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日産東HD Research Memo(5):減益とはいえ、営業利益は過去2番目の実績と堅調
配信日時:2025/07/02 15:05
配信元:FISCO
*15:05JST 日産東HD Research Memo(5):減益とはいえ、営業利益は過去2番目の実績と堅調
■業績動向
1. 2025年3月期の業績動向
日産東京販売ホールディングス<8291>の2025年3月期の業績は、売上高が141,605百万円(前期比4.9%減)、営業利益が7,412百万円(同14.9%減)、経常利益が7,367百万円(同11.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益が4,312百万円(同41.2%減)となった。前期が好調だったこともあって減収減益となったが、営業利益と経常利益については前期に次ぐ過去2番目の高い実績となった。期初予想と比べると、売上高で8,395百万円の未達、営業利益で88百万円の未達、経常利益で367百万円の過達、親会社株主に帰属する当期純利益で188百万円の未達となったが、堅調な水準を維持したと言うことができる。なお、事業セグメントは、2023年10月に情報システム関連事業を担っていた連結子会社TCSの全株式譲渡により、自動車関連事業の単一セグメントとなったため、当期よりセグメント情報の記載を省略している。また、前期に株式譲渡による関係会社株式売却益を特別利益に計上した反動で、親会社株主に帰属する当期純利益が大幅減益となった。
売上高については、中古車販売が販売単価の上昇、整備事業が堅調な入庫により増収となったが、新型車が端境期となったうえ、前期上期に納車が集中した反動などにより減収となった新車販売をカバーできなかった。利益面では、中古車販売や整備事業が堅調だったことでポートフォリオが改善して売上総利益率が向上した。一方で、賃上げや店舗ネットワークの刷新による費用増に対し、人員コントロールなどによる販管費全般の削減を行ったが、営業利益は減益となった。期初予想との比較で売上高が未達になったのは、新車が端境期となったことで新車販売台数が想定ほどに伸びなかったことが要因で、一方、営業利益が少額の未達にとどまったのは、販管費を抑制できたこと、中古車販売と整備事業が堅調だったことが要因である。
35万件の顧客基盤と複数の事業によるバランスの良い収益構造に支えられ、中期経営計画で掲げるモビリティのワンストップサービスやカーライフといった戦略は順調で、過去2番目の高い利益を達成することができた。なお、同社に新車を供給する日産自動車の経営が、2024年秋以降不安定化していることが懸念されている。しかし、同社の販売力は健在で、新型車が端境期のなかでも一定水準の販売台数を維持できていることから、現時点で同社の販売競争力が落ちているということはない。また、2026年3月期は想定どおり新型車が投入される見込みであること、これまでコロナ禍の供給遅れなど厳しい時期にも対応できたことを考えると、2026年3月期及び2027年3月期ともに大きな影響は生じないと考えられる。ただし、問題が長期化した場合には、新車開発面やブランドイメージ面で不透明感が生じるかもしれない。
個人リース、中古車販売、整備事業が堅調に推移
2. 事業別の売上動向
事業別の売上高は、新車販売の伸び悩みとそれに伴う手数料収入等の減少を、個人リースや中古車販売、整備事業でカバーする形となった。
(1) 新車事業
新車登録台数については、全国で前期比1.0%増、同社が地盤とする東京都内で同0.3%増と微増傾向となったが、同社は同9.0%減であった。これは、EV補助金の関係から前期上期にEVの登録が一時的に集中したこと、2023年3月期に新車販売を押し上げた新型車「サクラ」が一巡したこと、新型車が端境期となったことが要因である。マイナーチェンジ車も少なかった模様である。ただし、EVの販売台数が減ったとはいえ、e-POWER車を中心に新車販売台数は24千台前後という通常水準を維持したことに加えて提案型営業の深化によりe-POWER車の「セレナ」や「ノート」のなかでも高額車を中心に販売できたため、販売単価と利益は高水準を持続することができたようだ。また、近年のEVに対する世界的なネガティブキャンペーンに関しては、欧米における補助金削減や一定国での高シェアに原因があるため、EVシェアが2%前後と低い日本には当てはまらない。むしろ国内でもEV補助金が手厚い東京を同社が地盤としていること、EVに消極的と言われたトヨタ自動車の本格参入で市場の活性化が期待できることなどを考えると、市場環境は良好といえる。
