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ギフトHD Research Memo(2):「町田商店」を主力に多ブランド展開するラーメンチェーン
配信日時:2024/10/30 11:32
配信元:FISCO
*11:32JST ギフトHD Research Memo(2):「町田商店」を主力に多ブランド展開するラーメンチェーン
■ギフトホールディングス<9279>の事業概要
1. 会社概要
同社は、クリーミーなスープが特徴の横浜家系ラーメン「町田商店」を主力ブランドとする、国内トップクラスのラーメンチェーンである。首都圏を中心に、駅近エリアでは地域密着型の店舗を、ロードサイドエリアではファミリー向けに標準化された店舗を直営で展開、「町田商店」のほかにガッツリ系の「豚山」やこだわりの油そば「元祖油堂」など複数のブランドを運営している。店舗に供給する麺・タレ・スープ・餃子・チャーシューは、自社工場及び委託工場で生産するPB商品である。直営店のほか加盟料や経営指導料が発生しないプロデュース店があり、プロデュース店オーナーには直営店の運営ノウハウとPB商品を提供し、オーナーの要望に合わせた繁盛店づくりをサポートしている。2024年10月期第3四半期末時点の店舗数は、直営店が221店舗(業務委託店9店舗、海外3店舗を含む)、プロデュース店が576店舗(海外14店舗、国内FC店10店舗、海外FC店8店舗を含む)となっている。
効率的な後方支援体制が成長を支える
2. 沿革
高校を卒業後に横浜のラーメン店で修業を続けていた現 代表取締役社長の田川翔(たがわしょう)氏が、2008年1月に独立し、東京都町田市に「横浜家系ラーメン町田商店(国内直営1号店)」を開店した。2009年12月には、飲食業を目的として同市に(株)町田商店を設立し、直営店事業部門を開始した。2010年1月には田川氏の100%出資により(株)ファイナル・スリー・フィートを設立して麺やタレ、スープなどPB商品の自社開発を開始、スケールメリットを得るためプロデュース事業部門をスタートした。その後、2013年に設立した第1製麺工場を皮切りに、スープ工場やチャーシュー工場などの生産設備や自社物流センター網を強化するなど、サプライチェーンの強化を続けている。こうしたサプライチェーンを背景に国内で直営店とプロデュース店の多店舗出店を続ける一方、自社開発やM&Aなどにより多ブランド化を推進、さらに2015年にシンガポール、2016年には米国、2024年には中国へと海外進出も進めた。同社は創業以来成長※を続け、2018年10月に東京証券取引所(以下、東証)マザーズに株式を上場、2020年9月には東証市場第1部への市場変更を果たし、2022年4月の東証再編の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行した。なお、2024年10月期第3四半期時点で、自社の製麺工場4拠点、スープ工場1拠点、チャーシュー工場1拠点を有するほか、関東及び中京・関西、北関東・東北で物流センターを運営している。
※ 2020年10月期に新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響により一時的に営業減益となったが、この間も売上高は成長を続けた。
遅ればせながらラーメン業界もチェーンストアへと集約へ
3. 業界環境
外食産業の市場規模は、高度経済成長期やバブル景気、団塊世代のファミリー形成をドライバーに拡大を続けたが、1990年代初めの資産バブル崩壊による不況の長期化、団塊ジュニア世代の独立、少子高齢化などを背景に減少傾向に転じた。その後、訪日外国人の増加や法人交際費の回復などにより、2017年には底ばい状態になったようだ。そのなかで日常食としてのラーメン業界は、2000年頃に起きた「ご当地ラーメンブーム」によって縮小していた市場が反転増加、大手チェーンの出店拡大もあって市場の店舗数18,000店以上、市場規模6,000億円といわれるまでに拡大した。しかし、年間3,000店が新規に出店する一方、その半数が1年、7~8割が3年以内に閉店するといわれるほど、非常に競争の激しい業界でもある。
