注目トピックス 日本株
レジル Research Memo(8):3事業をつなぐ脱炭素ソリューション事業本部を設置
配信日時:2024/10/31 16:58
配信元:FISCO
*16:58JST レジル Research Memo(8):3事業をつなぐ脱炭素ソリューション事業本部を設置
■レジル<176A>の成長戦略
2. 事業戦略
全体の経営戦略としては、分散型エネルギープラットフォームの構築に向けて、既存3事業が相互に補完し合って付加価値を継続的に高め、経営資源の傾斜配分や事業ポートフォリオの最適化を実施する。このためには、既存3事業の成長力を最大化する必要があり、中長期成長に向けたセグメント別の事業戦略を策定した。また、3事業をつなぐハブ機能も必要となることから、新たに脱炭素ソリューション事業本部を設置し、家庭・公営住宅・企業向けの脱炭素の仕組み化や電力の地産地消促進のような「公共」を軸に既存事業の顧客ターゲット層の拡張を進める考えである。
(1) 分散型エネルギー事業
分散型エネルギー事業の事業戦略では、レジリエンス※1ソリューションの磨き込みと営業活動におけるポジショニング戦略、顧客獲得戦略が重点戦略となる。レジリエンスソリューションは「マンション×分散型エネルギー設備×デジタル制御」によって、エネルギーの最適利用と脱炭素への貢献を図る。同社が受変電設備や蓄電池などのDER※2設備の費用を負担することで、デベロッパーや賃貸オーナーは費用負担せずにマンションの価値を向上できるうえ、再生可能エネルギーの活用によりGHG排出量ゼロを目指せるなど導入物件のScope3対応にすることもできる。居住者にとっては、一括購入による電気料金の負担が減少するとともに、災害などに対するレジリエンス強化と脱炭素による環境保全を両立することができる。このようにデベロッパーと居住者はともに経済的価値と環境的価値を同時に一段と享受することができるようになる。またポジショニング戦略では、既築マンションから新築・賃貸・公営マンションへと営業領域を拡大する計画である。そのうえで、顧客獲得戦略では新規商材のマンション防災サービスについて、新築・賃貸はもちろん、分譲マンションだけでなくREIT案件分野にも進出するとともに、既築マンションは契約更新タイミングでの他社からのリプレイス案件獲得に注力する方針である。
※1 レジリエンス(resilience):災害や危機、ストレスなど困難から立ち直る力。
※2 DER(Distributed Energy Resources):分散型エネルギーリソース。太陽光発電や蓄電池などエネルギーの利用者(需要家)が所有するエネルギー源のこと。
(2) グリーンエネルギー事業
グリーンエネルギー事業では、再生可能エネルギー比率の向上と調達時のリスクヘッジを進める計画である。再生可能エネルギー比率については、すでに導入比率が8割を超える水準となっているが、2030年目標の100%導入の早期達成に向け、2024年6月期以降の契約についてはすべて実質再エネで電力を提供する。一方、調達方法の改善や市場連動プランの導入のほかCS※向上に努めることで継続率を改善し、事業全体の収益安定化を図る。調達時のリスクヘッジとして、昼夜の需要をバランスすることで1日を通して一定の電力需要(ベース電源)を確保するほか、最大1.5倍になる季節性変動による卸売価格差で電力先物取引を行い、原発や太陽光発電の稼働状況の違いによる東高西低の価格差も利用する方針である。
※ CS(Customer Satisfaction):顧客満足度。
(3) エネルギーDX事業
エネルギーDX事業では、顧客ターゲット層と提供業務の拡大を並行して進める計画である。顧客ターゲット層の拡大では、大手新電力向けにカスタマイズプランを、自治体参画や企業内新電力に対しては電力管理のフルアウトソースプランを提供するなど業務を拡大し、客単価の上昇と導入社数の拡大を進める。大手新電力案件はそれだけで収益へのインパクトが大きくなるが、自治体の新電力など小規模の案件も集めて収益拡大を図る。また、自己託送の規制によりオフサイトPPA※の運用ニーズが高まるなか、ノウハウを持たない新電力へのアプローチを強化する。提供業務の拡大については、サービス開始から継続年数が経つほど1企業への提供サービス数が増加する傾向にあるため、メニューを広げる方針である。
※ PPA(Power Purchase Agreement):電力購入契約。企業や自治体、自宅など電力需要家が所有する建物の屋根や遊休地をPPA事業者に貸し、そこに設置された太陽光発電設備による再生可能エネルギーを需要家が調達するシステム。オフサイトPPAとは、電力需要家から離れた場所に太陽光発電所を設置するPPAモデルの1つ。
(4) 脱炭素ソリューション事業とロードマップ
