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和田興産 Research Memo(7):2026年2月期を最終年度とする中期経営計画を推進(1)

配信日時:2024/11/19 15:07 配信元:FISCO
*15:07JST 和田興産 Research Memo(7):2026年2月期を最終年度とする中期経営計画を推進(1) ■和田興産<8931>の中長期の成長戦略

1. 中期経営計画の概要
同社では、従来から3年を区切りとした中期経営計画を策定し、事業運営の基本方針や事業目標、収益計画などを定めてきたが、外部環境に大きく依存する業種であるため、方針の柔軟な見直しを迫られる場合もあることから、公表を差し控えていた。しかしながら、中長期的に企業価値を高めていくためには、積極的な情報開示を通じて株主・投資家との建設的な対話を図ることが重要であると考えて、2023年4月7日に中期経営計画(2024年2月期~2026年2月期)を公表した。

同社は、国内経済の動向をはじめ、不動産業を取り巻く環境がより一層変化のスピードを速めるなか、重要課題が山積していると認識しており、2024年2月期からの3期間を、安定的な業績確保を前提としつつ、今後の事業を展望するうえで非常に重要な時期と位置付けている。より一層企業の成長を促し、持続可能な企業を目指すためには、新たな組織風土の構築が必要不可欠であるため、これらの基本となる考え方について、行動指針(Wada-Way)という形で新たに明確化を図った。すなわち、「自主自律」:主体的に物事を捉え、自らが責任感を持って行動する、「唯一無二」:一人ひとりの個性を活かし、価値ある独創で地域を彩る、「迅速果断」:スピード感を持った事業への取り組み、「相互信頼」:チームワークとコミュニケーション(建設的な議論)である。

次に、全社基本方針を定めた。「テーマ(VISION)」として、将来を展望し、「地域に根差した総合不動産業」への道筋を創ることを掲げ、前3期間の実績合計の利益水準を上回るとともに、収益構造の転換による事業セグメントの最適化を「目標」としている。また、新たな地域、事業、分野等へ積極的に挑戦しつつ事業の柱づくりを進め、内向き志向から外向き志向への転換を図るために人材戦略やアライアンスを有効活用し、ESG、SDGsの視点から社会的課題の解決に向けたソリューション機能の充実と育成を目指すという「重点戦略」を掲げた。

以上に基づいた中期経営計画(2024年2月期~2026年2月期)では、数値計画として3期間合計で売上高1,224億円(前3期間比1%減)、営業利益118億円(同7%増)、経常利益94億円(同8%増)、当期純利益64億円(同6%増)を計画し、売上よりも利益拡大を優先する。また、KPI(重要業績指標)として、ROE8%以上、D/Eレシオ2倍以内を目標としている。マンション・デベロッパーでは単年度ごとの業績の振れが大きいことから、3期間合計の数値計画を示している。

3年間で着実な利益成長を目指すが、計画2年目の2025年2月期予想を達成すれば、中期経営計画に対する2年間の進捗率は、売上高64.4%、営業利益80.3%、経常利益84.8%、当期純利益87.3%に達し、極めて順調に推移している。2026年2月期業績が大幅に悪化しない限り、中期経営計画の数値計画は十分に達成可能であると言えよう。また、D/Eレシオは一般的には1倍以内が理想であり、2倍以内の目標はやや物足りない印象もある。ただ、不動産分譲業を営むデベロッパーでは、用地を取得するためには借入が必要であり、D/Eレシオは過度な借入を抑制するための指標として活用している。

かつては市場規模の大きい首都圏でも分譲マンション開発を行っていたが、他社との競合も激しく十分な利益を確保できないことから、現在は地の利がある近畿圏で地域密着型経営を推進しており、ブランド力を生かして市場シェアの拡大を目指している。同社の事業エリアである神戸・阪神間・北摂では世帯数は増加傾向にあるものの、神戸市の人口は減少傾向にある。当面は主力の分譲マンション事業は底堅いと見られるが、将来を見据えて新たな事業の育成を目指すことが、推進中の中期経営計画の大きな目的の1つである。今後の3年間に、将来のさらなる成長の足掛かりを見出そうとする、意欲的な中期経営計画と言えよう。引き続き、中期経営計画の進展状況に注目したい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)

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