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ファンペップ Research Memo(5):乾癬治療薬「FPP003」臨床試験は2022年内から成績評価を実施予定
配信日時:2022/09/16 15:25
配信元:FISCO
■主要開発パイプラインの動向
2. FPP003(乾癬、強直性脊椎炎)
「FPP003」は、大阪大学大学院医学系研究科及び住友ファーマとの共同研究のもとでファンペップ<4881>が創製した開発化合物で、IL-17Aを標的タンパク質とする抗体誘導ペプチドとなる。IL-17Aは免疫反応に関するサイトカインの一つであり、幅広い免疫性疾患に関与しており、主なところでは乾癬や強直脊椎炎、乾癬性関節炎などの疾患原因となっている。同社がオーストラリアで進めている乾癬を適応症とした第1/2a臨床試験は2022年6月に被験者登録が完了し、2022年内から成績評価を実施する予定となっている。主要評価項目である安全性及び忍容性に関するデータ結果に加え、抗体産生の有無や免疫原生※の評価など薬効に関するデータについても明らかとなる見通しだ。また、国内では2022年4月から強直性脊椎炎を対象とした医師主導の第1相臨床試験が開始されている。
※産生した抗体が、病原体等の標的に対して免疫反応を引き起こす能力。免疫原生の能力が高いと治療効果が期待できることになる。
(1) 乾癬
乾癬とは慢性の炎症性皮膚疾患のことで、その多くは尋常性乾癬と呼ばれる疾患となる。表皮細胞が異常増殖し、紅斑が現れて表面に鱗屑が付着して剥がれ落ちるなどの症状となる。患者数は国内で約43万人、米国で約800万人と言われている。治療法としては、軽症から中等症患者に対しては塗り薬などの局所療法が行われ、中等症から重症患者に対しては光線療法(紫外線照射)や内服療法(メトトレキサート、経口低分子医薬品等)が、また、これらの治療法が効かない患者には、抗体医薬品が使用されている。
同社の開発する「FPP003」は、抗体誘導ペプチドの特性から長期間にわたり治療効果が持続するものと考えられており、内服療法や抗体医薬品の患者層をターゲットとして「有効性」「安全性」「投与回数」により優位性を示すことで上市を目指している。作用メカニズムは抗体医薬品と同様のため、体内で十分な活性を持つ抗体を産生できれば上市まで進む可能性が高く、また価格面での優位性があるだけに抗体医薬品等の代替医薬品として市場に浸透していくものと弊社では予想している。抗IL-17A抗体医薬品としては「コセンティクス(R)」「トルツ(R)」などが販売されている。そのほか乾癬治療用抗体医薬品としては、抗TNFα抗体医薬品の「ヒュミラ(R)」や「レミケード(R)」なども使用されている。
前臨床試験における乾癬モデルマウスの薬効試験では、発赤や肥厚、白色鱗屑などの皮膚炎症状で有意な改善効果が確認されている。前述の通り第1/2a相臨床試験※の結果については2022年内から成績評価を実施する予定となっている。安全性と忍容性に関するデータに加え、抗体産生の有無や免疫原性など薬効に関わるデータも判明する見通しだ。同試験結果を分析してオプション契約先の住友ファーマが今後の開発方針を決定することになる。試験結果が良好なものであれば住友ファーマがオプション権を行使して、北米での独占的開発及び販売ライセンス契約を締結したうえで、第2b相臨床試験を進めていくものと予想される。オプション権の行使期間は試験結果を住友ファーマが受領して6ヶ月以内となるため、2023年内には本契約が締結されるかどうか明らかとなる見通しだ。仮に、オプション権が行使されなかった場合には、他の製薬企業とライセンス交渉を進めていくことになる。
※臨床試験の概要は、尋常性乾癬患者を対象として、「FPP003」(4用量)またはプラセボを3回(1日目、15日目、19日目)皮下投与するプラセボ対照二重盲検試験となり、主要評価項目として安全性と忍容性を、副次評価項目として薬物動態及び免疫原性を評価し、有効性についても評価する。症例数は全36例。
(2) 強直性脊椎炎
強直性脊椎炎とは、青年期に発症する脊椎と仙腸関節を主な病変部位とする全身性の慢性炎症性疾患を指す。病変部位では靭帯と骨との付着部位に炎症・骨化が起こり、疼痛、膨張、運動制限等がみられる。症状が進むにつれて、次第に脊椎や関節の動きが悪くなり、脊椎が強直(骨性に固まり動かなくなる)して日常生活能力が著しく低下するケースもある。原因は不明で国の指定難病にもなっている。治療法としては、非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)が使用されているが、効果が不十分な場合や副作用の問題がある場合には「コセンティクス(R)」や「ヒュミラ(R)」などの抗体医薬品が使用されている。
