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アンジェス Research Memo(4):新型コロナウイルス感染症(武漢型)ワクチンの開発中止を発表
配信日時:2022/09/16 15:44
配信元:FISCO
■主要開発パイプラインの動向
アンジェス<4563>の主要開発パイプラインには、新型コロナウイルス感染症に対するDNAワクチン及び治療薬、HGF遺伝子治療用製品、NF-κBデコイオリゴDNA、高血圧DNAワクチン等がある。各パイプラインの概要と進捗状況、今後の開発方針は以下のとおり。
1. 新型コロナウイルス感染症予防ワクチン及び治療薬
(1) 新型コロナウイルス感染症ワクチン
同社は2022年9月7日付で新型コロナウイルス感染症(武漢型)向けDNAワクチンの開発中止と合わせて、変異株(オミクロンBA.5等)に対する改良型DNAワクチン並びにその経鼻投与製剤についての研究開始を発表した。
新型コロナウイルス感染症(武漢型)向けDNAワクチンについては、2020年3月より初期のワクチンの非臨床試験を開始し、第2/3相臨床試験まで開発を進めてきたが、2021年11月に初期のワクチンでは期待通りの効果を上げることが難しいとの判断に至り、2021年8月より初期のワクチンの薬剤濃度を上げた高容量製剤(以下、高容量製剤)を用いた第1/2相臨床試験を進めてきた。同試験に関する最終結果はまだ確定していないが、速報データにより初期のワクチンよりも免疫原性は増強したものの、筋肉内接種群と皮内接種群のいずれにおいても主要評価項目である「12週後のSARS-CoV-2のシュードウイルスに対する中和活性、及び12週後のSARS-CoV-2スバイク(S)糖タンパク質特異的抗体価」が期待する水準に達しなかったことが明らかとなったため、高容量製剤を含む初期のワクチンの開発中止を決定したとしている。なお、初期のワクチンの開発中止により、これまで共同研究に参画してきた大阪大学及びタカラバイオ、ダイセル、EPSグループ、ファンペップ、新日本科学等との初期のワクチンに関する共同研究も終了している。
一方で、これまでの研究開発の知見を生かして、プラスミド※の発現効率や導入効率の向上等、プラットフォームの見直しを行い、将来発生する可能性のある新たな変異株への対応も視野に入れ、安全でより効果の高い経鼻投与による改良型DNAワクチンの研究を開始することを決定しており、当面はオミクロン株の最新変異株(BA.5等)に対して有効なワクチンの研究開発を進めていくことにしている。経鼻投与製剤の研究開発を行うため、米スタンフォード大学医学部と共同研究契約も締結した。同大学が開発した「Gold-Nanostar Octopod」技術に着目し、同技術を活用して開発を進めていくことになる。同大学が同技術を用いて作製した経鼻投与ワクチン(武漢型の遺伝子配列を持つプラスミドDNA)でマウス実験を実施したところ、ワクチン投与後に血清中の抗体(IgG、IgA、IgM)上昇が確認されたほか、β株等の変異株に対しても中和活性を示したこと、組織学的な検討によりリンパ節・脾臓においてスパイクタンパク質に対する細胞性免疫反応、液性免疫反応が確認されたことなどから、同技術を用いて研究開発を行う価値はあると判断した。なお、共同研究の期間としてはおおむね3年程度、研究費は約3百万ドルを見込んでいる。
※プラスミド(plasmid)とは、大腸菌などの細菌や酵母の核外に存在し、細胞分裂によって娘細胞へ引き継がれるDNA分子の総称。一般的に環状の2本鎖構造を取り、染色体のDNAからは独立して複製を行う。その独立した遺伝子複製機構から、遺伝子組み換え操作のベクターとして創薬などで利用されている。このプラスミドを大腸菌に導入し、大腸菌の大量培養により目的のDNAを増幅する。プラスミド製法では、HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン(R)」が上市済みであり、製法そのものについての安全性は確認されている。
