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システム ディ Research Memo(5):学園ソリューション及びウェルネスソリューション事業が増収に転じる(2)
配信日時:2023/07/10 13:55
配信元:FISCO
*13:55JST システム ディ Research Memo(5):学園ソリューション及びウェルネスソリューション事業が増収に転じる(2)
■業績動向
(3) 公教育ソリューション事業
公教育ソリューション事業は公立の小・中・高校向けに統合型校務支援システム「School Engine」※をクラウドサービスで提供している。同じ学校向けでも、私立学校法人や独立行政法人である国公立大学を対象とする学園ソリューション事業とは事業環境が大きく異なる。違いの1つは自治体予算制度というものだ。公立学校は各自治体の教育委員会の管理下にあり、エリア内での共通予算はあっても1校当たりの予算は厳しい。こうした状況に適合するため、システム ディ<3804>は「School Engine」を初期投資負担の少ないクラウドサービスで提供することでシェアを拡大してきた。
※統合型校務支援システムとは、教務系(成績処理、出欠管理、時数管理等)・保健系(健康診断票、保健室来室管理等)、学籍系(指導要録等)、学校事務系などを統合した機能を有するシステムのこと。同社の「School Engine」はこれらの機能のほかに生徒や保護者とのメール連絡網、グループウェア機能などがオプションで用意されている。
営業先も学園ソリューション事業とは異なり、高校は各都道府県、小・中学校は各市町村の教育委員会が窓口となる。案件を落札できれば当該教育委員会の管轄下にある学校すべてに導入されることが多い※。入札公示時期は自治体によって異なるが、7~8月公示の場合は9~10月に落札事業者が決まり、翌年4月までに導入して運用開始となる。12~1月公示の場合は2~3月に落札、2学期が始まる9月から運用開始となる。
※高校については、自治体によって市立、県・府立、特別支援学校など導入対象を細分化して決めているところもある。例えば、同社が導入実績のある京都府では市立高校のみ、滋賀県では特別支援学校のみの導入となっている。
2023年10月期第2四半期累計の売上高は前年同期比7.9%増の802百万円と過去最高を連続更新した。前年同期のような大型案件の新規稼働こそなかったものの、2023年4月末の累計導入校数は前年同期比176校増加の3,918校(現役ユーザー数3,570校)となりストック収入の積み上げが増収要因となった。一方、営業利益率は仕入販売比率が上昇したことや、全国共通のカスタマイズ項目によるフロー収入が少なくなったこともあり前年同期の42.3%から31.3%に低下した。
公立高校の導入校数は1,700校を超え市場シェアで約5割※1とトップの地位を盤石なものとしている。公立高校で高シェアを確立した背景としては、約10年前に業界で初めてクラウド型校務支援システムの開発・提供を行ったことが大きい。ほかの自治体は導入実績を見て製品の採用可否を判断する傾向にあり、同社製品の利便性の良さやコストパフォーマンスが評価されたものと考えられる。一方、小・中学校向けに関しては後発だったこともあり、市場シェアは約6%と業界3~4番手となっている※2。
※1 文部科学省「学校基本調査」(令和4年度)によると、全国の公立高校数は3,489校、小・中学校数は28,015校。競合はSATT(株)、テクノコーポレーション(株)等。
※2 小・中学校向けは(株)EDUCOMが約3割のトップシェアを握り(9,100校超、2022年4月)、そのほかスズキ教育ソフト(株)、文溪堂<9471>などがある。
なお、奈良市教育委員会の協力のもとで開発を進めてきた保護者向け情報デジタル配信サービス「Home services」は、2021年4月より奈良市の一部の小・中学校向けに「School Engine」のオプション機能として運用が開始され、導入校数も徐々に広がっている。児童生徒に関する活動情報を学校から保護者にインターネットを通じて直接提供するサービスであり、今後は機能の改善を行いつつ、他の自治体の入札の際にはオプション機能として導入提案する考えである。料金については「School Engine」の利用料の2~3割程度を想定している。
文部科学省「学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(令和4年度)」によれば、2022年3月時点における全国の公立学校約3.2万校のうち、統合型校務支援システムを導入済みの学校は81.0%(うち、高校は93.1%)になっている。文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」では2022年度までに導入率100%を目標としており、2023年3月時点では9割を超える導入率になったものと思われる。このため、2023年度以降は新規導入校数の需要が一巡し、更新需要が中心となる見通しだ。同社では更新案件の受注獲得に加えて「Home services」のような新たなソリューションを開発・提供することでシェア拡大を目指す。
(4) 公会計ソリューション事業
