計では、新たにキャッチフレーズ「Reinvent Ahresty~未来に向けてアーレスティを再発明する~」を掲げ、信頼に応え「期待を超える」ための誠実なものづくりの「継承」と、収益が出るものづくりを「再構築」することを目指す。2027年度の数値目標は、売上高1,700億円、営業利益率3.5%(2024年度2.1%)、ROE7.0%(同-5.6%)、2030年度での電動車売上比率55%(同42%)、CO2排出量削減41%(同35%)とした。なお、2030年度目標値については、ROE9%を実現するためのバランスシート含めた水準を再度検討した結果、営業利益を従来の108億円から81億円、営業利益率を6%から4.5%に変更している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)
<HN>
1. 「2040年ビジョン」と「10年ビジネスプラン」
アーレスティ<5852>は2038年に創業100周年を迎えるが、100年を超えてさらなる発展・成長する企業となるために「2040年ビジョン」を定めた。「軽量化で地球の未来に貢献する」「Ahrestyで良かった!を実現する」「技術探求を続け、唯一を生み出す」ことで「期待を超える2040」を目指す。また、ビジョンを実現するために、2022年度より2030年度までの長期経営計画「10年ビジネスプラン」を策定し、2030年度の具体的な目標を設定した。2030年度の売上高1,800億円、営業利益率6%※を目標に、収益構造改善(固定費削減)、収益確保(原価低減)、収益管理(投資効率等)の観点から稼ぐ力、財務体質を強化し、ROE9%、自己資本比率40%以上、配当性向を35%以上とする目標のほか、事業ポートフォリオシフトの目標として電動車搭載部品比率55%、車体系製品売上高40億円、カーボンニュートラルの目標としてCO2排出量50%削減(2013年度比)、顧客満足度強化の目標として主要顧客からの最上位評価獲得、ダイバーシティの目標として経営幹部の性別・国籍・職歴・年齢などの多様化、国内女性従業員比率20%以上、国内女性管理職比率10%以上、競争力強化のための技術基盤強化の目標として開発リードタイム短縮、先駆的革新技術の開発、カーボンニュートラルダイカストへの挑戦を掲げた。
※ 目標値の見直しについては後述する。
2. 25-27年度中期経営計画の概要
(a) 22-24年度中期経営計画の振り返り
同社では、「10年ビジネスプラン」の最初のマイルストーンとなる2224中計を終え、2025年5月に2527中計を公表した。2224中計では、「低コストで生産性の高いものづくりの確立」「CO2排出量削減活動の推進」「電動車向け部品中心の事業ポートフォリオへの着実なシフト」を戦略の柱に据え、売上高の確保、生産性の向上、稼ぐ力の強化に取り組んできた。2024年度の目標であった売上高1,700億円、営業利益率3.8%、ROA3.3%、ROE7.8%、自己資本比率42.8%など財務指標は達成できなかったが、日本、中国における生産体制の合理化、開発リードタイム短縮、リーンな生産体制の構築など生産性の向上は着実に進み、2224中計期間の稼ぐ力、収益性は大きく向上した。収益性を図る指標として、同社では時間当たり付加価値をKPIとして活動してきたが、コロナ禍前の2019年度を100とした指標では、22-24年度の3年間の平均で110を超え前中期経営計画と比較して大きく改善している。また、2024年度の新規受注部品の開発リードタイムを2021年度比で42%短縮した。ロボット動作プログラムの事前シミュレーションによる準備作業時間短縮、設計時の解析結果と実際の鋳造結果のCAE解析の精度向上による試作回数・評価工数削減、グローバルでの保有設備の使用状況の見える化による仕様決定にかかる工数削減、自動外観検査装置の開発によるヒューマンエラーや判定ばらつき抑制、検査員の人員確保・育成時間短縮などに取り組んだ成果が出た。中国ではBYD向けPHEVのエンジンブロックの受注決定から量産開始までを90日と過去最短での立ち上げを実現し、高い評価を得ている。リーンな生産体制の構築に向けても、生産工程間での無人搬送システム(AGV)、自動フォークリフト(AGF)の利用、ビッグデータやAIを活用した自動外観検査装置の導入などによる自動化・省人化も進めた。また、業務・技術の標準化により同一品質・同一生産性を確実なものにし、「ワンプリントマルチロケーション」の強みをさらに強化しているほか、グローバルで地域の受注変動に対応するために製品、生産設備の補完を進めた。日本、中国、メキシコから、労務費が高騰し慢性的な人手不足に陥っている米国への製品補完拡大、日系自動車の需要の低下により生産余力の生まれた中国からインドへの生産設備の移管、米国からメキシコへの金型移管などを実施した。加えて、品質面では、日系だけでなく中国資本系も含めた主要顧客から品質優秀賞、ベストパフォーマンス賞など品質に関わる多くの表彰を国内外の核拠点が受賞しており、受賞件数は前中計期間を上回り、グローバルで品質の高さが評価された。
