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アンジェス Research Memo(1):米子会社のゲノム編集ツール「OMNIプラットフォーム」に注目
配信日時:2022/09/16 15:41
配信元:FISCO
■要約
アンジェス<4563>は、1999年に設立された大阪大学発のバイオベンチャー。遺伝子医薬を中核とした開発を進めており、長期ビジョンとして「遺伝子医薬のグローバルリーダー」になることを目指している。新薬候補品を開発し、販売パートナーとの販売権許諾契約によって得られる契約一時金や、開発の進捗状況などによって得られるマイルストーン収入、上市後の製品売上高にかかるロイヤリティ収入を獲得するビジネスモデルとなる。2020年12月に米国で先進ゲノム編集技術の開発を行うEmendoBio Inc.(以下、Emendo)を子会社化した。
1. Emendoで新たなゲノム編集技術による臨床開発及びプラットフォームサービスの提供を目指す
ゲノム編集を従来技術よりも安全かつ高精度に実行できるツールとなる「OMNI(オムニ)プラットフォーム」が今後、注目を浴びそうだ。米子会社のEmendoが開発した技術で、現在、希少疾患であるELANE(好中球エラスターゼ遺伝子)関連重症先天性好中球減少症(以下、SCN)※を対象とした臨床試験の開始に向け、FDA(米食品医薬品局)と協議を進めている段階にある。また、CAR-T療法の開発を進めている製薬企業やバイオベンチャーからの関心が高まっており、同技術のライセンス供与に向けた協議も複数社と開始しているもようだ。同技術を使うことで今まで困難とされてきた遺伝性希少疾患の治療にも道が開かれることになり、Emendoでは同技術の適応対象となる遺伝性疾患の市場規模は1兆円を超えると試算しており、潜在的な成長ポテンシャルは極めて大きい。当面は開発負担が先行することになるが、今後の動向が注目される。
※顆粒球系細胞の成熟障害により発症する好中球減少症で、発症すると細菌感染などが起きやすくなり、中耳炎や気道感染症、皮膚感染症等を繰り返し、敗血症により死亡することもある。
2. 主要開発パイプラインの動向
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するDNAワクチンの開発については、高用量製剤での第1/2相臨床試験の速報結果により、これまで取り組んでいたワクチンの開発中止を発表。一方、カナダのVasomune Therapeutics(以下、Vasomune)と共同開発中の治療薬「AV-001」(中等度から重度の新型コロナウイルス感染症肺炎患者を対象)は、2022年1月より前期第2相臨床試験を米国で実施中だ。
慢性動脈閉塞症を対象としたHGF遺伝子治療用製品「コラテジェン(R)」のうち、国内における潰瘍の改善を効果・効能とした市販後調査は2021年末に予定症例数の登録が完了し経過観察中となっており、2024年の本承認取得を目指している。しかし、国内で実施していた慢性動脈閉塞症における安静時疼痛の追加適応については、投与前からの変化量においてプラセボ群に対して有意差を見いだせないということで開発中止を発表した。一方、米国で実施している後期第2相臨床試験については早ければ2022年内に被験者登録が完了し、2024年にも結果が判明する見通し。椎間板性腰痛症を適応症としたNF-κBデコイオリゴDNAについては、ライセンス契約も視野に入れながら第2相臨床試験の開発計画を策定中で、オーストラリアで実施している高血圧DNAワクチンの開発についても、第1相/前期第2相臨床試験のデータを分析して今後の開発戦略を策定していく計画となっている。いずれも2022年中に開発方針を策定し、2023年春までに公表したい意向のようだ。そのほか、2022年5月に米Eiger Bio Pharmaceuticals Inc.(以下、アイガー)から導入したハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(以下、HGPS)とプロジェロイド・ラミノパチー(以下、PL)※1を適応症とした治療薬「ゾキンヴィ」※2については、国内の販売承認申請に向けて準備を進めている状況にある。
