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中国、イラン・サウジ関係修復を仲介 その先には台湾平和統一と石油人民元(2)【中国問題グローバル研究所】

配信日時:2023/03/13 11:00 配信元:FISCO
*11:00JST 中国、イラン・サウジ関係修復を仲介 その先には台湾平和統一と石油人民元(2)【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「中国、イラン・サウジ関係修復を仲介 その先には台湾平和統一と石油人民元(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。

◆台湾平和統一に込めたシグナル
これは同時に、台湾平和統一に対して発信したシグナルであるということも見逃してはならない。

今年2月24日に中国はウクライナ戦争「和平案」を発表した。

2月27日のコラム<習近平のウクライナ戦争「和平論」の狙いは「台湾平和統一」  目立つドイツの不自然な動き>(※2)で書いたように、ウクライナ戦争「和平案」は、あくまでも「台湾平和統一」へのシグナルであって、その「和平案」で停戦に持って行けるか否かは大きな問題ではない。

来年1月の台湾の「中華民国」総統選に向けて、台湾の人々の多くが「中国(大陸)は平和を重んじている」と判断して、親中派の国民党が台湾民衆党と連携して勝利してくれれば、それでいいのである。

そうすれば習近平は任期内に「台湾平和統一」を成し遂げることができる。

今般の「中東係争国和睦の仲介」は、「中国がいかに平和を重んじているか」が台湾の選挙民に伝われば、それでいいのである。それが最大の目的であると言っても過言ではない。

その証拠に王毅は<サウジ・イランの北京対話は和平の勝利である>(※3)と述べ、中国がいかに「平和」のために行動しているかを印象付けようとしている。

◆なぜ3月10日を選んだのか?
それにしても、全人代開催中の3月6日に訪中し、3月10日に「中国・イラン・サウジ」3ヵ国声明を発表したのはなぜなのだろうか?

実は何としても、この「3月10日」を選びたかった強烈な理由がある。

それは「3月10日は習近平が全人代で国家主席に選出された日」だからだ。そのことは、サウジアラビア外交部の公式Twitterで発表された共同声明の英語版(※4)にも如実に表れ、習近平を尋常でなく褒めまくっていることからも窺うことができる。

◆こっけいなアメリカの釈明
中東における力を激減させてしまったアメリカは、不愉快でならないだろう。

3月10日、アメリカの国家安全保障会議のジョン・カービー戦略広報調整官は「イランは信用できないので、本当に約束を守るか否かは分からない」とした上で、「今回の和睦は中国だけの力だけではなく、イランに対する内外の圧力があったからだ」(※5)と表明した。「アメリカの圧力のお陰だ(=アメリカがイランを制裁したお陰だ)」という、信じられないような「いじめっ子自慢」をしている。

すなわち、「アメリカの制裁によりイランが苦しんだからこそ、イランは中国に助けを求めたのであって、アメリカが制裁を加えていなかったら中国が力を発揮することもなかったので、今回の和睦はアメリカのお陰だ」という「いじめっ子論理」を持ち込んできたのである。

これには唖然とするばかりで、「開いた口がふさがらない」とは、こういうことを言うのかと、言葉が見つからない。

今後アメリカは、中国が「平和路線を貫けないように」、台湾への内政干渉を強化して、どうしても台湾を武力攻撃せずにはいられないような状況に持って行くか、あるいは台湾における親中の国民党系列が総統選で勝てないように、民進党を応援して台湾独立を叫ぶ方向に持って行こうとするだろう。

日本は自国の国家安全を守るために自らの力で自国の軍事力を強化するのは悪いことではないが、戦争に持って行きたくてしょうがない「アメリカの論理」には巻き込まれないようにして欲しいと望む。しかし、ここまで日本のメディアが「アメリカの思考」に洗脳されてしまっている以上、日本人が「自分たちは洗脳されているんだ」ということに気が付くことは望めないかもしれないと、暗澹たる気持ちだ。

これこそが戦争へと歩む精神的基盤となっていく。

中国の言論弾圧には断固反対するが、日本国民が再び戦争に巻き込まれて命を失うのは、それ以上に反対だ。筆者のこの立場は『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』(※6)で明示した。

写真: ロイター/アフロ


(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://grici.or.jp/4065
(※3)https://www.mfa.gov.cn/zyxw/202303/t20230310_11039102.shtml
(※4)https://twitter.com/KSAmofaEN/status/1634180277764276227
(※5)https://www.cnbc.com/2023/03/10/arch-rivals-iran-and-saudi-arabia-agree-to-revive-ties-reopen-embassies.html
(※6)https://www.amazon.co.jp/dp/4408650242/


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