公会計ソリューション事業では、地方自治体向けの公会計システム「PPP(トリプルピー)」※をパッケージ製品及びクラウドサービスで提供しているほか、地方公共団体向け「Common財務会計システム」を2021年3月にリリースした。「PPP」は2000年に初期バージョンを開発し、2008年にリリースした「Ver.3」で複式簿記を簡単に実施できる機能を業界で初めて搭載し、以降、改善を重ねながら導入自治体数を拡大してきた。現在は「Ver.5」を提供している。
※自治体会計(現金主義・単式簿記会計)を発生主義・複式簿記に基づいて公会計財務諸表と固定資産台帳を作成する機能を持つ。会計制度の新統一基準に完全対応したソフトウェア製品として業界に先駆けて開発したことで、トップシェアを握るまでに成長した。競合先としては、未上場のジャパンシステム(株)や(株)ぎょうせい、TKC<9746>のほか、各地域の開発ベンダーがある。
「Common財務会計システム」は「PPP」の開発ノウハウをもとに、適用範囲を予算編成・執行から決算、出納管理、公会計まで広げたシステムである。地方公共団体が行う「歳入歳出決算」「地方財政状況調査(決算統計)」「統一的な基準による財務書類」の3つの決算を同時に処理することで早期の決算確定が可能となるほか、予算編成の際にPDCAサイクルを実現する各種分析ツールを標準装備するなど、決算処理や予算編成の業務省力化・効率化を支援する。既存製品にはない先進的な考え方を取り入れた製品となっており、競争力は十分あると考えられる。
2023年10月期第2四半期累計の売上高は前年同期比30.6%減の297百万円と4期ぶりに減収に転じた。2023年4月末の累計導入自治体・関連団体数は前年同期比79団体増加の1,307団体(現役ユーザー数1,208団体)となったが、前期末からの純増数は22団体にとどまり、前年同期の68団体から大きく減少したことが減収要因となった。前年同期は2022年3月にサービスを終了した国策の競合製品(市場シェア約25%)からのリプレイス需要を、大規模自治体などから多く取り込めたことで売上高も急増したが、2023年10月期第2四半期はその反動でフロー売上が減少した。売上高の減少に伴い、営業利益率も前年同期の47.3%から33.2%に低下した。
「Common財務会計システム」については、現在、販促活動中で、予算取りや執行までの期間を考えると、2025年10月期以降から自治体での導入が進むものと同社では想定している。予算編成・執行などは単式簿記で今でも一般的に行われており、これを複式簿記に変えていくには時間がかかりそうだが、同社は公共法人3社で導入、運用している実績をもとに啓蒙活動を進める方針である。業務の適用範囲が広がるため、1団体当たりの売上規模が「PPP」の5~6倍程度になると見られ、今後の動向が注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<AS>
(3) 公教育ソリューション事業
公教育ソリューション事業は公立の小・中・高校向けに統合型校務支援システム「School Engine」※をクラウドサービスで提供している。同じ学校向けでも、私立学校法人や独立行政法人である国公立大学を対象とする学園ソリューション事業とは事業環境が大きく異なる。違いの1つは自治体予算制度というものだ。公立学校は各自治体の教育委員会の管理下にあり、エリア内での共通予算はあっても1校当たりの予算は厳しい。こうした状況に適合するため、システム ディ<3804>は「School Engine」を初期投資負担の少ないクラウドサービスで提供することでシェアを拡大してきた。
※統合型校務支援システムとは、教務系(成績処理、出欠管理、時数管理等)・保健系(健康診断票、保健室来室管理等)、学籍系(指導要録等)、学校事務系などを統合した機能を有するシステムのこと。同社の「School Engine」はこれらの機能のほかに生徒や保護者とのメール連絡網、グループウェア機能などがオプションで用意されている。
営業先も学園ソリューション事業とは異なり、高校は各都道府県、小・中学校は各市町村の教育委員会が窓口となる。案件を落札できれば当該教育委員会の管轄下にある学校すべてに導入されることが多い※。入札公示時期は自治体によって異なるが、7~8月公示の場合は9~10月に落札事業者が決まり、翌年4月までに導入して運用開始となる。12~1月公示の場合は2~3月に落札、2学期が始まる9月から運用開始となる。
※高校については、自治体によって市立、県・府立、特別支援学校など導入対象を細分化して決めているところもある。例えば、同社が導入実績のある京都府では市立高校のみ、滋賀県では特別支援学校のみの導入となっている。
2023年10月期第2四半期累計の売上高は前年同期比7.9%増の802百万円と過去最高を連続更新した。前年同期のような大型案件の新規稼働こそなかったものの、2023年4月末の累計導入校数は前年同期比176校増加の3,918校(現役ユーザー数3,570校)となりストック収入の積み上げが増収要因となった。一方、営業利益率は仕入販売比率が上昇したことや、全国共通のカスタマイズ項目によるフロー収入が少なくなったこともあり前年同期の42.3%から31.3%に低下した。
