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三菱HCキャ Research Memo(13):2023年5月に中期経営計画「2025中計」を公表
配信日時:2023/10/16 12:13
配信元:FISCO
*12:13JST 三菱HCキャ Research Memo(13):2023年5月に中期経営計画「2025中計」を公表
■成長戦略
1. 10年後のありたい姿の実現に向けた「2025中計」
三菱HCキャピタル<8593>は、2021年4月の経営統合時に計画した2年間の統合作業が予定どおりに完了し、2023年5月に2023~2025年度中期経営計画(「2025中計」)を公表した。
2022年5月に「10年後のありたい姿」として掲げた「未踏の未来へ、ともに挑むイノベーター」の実現に向けて、「2025中計」では、データなど有形・無形のアセットの潜在価値を最大限に活用したサービスや事業経営を推進することで「ビジネスモデルの進化・積層化」を進めるとともに、バランスシートの最適化を実現することで中長期的な企業価値の向上を目指すとした。そして、「2025中計」は、「10年後のありたい姿」の実現に向けた3次(ホップ・ステップ・ジャンプ)にわたる中期経営計画のホップの時期(後続のステップ・ジャンプに向けた飛躍につながる種まきと足場固め)に位置付けた。
「2025中計」の財務目標としては、最終年度にあたる2026年3月期の純利益が1,600億円(2023年3月期比CAGR(年平均成長率)11.2%)、純利益ベースのROAは1.5%程度(2023年3月期比+0.4ポイント程度)、ROEは10.0%程度(同+1.8ポイント程度)とした。「2025中計」期間中の配当性向は40%以上、財務の健全性はA格の維持を目標とした。
また、非財務目標としては、人的資本・知的資本関連では女性管理職比率20%以上など、製造資本・自然資本・社会関係資本関連ではGHG(温室効果ガス)排出量(Scope1,2)を2030年度に2019年度比55%削減することなどを掲げた。一部に定性的な目標にとどまっているKPIもあるが、「2025中計」期間中に各種体制整備や施策実行を推進する予定である。
「ビジネスモデルの進化・積層化」に向けた事業戦略としては、現在の主力の(1)カスタマーファイナンス及び(2)アセットファイナンスにとどまらず、その強固な顧客基盤を維持・拡大しつつ、サービス収益も加えた(3)ファイナンス+サービス、データを活用した(4)データ活用プラットフォームサービス、さらに、アセットを活用した事業経営の(5)アセット活用事業へと、従来のリース業や金融サービスの枠を超えた高付加価値サービスにシフト、事業領域の拡大、新ビジネスの開発などを推進する。そして、(3)~(5)を中長期的な成長ドライバーに育成し、アセットを大きく拡大することなく純利益の成長を図り、ROAとROEの向上につなげる方針としている。
セグメント別事業戦略として、カスタマーソリューションは、盤石な顧客基盤の確立とデータ・デジタル活用による新営業プロセス構築、さらには、協業ビジネスの創出などにより、事業ポートフォリオ変革を実現する。海外地域は、地域特性を捉えた経営資源の戦略的配分や、脱炭素ビジネス(EV、充電ステーション、ソーラー発電など)の強化により、収益性を向上させる。航空は、航空機/エンジンリースの競争力ある業界トップクラスのポートフォリオを堅持しつつ、グループシナジー深化による収益の早期回復や新事業基盤の開拓を図る。ロジスティクスは、事業基盤のさらなる強化と新規事業開拓を進め、物流分野における社会的課題の解決に貢献する。環境エネルギーは、国内トップクラスの再生可能エネルギー事業者のポジションを堅持しつつ、蓄電池ビジネスや発電側アグリゲーションなど、事業領域の拡大により付加価値を向上させる。不動産は、環境・社会配慮型アセットへの投融資や、開発強化を通じたバリューアップ力の向上による事業機会の創出を推進し、サステナブルな社会基盤づくりに貢献する。モビリティは、社会の脱炭素化ニーズを踏まえ、EV導入・運用に必要な機能(充電設備網の構築、車載バッテリー再利用、再生可能エネルギー供給など)を広範囲に提供できる統合型サービスの構築・事業化を推進し、収益の拡大を図る。
さらに、経営基盤強化戦略として、人材の育成・確保、財務基盤・社内基盤の強靭化、コーポレート・ガバナンス体制の強化、ステークホルダーエンゲージメントの向上を主要施策として推進する。
配当性向40%以上を維持
2. 株主還元
同社は、株主還元について、配当によって行うことを基本とし、持続的な利益成長を通じて、結果として配当総額を高める方針としている。この方針に基づき、2023年3月期の1株当たり配当金は33.0円(配当性向40.8%)とした。また、「2025中計」期間中の配当性向は40%以上として、2024年3月期の1株当たり年間配当金予想を前期比4円増配の37.0円としている。純利益1,200億円に対して1株当たり配当金37.0円となり、予想配当性向は44.3%となる。
安定的な投資対象として評価、成長戦略の進捗に注目
3. 弊社の視点
同社の特徴・強みは、圧倒的とも言える強固な顧客基盤と資金調達力にあり、配当性向40%以上という株主還元方針も考慮すると、それだけで安定的な投資対象として評価できると弊社では考えている。さらに、「2025中計」では最終年度にあたる2026年3月期の純利益において1,600億円という意欲的な目標を打ち出した。従来のリース・ローン取引にとどまるのであれば、ハードルの高い目標と考えられるが、ビジネスモデル・事業ポートフォリオ変革により、従来のリース業や金融サービスの枠を超えた高付加価値サービスへのシフトを推進することで、その強固な顧客基盤・事業基盤を活用して目標を達成できると期待される。このため、投資家の関心が一段と高まる可能性があり、「2025中計」初年度の2024年3月期の成長戦略の進捗に注目したいと弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
