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レジル Research Memo(3):マンション一括受電は競合が少ないユニークなサービス
配信日時:2024/10/31 16:53
配信元:FISCO
*16:53JST レジル Research Memo(3):マンション一括受電は競合が少ないユニークなサービス
■レジル<176A>の事業内容
1. 事業概要
同社グループは同社のほか連結子会社2社(中央電力ソリューション、中央電力エナジー)で構成され、セグメントは分散型エネルギー事業、グリーンエネルギー事業、エネルギーDX事業の3つに分けられる。同社はよく新電力を展開する企業と混同されるが、主力サービスはマンションで使用する電力を取りまとめ、一括購入できるマンション一括受電サービスである。一括購入することで、部屋ごとに個別に購入するよりも単価を抑えることができる。電力自由化となる以前から展開しているユニークな業態であり、競合が少ない。グリーンエネルギー事業は分散型エネルギー事業の一括購入における仕入機能のさらなる強化等を目的に立ち上げ、一部新電力企業と競合する電力小売も手掛けている。大半の新電力企業は新電力だけで事業を構成しているが、同社は展開する3事業で機能補完やシナジーによってつながっており、新電力企業にあるリスクは低減されている。2024年6月期の調整前の売上高構成比は分散型エネルギー事業52.5%、グリーンエネルギー事業44.3%、エネルギーDX事業3.2%となっている。
主力は高圧受変電設備によるマンション一括受電サービス
2. 分散型エネルギー事業
分散型エネルギー事業では、電力を調達して顧客マンションへ供給するマンション一括受電サービスを提供するほか、中央電力エナジーが電力調達の一部業務を、中央電力ソリューションが受変電設備の設置工事・保守・点検業務を行っている。またマンション顧客に対し、マンション一括受電サービスに付随して発生するマンション内にある同社が保有していない各種電気設備の改修工事や、ガスの小売販売・取次販売、また住宅設備等にかかる他社サービスの紹介などのサービスも提供している。ほかに、太陽光発電設備や蓄電池設備など分散型電源設備を提供するマンション防災サービスの提供を新たに開始し、中長期視点で設備の集約・ネットワーク化を推進する考えである。
(1) マンション一括受電サービス
マンション一括受電サービスは、本来であれば地域の電力会社がマンション内に設置する受変電設備を同社が設置し、マンション単位で商業ビル同様の高圧電力を調達して、受変電設備によって一般家庭向けに低圧電力に変換し、マンション各世帯や共用部分などへ供給するサービスである。同社のサービスを利用しないマンションでは各世帯が低圧電力の電気料金を支払っているのに対し、サービスを利用しているマンションでは高圧料金をベースにするため相対的に低額の電気料金で済むうえ、マンション全体(各世帯専用部分及び共用部分)の電気料金を削減することができる仕組みとなっている。電気料金の削減額は近年各マンションで積立不足が指摘される共用部分の削減額として、修繕積立金の一部に充当することも可能となっている。
マンション一括受電サービスでは同社が設備を資産として保有するため顧客の初期投資が不要である一方、設備の償却を含めて電気料金として回収するモデルとなっている。既設マンションがメインターゲットのため、顧客マンションへのサービス導入にはマンション管理組合の総会決議に加え、全世帯によるサービス利用申込が必要となるが、初期投資が不要であること、大手電力会社と比較してマンション全体で5~10%程度料金が安くなること、修繕積立の一部に充当できることなどにより、サービス導入へのハードルを引き下げている。いったん導入すれば、同社で検針やメンテナンスも可能であるため、各戸の利用者は同社を電力会社と認識することが多いようだ。
サービスは、1棟当たり40戸以上※のマンションに対し800万円〜1,000万円の設備機器を設置するため、導入に際しては10年または15年間の長期契約を締結することになる(期間終了後は1年から3年ごとの更新)。料金設定などの経済合理性から解約実績はこれまで1棟のみで、サービス提供戸数を着実に伸ばしており、同社にとって長期かつ安定的な収益を確保するストックビジネスとなっている。電力の仕入れは、時価で市場調達するのが基本の新電力企業と異なり、同社は相対取引を基本とし、数ヶ年契約でまとめて決めているため、電力会社に対しバーゲニング・パワーを発揮することができる。このため、マンションへのサービス導入までのリードタイムは長くなるが、いったん稼働を開始すれば初年度から利益を生み出し、投資もキャッシュベースであれば4年〜5年で回収することができる収益構造となっている。