※1 HGPSやPLは遺伝子の突然変異により発症し、平均14.5歳までに心臓病(動脈硬化症)で死亡するのが一般的とされ、病気の症状としては深刻な成長障害、強皮症に似た皮膚、全身性脂肪性筋萎縮症、脱毛症、骨格形成不全、心血管系の衰えを伴う全身性動脈硬化の促進、衰弱性の脳卒中が含まれる。世界の患者数は600人程度で、日本でも難病指定されており、10人弱の患者が確認されている。
※2 HGPSの死亡リスク低減、プロセシング不全性早老性PLの治療薬として、2020年11月に米国で承認された。臨床試験の結果ではHGPS患者において死亡率を60%減少させ、平均生存期間を2.5年延長させることができたとしている。開発元はメルクでアイガーはメルクから全世界での独占的権利をライセンスされた。
3. 業績動向
2022年12月期第2四半期累計の売上高は前年同期比38.1%増の31百万円、営業損失は9,124百万円(前年同期は7,540百万円の損失)となった。売上高はオプショナルスクリーニング検査の手数料収入を主に計上した。新型コロナウイルス感染症ワクチンの製造関連費用等を中心に研究開発費が前年同期比1,655百万円増加し、営業損失の拡大要因となった。2022年12月期の業績見通しは、開発プロジェクトの状況によって研究開発費が変動することなどから現時点では未定としているが、研究開発費については約100億円と前期並みの水準を見込んでいる。なお、2022年12月期第2四半期末の現金及び預金は13,211百万円となっており、当面の事業活動を進めていくうえでの資金は確保されているが、2023年以降はパイプラインの開発及び導出状況次第で、新たな資金調達を模索していく可能性もある。
■Key Points
・Emendoで新たなゲノム編集技術を活用した臨床開発とライセンス契約締結を目指す
・HGF遺伝子治療用製品の「安静時疼痛」の適応追加に向けた国内での開発は中止を決定、米国での臨床試験は計画通りに進捗
・2022年12月期も100億円規模の研究開発費を投下予定
・治療法がない疾病分野や希少遺伝性疾患等を対象に開発を進め、遺伝子医薬のグローバルリーダーを目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<SI>
アンジェス<4563>は、1999年に設立された大阪大学発のバイオベンチャー。遺伝子医薬を中核とした開発を進めており、長期ビジョンとして「遺伝子医薬のグローバルリーダー」になることを目指している。新薬候補品を開発し、販売パートナーとの販売権許諾契約によって得られる契約一時金や、開発の進捗状況などによって得られるマイルストーン収入、上市後の製品売上高にかかるロイヤリティ収入を獲得するビジネスモデルとなる。2020年12月に米国で先進ゲノム編集技術の開発を行うEmendoBio Inc.(以下、Emendo)を子会社化した。
1. Emendoで新たなゲノム編集技術による臨床開発及びプラットフォームサービスの提供を目指す
ゲノム編集を従来技術よりも安全かつ高精度に実行できるツールとなる「OMNI(オムニ)プラットフォーム」が今後、注目を浴びそうだ。米子会社のEmendoが開発した技術で、現在、希少疾患であるELANE(好中球エラスターゼ遺伝子)関連重症先天性好中球減少症(以下、SCN)※を対象とした臨床試験の開始に向け、FDA(米食品医薬品局)と協議を進めている段階にある。また、CAR-T療法の開発を進めている製薬企業やバイオベンチャーからの関心が高まっており、同技術のライセンス供与に向けた協議も複数社と開始しているもようだ。同技術を使うことで今まで困難とされてきた遺伝性希少疾患の治療にも道が開かれることになり、Emendoでは同技術の適応対象となる遺伝性疾患の市場規模は1兆円を超えると試算しており、潜在的な成長ポテンシャルは極めて大きい。当面は開発負担が先行することになるが、今後の動向が注目される。
※顆粒球系細胞の成熟障害により発症する好中球減少症で、発症すると細菌感染などが起きやすくなり、中耳炎や気道感染症、皮膚感染症等を繰り返し、敗血症により死亡することもある。
2. 主要開発パイプラインの動向
