注目トピックス 市況・概況
来週の相場で注目すべき3つのポイント:ジャクソンホール会議、米エヌビディア決算、中国・香港株の動向
配信日時:2023/08/19 17:44
配信元:FISCO
*17:44JST 来週の相場で注目すべき3つのポイント:ジャクソンホール会議、米エヌビディア決算、中国・香港株の動向
■株式相場見通し
予想レンジ:上限32000円-下限31000円
来週の東京株式市場は神経質な展開か。国内では主要企業の決算発表が一巡し、重要な経済指標の発表もないため、ほとんど手掛かり材料がない。海外でも材料はさほど多くなく、最大の注目イベントである国際経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」でのパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演は日本時間25日の午後11時頃と、週末の立ち会いを終えた後になる。このため、週末まで模様眺めムードが強く、その間は引き続き日米の長期金利や為替に神経質な展開となりそうだ。
米10年債利回りは17日、一時4.33%まで上値を伸ばしたが、その後4.23%程度にまで水準を切り下げ、上昇に一服感が見られている。また、今週に入って再び上昇した国内の10年物国債利回りも、3日に付けた0.655%水準にまで17日に上昇した後は一服している。18日に発表された注目の7月全国消費者物価指数(CPI)は、生鮮食品とエネルギーを除いたコアコア指数が前年同月比+4.3%と前回6月分(+4.2%)から拡大したものの、市場予想並みにとどまったことで、日本銀行の追加の政策修正観測が高まる展開には至っていない。
ただ、ジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の発言次第では日米の長期金利の上昇が再開する可能性はある。市場はFRBの金融政策について、次回9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では約9割の確率で据え置きを予想している一方、11月のFOMCでは0.25ポイントの利上げを約3割の確率で織り込んでいる。ただ、7月FOMC議事要旨や直近のFRB高官の発言も踏まえると、利上げの織り込みが不十分にもみえる。また、市場は来年前半からのFRBの利下げ転換を織り込んでいるが、これもやや楽観的な印象を抱く。パウエル議長の講演では、こうした市場の見方を転換させるような発言があるかどうかが重要なポイントになりそうだ。
さらに、今年のジャクソンホール会議のテーマは「世界経済の構造変化」である。景気や物価への影響が中立的な金利水準とされる自然利子率について言及があるかどうかも注目点だ。米国の自然利子率は実は従来考えられていた水準より高いところにあるのではないかという議論が増えてきている。こうしたなか、パウエル議長が、自然利子率が上昇している可能性を示唆した場合には、「金融引き締めの長期化」「利下げ転換はかなり先」といったタカ派なメッセージを市場に伝える可能性があり、注意が必要だ。
ほか、23日には米半導体企業のエヌビディアが決算を発表する。生成AI(人工知能)ブームの火付け役となった同社の決算と株価反応は、足元の相場調整がより本格的なものになるのか、それとも調整が終了し上昇トレンドを再開させるのかを左右する程の大きな影響力を持つと思われる。ただ、同社の株価は高値から多少調整したとはいえ、バリュエーションは前回決算以降に大幅に切り上がっており、投資家の期待を超えて再び高値を更新するハードルはかなり高いと考えられる。
17日、ナスダック指数やS&P500種株価指数に続いて、ダウ平均も遂に50日移動平均線を終値ベースで割り込んだ。日経平均も75日線や13週線を割り込んでいるため、日米ともにトレンドの転換は鮮明だ。マネーフロー(資金の流れ)など相場の基調自体は悪化していると思われ、注意が必要な局面に入ってきている。調整が始まるまでの間、日米ともに先行きについては楽観的な見方が広がり、信用買いなどレバレッジを拡大させてきた経緯もある。このため、マネーフローの変化は簡単には止みそうになさそうだ。米エヌビディアの決算にこうしたトレンドを転換させるだけの力があるかどうかと問われれば、やや注意を要すると考える。
相場は引き続きボラティリティー(変動率)の高い神経質な展開が続きそうだ。こうしたなか、株式ポートフォリオのリスクを最小化するような戦略を用いた「iシェアーズMSCI日本株最小分散ETF(上場投資信託)」に組み入れられている銘柄への投資などが一考に値しよう。一方、中小型グロース(成長)株で必要以上に売られているような銘柄が多く見られるが、日米の長期金利の先高観がくすぶるなか、こうした関連銘柄への押し目買いについては、今はぐっと堪えるべきと考える。
