注目トピックス 市況・概況
来週の相場で注目すべき3つのポイント:米FOMC議事録、米中小売売上高、米ウォルマート決算
配信日時:2022/08/13 18:58
配信元:FISCO
■株式相場見通し
予想レンジ:上限28900円-下限28000円
来週の東京株式市場はもみ合いか。4-6月期決算が一巡し、材料不足となる一方、需給面から底堅い推移が続きそうだ。
米国の重要インフレ指標の減速を受けてインフレピークアウト期待が高まり、7月半ばからのリバウンド相場が長期化している。市場関係者の多くは、足元の株式市場の上昇はベアマーケットラリー(弱気相場の中の一時的な上昇)に過ぎないと見ている。ただ、機関投資家の多くが夏休みに入るなか、市場参加者が限られ、相対的に個人投資家や短期売買のみを目的とした投資家の動きに左右されやすい地合いが続く。このため、相場に乗り遅れることを嫌った個人投資家の買いや、商品投資顧問(CTA)などの短期筋の追随買いで足元は上方向に振れやすい状況だ。週末の米国版SQ(特別清算指数)算出までは売り手に乏しいなか買い手優位の状況が続きそうだ。
来週は米中の小売売上高や鉱工業生産など注目度の高い指標が多い。中国では行動制限の長期化で景況感の回復が想定以上に遅れている。米国でも、所得の伸びがインフレに追い付かないことで実質所得の減少が続いており、けん引役となってきた個人消費の失速が懸念される。共に指標結果は冴えないものになる可能性があろう。4-6月期の決算発表が一巡したばかりだが、景況感の悪化は7-9月期決算への警戒材料となり、需給主導の上げ相場が終わり次第、相場の重石となりそうだ。
インフレピークアウト期待についても、米国7月の消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)の減速要因の大半はエネルギー価格であり、食品価格などはむしろ上昇ペースが加速している。住居費などの下方硬直性のある分野のインフレもほとんど減速していない。また、代表的な商品市況の総合指数であるCRB指数は7月14日をボトムに下値切り上げの上昇トレンドに転換している。こうした背景から、7月のインフレ指標は大きく減速したものの、8月分以降は高止まりが想定される。7月雇用統計で平均賃金の伸びが予想に反してむしろ加速していたことも見逃せない。
米連邦準備制度理事会(FRB)高官からもけん制発言が相次いでいる。市場とFRBが想定する今年末の政策金利予想や、来年の利上げペースを巡る認識にはかなり開きがあり、いずれ、市場の楽観は修正される可能性がある。17日に公表される米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(7月26-27日開催分)を受けてこうした乖離が修正される可能性もあるため注目したい。
ここしばらく落ち着いた動きだった米10年債利回りは、11日、2.89%(+0.1pt)と大幅に上昇した。これに伴い、期待インフレ率の指標とされる10年物の米ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)を差し引いた実質金利は一時再びマイナス圏に突入しそうな勢いだったが、8月に入ってからの反発基調をやや強めている。米国で業績予想の下方修正が進むなか、予想一株当たり利益(EPS)は切り下がっており、株価上昇には投資家の期待値を表す株価バリュエーションのPER(株価収益率)の上昇が欠かせないが、実質金利の低下に歯止めがかかり、上昇に転じてきているなか、そうした展開は見込みにくいだろう。
来週、米国では小売大手のウォルマートやターゲットなどの決算も予定されている。既に業績予想を下方修正しており、期待値は低いが、在庫の処分ペースなどが注目され、景況感の悪化を一段と強める恐れもあるため注意したい。
■為替市場見通し
来週のドル・円は下げ渋りか。米インフレのピークアウトへの思惑から連邦準備制度理事会(FRB)による大幅追加利上げ観測は後退した。一方、他の主要中央銀行は金融引き締めのペースを緩める可能性があり、米国の金融引き締めの度合いは相対的に高まることになるため、ドルは売りづらいだろう。8月10日に発表された米7月消費者物価指数(CPI)は、前年比+8.5%と予想の+8.8%を下回った。この結果を受け、次回9月に開催される連邦公開市場委員会(FOMC)では、利上げ幅を0.75ポイントから0.50ポイントに縮小するとの観測が広がっている。パウエルFRB議長はデータ次第と指摘しており、次回のFOMCまで7月小売売上高、7月コアPCE価格指数、8月ISM製造業景況指数、8月雇用統計などの経済指標を見極める展開となりそうだ。
FRBによる大幅利上げ期待の後退により、目先的にはドル売り・円買いがやや優勢となりそうだ。ただ、インフレ鈍化を明確に示唆するデータは十分に揃っていないため、主要中銀の金融政策が手がかりとなり、ドルは下げづらいだろう。米国株式が底堅い動きを維持した場合、リスク選好的な円売りが増える可能性があることもドル・円相場の支援材料となりそうだ。
■来週の注目スケジュール
8月15日(月):日・GDP速報値(4-6月)、日・鉱工業生産(6月)、中・鉱工業生産指数(7月)、中・小売売上高(7月)、米・ニューヨーク連銀製造業景気指数(8月)、米・NAHB住宅市場指数(8月)など
8月16日(火):独・ZEW期待指数(8月)、米・住宅着工件数(7月)、米・鉱工業生産指数(7月)、米・決算発表→ホーム・デポ、ウォルマートなど
8月17日(水):日・貿易収支(7月)、日・コア機械受注(6月)、英・消費者物価コア指数(7月)、米・小売売上高(7月)、米・連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(7月26-27日)、米・決算発表→アナログ・デバイセズなど
8月18日(木):米・フィラデルフィア連銀製造業景況指数(8月)、米・中古住宅販売件数(7月)など
8月19日(金):日・消費者物価コア指数(7月)など