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するDNAワクチンの開発については、高用量製剤での第1/2相臨床試験の速報結果により、これまで取り組んでいたワクチンの開発中止を発表。一方、カナダのVasomune Therapeutics(以下、Vasomune)と共同開発中の治療薬「AV-001」(中等度から重度の新型コロナウイルス感染症肺炎患者を対象)は、2022年1月より前期第2相臨床試験を米国で実施中だ。
慢性動脈閉塞症を対象としたHGF遺伝子治療用製品「コラテジェン(R)」のうち、国内における潰瘍の改善を効果・効能とした市販後調査は2021年末に予定症例数の登録が完了し経過観察中となっており、2024年の本承認取得を目指している。しかし、国内で実施していた慢性動脈閉塞症における安静時疼痛の追加適応については、投与前からの変化量においてプラセボ群に対して有意差を見いだせないということで開発中止を発表した。一方、米国で実施している後期第2相臨床試験については早ければ2022年内に被験者登録が完了し、2024年にも結果が判明する見通し。椎間板性腰痛症を適応症としたNF-κBデコイオリゴDNAについては、ライセンス契約も視野に入れながら第2相臨床試験の開発計画を策定中で、オーストラリアで実施している高血圧DNAワクチンの開発についても、第1相/前期第2相臨床試験のデータを分析して今後の開発戦略を策定していく計画となっている。いずれも2022年中に開発方針を策定し、2023年春までに公表したい意向のようだ。そのほか、2022年5月に米Eiger Bio Pharmaceuticals Inc.(以下、アイガー)から導入したハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(以下、HGPS)とプロジェロイド・ラミノパチー(以下、PL)※1を適応症とした治療薬「ゾキンヴィ」※2については、国内の販売承認申請に向けて準備を進めている状況にある。
※1 HGPSやPLは遺伝子の突然変異により発症し、平均14.5歳までに心臓病(動脈硬化症)で死亡するのが一般的とされ、病気の症状としては深刻な成長障害、強皮症に似た皮膚、全身性脂肪性筋萎縮症、脱毛症、骨格形成不全、心血管系の衰えを伴う全身性動脈硬化の促進、衰弱性の脳卒中が含まれる。世界の患者数は600人程度で、日本でも難病指定されており、10人弱の患者が確認されている。
※2 HGPSの死亡リスク低減、プロセシング不全性早老性PLの治療薬として、2020年11月に米国で承認された。臨床試験の結果ではHGPS患者において死亡率を60%減少させ、平均生存期間を2.5年延長させることができたとしている。開発元はメルクでアイガーはメルクから全世界での独占的権利をライセンスされた。
3. 業績動向
2022年12月期第2四半期累計の売上高は前年同期比38.1%増の31百万円、営業損失は9,124百万円(前年同期は7,540百万円の損失)となった。売上高はオプショナルスクリーニング検査の手数料収入を主に計上した。新型コロナウイルス感染症ワクチンの製造関連費用等を中心に研究開発費が前年同期比1,655百万円増加し、営業損失の拡大要因となった。2022年12月期の業績見通しは、開発プロジェクトの状況によって研究開発費が変動することなどから現時点では未定としているが、研究開発費については約100億円と前期並みの水準を見込んでいる。なお、2022年12月期第2四半期末の現金及び預金は13,211百万円となっており、当面の事業活動を進めていくうえでの資金は確保されているが、2023年以降はパイプラインの開発及び導出状況次第で、新たな資金調達を模索していく可能性もある。
■Key Points
・Emendoで新たなゲノム編集技術を活用した臨床開発とライセンス契約締結を目指す
・HGF遺伝子治療用製品の「安静時疼痛」の適応追加に向けた国内での開発は中止を決定、米国での臨床試験は計画通りに進捗
・2022年12月期も100億円規模の研究開発費を投下予定
・治療法がない疾病分野や希少遺伝性疾患等を対象に開発を進め、遺伝子医薬のグローバルリーダーを目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<SI>
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