電動車売上比率は2027年度で42%(2025年5月時点)と目標の45%に対してやや未達ではあるがおおむね目標どおり推移しており、受注も好調に推移している。メキシコでは欧米系Tier1向けE-Axleケースを2025年初めから量産しており、インド工場では日系Tier1向けE-Axleケースを2025年より量産予定であり、バッテリーケースも2024年9月より量産している。中国では中国資本系OEM/Tier1とのビジネスにおいても、同社の高い品質が評価され信頼を得られており、複数の顧客からPHEV用ブロックの受注が拡大している。カーボンニュートラルへの取り組みでは、2024年度において2013年度比で35%削減し、目標であった29%削減を上回った。
(b) 25-27年度中期経営計画の概要
2025年5月に公表した2527中計では、基本的には2224中計の注力項目を継承していくが、2項目をさらに強化し、1項目を新規項目として掲げる。強化する項目は、前中計で向上させた稼ぐ力とカーボンニュートラルへの取り組みだ。いずれも収益を十分に意識した取り組みとしていく方針だ。稼ぐ力をさらに強化するために「SMART(賢い、高効率、素早い、すばらしい)なものづくり」に注力し、従来とは異なる「収益が出るように工夫して良品を作る」ものづくりを構築する。生産数量増からロスコスト低減に着眼点を変更するとともに、品質ロスでも製品、工程によってもロスの金額が異なるため、どこの品質ロスから優先的に取り組むか収益目線で取り組んでいく。自動外観検査装置の導入拡大、可視化したデータ分析へのリソース移行により省人化・省力化をさらに進めていくとともに、生産性を高めても生産能力に空きがあっては意味がなく、どこの生産性を高めれば総付加価値を高められるかを考えていく。また、3Dデータを活用した人依存の見積業務の効率化、生産設備の仮想空間でのモデル化シミュレーションで生産状況の検証スビートアップ、新規ライン設置検討時の工程最適化の事前検証、既存量産ラインの改善を行うなど、DXの活用により業務を効率化し、総労働時間を下げていく。
カーボンニュートラルについても、収益をさらに意識した省エネ活動をさらに加速させる。太陽光発電は2024年度設置可能な国内全事業所への導入を完了し、各工場での溶解時のエネルギー源も重油からLNGへ、灯油から天然ガスへ、天然ガスから電気(将来のグリーン電力化を目指す)へと順次転換を進めている。中計では、各事業所で収益を意識して独自に取り組み目標を設定していく(塗布、エアブローなどの時間短縮による電気使用量削減、コンプレッサーの稼働時間見直しやエア漏れ改善などによる電気使用量削減、稼働率の低い鋳造機での生産を他の鋳造機に集約、溶解工程における不適合改善など再溶解重量の削減など)。また、人的資本については、2224中計から取り組んできたダイバーシティ、従業員エンゲージメントの強化の継続に加え、新規項目として、グローバルで活躍するものづくりの人財(スペシャリスト)の育成プログラムを強化することとした。2527中計では、新たにキャッチフレーズ「Reinvent Ahresty~未来に向けてアーレスティを再発明する~」を掲げ、信頼に応え「期待を超える」ための誠実なものづくりの「継承」と、収益が出るものづくりを「再構築」することを目指す。2027年度の数値目標は、売上高1,700億円、営業利益率3.5%(2024年度2.1%)、ROE7.0%(同-5.6%)、2030年度での電動車売上比率55%(同42%)、CO2排出量削減41%(同35%)とした。なお、2030年度目標値については、ROE9%を実現するためのバランスシート含めた水準を再度検討した結果、営業利益を従来の108億円から81億円、営業利益率を6%から4.5%に変更している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)
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