同社は2018年度よりAMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)の「創薬支援推進事業・希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業」に採択され、助成金により前臨床試験を進めてきた。脊椎関節炎モデルのラットを使った薬効試験では関節炎症状の改善効果が示されたことから、2022年4月より大阪大学大学院医学系研究科にて医師主導の第1相臨床試験※が開始されている。同試験についてもAMEDの2021年度「難治性疾患実用化研究事業(2次公募)/希少難治性疾患に対する画期的な医薬品の実用化に関する研究分野」に採択され、助成金を使って進めていくことになる。試験期間は2022年10月までを予定しており、結果が良ければ次の開発ステージに進むことになるが、住友ファーマと協議して開発方針を決定していくことになりそうだ。
※第1相臨床試験の概要は、健康成人を対象に「FPP003(低用量、高容量)」とプラセボを比較する二重盲検試験となり、「FPP003」の安全性と忍容性を評価する。また、「FPP003」により産生される抗体を測定し、IL-17Aに対する免疫原性の評価や薬物動態評価も行う。症例数は全20名(低用量群8例、高容量群8例、プラセボ群各2名)。
(3) 市場規模
乾癬や強直性脊椎炎等の治療薬となる抗IL-17A抗体医薬品の市場規模は、2020年の5,810百万米ドルから2025年には9,942百万米ドルに成長することが調査会社で予測※されている。また、経口低分子医薬品「Otezla」(2021年2,249百万米ドル)も含めて考えると、2025年には12,000百万米ドルを超える市場規模となる。開発に成功すれば高額な抗体医薬品の代替として市場に浸透する可能性が高いだけに、「FPP003」の第1/2a相臨床試験の結果、特に薬効に関わる抗体産生の状況や免疫原性の評価について、国内外のメガファーマからも注目されている。なお、「FPP003」については2016年の開発当初から住友ファーマと共同研究を進めて研究開発リスクを共有してきた経緯から、マイルストーン総額の金額は一般的な水準よりも低く設定されているもようだ。一方、販売ロイヤリティ料率は一般的な水準と見られる。
※Informa「Datamonitor Healthcare」(2021年11月)。抗IL-17A抗体医薬品である「トルツ(R)」「コセンティクス(R)」の2021年販売実績は6,930百万米ドルとなっている(会社公表値)。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2. FPP003(乾癬、強直性脊椎炎)
「FPP003」は、大阪大学大学院医学系研究科及び住友ファーマとの共同研究のもとでファンペップ<4881>が創製した開発化合物で、IL-17Aを標的タンパク質とする抗体誘導ペプチドとなる。IL-17Aは免疫反応に関するサイトカインの一つであり、幅広い免疫性疾患に関与しており、主なところでは乾癬や強直脊椎炎、乾癬性関節炎などの疾患原因となっている。同社がオーストラリアで進めている乾癬を適応症とした第1/2a臨床試験は2022年6月に被験者登録が完了し、2022年内から成績評価を実施する予定となっている。主要評価項目である安全性及び忍容性に関するデータ結果に加え、抗体産生の有無や免疫原生※の評価など薬効に関するデータについても明らかとなる見通しだ。また、国内では2022年4月から強直性脊椎炎を対象とした医師主導の第1相臨床試験が開始されている。
※産生した抗体が、病原体等の標的に対して免疫反応を引き起こす能力。免疫原生の能力が高いと治療効果が期待できることになる。
(1) 乾癬
乾癬とは慢性の炎症性皮膚疾患のことで、その多くは尋常性乾癬と呼ばれる疾患となる。表皮細胞が異常増殖し、紅斑が現れて表面に鱗屑が付着して剥がれ落ちるなどの症状となる。患者数は国内で約43万人、米国で約800万人と言われている。治療法としては、軽症から中等症患者に対しては塗り薬などの局所療法が行われ、中等症から重症患者に対しては光線療法(紫外線照射)や内服療法(メトトレキサート、経口低分子医薬品等)が、また、これらの治療法が効かない患者には、抗体医薬品が使用されている。
同社の開発する「FPP003」は、抗体誘導ペプチドの特性から長期間にわたり治療効果が持続するものと考えられており、内服療法や抗体医薬品の患者層をターゲットとして「有効性」「安全性」「投与回数」により優位性を示すことで上市を目指している。作用メカニズムは抗体医薬品と同様のため、体内で十分な活性を持つ抗体を産生できれば上市まで進む可能性が高く、また価格面での優位性があるだけに抗体医薬品等の代替医薬品として市場に浸透していくものと弊社では予想している。抗IL-17A抗体医薬品としては「コセンティクス(R)」「トルツ(R)」などが販売されている。そのほか乾癬治療用抗体医薬品としては、抗TNFα抗体医薬品の「ヒュミラ(R)」や「レミケード(R)」なども使用されている。