なお、今まで実施してきた初期のワクチンの研究開発費用については、国の補助金等で賄われてきた。具体的には、AMEDが2020年5月に公募した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」に採択され、研究開発費20億円(直接経費、研究開発期間:2020年6月−2021年3月)の支援を受けたほか、厚生労働省が公募した「令和2年度ワクチン生産体制等緊急整備事業」にも同年8月に採択され、約93億円の交付金(事業期間:2020年8月−2022年3月)を受けて、タカラバイオ<4974>が中心となって大規模生産体制の構築を進めてきた。さらに、AMEDが公募した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」(2次公募、研究開発予定期間:2020−2021年度目途)にも同年8月に採択されている(金額は非開示)。
一方、改良型DNAワクチンと経鼻投与製剤の研究費用は、当面の間は手元資金で充当していく予定にしており、研究開発の進捗を見極めながら資金の検討を行っていくことにしている。
これら採択を受けた補助金については入金がすべて完了しており、その一部は営業外収益として2021年12月期に1,399百万円、2022年12月期第2四半期累計に118百万円を補助金収入として計上している。残りの金額については前受金として貸借対照表の流動負債に計上されており、2022年12月期第2四半期末時点で5,764百万円となっている。今後、開発プロジェクトの実績報告書を関係当局に提出し、監査・承認を経て補助金等の金額が確定(補助金収入として計上)することになる。関係当局の年度末が3月のため、残額分の一部は2023年12月期に計上時期がずれ込む可能性もある。
国内でのワクチンは現状、ファイザー等の外資系企業からの調達に頼っているが、国産ワクチンの開発は必要との政府の方針のもと、2022年3月にワクチン開発推進の司令塔となる「先進的研究開発戦略センター(SCARDA)」が発足した。基礎研究から実用化に向けた開発までの戦略的な研究を国策として推進し、ワクチンの国産化を目指しており、ワクチンの開発ニーズが引き続き強い状況に変わりないことから、同社でも研究開発を継続していく方針だ。
(2) 新型コロナウイルス感染症治療薬「AV-001」の開発状況
カナダのVasomuneとの共同開発品である「AV-001」(Tie2受容体アゴニスト化合物)※は、もともと2018年より全世界を対象に急性呼吸不全など血管の不全を原因とする疾患を対象とした医薬品として共同開発を進めてきたものだが、中等度から重度の新型コロナウイルス感染症肺炎患者向けの治療薬としても効果があると判断し、2020年より米国で臨床試験を開始したものとなる。
※同社は2018年7月にVasomuneと、急性呼吸不全など血管の不全を原因とする疾患を対象とした「AV-001」の全世界を対象とした共同開発契約を締結した。開発費用と将来の収益を折半し、また、同社がVasomuneに対して契約一時金及び開発の進捗に応じたマイルストーンを支払う契約となっている。急性呼吸窮迫症候群の患者数は米国だけで26万人いる。
肺炎患者は、ウイルスの影響でTie2受容体の働きが抑制されることにより肺の血管機能が壊れ、肺胞に浸出液が入り込むことで肺炎を発症する。「AV-001」はTie2受容体の働きを活性化させる効果があり、これによって血管機能が正常化し肺胞に浸出液が入り込まなくなることで、炎症を沈静化させるメカニズムとなる。開発状況は、2022年1月より米国で前期第2相臨床試験を開始しており、今のところ順調に登録が進んでいる(目標症例数は約120例)。ただ、新型コロナウイルス感染症の変異株に関しては重症化するケースも少なくなってきており、また、肺炎による呼吸不全を起こす患者数も減少傾向にあることから、同社では今後の開発方針を再検討していくことにしている。
なお、「AV-001」の開発にあたっては、米国及びカナダの政府関係機関からVasomuneが助成金を獲得しており、開発費負担分に応じて同社もVasomuneから補助金の一部を受領している。2022年12月期第2四半期累計では補助金収入として84百万円(2021年12月期は100百万円)を営業外収益として計上した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<SI>