同社は2024年7月に、既存3事業をつなぐハブ機能として脱炭素ソリューション事業本部を設置した。脱炭素ソリューション事業本部では、地域や企業のカーボンニュートラル実現の可能性を最大限に追求し、経営資源を活用して既存3事業の顧客層の拡大と顧客にカーボンニュートラルの推進ニーズを起こす新規サービスの開発を進めることで、経済的価値とソーシャルインパクトを創出する計画である。これにより、グリーンエネルギー事業では電力調達力の強化と2030年の再生可能エネルギー100%という目標に向けて基盤を構築し、分散型エネルギー事業では防災サービスの提案やリプレイス、事業買収、新築領域への進出により安定成長を維持し、エネルギーDX事業では新規顧客の開拓と既存顧客のアップセルにより高成長を持続するなど、各事業がそれぞれに見合ったロードマップを描いている。加えて、脱炭素ソリューション事業では課題に合わせてサービスを組み合せ最適化することで、事業横断的に成長加速を促進し、社会全体の脱炭素に貢献するものと考える。
事業構造の大転換で中長期的に利益面で2ケタ成長持続へ
3. 弊社の注目点
事業構造を大転換したことで、同社は営業体制が強化され、足腰の面で中長期成長を支える体制ができあがった。また、成長戦略が明確になり、戦略に沿った成長ができるかがカギになる。既存事業において、分散型エネルギー事業のマンション一括受電サービスは、新築・リプレイス・自治体などへと領域を広げていることから主力事業として安定成長が見込まれ、同社の業績の屋台骨となると予想する。グリーンエネルギー事業は、2024年6月期に収益性が大きく改善するなど組織構造改革の効果が顕著だったが、これによりマンション一括受電サービスを支える基盤としての信頼感が一段と増したと考える。エネルギーDX事業では、顧客のカスタマイズニーズやフルアウトソースニーズに対応することで顧客数の増加や客単価の上昇も期待され、高成長が予想される。
新規事業として、マンション防災サービスがある。昨今頻発する自然災害への対策として注目を集めており、分散型エネルギー事業の成長も押し上げることになると予想する。また、脱炭素ソリューション事業部が立ち上がり、短中期的に既存3事業の成長を押し上げると予想する。脱炭素ソリューション事業部は分散型エネルギープラットフォームの構築を促進することになるため少し先かもしれないが、将来的には分散型エネルギープラットフォームを新電力や自治体、地域電力会社に提供することで、脱炭素の促進とエコシステムの拡大を通じて日本全体のエネルギーの安定化に寄与する姿もイメージしやすくなる。以上のような想定から、同社は中長期的に利益面で2ケタ成長の持続が高い確率で可能であると考える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
<YS>
2. 事業戦略
全体の経営戦略としては、分散型エネルギープラットフォームの構築に向けて、既存3事業が相互に補完し合って付加価値を継続的に高め、経営資源の傾斜配分や事業ポートフォリオの最適化を実施する。このためには、既存3事業の成長力を最大化する必要があり、中長期成長に向けたセグメント別の事業戦略を策定した。また、3事業をつなぐハブ機能も必要となることから、新たに脱炭素ソリューション事業本部を設置し、家庭・公営住宅・企業向けの脱炭素の仕組み化や電力の地産地消促進のような「公共」を軸に既存事業の顧客ターゲット層の拡張を進める考えである。
(1) 分散型エネルギー事業
分散型エネルギー事業の事業戦略では、レジリエンス※1ソリューションの磨き込みと営業活動におけるポジショニング戦略、顧客獲得戦略が重点戦略となる。レジリエンスソリューションは「マンション×分散型エネルギー設備×デジタル制御」によって、エネルギーの最適利用と脱炭素への貢献を図る。同社が受変電設備や蓄電池などのDER※2設備の費用を負担することで、デベロッパーや賃貸オーナーは費用負担せずにマンションの価値を向上できるうえ、再生可能エネルギーの活用によりGHG排出量ゼロを目指せるなど導入物件のScope3対応にすることもできる。居住者にとっては、一括購入による電気料金の負担が減少するとともに、災害などに対するレジリエンス強化と脱炭素による環境保全を両立することができる。このようにデベロッパーと居住者はともに経済的価値と環境的価値を同時に一段と享受することができるようになる。またポジショニング戦略では、既築マンションから新築・賃貸・公営マンションへと営業領域を拡大する計画である。そのうえで、顧客獲得戦略では新規商材のマンション防災サービスについて、新築・賃貸はもちろん、分譲マンションだけでなくREIT案件分野にも進出するとともに、既築マンションは契約更新タイミングでの他社からのリプレイス案件獲得に注力する方針である。
※1 レジリエンス(resilience):災害や危機、ストレスなど困難から立ち直る力。
※2 DER(Distributed Energy Resources):分散型エネルギーリソース。太陽光発電や蓄電池などエネルギーの利用者(需要家)が所有するエネルギー源のこと。
(2) グリーンエネルギー事業