前臨床試験における乾癬モデルマウスの薬効試験では、発赤や肥厚、白色鱗屑などの皮膚炎症状で有意な改善効果が確認されている。前述の通り第1/2a相臨床試験※の結果については2022年内から成績評価を実施する予定となっている。安全性と忍容性に関するデータに加え、抗体産生の有無や免疫原性など薬効に関わるデータも判明する見通しだ。同試験結果を分析してオプション契約先の住友ファーマが今後の開発方針を決定することになる。試験結果が良好なものであれば住友ファーマがオプション権を行使して、北米での独占的開発及び販売ライセンス契約を締結したうえで、第2b相臨床試験を進めていくものと予想される。オプション権の行使期間は試験結果を住友ファーマが受領して6ヶ月以内となるため、2023年内には本契約が締結されるかどうか明らかとなる見通しだ。仮に、オプション権が行使されなかった場合には、他の製薬企業とライセンス交渉を進めていくことになる。
※臨床試験の概要は、尋常性乾癬患者を対象として、「FPP003」(4用量)またはプラセボを3回(1日目、15日目、19日目)皮下投与するプラセボ対照二重盲検試験となり、主要評価項目として安全性と忍容性を、副次評価項目として薬物動態及び免疫原性を評価し、有効性についても評価する。症例数は全36例。
(2) 強直性脊椎炎
強直性脊椎炎とは、青年期に発症する脊椎と仙腸関節を主な病変部位とする全身性の慢性炎症性疾患を指す。病変部位では靭帯と骨との付着部位に炎症・骨化が起こり、疼痛、膨張、運動制限等がみられる。症状が進むにつれて、次第に脊椎や関節の動きが悪くなり、脊椎が強直(骨性に固まり動かなくなる)して日常生活能力が著しく低下するケースもある。原因は不明で国の指定難病にもなっている。治療法としては、非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)が使用されているが、効果が不十分な場合や副作用の問題がある場合には「コセンティクス(R)」や「ヒュミラ(R)」などの抗体医薬品が使用されている。
同社は2018年度よりAMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)の「創薬支援推進事業・希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業」に採択され、助成金により前臨床試験を進めてきた。脊椎関節炎モデルのラットを使った薬効試験では関節炎症状の改善効果が示されたことから、2022年4月より大阪大学大学院医学系研究科にて医師主導の第1相臨床試験※が開始されている。同試験についてもAMEDの2021年度「難治性疾患実用化研究事業(2次公募)/希少難治性疾患に対する画期的な医薬品の実用化に関する研究分野」に採択され、助成金を使って進めていくことになる。試験期間は2022年10月までを予定しており、結果が良ければ次の開発ステージに進むことになるが、住友ファーマと協議して開発方針を決定していくことになりそうだ。
※第1相臨床試験の概要は、健康成人を対象に「FPP003(低用量、高容量)」とプラセボを比較する二重盲検試験となり、「FPP003」の安全性と忍容性を評価する。また、「FPP003」により産生される抗体を測定し、IL-17Aに対する免疫原性の評価や薬物動態評価も行う。症例数は全20名(低用量群8例、高容量群8例、プラセボ群各2名)。
(3) 市場規模
乾癬や強直性脊椎炎等の治療薬となる抗IL-17A抗体医薬品の市場規模は、2020年の5,810百万米ドルから2025年には9,942百万米ドルに成長することが調査会社で予測※されている。また、経口低分子医薬品「Otezla」(2021年2,249百万米ドル)も含めて考えると、2025年には12,000百万米ドルを超える市場規模となる。開発に成功すれば高額な抗体医薬品の代替として市場に浸透する可能性が高いだけに、「FPP003」の第1/2a相臨床試験の結果、特に薬効に関わる抗体産生の状況や免疫原性の評価について、国内外のメガファーマからも注目されている。なお、「FPP003」については2016年の開発当初から住友ファーマと共同研究を進めて研究開発リスクを共有してきた経緯から、マイルストーン総額の金額は一般的な水準よりも低く設定されているもようだ。一方、販売ロイヤリティ料率は一般的な水準と見られる。
※Informa「Datamonitor Healthcare」(2021年11月)。抗IL-17A抗体医薬品である「トルツ(R)」「コセンティクス(R)」の2021年販売実績は6,930百万米ドルとなっている(会社公表値)。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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