(2) 個人リース
収益性の高い新車個人リース「P.O.P」の販売が前期比1.3%増と堅調に伸長し、引き続き安定した顧客基盤を構築することができた。これは、新型車の投入がなかったにも関わらず、消費者の間でカーリースへの認知が広がったこと、ベストプラクティスの浸透で新車販売時にリースを推奨するなど全員が提案営業できる体制になってきたことが要因だと思われる。近年、新車個人リースは同業や異業種の参入が相次いでおり、ここ7~8年は2ケタ成長するなど市場が拡大している。しかし、カーリースの契約では残価や残存期間など制度や仕組みの説明にEVと同様の高い説明スキルが必要で、会社によってはそれがハードルになる場合が多い。同社は約30年間積極的に個人リースを展開してきた経験が大きな強みとなっており、トップシェアにもつながっている。なお、個人リースの契約は基本的に5年だが、実際には3年で乗り換える顧客が多く、大きく増えた前々期の乗り換えが来期には始まる見込みである。
(3) 中古車事業
中古車販売においては流通市場全体で在庫が不足気味となるなか、販売単価が上昇し高採算の小売販売が増加したことが粗利確保と販売効率向上につながり、過去最高益となった模様である。同社の中古車は、日産自動車のサイトを通じて販売されることが多かったが、現在では、ベストプラクティスの効果や、高年式で良質な中古車が揃っていることが一般の中古車購入希望者に好評で、同社の中古車販売店で直接消費者に販売することが多くなっているようだ。また、中古車個人リースは、ニーズが多様化するなか前期比倍増ペースで増えており、将来のリピート顧客への期待も高まっている。
(4) 整備事業
整備事業では13万件超のメンテナンスパック会員という安定したストック基盤に支えられて、引き続きメンテナンス需要を着実に取り込んだ。なかでも「車検館」は、入庫予定のデジタル化を進めるなど仕組み面で利便性を向上したうえ、新たに1店舗を出店するなどリピート顧客の確保と新規顧客の獲得に取り組んだ結果、3期連続で最高益を更新した。また、同社がこのような「車検館」のノウハウを取り込むことで、ストック基盤のさらなる活用を図ることができている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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1. 2025年3月期の業績動向
日産東京販売ホールディングス<8291>の2025年3月期の業績は、売上高が141,605百万円(前期比4.9%減)、営業利益が7,412百万円(同14.9%減)、経常利益が7,367百万円(同11.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益が4,312百万円(同41.2%減)となった。前期が好調だったこともあって減収減益となったが、営業利益と経常利益については前期に次ぐ過去2番目の高い実績となった。期初予想と比べると、売上高で8,395百万円の未達、営業利益で88百万円の未達、経常利益で367百万円の過達、親会社株主に帰属する当期純利益で188百万円の未達となったが、堅調な水準を維持したと言うことができる。なお、事業セグメントは、2023年10月に情報システム関連事業を担っていた連結子会社TCSの全株式譲渡により、自動車関連事業の単一セグメントとなったため、当期よりセグメント情報の記載を省略している。また、前期に株式譲渡による関係会社株式売却益を特別利益に計上した反動で、親会社株主に帰属する当期純利益が大幅減益となった。
売上高については、中古車販売が販売単価の上昇、整備事業が堅調な入庫により増収となったが、新型車が端境期となったうえ、前期上期に納車が集中した反動などにより減収となった新車販売をカバーできなかった。利益面では、中古車販売や整備事業が堅調だったことでポートフォリオが改善して売上総利益率が向上した。一方で、賃上げや店舗ネットワークの刷新による費用増に対し、人員コントロールなどによる販管費全般の削減を行ったが、営業利益は減益となった。期初予想との比較で売上高が未達になったのは、新車が端境期となったことで新車販売台数が想定ほどに伸びなかったことが要因で、一方、営業利益が少額の未達にとどまったのは、販管費を抑制できたこと、中古車販売と整備事業が堅調だったことが要因である。
