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中国、台湾総統「新二国論」に激しい抗議 日台関係に危機をもたらす石破発言(1)【中国問題グローバル研究所】

配信日時:2024/10/15 10:54 配信元:FISCO
*10:54JST 中国、台湾総統「新二国論」に激しい抗議 日台関係に危機をもたらす石破発言(1)【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。


台湾の頼清徳総統は10月10日の「双十節」(建国記念日)式典演説で「中国には台湾を代表する権利はない」などと表明した。中国(大陸)はこれを「新二国論」として激しい抗議を展開している。台湾内でも国民党の馬英九元総統は事前に公表されていた頼清徳総統の主張に反対し、建国記念日祭典の出席を拒絶した。

そのような中、石破首相が李強首相との会談で「台湾問題は日中共同声明を堅持」(=独立反対)と明言したことが台湾で「日台関係に危機をもたらす」と危険視されている。

中文圏のネット民の間には「石破茂に対する不信感」広がっている。

◆双十節における頼清徳総統の演説
1911年10月10日に辛亥革命が勃発し1912年1月1日に「中華民国」が誕生するが、台湾はこの辛亥革命勃発の日を今も「中華民国」の建国記念日として祝賀する。「10」が二つあることから「双十節」とも呼ぶ。

今年、113回目の「双十節」式典において、頼清徳総統が総統就任後初めての「双十節」演説(※2)で、「中華人民共和国(中国)には台湾を代表する権利はない」と表明した。

それ以外にも両岸関係(中台関係)に関して概ね以下のような発言をしている。

●中華民国はかつて国際社会から追放されたが、台湾国民は一度も自国を放棄したことはない。

●現在、中華民国は台湾本島・澎湖島・金門馬祖に根を下ろしており、中華人民共和国には属しておらず、この地では民主主義と自由が栄えている。

●台湾は国家主権を堅持しており、中国による侵犯と併合を許さない。(以上)

頼清徳総統は10月5日に開催された「双十節」記念ベントでも「中華人民共和国は中華民国の祖国になり得ない」と述べており、その理由として「中華人民共和国は10月1日に75歳の誕生日を迎えたばかりだが、数日後に中華民国は113歳の誕生日を迎える」ことを挙げた。すなわち、中華人民共和国の方が若いのだから、「祖国」と言うのなら、「中華人民共和国の祖国が中華民国」と言えると皮肉ったわけだ。

そうでなくとも頼清徳総統は今年5月の就任演説で、「中華民国と中華人民共和国は互いに隷属しない」と述べている。

したがって「双十節」式典で、頼清徳総統が何を言うかは事前にわかっていたので、台湾の国民党の馬英九元総統は、抗議を表明するために当日になって式典の出席を拒絶した。

◆激しく燃え上がる中国大陸における頼清徳「新二国論」への批判
10月10日、中国のありとあらゆる報道機関は「頼清徳双十講和」に対する激しい批判報道を展開した。

国務院台湾事務弁公室(国台弁)は<頼清徳の“双十”講和は両岸の緊張を高め台湾海峡の平和と安定を激しく破壊する>(※3)という見出しで、双十講和を激しく批判した。

批判概要は主として以下のようなものである。

●頼清徳は講和の中で「互いに隷属しない」という「新二国論」を提唱し続け、「台湾独立」の誤謬を編み出し、分離主義的な見解を広め、海峡両岸間の敵意と対立を扇動した。これは、頼清徳が頑固に「台湾独立」の立場を堅持し、対立的な思考に満ち、絶えず挑発し、両岸の緊張を故意に悪化させ、台湾海峡の平和と安定を深刻に損なっていることを十分に表している。

●中華民族の偉大なる復興を実現することは、現代の中華民族の最大の夢であり、それは常に(台湾海峡)両岸の同胞の未来と運命に影響を与えるものである。1840年のアヘン戦争後、外国の侵略を打ち負かし、民族解放に努め、民族統一を実現するために、中国人民は次々と前進し闘ってきた。

●台湾は古くから中国の神聖なる領土であり、近代には外国の侵略軍に侵略され占領されて、台湾の民衆は大きな苦しみを味わった。1945年、中国人民は抗日戦争で大勝利を収め、それに伴い台湾は失地を回復した。1949年以降、中国の内戦の継続と外部勢力の干渉により、海峡両岸は長期にわたる政治的対立の特殊な状態に陥ったが、台湾は常に中国の領土の一部分であり、台湾の同胞は常に中華民族の一員であり、中華人民共和国政府は常に台湾を含む中国全土を代表する唯一の正当な政府であり、中国は常にすべての中国人民の偉大な祖国であり、一つの中国の原則を堅持することは常に国際社会の普遍的なコンセンサスである。

●頼清徳は故意に国を分裂させる根拠を寄せ集め、「台湾独立」の命題を強引に植え付け、「民主主義対権威主義」という古い概念をくり返し、「民主と自由」を装って「外国に頼って独立を謀り」、「武力による独立を求める」ことを続け、台湾を「台湾独立」という戦車に結びつけようと試みているた。

●頼清徳が何と言おうと、台湾が中国の一部としての法的地位と、海峡両岸が一つの中国に属しているという事実と現状を変えることはできない。われわれには、祖国の完全な統一を実現する自信と能力がある。いかなる人も、いかなる勢力も、民族の復興と国家統一という歴史的な大勢を阻むことはできない。われわれは「一つの中国」原則と「92年コンセンサス」を堅持し、広範な台湾同胞大衆と団結し、「台湾独立」分裂主義行為と外国の干渉とたくらみに反対し、両岸交流と協力を積極的に推進し、両岸の統合と発展を引き続き深化させ、祖国の統一を断固として推進する。(国台弁の抗議概要は以上)

同様の抗議を中央テレビ局CCTV(※4)も報道し、さらに数えきれないほどの特集番組を展開して、中国側に立つ海外の見識者や政治家の賛同なども報道した。

見識者の多くは「1971年10月25日の国連総会において通過した【第2758号決議】を重視すべきで、中華人民共和国はその決議により『中国を代表する唯一の国家』として認められたのだから、それを覆さない限り中華民国を国家として認めるのは国連決議に違反する」と主張した。

言うまでもなく、中国の外交部も10月10日の定例記者会見(※5)で頼清徳の講和を徹底して批判し、「いかなる事態になっても中国の意思は変わらない」と断言した。

石破首相が中国の李強首相と会談したのは、まさにこの真っただ中だったので、10月11日のコラム<石破首相、李強首相との会談で台湾問題に関し「日本は日中共同声明で定められた立場を堅持」と誓う>(※6)のような事態になったのは、中国としては、どんなに歓迎すべきことだったか、想像に難くない。


この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※7)より転載しました。

「中国、台湾総統「新二国論」に激しい抗議 日台関係に危機をもたらす石破発言(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。

「双十節」式典で演説する台湾の頼清徳総統(写真:ロイター/アフロ)

(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://www.youtube.com/watch?v=2J5Cz9tBzV4
(※3)http://www.news.cn/tw/20241010/cfbabbb57f514762928ff3463d4a17af/c.html
(※4)https://tv.cctv.com/2024/10/10/VIDELrcxu3PeuTEjRnv7EnQJ241010.shtml
(※5)https://www.mfa.gov.cn/web/wjdt_674879/fyrbt_674889/202410/t20241010_11504884.shtml
(※6)https://grici.or.jp/5675
(※7)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/9c369c86038e2dc965dbde9d8b163fdb596830fe



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