グリーンエネルギー事業では、再生可能エネルギー比率の向上と調達時のリスクヘッジを進める計画である。再生可能エネルギー比率については、すでに導入比率が8割を超える水準となっているが、2030年目標の100%導入の早期達成に向け、2024年6月期以降の契約についてはすべて実質再エネで電力を提供する。一方、調達方法の改善や市場連動プランの導入のほかCS※向上に努めることで継続率を改善し、事業全体の収益安定化を図る。調達時のリスクヘッジとして、昼夜の需要をバランスすることで1日を通して一定の電力需要(ベース電源)を確保するほか、最大1.5倍になる季節性変動による卸売価格差で電力先物取引を行い、原発や太陽光発電の稼働状況の違いによる東高西低の価格差も利用する方針である。
※ CS(Customer Satisfaction):顧客満足度。
(3) エネルギーDX事業
エネルギーDX事業では、顧客ターゲット層と提供業務の拡大を並行して進める計画である。顧客ターゲット層の拡大では、大手新電力向けにカスタマイズプランを、自治体参画や企業内新電力に対しては電力管理のフルアウトソースプランを提供するなど業務を拡大し、客単価の上昇と導入社数の拡大を進める。大手新電力案件はそれだけで収益へのインパクトが大きくなるが、自治体の新電力など小規模の案件も集めて収益拡大を図る。また、自己託送の規制によりオフサイトPPA※の運用ニーズが高まるなか、ノウハウを持たない新電力へのアプローチを強化する。提供業務の拡大については、サービス開始から継続年数が経つほど1企業への提供サービス数が増加する傾向にあるため、メニューを広げる方針である。
※ PPA(Power Purchase Agreement):電力購入契約。企業や自治体、自宅など電力需要家が所有する建物の屋根や遊休地をPPA事業者に貸し、そこに設置された太陽光発電設備による再生可能エネルギーを需要家が調達するシステム。オフサイトPPAとは、電力需要家から離れた場所に太陽光発電所を設置するPPAモデルの1つ。
(4) 脱炭素ソリューション事業とロードマップ
同社は2024年7月に、既存3事業をつなぐハブ機能として脱炭素ソリューション事業本部を設置した。脱炭素ソリューション事業本部では、地域や企業のカーボンニュートラル実現の可能性を最大限に追求し、経営資源を活用して既存3事業の顧客層の拡大と顧客にカーボンニュートラルの推進ニーズを起こす新規サービスの開発を進めることで、経済的価値とソーシャルインパクトを創出する計画である。これにより、グリーンエネルギー事業では電力調達力の強化と2030年の再生可能エネルギー100%という目標に向けて基盤を構築し、分散型エネルギー事業では防災サービスの提案やリプレイス、事業買収、新築領域への進出により安定成長を維持し、エネルギーDX事業では新規顧客の開拓と既存顧客のアップセルにより高成長を持続するなど、各事業がそれぞれに見合ったロードマップを描いている。加えて、脱炭素ソリューション事業では課題に合わせてサービスを組み合せ最適化することで、事業横断的に成長加速を促進し、社会全体の脱炭素に貢献するものと考える。
事業構造の大転換で中長期的に利益面で2ケタ成長持続へ
3. 弊社の注目点
事業構造を大転換したことで、同社は営業体制が強化され、足腰の面で中長期成長を支える体制ができあがった。また、成長戦略が明確になり、戦略に沿った成長ができるかがカギになる。既存事業において、分散型エネルギー事業のマンション一括受電サービスは、新築・リプレイス・自治体などへと領域を広げていることから主力事業として安定成長が見込まれ、同社の業績の屋台骨となると予想する。グリーンエネルギー事業は、2024年6月期に収益性が大きく改善するなど組織構造改革の効果が顕著だったが、これによりマンション一括受電サービスを支える基盤としての信頼感が一段と増したと考える。エネルギーDX事業では、顧客のカスタマイズニーズやフルアウトソースニーズに対応することで顧客数の増加や客単価の上昇も期待され、高成長が予想される。
新規事業として、マンション防災サービスがある。昨今頻発する自然災害への対策として注目を集めており、分散型エネルギー事業の成長も押し上げることになると予想する。また、脱炭素ソリューション事業部が立ち上がり、短中期的に既存3事業の成長を押し上げると予想する。脱炭素ソリューション事業部は分散型エネルギープラットフォームの構築を促進することになるため少し先かもしれないが、将来的には分散型エネルギープラットフォームを新電力や自治体、地域電力会社に提供することで、脱炭素の促進とエコシステムの拡大を通じて日本全体のエネルギーの安定化に寄与する姿もイメージしやすくなる。以上のような想定から、同社は中長期的に利益面で2ケタ成長の持続が高い確率で可能であると考える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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