35万件の顧客基盤と複数の事業によるバランスの良い収益構造に支えられ、中期経営計画で掲げるモビリティのワンストップサービスやカーライフといった戦略は順調で、過去2番目の高い利益を達成することができた。なお、同社に新車を供給する日産自動車の経営が、2024年秋以降不安定化していることが懸念されている。しかし、同社の販売力は健在で、新型車が端境期のなかでも一定水準の販売台数を維持できていることから、現時点で同社の販売競争力が落ちているということはない。また、2026年3月期は想定どおり新型車が投入される見込みであること、これまでコロナ禍の供給遅れなど厳しい時期にも対応できたことを考えると、2026年3月期及び2027年3月期ともに大きな影響は生じないと考えられる。ただし、問題が長期化した場合には、新車開発面やブランドイメージ面で不透明感が生じるかもしれない。
個人リース、中古車販売、整備事業が堅調に推移
2. 事業別の売上動向
事業別の売上高は、新車販売の伸び悩みとそれに伴う手数料収入等の減少を、個人リースや中古車販売、整備事業でカバーする形となった。
(1) 新車事業
新車登録台数については、全国で前期比1.0%増、同社が地盤とする東京都内で同0.3%増と微増傾向となったが、同社は同9.0%減であった。これは、EV補助金の関係から前期上期にEVの登録が一時的に集中したこと、2023年3月期に新車販売を押し上げた新型車「サクラ」が一巡したこと、新型車が端境期となったことが要因である。マイナーチェンジ車も少なかった模様である。ただし、EVの販売台数が減ったとはいえ、e-POWER車を中心に新車販売台数は24千台前後という通常水準を維持したことに加えて提案型営業の深化によりe-POWER車の「セレナ」や「ノート」のなかでも高額車を中心に販売できたため、販売単価と利益は高水準を持続することができたようだ。また、近年のEVに対する世界的なネガティブキャンペーンに関しては、欧米における補助金削減や一定国での高シェアに原因があるため、EVシェアが2%前後と低い日本には当てはまらない。むしろ国内でもEV補助金が手厚い東京を同社が地盤としていること、EVに消極的と言われたトヨタ自動車の本格参入で市場の活性化が期待できることなどを考えると、市場環境は良好といえる。
(2) 個人リース
収益性の高い新車個人リース「P.O.P」の販売が前期比1.3%増と堅調に伸長し、引き続き安定した顧客基盤を構築することができた。これは、新型車の投入がなかったにも関わらず、消費者の間でカーリースへの認知が広がったこと、ベストプラクティスの浸透で新車販売時にリースを推奨するなど全員が提案営業できる体制になってきたことが要因だと思われる。近年、新車個人リースは同業や異業種の参入が相次いでおり、ここ7~8年は2ケタ成長するなど市場が拡大している。しかし、カーリースの契約では残価や残存期間など制度や仕組みの説明にEVと同様の高い説明スキルが必要で、会社によってはそれがハードルになる場合が多い。同社は約30年間積極的に個人リースを展開してきた経験が大きな強みとなっており、トップシェアにもつながっている。なお、個人リースの契約は基本的に5年だが、実際には3年で乗り換える顧客が多く、大きく増えた前々期の乗り換えが来期には始まる見込みである。
(3) 中古車事業
中古車販売においては流通市場全体で在庫が不足気味となるなか、販売単価が上昇し高採算の小売販売が増加したことが粗利確保と販売効率向上につながり、過去最高益となった模様である。同社の中古車は、日産自動車のサイトを通じて販売されることが多かったが、現在では、ベストプラクティスの効果や、高年式で良質な中古車が揃っていることが一般の中古車購入希望者に好評で、同社の中古車販売店で直接消費者に販売することが多くなっているようだ。また、中古車個人リースは、ニーズが多様化するなか前期比倍増ペースで増えており、将来のリピート顧客への期待も高まっている。
(4) 整備事業
整備事業では13万件超のメンテナンスパック会員という安定したストック基盤に支えられて、引き続きメンテナンス需要を着実に取り込んだ。なかでも「車検館」は、入庫予定のデジタル化を進めるなど仕組み面で利便性を向上したうえ、新たに1店舗を出店するなどリピート顧客の確保と新規顧客の獲得に取り組んだ結果、3期連続で最高益を更新した。また、同社がこのような「車検館」のノウハウを取り込むことで、ストック基盤のさらなる活用を図ることができている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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