アンジェス<4563>の主要開発パイプラインには、新型コロナウイルス感染症に対するDNAワクチン及び治療薬、HGF遺伝子治療用製品、NF-κBデコイオリゴDNA、高血圧DNAワクチン等がある。各パイプラインの概要と進捗状況、今後の開発方針は以下のとおり。
1. 新型コロナウイルス感染症予防ワクチン及び治療薬
(1) 新型コロナウイルス感染症ワクチン
同社は2022年9月7日付で新型コロナウイルス感染症(武漢型)向けDNAワクチンの開発中止と合わせて、変異株(オミクロンBA.5等)に対する改良型DNAワクチン並びにその経鼻投与製剤についての研究開始を発表した。
新型コロナウイルス感染症(武漢型)向けDNAワクチンについては、2020年3月より初期のワクチンの非臨床試験を開始し、第2/3相臨床試験まで開発を進めてきたが、2021年11月に初期のワクチンでは期待通りの効果を上げることが難しいとの判断に至り、2021年8月より初期のワクチンの薬剤濃度を上げた高容量製剤(以下、高容量製剤)を用いた第1/2相臨床試験を進めてきた。同試験に関する最終結果はまだ確定していないが、速報データにより初期のワクチンよりも免疫原性は増強したものの、筋肉内接種群と皮内接種群のいずれにおいても主要評価項目である「12週後のSARS-CoV-2のシュードウイルスに対する中和活性、及び12週後のSARS-CoV-2スバイク(S)糖タンパク質特異的抗体価」が期待する水準に達しなかったことが明らかとなったため、高容量製剤を含む初期のワクチンの開発中止を決定したとしている。なお、初期のワクチンの開発中止により、これまで共同研究に参画してきた大阪大学及びタカラバイオ、ダイセル、EPSグループ、ファンペップ、新日本科学等との初期のワクチンに関する共同研究も終了している。
一方で、これまでの研究開発の知見を生かして、プラスミド※の発現効率や導入効率の向上等、プラットフォームの見直しを行い、将来発生する可能性のある新たな変異株への対応も視野に入れ、安全でより効果の高い経鼻投与による改良型DNAワクチンの研究を開始することを決定しており、当面はオミクロン株の最新変異株(BA.5等)に対して有効なワクチンの研究開発を進めていくことにしている。経鼻投与製剤の研究開発を行うため、米スタンフォード大学医学部と共同研究契約も締結した。同大学が開発した「Gold-Nanostar Octopod」技術に着目し、同技術を活用して開発を進めていくことになる。同大学が同技術を用いて作製した経鼻投与ワクチン(武漢型の遺伝子配列を持つプラスミドDNA)でマウス実験を実施したところ、ワクチン投与後に血清中の抗体(IgG、IgA、IgM)上昇が確認されたほか、β株等の変異株に対しても中和活性を示したこと、組織学的な検討によりリンパ節・脾臓においてスパイクタンパク質に対する細胞性免疫反応、液性免疫反応が確認されたことなどから、同技術を用いて研究開発を行う価値はあると判断した。なお、共同研究の期間としてはおおむね3年程度、研究費は約3百万ドルを見込んでいる。
※プラスミド(plasmid)とは、大腸菌などの細菌や酵母の核外に存在し、細胞分裂によって娘細胞へ引き継がれるDNA分子の総称。一般的に環状の2本鎖構造を取り、染色体のDNAからは独立して複製を行う。その独立した遺伝子複製機構から、遺伝子組み換え操作のベクターとして創薬などで利用されている。このプラスミドを大腸菌に導入し、大腸菌の大量培養により目的のDNAを増幅する。プラスミド製法では、HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン(R)」が上市済みであり、製法そのものについての安全性は確認されている。