※ 1棟当たり40戸が損益分岐点だが、マンション防災サービスのリリースによるターゲットの拡大により、直近では1棟当たり20戸程度でも損益を均衡できるようになったようだ。
同社はコスト競争力が特長の1つである。ビジネスモデルやバーゲニング・パワーから生み出されるだけではなく、マンション一括受電サービスを開始した2004年以来現在に至るまで先行者メリットを生かしてマンションの多い関西圏や関東圏を地盤として固めながら、エネルギー事業者としてシステムの自社開発やオペレーションの自社運用などを積極的に推進してきたことも背景にある。そして、マンション一括受電サービスの継続によりグリーンエネルギー事業、エネルギーDX事業の設立、大手電力会社のオペレーションの請負など業容拡大につながった。
なお現在のマンション一括受電サービスの市場は、毎年供給される新築マンションの約3割が電力会社系などの直接または間接的な請負になっており、残り約7割と既設マンションが同社のターゲットとなる。このため同社は、マンション一括受電サービスのさらなる拡大に向けて、コスト競争力を背景に既設マンション領域で10数社程度しかない小ぶりな競合企業からのリプレイスも推進する考えである。
(2) マンション防災サービス
同社は、停電時に太陽光発電や蓄電池などの分散型電源設備を設置することで電力供給を行うマンション防災サービスを2023年4月に開始した。設備を同社が保有して顧客から受領する電気料金でコストを回収する仕組みで、マンション一括受電サービスと併用できる高付加価値サービスとしての位置付けとなっている。現在はマンション防災サービスを新規顧客獲得のための新規商材として、営業活動に注力している。
マンション防災サービスを始めたのは、防災や環境といったマンションの付加価値が向上するテーマを付け加えることで、新築マンションや既築マンションのリプレイス向けにアピールしやすくする狙いがあると考えられる。この際、蓄電池を使用することで電力料金の時差や地域差の平準化を進められるうえ、マンション販売業者や最近増えているREIT業者にとってScope3※への対応にもなる。
※ Scope3:温室効果ガス削減に関するサプライチェーン排出量のことで、Scope1(購入した製品・サービス)やScope2(資本財)に含まれない、自社の上流及び下流における排出量。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
<YS>
1. 事業概要
同社グループは同社のほか連結子会社2社(中央電力ソリューション、中央電力エナジー)で構成され、セグメントは分散型エネルギー事業、グリーンエネルギー事業、エネルギーDX事業の3つに分けられる。同社はよく新電力を展開する企業と混同されるが、主力サービスはマンションで使用する電力を取りまとめ、一括購入できるマンション一括受電サービスである。一括購入することで、部屋ごとに個別に購入するよりも単価を抑えることができる。電力自由化となる以前から展開しているユニークな業態であり、競合が少ない。グリーンエネルギー事業は分散型エネルギー事業の一括購入における仕入機能のさらなる強化等を目的に立ち上げ、一部新電力企業と競合する電力小売も手掛けている。大半の新電力企業は新電力だけで事業を構成しているが、同社は展開する3事業で機能補完やシナジーによってつながっており、新電力企業にあるリスクは低減されている。2024年6月期の調整前の売上高構成比は分散型エネルギー事業52.5%、グリーンエネルギー事業44.3%、エネルギーDX事業3.2%となっている。
主力は高圧受変電設備によるマンション一括受電サービス
2. 分散型エネルギー事業
分散型エネルギー事業では、電力を調達して顧客マンションへ供給するマンション一括受電サービスを提供するほか、中央電力エナジーが電力調達の一部業務を、中央電力ソリューションが受変電設備の設置工事・保守・点検業務を行っている。またマンション顧客に対し、マンション一括受電サービスに付随して発生するマンション内にある同社が保有していない各種電気設備の改修工事や、ガスの小売販売・取次販売、また住宅設備等にかかる他社サービスの紹介などのサービスも提供している。ほかに、太陽光発電設備や蓄電池設備など分散型電源設備を提供するマンション防災サービスの提供を新たに開始し、中長期視点で設備の集約・ネットワーク化を推進する考えである。
(1) マンション一括受電サービス
