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三洋化成 Research Memo(7):ブルーオーシャン戦略で新製品開発・新規事業創出に注力
配信日時:2024/12/27 12:07
配信元:FISCO
*12:07JST 三洋化成 Research Memo(7):ブルーオーシャン戦略で新製品開発・新規事業創出に注力
■成長戦略
2. 新製品開発・新規事業創出
三洋化成工業<4471>の中期成長に向けた戦略としては、事業を通じて持続可能な経済成長と社会的課題の解決に貢献するスペシャリティ・ケミカル企業として、独自技術やアライアンスを活用し、ブルーオーシャン戦略で、遺伝子組み換え技術によって作製された機能性タンパク質「シルクエラスチン(R)」、外科用止血材、アグリ・ニュートリション、匂いセンサーなどの新製品開発・新規事業創出を推進している。
(1) バイオ・メディカル事業分野
バイオ・メディカル事業分野についてはQOL向上の実現に向けた事業拡大を進めている。生体組織の修復・再生促進の足場として高い可能性のある新規治療材料「シルクエラスチン(R)」については、創傷治癒用途で京都大学大学院医学研究科形成外科学講座の森本尚樹教授らと共同開発を進め、2024年7月に製造販売承認申請を行った。そして2024年10月に科研製薬と、新規の創傷治療材料「シルクエラスチン(R)創傷用シート」の日本国内における独占的販売権に関するライセンス契約を締結した。これにより、科研製薬より契約一時金のほか、売上に対する一定のロイヤルティを受け取る。市場規模としては国内90億円、米国900億円が見込まれている。「シルクエラスチン(R)」は創傷治癒用途のほか、半月板再生材用途(広島大学病院で医師主導治験を完了、市場規模は国内120億円、米国1,270億円の見込み)や、肺リーク塞栓材用途(非臨床試験段階、市場規模は国内14億円、米国250億円の見込み)での開発が進んでおり、2030年に日米で営業利益60億円創出を目指している。
外科用止血材「Hydrofit(R)」は、水と反応して柔軟な皮膜をつくるウレタン素材の外科手術用止血材である。胸部大動脈や弓部分岐動脈の人工血管への置換手術の際の吻合部に使用される。同社が製造し、テルモ<4543>に販売委託している。2014年2月に同社初の医療機器として国内で発売開始、2019年7月にCEマーキングを取得して欧州市場への展開を開始、2020年3月に脳血管を除く血管全体吻合部の止血材へ適応拡大した。2021年7月には香港での発売を開始したほか、台湾でも医療機器の薬事承認を取得して同年12月に臨床使用を開始した。
2022年6月には富士フイルム(株)と共同で富士フイルム三洋化成ヘルスケア(株)を設立し、同年10月に富士フイルム和光純薬(株)の自動化学発光酵素免疫分析装置「Accuraseed(R)(アキュラシード)」の専用試薬として使用される体外診断用医薬品の製造を開始した。これに伴い富士フイルム三洋化成ヘルスケアに製造を集約する体制に変更した。
(2) アグリ・ニュートリション事業分野
アグリ・ニュートリション分野への事業展開としては、ペプチドの活用(ペプチド農業)を研究開発している。2021年3月にファーマフーズと資本業務提携したほか、同年6月には持続可能な農業を目指して宮崎県新富町と連携協定を締結した。ペプチド技術を農作物の育成に活用し、持続可能な農業に貢献できる技術の実用化を目指す。なお同年9月にファーマフーズと「アグリ・ニュートリション基本計画」を策定している。新たなペプチド農業を確立し、宮崎県新富町において農業支援を本格展開する計画だ。
2022年8月には、卵由来の液体肥料の開発を行うENEGGOと資本業務提携した。ENEGGOは、廃棄物である卵殻及び卵殻膜に含まれているタンパク質を独自の技術で可溶化させ、植物の成長に重要なアミノ酸を抽出し、世界初の卵由来有機アミノ酸を配合した液体肥料を開発している。「アグリ・ニュートリション基本計画」の中核であるペプチド技術との融合やパイプライン拡充により、ペプチド農業の早期確立を目指す。
(3) 匂いセンサー