2020年に入ると外食産業全体にコロナ禍の影響が広がり、特に駅前や繁華街にあるラーメン店の多くが極めて厳しい経営状況となった。その後、コロナ禍収束後(以下、アフターコロナ)にはインバウンド需要が復活したが、コロナ禍やウクライナ情勢に起因する原材料価格の高騰や日米金利差を背景とする円安によって原価上昇が続き、日常食として「1,000円の壁」があるといわれるラーメン店は対応に苦心する店が多くなった。一方、同社はそうした厳しい事業環境のなかでも、出店や新ブランド開発など積極的な事業展開を推進するとともに利益を追求する経営姿勢を貫き、客数を増やしつつ好業績を続けている。この要因は徹底したチェーンストアシステムにあり、それゆえラーメン業界のサブマーケットごとに強力な業態を開発してビジネスチャンスを最大化している。加えて、同社の値上げがコストアップ分を転嫁する最低限のものであったため、大きく値上げした他店や異業態に対して値上げのたびに満足度が高まったことにあると思われる。
こうした動向から、長年個人店中心だった日常食としてのラーメン業界も、チェーンストアへの集約が徐々に進んでいる。ラーメン業界は、ここ30年デフレを前提に旨くて安いビジネスモデルを組んできた。しかし、足元のインフレが今後も続くようであれば、チェーンストアは原価を吸収できるが、そうでないビジネスは原価上昇を吸収できずに破綻することも想定される。チェーンストアシステムのことをデフレの元凶と言う人もいるが、元々戦後の傾斜生産方式のなか、消費者の生活を近代化することを目的に「流通革命」を推進するために理論形成された仕組みであって、高度経済成長を消費サイドからけん引した実績がある。つまりチェーンストアシステムは、デフレ期に価格を引き下げることで消費者の生活を守り、インフレ期には原価上昇を吸収することで日常食価格を守ることができる。したがって今回のインフレを機に、遅ればせながらラーメン業界も、ホテルの味やサービスを消費者の身近なものにした「すかいらーく」から「サイゼリヤ」などへ至る譜系や、高価な素材を日常食として提供した回転寿司の勃興により街の立ち食い寿司が激減した流れと同様に、個人店からより強力なチェーンストアへと集約されていくことが想定される。これは、同社にとって追い風と言える環境だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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1. 会社概要
同社は、クリーミーなスープが特徴の横浜家系ラーメン「町田商店」を主力ブランドとする、国内トップクラスのラーメンチェーンである。首都圏を中心に、駅近エリアでは地域密着型の店舗を、ロードサイドエリアではファミリー向けに標準化された店舗を直営で展開、「町田商店」のほかにガッツリ系の「豚山」やこだわりの油そば「元祖油堂」など複数のブランドを運営している。店舗に供給する麺・タレ・スープ・餃子・チャーシューは、自社工場及び委託工場で生産するPB商品である。直営店のほか加盟料や経営指導料が発生しないプロデュース店があり、プロデュース店オーナーには直営店の運営ノウハウとPB商品を提供し、オーナーの要望に合わせた繁盛店づくりをサポートしている。2024年10月期第3四半期末時点の店舗数は、直営店が221店舗(業務委託店9店舗、海外3店舗を含む)、プロデュース店が576店舗(海外14店舗、国内FC店10店舗、海外FC店8店舗を含む)となっている。
効率的な後方支援体制が成長を支える
2. 沿革
高校を卒業後に横浜のラーメン店で修業を続けていた現 代表取締役社長の田川翔(たがわしょう)氏が、2008年1月に独立し、東京都町田市に「横浜家系ラーメン町田商店(国内直営1号店)」を開店した。2009年12月には、飲食業を目的として同市に(株)町田商店を設立し、直営店事業部門を開始した。2010年1月には田川氏の100%出資により(株)ファイナル・スリー・フィートを設立して麺やタレ、スープなどPB商品の自社開発を開始、スケールメリットを得るためプロデュース事業部門をスタートした。その後、2013年に設立した第1製麺工場を皮切りに、スープ工場やチャーシュー工場などの生産設備や自社物流センター網を強化するなど、サプライチェーンの強化を続けている。