マンション一括受電サービスは、本来であれば地域の電力会社がマンション内に設置する受変電設備を同社が設置し、マンション単位で商業ビル同様の高圧電力を調達して、受変電設備によって一般家庭向けに低圧電力に変換し、マンション各世帯や共用部分などへ供給するサービスである。同社のサービスを利用しないマンションでは各世帯が低圧電力の電気料金を支払っているのに対し、サービスを利用しているマンションでは高圧料金をベースにするため相対的に低額の電気料金で済むうえ、マンション全体(各世帯専用部分及び共用部分)の電気料金を削減することができる仕組みとなっている。電気料金の削減額は近年各マンションで積立不足が指摘される共用部分の削減額として、修繕積立金の一部に充当することも可能となっている。
マンション一括受電サービスでは同社が設備を資産として保有するため顧客の初期投資が不要である一方、設備の償却を含めて電気料金として回収するモデルとなっている。既設マンションがメインターゲットのため、顧客マンションへのサービス導入にはマンション管理組合の総会決議に加え、全世帯によるサービス利用申込が必要となるが、初期投資が不要であること、大手電力会社と比較してマンション全体で5~10%程度料金が安くなること、修繕積立の一部に充当できることなどにより、サービス導入へのハードルを引き下げている。いったん導入すれば、同社で検針やメンテナンスも可能であるため、各戸の利用者は同社を電力会社と認識することが多いようだ。
サービスは、1棟当たり40戸以上※のマンションに対し800万円〜1,000万円の設備機器を設置するため、導入に際しては10年または15年間の長期契約を締結することになる(期間終了後は1年から3年ごとの更新)。料金設定などの経済合理性から解約実績はこれまで1棟のみで、サービス提供戸数を着実に伸ばしており、同社にとって長期かつ安定的な収益を確保するストックビジネスとなっている。電力の仕入れは、時価で市場調達するのが基本の新電力企業と異なり、同社は相対取引を基本とし、数ヶ年契約でまとめて決めているため、電力会社に対しバーゲニング・パワーを発揮することができる。このため、マンションへのサービス導入までのリードタイムは長くなるが、いったん稼働を開始すれば初年度から利益を生み出し、投資もキャッシュベースであれば4年〜5年で回収することができる収益構造となっている。
※ 1棟当たり40戸が損益分岐点だが、マンション防災サービスのリリースによるターゲットの拡大により、直近では1棟当たり20戸程度でも損益を均衡できるようになったようだ。
同社はコスト競争力が特長の1つである。ビジネスモデルやバーゲニング・パワーから生み出されるだけではなく、マンション一括受電サービスを開始した2004年以来現在に至るまで先行者メリットを生かしてマンションの多い関西圏や関東圏を地盤として固めながら、エネルギー事業者としてシステムの自社開発やオペレーションの自社運用などを積極的に推進してきたことも背景にある。そして、マンション一括受電サービスの継続によりグリーンエネルギー事業、エネルギーDX事業の設立、大手電力会社のオペレーションの請負など業容拡大につながった。
なお現在のマンション一括受電サービスの市場は、毎年供給される新築マンションの約3割が電力会社系などの直接または間接的な請負になっており、残り約7割と既設マンションが同社のターゲットとなる。このため同社は、マンション一括受電サービスのさらなる拡大に向けて、コスト競争力を背景に既設マンション領域で10数社程度しかない小ぶりな競合企業からのリプレイスも推進する考えである。
(2) マンション防災サービス
同社は、停電時に太陽光発電や蓄電池などの分散型電源設備を設置することで電力供給を行うマンション防災サービスを2023年4月に開始した。設備を同社が保有して顧客から受領する電気料金でコストを回収する仕組みで、マンション一括受電サービスと併用できる高付加価値サービスとしての位置付けとなっている。現在はマンション防災サービスを新規顧客獲得のための新規商材として、営業活動に注力している。
マンション防災サービスを始めたのは、防災や環境といったマンションの付加価値が向上するテーマを付け加えることで、新築マンションや既築マンションのリプレイス向けにアピールしやすくする狙いがあると考えられる。この際、蓄電池を使用することで電力料金の時差や地域差の平準化を進められるうえ、マンション販売業者や最近増えているREIT業者にとってScope3※への対応にもなる。
※ Scope3:温室効果ガス削減に関するサプライチェーン排出量のことで、Scope1(購入した製品・サービス)やScope2(資本財)に含まれない、自社の上流及び下流における排出量。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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