AI技術を応用した「匂いセンサー」については、2021年7月に長瀬産業<8012>と共同事業化で合意した。「匂いセンサー」の特徴は、界面制御技術を織り込んだ樹脂材料で構成されていることである。匂いの検知材料に先端AI技術を融合し、特定の匂いをデジタルで識別、定量化するデジタル嗅覚技術は環境モニタリングや医療分野、食品・飲料などの生活関連分野での応用が期待されている。2023年11月に販売開始した匂いセンサー「FlavoTone(フラボトーン)」は、特定の匂いだけでなく複雑な匂いを可視化できるため、匂いによる品質管理、特性比較、モニタリングといったソリューションを提供できる。また、販売だけでなくレンタルや受託分析に加え、個別の課題に対するソリューション提案などのサービスも提供している。
(4) その他
2021年12月にはロート製薬と資本業務提携した。両社が注力しているスキンケア・医療分野をはじめ、戦略的に相互のリソースを活用して独自の原料開発及び新機能・異業種への適用を図り、事業拡大・企業価値向上を目指す。
2022年1月には、京都大学発のベンチャー企業である(株)FLOSFIAに資本参画した。FLOSFIAは、電力変換用に用いられるパワー半導体として圧倒的な材料ポテンシャルを有する最先端半導体材料「コランダム構造酸化ガリウム(α-Ga2O3)」を用いた半導体デバイスの事業化に取り組んでいる。資本参画によってFLOSFIAとの連携を強化し、パワー半導体の量産プロセスの確立やパワーモジュールの社会実装を支援する方針だ。なお2023年12月に、FLOSFIAの基板埋込技術と同社が独自開発したヒューズエレメントを組み合わせることで、超小型・薄型のパワーモジュールにも基板埋込できるマイクロ温度ヒューズの開発に成功した。
2022年12月には生分解性の肥料被覆材を開発した。非食用米を用いたバイオマスプラスチック「ライスレジン(R)」を開発販売する(株)バイオマスレジンホールディングスの生分解性樹脂「ネオリザ(R)」を用いて、同社が得意とする界面制御技術により、肥料成分溶出後の非生分解性プラスチック(被膜殻)残存による土壌汚染問題の解決など、持続可能な農業の実現に貢献していく。2024年4月には、再生可能炭素に特化した英国のディープテクノロジー企業であるエコニック(Econic Technologies Ltd)とCO2ポリオールの製造事業開発に関する覚書を締結した。エコニックのCO2利用技術を活用し、同社の重点分野であるカーボンニュートラルに向けた取り組みを進めている。同年7月には環境配慮型プラスチックに適した練り込み型消臭剤「ケシュナール」を開発した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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2. 新製品開発・新規事業創出
三洋化成工業<4471>の中期成長に向けた戦略としては、事業を通じて持続可能な経済成長と社会的課題の解決に貢献するスペシャリティ・ケミカル企業として、独自技術やアライアンスを活用し、ブルーオーシャン戦略で、遺伝子組み換え技術によって作製された機能性タンパク質「シルクエラスチン(R)」、外科用止血材、アグリ・ニュートリション、匂いセンサーなどの新製品開発・新規事業創出を推進している。
(1) バイオ・メディカル事業分野
バイオ・メディカル事業分野についてはQOL向上の実現に向けた事業拡大を進めている。生体組織の修復・再生促進の足場として高い可能性のある新規治療材料「シルクエラスチン(R)」については、創傷治癒用途で京都大学大学院医学研究科形成外科学講座の森本尚樹教授らと共同開発を進め、2024年7月に製造販売承認申請を行った。そして2024年10月に科研製薬と、新規の創傷治療材料「シルクエラスチン(R)創傷用シート」の日本国内における独占的販売権に関するライセンス契約を締結した。これにより、科研製薬より契約一時金のほか、売上に対する一定のロイヤルティを受け取る。市場規模としては国内90億円、米国900億円が見込まれている。「シルクエラスチン(R)」は創傷治癒用途のほか、半月板再生材用途(広島大学病院で医師主導治験を完了、市場規模は国内120億円、米国1,270億円の見込み)や、肺リーク塞栓材用途(非臨床試験段階、市場規模は国内14億円、米国250億円の見込み)での開発が進んでおり、2030年に日米で営業利益60億円創出を目指している。
外科用止血材「Hydrofit(R)」は、水と反応して柔軟な皮膜をつくるウレタン素材の外科手術用止血材である。胸部大動脈や弓部分岐動脈の人工血管への置換手術の際の吻合部に使用される。同社が製造し、テルモ<4543>に販売委託している。2014年2月に同社初の医療機器として国内で発売開始、2019年7月にCEマーキングを取得して欧州市場への展開を開始、2020年3月に脳血管を除く血管全体吻合部の止血材へ適応拡大した。2021年7月には香港での発売を開始したほか、台湾でも医療機器の薬事承認を取得して同年12月に臨床使用を開始した。