<SO>
1. 10年後のありたい姿の実現に向けた「2025中計」
三菱HCキャピタル<8593>は、2021年4月の経営統合時に計画した2年間の統合作業が予定どおりに完了し、2023年5月に2023~2025年度中期経営計画(「2025中計」)を公表した。
2022年5月に「10年後のありたい姿」として掲げた「未踏の未来へ、ともに挑むイノベーター」の実現に向けて、「2025中計」では、データなど有形・無形のアセットの潜在価値を最大限に活用したサービスや事業経営を推進することで「ビジネスモデルの進化・積層化」を進めるとともに、バランスシートの最適化を実現することで中長期的な企業価値の向上を目指すとした。そして、「2025中計」は、「10年後のありたい姿」の実現に向けた3次(ホップ・ステップ・ジャンプ)にわたる中期経営計画のホップの時期(後続のステップ・ジャンプに向けた飛躍につながる種まきと足場固め)に位置付けた。
「2025中計」の財務目標としては、最終年度にあたる2026年3月期の純利益が1,600億円(2023年3月期比CAGR(年平均成長率)11.2%)、純利益ベースのROAは1.5%程度(2023年3月期比+0.4ポイント程度)、ROEは10.0%程度(同+1.8ポイント程度)とした。「2025中計」期間中の配当性向は40%以上、財務の健全性はA格の維持を目標とした。
また、非財務目標としては、人的資本・知的資本関連では女性管理職比率20%以上など、製造資本・自然資本・社会関係資本関連ではGHG(温室効果ガス)排出量(Scope1,2)を2030年度に2019年度比55%削減することなどを掲げた。一部に定性的な目標にとどまっているKPIもあるが、「2025中計」期間中に各種体制整備や施策実行を推進する予定である。
「ビジネスモデルの進化・積層化」に向けた事業戦略としては、現在の主力の(1)カスタマーファイナンス及び(2)アセットファイナンスにとどまらず、その強固な顧客基盤を維持・拡大しつつ、サービス収益も加えた(3)ファイナンス+サービス、データを活用した(4)データ活用プラットフォームサービス、さらに、アセットを活用した事業経営の(5)アセット活用事業へと、従来のリース業や金融サービスの枠を超えた高付加価値サービスにシフト、事業領域の拡大、新ビジネスの開発などを推進する。そして、(3)~(5)を中長期的な成長ドライバーに育成し、アセットを大きく拡大することなく純利益の成長を図り、ROAとROEの向上につなげる方針としている。
セグメント別事業戦略として、カスタマーソリューションは、盤石な顧客基盤の確立とデータ・デジタル活用による新営業プロセス構築、さらには、協業ビジネスの創出などにより、事業ポートフォリオ変革を実現する。海外地域は、地域特性を捉えた経営資源の戦略的配分や、脱炭素ビジネス(EV、充電ステーション、ソーラー発電など)の強化により、収益性を向上させる。航空は、航空機/エンジンリースの競争力ある業界トップクラスのポートフォリオを堅持しつつ、グループシナジー深化による収益の早期回復や新事業基盤の開拓を図る。ロジスティクスは、事業基盤のさらなる強化と新規事業開拓を進め、物流分野における社会的課題の解決に貢献する。環境エネルギーは、国内トップクラスの再生可能エネルギー事業者のポジションを堅持しつつ、蓄電池ビジネスや発電側アグリゲーションなど、事業領域の拡大により付加価値を向上させる。不動産は、環境・社会配慮型アセットへの投融資や、開発強化を通じたバリューアップ力の向上による事業機会の創出を推進し、サステナブルな社会基盤づくりに貢献する。モビリティは、社会の脱炭素化ニーズを踏まえ、EV導入・運用に必要な機能(充電設備網の構築、車載バッテリー再利用、再生可能エネルギー供給など)を広範囲に提供できる統合型サービスの構築・事業化を推進し、収益の拡大を図る。
さらに、経営基盤強化戦略として、人材の育成・確保、財務基盤・社内基盤の強靭化、コーポレート・ガバナンス体制の強化、ステークホルダーエンゲージメントの向上を主要施策として推進する。
配当性向40%以上を維持
2. 株主還元
同社は、株主還元について、配当によって行うことを基本とし、持続的な利益成長を通じて、結果として配当総額を高める方針としている。この方針に基づき、2023年3月期の1株当たり配当金は33.0円(配当性向40.8%)とした。また、「2025中計」期間中の配当性向は40%以上として、2024年3月期の1株当たり年間配当金予想を前期比4円増配の37.0円としている。純利益1,200億円に対して1株当たり配当金37.0円となり、予想配当性向は44.3%となる。
安定的な投資対象として評価、成長戦略の進捗に注目
3. 弊社の視点
同社の特徴・強みは、圧倒的とも言える強固な顧客基盤と資金調達力にあり、配当性向40%以上という株主還元方針も考慮すると、それだけで安定的な投資対象として評価できると弊社では考えている。さらに、「2025中計」では最終年度にあたる2026年3月期の純利益において1,600億円という意欲的な目標を打ち出した。従来のリース・ローン取引にとどまるのであれば、ハードルの高い目標と考えられるが、ビジネスモデル・事業ポートフォリオ変革により、従来のリース業や金融サービスの枠を超えた高付加価値サービスへのシフトを推進することで、その強固な顧客基盤・事業基盤を活用して目標を達成できると期待される。このため、投資家の関心が一段と高まる可能性があり、「2025中計」初年度の2024年3月期の成長戦略の進捗に注目したいと弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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