公立高校の導入校数は1,700校を超え市場シェアで約5割※1とトップの地位を盤石なものとしている。公立高校で高シェアを確立した背景としては、約10年前に業界で初めてクラウド型校務支援システムの開発・提供を行ったことが大きい。ほかの自治体は導入実績を見て製品の採用可否を判断する傾向にあり、同社製品の利便性の良さやコストパフォーマンスが評価されたものと考えられる。一方、小・中学校向けに関しては後発だったこともあり、市場シェアは約6%と業界3~4番手となっている※2。
※1 文部科学省「学校基本調査」(令和4年度)によると、全国の公立高校数は3,489校、小・中学校数は28,015校。競合はSATT(株)、テクノコーポレーション(株)等。
※2 小・中学校向けは(株)EDUCOMが約3割のトップシェアを握り(9,100校超、2022年4月)、そのほかスズキ教育ソフト(株)、文溪堂<9471>などがある。
なお、奈良市教育委員会の協力のもとで開発を進めてきた保護者向け情報デジタル配信サービス「Home services」は、2021年4月より奈良市の一部の小・中学校向けに「School Engine」のオプション機能として運用が開始され、導入校数も徐々に広がっている。児童生徒に関する活動情報を学校から保護者にインターネットを通じて直接提供するサービスであり、今後は機能の改善を行いつつ、他の自治体の入札の際にはオプション機能として導入提案する考えである。料金については「School Engine」の利用料の2~3割程度を想定している。
文部科学省「学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(令和4年度)」によれば、2022年3月時点における全国の公立学校約3.2万校のうち、統合型校務支援システムを導入済みの学校は81.0%(うち、高校は93.1%)になっている。文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」では2022年度までに導入率100%を目標としており、2023年3月時点では9割を超える導入率になったものと思われる。このため、2023年度以降は新規導入校数の需要が一巡し、更新需要が中心となる見通しだ。同社では更新案件の受注獲得に加えて「Home services」のような新たなソリューションを開発・提供することでシェア拡大を目指す。
(4) 公会計ソリューション事業
公会計ソリューション事業では、地方自治体向けの公会計システム「PPP(トリプルピー)」※をパッケージ製品及びクラウドサービスで提供しているほか、地方公共団体向け「Common財務会計システム」を2021年3月にリリースした。「PPP」は2000年に初期バージョンを開発し、2008年にリリースした「Ver.3」で複式簿記を簡単に実施できる機能を業界で初めて搭載し、以降、改善を重ねながら導入自治体数を拡大してきた。現在は「Ver.5」を提供している。
※自治体会計(現金主義・単式簿記会計)を発生主義・複式簿記に基づいて公会計財務諸表と固定資産台帳を作成する機能を持つ。会計制度の新統一基準に完全対応したソフトウェア製品として業界に先駆けて開発したことで、トップシェアを握るまでに成長した。競合先としては、未上場のジャパンシステム(株)や(株)ぎょうせい、TKC<9746>のほか、各地域の開発ベンダーがある。
「Common財務会計システム」は「PPP」の開発ノウハウをもとに、適用範囲を予算編成・執行から決算、出納管理、公会計まで広げたシステムである。地方公共団体が行う「歳入歳出決算」「地方財政状況調査(決算統計)」「統一的な基準による財務書類」の3つの決算を同時に処理することで早期の決算確定が可能となるほか、予算編成の際にPDCAサイクルを実現する各種分析ツールを標準装備するなど、決算処理や予算編成の業務省力化・効率化を支援する。既存製品にはない先進的な考え方を取り入れた製品となっており、競争力は十分あると考えられる。
2023年10月期第2四半期累計の売上高は前年同期比30.6%減の297百万円と4期ぶりに減収に転じた。2023年4月末の累計導入自治体・関連団体数は前年同期比79団体増加の1,307団体(現役ユーザー数1,208団体)となったが、前期末からの純増数は22団体にとどまり、前年同期の68団体から大きく減少したことが減収要因となった。前年同期は2022年3月にサービスを終了した国策の競合製品(市場シェア約25%)からのリプレイス需要を、大規模自治体などから多く取り込めたことで売上高も急増したが、2023年10月期第2四半期はその反動でフロー売上が減少した。売上高の減少に伴い、営業利益率も前年同期の47.3%から33.2%に低下した。
「Common財務会計システム」については、現在、販促活動中で、予算取りや執行までの期間を考えると、2025年10月期以降から自治体での導入が進むものと同社では想定している。予算編成・執行などは単式簿記で今でも一般的に行われており、これを複式簿記に変えていくには時間がかかりそうだが、同社は公共法人3社で導入、運用している実績をもとに啓蒙活動を進める方針である。業務の適用範囲が広がるため、1団体当たりの売上規模が「PPP」の5~6倍程度になると見られ、今後の動向が注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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