■為替市場見通し
来週のドル・円は伸び悩みか。米連邦準備制度理事会(FRB)は金融引き締めの方針を維持しており、年内追加利上げを想定したドル買いは継続する可能性がある。ただ、日本政府・日本銀行による為替介入への警戒感は消えていないため、リスク選好的な円売りはある程度抑制されそうだ。足元の米経済指標は強弱まちまちながら、外為市場は生産者物価指数(PPI)や小売売上高などの強いデータに着目。米国経済の堅調さを背景に、FRBは引き締め政策を継続するとの見方を強めている。
7月25-26日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨によると、ほとんどの当局者が目先のインフレ率再加速を予想。利上げ継続の方針を正当化するとみていたことが明らかになり、ドル買いを支えている。ただ、パウエルFRB議長のジャクソンホール会合での講演で、金融政策や経済見通しなどで新味が乏しければリスク選好的なドル買いはやや後退する見通し。ドル・円は昨年11月以来の146円台に浮上したが、なお上昇余地があるか見極める展開となりそうだ。
■来週の注目スケジュール
8月21日(月):中・ローンプライムレート(LPR)、米・トランプ前大統領が記者会見、など
8月22日(火):日・基調的なインフレ率を捕捉するための指標(日本銀行)、米・中古住宅販売件数(7月)、米・シカゴ連銀総裁がイベントで開会の挨拶、など
8月23日(水):日・欧・米・総合PMI(8月)、米・新築住宅販売件数(7月)、米・共和党大統領選候補者討論会、独・国際ゲーム見本市「ゲームズコム」(27日まで)、米・決算発表:アナログ・デバイセズ、エヌビディア、スノーフレーク、など
8月24日(木):トルコ・中央銀行が政策金利発表、米・耐久財受注(7月)、米・カンザスシティー連銀主催の国際経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」(26日まで)、など
8月25日(金):日・東京CPI(8月)、日・企業向けサービス価格指数(7月)、全国百貨店売上高(7月)、独・IFO企業景況感指数(8月)、米・ミシガン大学消費者マインド指数(8月)、米・パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長がジャクソンホール会議で講演、など
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予想レンジ:上限32000円-下限31000円
来週の東京株式市場は神経質な展開か。国内では主要企業の決算発表が一巡し、重要な経済指標の発表もないため、ほとんど手掛かり材料がない。海外でも材料はさほど多くなく、最大の注目イベントである国際経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」でのパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演は日本時間25日の午後11時頃と、週末の立ち会いを終えた後になる。このため、週末まで模様眺めムードが強く、その間は引き続き日米の長期金利や為替に神経質な展開となりそうだ。
米10年債利回りは17日、一時4.33%まで上値を伸ばしたが、その後4.23%程度にまで水準を切り下げ、上昇に一服感が見られている。また、今週に入って再び上昇した国内の10年物国債利回りも、3日に付けた0.655%水準にまで17日に上昇した後は一服している。18日に発表された注目の7月全国消費者物価指数(CPI)は、生鮮食品とエネルギーを除いたコアコア指数が前年同月比+4.3%と前回6月分(+4.2%)から拡大したものの、市場予想並みにとどまったことで、日本銀行の追加の政策修正観測が高まる展開には至っていない。
ただ、ジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の発言次第では日米の長期金利の上昇が再開する可能性はある。市場はFRBの金融政策について、次回9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では約9割の確率で据え置きを予想している一方、11月のFOMCでは0.25ポイントの利上げを約3割の確率で織り込んでいる。ただ、7月FOMC議事要旨や直近のFRB高官の発言も踏まえると、利上げの織り込みが不十分にもみえる。また、市場は来年前半からのFRBの利下げ転換を織り込んでいるが、これもやや楽観的な印象を抱く。パウエル議長の講演では、こうした市場の見方を転換させるような発言があるかどうかが重要なポイントになりそうだ。
