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中国7月経済指標、予想下回る 景気一段と減速

配信日時:2023/08/15 11:32 配信元:REUTERS

[北京 15日 ロイター] - 中国国家統計局が15日に発表した7月の一連の経済指標は、さらなる景気減速を示す内容となった。

経済への圧力が強まっており、指標発表直前には中国人民銀行(中央銀行)が景気を支えるため中期貸出制度(MLF)金利を予想外に引き下げた。だが成長を押し上げるには一段の支援措置が必要との声がアナリストから聞かれた。

7月の鉱工業生産は前年比3.7%増加し、伸び率は前月の4.4%を下回り、ロイターがまとめたアナリスト予想の4.4%にも届かなかった。

7月の小売売上高は前年比2.5%増で、前月の3.1%増から鈍化した。アナリスト予想は4.5%増だった。

1─7月の固定資産投資は前年同期比3.4%増だった。予想は3.8%増。1─6月は3.8%増だった。

中国では不動産部門の低迷が続いているほか、地方政府の債務拡大、若者の高失業率、外需の鈍化が持続的な景気回復を妨げる要因となっている。

キャピタル・エコノミクスのエコノミスト、ジュリアン・エバンス・プリチャード氏は「7月は全ての主要な経済活動指標がコンセンサス予想を下回った。前月比では大半が停滞、もしくはほとんど拡大していない」と指摘。

同氏は、碧桂園など不動産開発会社の財務問題が目先、住宅市場の重しになる公算が大きく、政策支援を近く強化しなければ景気後退に陥る可能性があると語った。

野村のアナリストも「中国経済は下降スパイラルに陥っており、最悪の事態はまだこれからだろう。今朝のMLF金利引き下げは限定的な効果にとどまる」と悲観的な見方を示した。

ジョーンズ・ラング・ラサールのチーフエコノミスト、ブルース・パン氏は「今日の統計では、中国経済が逆風を受けて進むのがいかに難しいかが明らかになった。ほぼあらゆる次元で課題を抱えており、効果的な政策は少ない」と述べた。

エコノミストの多くは中国経済の下振れリスクを指摘しているが、リセッション(景気後退)は予想していない。

全国の調査ベースの失業率は5.3%。6月は5.2%だった。

国家統計局の報道官は15日、8月から若者の失業率データの発表を停止すると表明。雇用統計をさらに改善すると述べた。

7月の不動産投資は17カ月連続で減少し、販売も25カ月連続の前年割れとなった。

人民銀行は15日、一連の指標発表の直前、1年物のMLF金利を市場の予想に反して引き下げた。引き下げは過去3カ月で2度目となる。

市場筋によると、MLF金利の引き下げ後、主要国有銀行は急激な人民元安に歯止めをかけるため、ドル売り/人民元買いを行ったもよう。

中国の国債利回りは3年ぶりの水準に低下したが、主要株価指数は小幅安にとどまっている。追加景気対策への期待が浮上している可能性がある。

華宝信託のエコノミスト、ニー・ウェン氏は、特別国債が緊急に導入されると予想し、預金準備率が近く引き下げられる可能性は比較的大きいと述べた。

新型コロナウイルス対策終了による恩恵を受けた外食産業は7月の売上高の伸びが前月から減速した。1─7月の民間部門の投資は0.5%減と、1─6月の0.2%減からマイナス幅が拡大した。

INGのアジア太平洋地域調査責任者、ロバート・カーネル氏は、借り入れで景気を刺激し不動産セクターがけん引する経済から、消費者主導の経済への痛みを伴う移行期にあると分析した。

「当面は弱いマクロデータが続くだろう」とし「これは調整に必要で、借り入れによって支えられたこれまでの不動産主導モデルを復活させるよりはるかに望ましい」との見方を示した。中国の成長に対する期待値を下げる必要があるとも述べた。

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