2022年6月には富士フイルム(株)と共同で富士フイルム三洋化成ヘルスケア(株)を設立し、同年10月に富士フイルム和光純薬(株)の自動化学発光酵素免疫分析装置「Accuraseed(R)(アキュラシード)」の専用試薬として使用される体外診断用医薬品の製造を開始した。これに伴い富士フイルム三洋化成ヘルスケアに製造を集約する体制に変更した。
(2) アグリ・ニュートリション事業分野
アグリ・ニュートリション分野への事業展開としては、ペプチドの活用(ペプチド農業)を研究開発している。2021年3月にファーマフーズと資本業務提携したほか、同年6月には持続可能な農業を目指して宮崎県新富町と連携協定を締結した。ペプチド技術を農作物の育成に活用し、持続可能な農業に貢献できる技術の実用化を目指す。なお同年9月にファーマフーズと「アグリ・ニュートリション基本計画」を策定している。新たなペプチド農業を確立し、宮崎県新富町において農業支援を本格展開する計画だ。
2022年8月には、卵由来の液体肥料の開発を行うENEGGOと資本業務提携した。ENEGGOは、廃棄物である卵殻及び卵殻膜に含まれているタンパク質を独自の技術で可溶化させ、植物の成長に重要なアミノ酸を抽出し、世界初の卵由来有機アミノ酸を配合した液体肥料を開発している。「アグリ・ニュートリション基本計画」の中核であるペプチド技術との融合やパイプライン拡充により、ペプチド農業の早期確立を目指す。
(3) 匂いセンサー
AI技術を応用した「匂いセンサー」については、2021年7月に長瀬産業<8012>と共同事業化で合意した。「匂いセンサー」の特徴は、界面制御技術を織り込んだ樹脂材料で構成されていることである。匂いの検知材料に先端AI技術を融合し、特定の匂いをデジタルで識別、定量化するデジタル嗅覚技術は環境モニタリングや医療分野、食品・飲料などの生活関連分野での応用が期待されている。2023年11月に販売開始した匂いセンサー「FlavoTone(フラボトーン)」は、特定の匂いだけでなく複雑な匂いを可視化できるため、匂いによる品質管理、特性比較、モニタリングといったソリューションを提供できる。また、販売だけでなくレンタルや受託分析に加え、個別の課題に対するソリューション提案などのサービスも提供している。
(4) その他
2021年12月にはロート製薬と資本業務提携した。両社が注力しているスキンケア・医療分野をはじめ、戦略的に相互のリソースを活用して独自の原料開発及び新機能・異業種への適用を図り、事業拡大・企業価値向上を目指す。
2022年1月には、京都大学発のベンチャー企業である(株)FLOSFIAに資本参画した。FLOSFIAは、電力変換用に用いられるパワー半導体として圧倒的な材料ポテンシャルを有する最先端半導体材料「コランダム構造酸化ガリウム(α-Ga2O3)」を用いた半導体デバイスの事業化に取り組んでいる。資本参画によってFLOSFIAとの連携を強化し、パワー半導体の量産プロセスの確立やパワーモジュールの社会実装を支援する方針だ。なお2023年12月に、FLOSFIAの基板埋込技術と同社が独自開発したヒューズエレメントを組み合わせることで、超小型・薄型のパワーモジュールにも基板埋込できるマイクロ温度ヒューズの開発に成功した。
2022年12月には生分解性の肥料被覆材を開発した。非食用米を用いたバイオマスプラスチック「ライスレジン(R)」を開発販売する(株)バイオマスレジンホールディングスの生分解性樹脂「ネオリザ(R)」を用いて、同社が得意とする界面制御技術により、肥料成分溶出後の非生分解性プラスチック(被膜殻)残存による土壌汚染問題の解決など、持続可能な農業の実現に貢献していく。2024年4月には、再生可能炭素に特化した英国のディープテクノロジー企業であるエコニック(Econic Technologies Ltd)とCO2ポリオールの製造事業開発に関する覚書を締結した。エコニックのCO2利用技術を活用し、同社の重点分野であるカーボンニュートラルに向けた取り組みを進めている。同年7月には環境配慮型プラスチックに適した練り込み型消臭剤「ケシュナール」を開発した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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