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予想レンジ:上限28900円-下限28000円
来週の東京株式市場はもみ合いか。4-6月期決算が一巡し、材料不足となる一方、需給面から底堅い推移が続きそうだ。
米国の重要インフレ指標の減速を受けてインフレピークアウト期待が高まり、7月半ばからのリバウンド相場が長期化している。市場関係者の多くは、足元の株式市場の上昇はベアマーケットラリー(弱気相場の中の一時的な上昇)に過ぎないと見ている。ただ、機関投資家の多くが夏休みに入るなか、市場参加者が限られ、相対的に個人投資家や短期売買のみを目的とした投資家の動きに左右されやすい地合いが続く。このため、相場に乗り遅れることを嫌った個人投資家の買いや、商品投資顧問(CTA)などの短期筋の追随買いで足元は上方向に振れやすい状況だ。週末の米国版SQ(特別清算指数)算出までは売り手に乏しいなか買い手優位の状況が続きそうだ。
来週は米中の小売売上高や鉱工業生産など注目度の高い指標が多い。中国では行動制限の長期化で景況感の回復が想定以上に遅れている。米国でも、所得の伸びがインフレに追い付かないことで実質所得の減少が続いており、けん引役となってきた個人消費の失速が懸念される。共に指標結果は冴えないものになる可能性があろう。4-6月期の決算発表が一巡したばかりだが、景況感の悪化は7-9月期決算への警戒材料となり、需給主導の上げ相場が終わり次第、相場の重石となりそうだ。
インフレピークアウト期待についても、米国7月の消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)の減速要因の大半はエネルギー価格であり、食品価格などはむしろ上昇ペースが加速している。住居費などの下方硬直性のある分野のインフレもほとんど減速していない。また、代表的な商品市況の総合指数であるCRB指数は7月14日をボトムに下値切り上げの上昇トレンドに転換している。こうした背景から、7月のインフレ指標は大きく減速したものの、8月分以降は高止まりが想定される。7月雇用統計で平均賃金の伸びが予想に反してむしろ加速していたことも見逃せない。
米連邦準備制度理事会(FRB)高官からもけん制発言が相次いでいる。市場とFRBが想定する今年末の政策金利予想や、来年の利上げペースを巡る認識にはかなり開きがあり、いずれ、市場の楽観は修正される可能性がある。17日に公表される米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(7月26-27日開催分)を受けてこうした乖離が修正される可能性もあるため注目したい。
ここしばらく落ち着いた動きだった米10年債利回りは、11日、2.89%(+0.1pt)と大幅に上昇した。これに伴い、期待インフレ率の指標とされる10年物の米ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)を差し引いた実質金利は一時再びマイナス圏に突入しそうな勢いだったが、8月に入ってからの反発基調をやや強めている。米国で業績予想の下方修正が進むなか、予想一株当たり利益(EPS)は切り下がっており、株価上昇には投資家の期待値を表す株価バリュエーションのPER(株価収益率)の上昇が欠かせないが、実質金利の低下に歯止めがかかり、上昇に転じてきているなか、そうした展開は見込みにくいだろう。
来週、米国では小売大手のウォルマートやターゲットなどの決算も予定されている。既に業績予想を下方修正しており、期待値は低いが、在庫の処分ペースなどが注目され、景況感の悪化を一段と強める恐れもあるため注意したい。
■為替市場見通し
来週のドル・円は下げ渋りか。米インフレのピークアウトへの思惑から連邦準備制度理事会(FRB)による大幅追加利上げ観測は後退した。一方、他の主要中央銀行は金融引き締めのペースを緩める可能性があり、米国の金融引き締めの度合いは相対的に高まることになるため、ドルは売りづらいだろう。8月10日に発表された米7月消費者物価指数(CPI)は、前年比+8.5%と予想の+8.8%を下回った。この結果を受け、次回9月に開催される連邦公開市場委員会(FOMC)では、利上げ幅を0.75ポイントから0.50ポイントに縮小するとの観測が広がっている。パウエルFRB議長はデータ次第と指摘しており、次回のFOMCまで7月小売売上高、7月コアPCE価格指数、8月ISM製造業景況指数、8月雇用統計などの経済指標を見極める展開となりそうだ。
FRBによる大幅利上げ期待の後退により、目先的にはドル売り・円買いがやや優勢となりそうだ。ただ、インフレ鈍化を明確に示唆するデータは十分に揃っていないため、主要中銀の金融政策が手がかりとなり、ドルは下げづらいだろう。米国株式が底堅い動きを維持した場合、リスク選好的な円売りが増える可能性があることもドル・円相場の支援材料となりそうだ。
■来週の注目スケジュール
8月15日(月):日・GDP速報値(4-6月)、日・鉱工業生産(6月)、中・鉱工業生産指数(7月)、中・小売売上高(7月)、米・ニューヨーク連銀製造業景気指数(8月)、米・NAHB住宅市場指数(8月)など
8月16日(火):独・ZEW期待指数(8月)、米・住宅着工件数(7月)、米・鉱工業生産指数(7月)、米・決算発表→ホーム・デポ、ウォルマートなど
8月17日(水):日・貿易収支(7月)、日・コア機械受注(6月)、英・消費者物価コア指数(7月)、米・小売売上高(7月)、米・連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(7月26-27日)、米・決算発表→アナログ・デバイセズなど
8月18日(木):米・フィラデルフィア連銀製造業景況指数(8月)、米・中古住宅販売件数(7月)など
8月19日(金):日・消費者物価コア指数(7月)など
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