こうしたサプライチェーンを背景に国内で直営店とプロデュース店の多店舗出店を続ける一方、自社開発やM&Aなどにより多ブランド化を推進、さらに2015年にシンガポール、2016年には米国、2024年には中国へと海外進出も進めた。同社は創業以来成長※を続け、2018年10月に東京証券取引所(以下、東証)マザーズに株式を上場、2020年9月には東証市場第1部への市場変更を果たし、2022年4月の東証再編の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行した。なお、2024年10月期第3四半期時点で、自社の製麺工場4拠点、スープ工場1拠点、チャーシュー工場1拠点を有するほか、関東及び中京・関西、北関東・東北で物流センターを運営している。
※ 2020年10月期に新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響により一時的に営業減益となったが、この間も売上高は成長を続けた。
遅ればせながらラーメン業界もチェーンストアへと集約へ
3. 業界環境
外食産業の市場規模は、高度経済成長期やバブル景気、団塊世代のファミリー形成をドライバーに拡大を続けたが、1990年代初めの資産バブル崩壊による不況の長期化、団塊ジュニア世代の独立、少子高齢化などを背景に減少傾向に転じた。その後、訪日外国人の増加や法人交際費の回復などにより、2017年には底ばい状態になったようだ。そのなかで日常食としてのラーメン業界は、2000年頃に起きた「ご当地ラーメンブーム」によって縮小していた市場が反転増加、大手チェーンの出店拡大もあって市場の店舗数18,000店以上、市場規模6,000億円といわれるまでに拡大した。しかし、年間3,000店が新規に出店する一方、その半数が1年、7~8割が3年以内に閉店するといわれるほど、非常に競争の激しい業界でもある。
2020年に入ると外食産業全体にコロナ禍の影響が広がり、特に駅前や繁華街にあるラーメン店の多くが極めて厳しい経営状況となった。その後、コロナ禍収束後(以下、アフターコロナ)にはインバウンド需要が復活したが、コロナ禍やウクライナ情勢に起因する原材料価格の高騰や日米金利差を背景とする円安によって原価上昇が続き、日常食として「1,000円の壁」があるといわれるラーメン店は対応に苦心する店が多くなった。一方、同社はそうした厳しい事業環境のなかでも、出店や新ブランド開発など積極的な事業展開を推進するとともに利益を追求する経営姿勢を貫き、客数を増やしつつ好業績を続けている。この要因は徹底したチェーンストアシステムにあり、それゆえラーメン業界のサブマーケットごとに強力な業態を開発してビジネスチャンスを最大化している。加えて、同社の値上げがコストアップ分を転嫁する最低限のものであったため、大きく値上げした他店や異業態に対して値上げのたびに満足度が高まったことにあると思われる。
こうした動向から、長年個人店中心だった日常食としてのラーメン業界も、チェーンストアへの集約が徐々に進んでいる。ラーメン業界は、ここ30年デフレを前提に旨くて安いビジネスモデルを組んできた。しかし、足元のインフレが今後も続くようであれば、チェーンストアは原価を吸収できるが、そうでないビジネスは原価上昇を吸収できずに破綻することも想定される。チェーンストアシステムのことをデフレの元凶と言う人もいるが、元々戦後の傾斜生産方式のなか、消費者の生活を近代化することを目的に「流通革命」を推進するために理論形成された仕組みであって、高度経済成長を消費サイドからけん引した実績がある。つまりチェーンストアシステムは、デフレ期に価格を引き下げることで消費者の生活を守り、インフレ期には原価上昇を吸収することで日常食価格を守ることができる。したがって今回のインフレを機に、遅ればせながらラーメン業界も、ホテルの味やサービスを消費者の身近なものにした「すかいらーく」から「サイゼリヤ」などへ至る譜系や、高価な素材を日常食として提供した回転寿司の勃興により街の立ち食い寿司が激減した流れと同様に、個人店からより強力なチェーンストアへと集約されていくことが想定される。これは、同社にとって追い風と言える環境だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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