なお、今まで実施してきた初期のワクチンの研究開発費用については、国の補助金等で賄われてきた。具体的には、AMEDが2020年5月に公募した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」に採択され、研究開発費20億円(直接経費、研究開発期間:2020年6月−2021年3月)の支援を受けたほか、厚生労働省が公募した「令和2年度ワクチン生産体制等緊急整備事業」にも同年8月に採択され、約93億円の交付金(事業期間:2020年8月−2022年3月)を受けて、タカラバイオ<4974>が中心となって大規模生産体制の構築を進めてきた。さらに、AMEDが公募した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」(2次公募、研究開発予定期間:2020−2021年度目途)にも同年8月に採択されている(金額は非開示)。
一方、改良型DNAワクチンと経鼻投与製剤の研究費用は、当面の間は手元資金で充当していく予定にしており、研究開発の進捗を見極めながら資金の検討を行っていくことにしている。
これら採択を受けた補助金については入金がすべて完了しており、その一部は営業外収益として2021年12月期に1,399百万円、2022年12月期第2四半期累計に118百万円を補助金収入として計上している。残りの金額については前受金として貸借対照表の流動負債に計上されており、2022年12月期第2四半期末時点で5,764百万円となっている。今後、開発プロジェクトの実績報告書を関係当局に提出し、監査・承認を経て補助金等の金額が確定(補助金収入として計上)することになる。関係当局の年度末が3月のため、残額分の一部は2023年12月期に計上時期がずれ込む可能性もある。
国内でのワクチンは現状、ファイザー等の外資系企業からの調達に頼っているが、国産ワクチンの開発は必要との政府の方針のもと、2022年3月にワクチン開発推進の司令塔となる「先進的研究開発戦略センター(SCARDA)」が発足した。基礎研究から実用化に向けた開発までの戦略的な研究を国策として推進し、ワクチンの国産化を目指しており、ワクチンの開発ニーズが引き続き強い状況に変わりないことから、同社でも研究開発を継続していく方針だ。
(2) 新型コロナウイルス感染症治療薬「AV-001」の開発状況
カナダのVasomuneとの共同開発品である「AV-001」(Tie2受容体アゴニスト化合物)※は、もともと2018年より全世界を対象に急性呼吸不全など血管の不全を原因とする疾患を対象とした医薬品として共同開発を進めてきたものだが、中等度から重度の新型コロナウイルス感染症肺炎患者向けの治療薬としても効果があると判断し、2020年より米国で臨床試験を開始したものとなる。
※同社は2018年7月にVasomuneと、急性呼吸不全など血管の不全を原因とする疾患を対象とした「AV-001」の全世界を対象とした共同開発契約を締結した。開発費用と将来の収益を折半し、また、同社がVasomuneに対して契約一時金及び開発の進捗に応じたマイルストーンを支払う契約となっている。急性呼吸窮迫症候群の患者数は米国だけで26万人いる。
肺炎患者は、ウイルスの影響でTie2受容体の働きが抑制されることにより肺の血管機能が壊れ、肺胞に浸出液が入り込むことで肺炎を発症する。「AV-001」はTie2受容体の働きを活性化させる効果があり、これによって血管機能が正常化し肺胞に浸出液が入り込まなくなることで、炎症を沈静化させるメカニズムとなる。開発状況は、2022年1月より米国で前期第2相臨床試験を開始しており、今のところ順調に登録が進んでいる(目標症例数は約120例)。ただ、新型コロナウイルス感染症の変異株に関しては重症化するケースも少なくなってきており、また、肺炎による呼吸不全を起こす患者数も減少傾向にあることから、同社では今後の開発方針を再検討していくことにしている。
なお、「AV-001」の開発にあたっては、米国及びカナダの政府関係機関からVasomuneが助成金を獲得しており、開発費負担分に応じて同社もVasomuneから補助金の一部を受領している。2022年12月期第2四半期累計では補助金収入として84百万円(2021年12月期は100百万円)を営業外収益として計上した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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