さらに、今年のジャクソンホール会議のテーマは「世界経済の構造変化」である。景気や物価への影響が中立的な金利水準とされる自然利子率について言及があるかどうかも注目点だ。米国の自然利子率は実は従来考えられていた水準より高いところにあるのではないかという議論が増えてきている。こうしたなか、パウエル議長が、自然利子率が上昇している可能性を示唆した場合には、「金融引き締めの長期化」「利下げ転換はかなり先」といったタカ派なメッセージを市場に伝える可能性があり、注意が必要だ。
ほか、23日には米半導体企業のエヌビディアが決算を発表する。生成AI(人工知能)ブームの火付け役となった同社の決算と株価反応は、足元の相場調整がより本格的なものになるのか、それとも調整が終了し上昇トレンドを再開させるのかを左右する程の大きな影響力を持つと思われる。ただ、同社の株価は高値から多少調整したとはいえ、バリュエーションは前回決算以降に大幅に切り上がっており、投資家の期待を超えて再び高値を更新するハードルはかなり高いと考えられる。
17日、ナスダック指数やS&P500種株価指数に続いて、ダウ平均も遂に50日移動平均線を終値ベースで割り込んだ。日経平均も75日線や13週線を割り込んでいるため、日米ともにトレンドの転換は鮮明だ。マネーフロー(資金の流れ)など相場の基調自体は悪化していると思われ、注意が必要な局面に入ってきている。調整が始まるまでの間、日米ともに先行きについては楽観的な見方が広がり、信用買いなどレバレッジを拡大させてきた経緯もある。このため、マネーフローの変化は簡単には止みそうになさそうだ。米エヌビディアの決算にこうしたトレンドを転換させるだけの力があるかどうかと問われれば、やや注意を要すると考える。
相場は引き続きボラティリティー(変動率)の高い神経質な展開が続きそうだ。こうしたなか、株式ポートフォリオのリスクを最小化するような戦略を用いた「iシェアーズMSCI日本株最小分散ETF(上場投資信託)」に組み入れられている銘柄への投資などが一考に値しよう。一方、中小型グロース(成長)株で必要以上に売られているような銘柄が多く見られるが、日米の長期金利の先高観がくすぶるなか、こうした関連銘柄への押し目買いについては、今はぐっと堪えるべきと考える。
■為替市場見通し
来週のドル・円は伸び悩みか。米連邦準備制度理事会(FRB)は金融引き締めの方針を維持しており、年内追加利上げを想定したドル買いは継続する可能性がある。ただ、日本政府・日本銀行による為替介入への警戒感は消えていないため、リスク選好的な円売りはある程度抑制されそうだ。足元の米経済指標は強弱まちまちながら、外為市場は生産者物価指数(PPI)や小売売上高などの強いデータに着目。米国経済の堅調さを背景に、FRBは引き締め政策を継続するとの見方を強めている。
7月25-26日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨によると、ほとんどの当局者が目先のインフレ率再加速を予想。利上げ継続の方針を正当化するとみていたことが明らかになり、ドル買いを支えている。ただ、パウエルFRB議長のジャクソンホール会合での講演で、金融政策や経済見通しなどで新味が乏しければリスク選好的なドル買いはやや後退する見通し。ドル・円は昨年11月以来の146円台に浮上したが、なお上昇余地があるか見極める展開となりそうだ。
■来週の注目スケジュール
8月21日(月):中・ローンプライムレート(LPR)、米・トランプ前大統領が記者会見、など
8月22日(火):日・基調的なインフレ率を捕捉するための指標(日本銀行)、米・中古住宅販売件数(7月)、米・シカゴ連銀総裁がイベントで開会の挨拶、など
8月23日(水):日・欧・米・総合PMI(8月)、米・新築住宅販売件数(7月)、米・共和党大統領選候補者討論会、独・国際ゲーム見本市「ゲームズコム」(27日まで)、米・決算発表:アナログ・デバイセズ、エヌビディア、スノーフレーク、など
8月24日(木):トルコ・中央銀行が政策金利発表、米・耐久財受注(7月)、米・カンザスシティー連銀主催の国際経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」(26日まで)、など
8月25日(金):日・東京CPI(8月)、日・企業向けサービス価格指数(7月)、全国百貨店売上高(7月)、独・IFO企業景況感指数(8月)、米・ミシガン大学消費者マインド指数(8月)、米・パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長がジャクソンホール会議で講演、など
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