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MDNT Research Memo(7):細胞加工業では事業基盤の強化と黒字回復が喫緊の課題
配信日時:2022/07/06 16:07
配信元:FISCO
■事業活動の進捗と今後の取り組み
1. 細胞加工業の進捗と今後の取り組み
細胞加工業は、特定細胞加工物製造業がコロナ禍により医療インバウンド患者などが激減し苦境となっているが、一方で、バリューチェーン事業の需要拡大、CDMO事業の立ち上げにより、2022年9月期第2四半期は増収に寄与した。
特定細胞加工物製造は、コロナ禍により加工件数が急減し、4~5期前の月間ピーク時に比べ月間で約1/3まで落ち込んだ。そして、2020年9月期第3四半期には細胞加工件数は下げ止まり、以降は徐々に回復傾向にあった。しかし、2022年1月以降の新型コロナウイルス(オミクロン株)による第6波の影響で2022年9月期第2四半期は一転して減少傾向となった。2022年6月に政府はコロナの似水際対策を大幅に緩和したが、医療インバウンド患者に依存せずとも売上が拡大できるよう、新たな細胞加工の品目や受託メニューの拡大を図っていく考えである。
また、CDMO事業は、かねてより進めていたヤンセンファーマとの治験製品製造における技術移転が完了し、メディネット<2370>と治験製品受託製造に関する契約を締結(2021年5月)、同年6月よりヤンセンファーマが日本国内で実施する国際共同治験(第III相臨床試験:CARTITUDE-4)の日本国内で試験に用いる治験製品製造工程の一部の製造受託を開始した。本製造受託を皮切りに再生医療等製品全般の受託製造へ本格拡大していく。
細胞加工業の事業構造は特定細胞加工物製造業の“1本足打法”にであったため、今回のコロナ禍の影響で大打撃を受けた。その教訓を生かし、環境変化に強い事業構造への転換・拡大を推進している。事業戦略は、1)非がん治療領域への領域拡大(細胞種と品目数の拡大)、2)バリューチェーン事業の拡大加速、3)CDMO事業の育成強化、4)国内外の企業とのアライアンス活動強化の4つとなる。CDMO事業の拡大強化のため、細胞培養加工の環境・体制整備として専門人材の採用(細胞加工技術者等40名程度)、資金調達(第18回新株発行、調達985百万円)を実施した。また、事業目標については「売上拡大と黒字回復」を目指す。一時的な黒字化だけにとどめず医療インバウンド患者依存の事業体質を改め、同社のコア事業として持続的安定成長型事業構造を確立することに主眼を置いている。
(1) 特定細胞加工物の売上拡大
再生・細胞医療に取り組む製薬企業、大学、医療機関、研究機関等から受託製造する特定細胞加工物における細胞種・品目数の取り扱いを増やしていくほか、「ネオアンチゲン樹状細胞ワクチン」の受託製造を推進していく。がんの治療に用いられるネオアンチゲン樹状細胞ワクチンは、患者自身のがん組織を用いてがん細胞の遺伝子異常を解析し、患者自身のがん固有の抗原(目印)を特定しワクチンを作製するため、少ない副作用で高い効果(免疫反応)が得られる。すなわち “オーダーメイドがんワクチン”とも言える。瀬田クリニック東京を中心とする同社の契約医療機関で提供している。同社は以前から、患者自身の組織を用いて治療に合わせた細胞加工の製造受託を行っており、今後も最新の「がんの個別化医療」に貢献しつつ、業績拡大に向け推進していく。
2022年5月には、第19回日本免疫治療学会で「脂肪由来間葉系幹細胞」に関わる細胞加工技術を確立したことを発表した。様々な疾患に対して臨床応用されており、間葉系幹細胞治療への期待は大きい。脂肪由来間葉系幹細胞の提供計画数は年々増加傾向にあり、間葉系幹細胞を用いた再生医療提供医療機関は281施設が登録されている。現在、安全性確認や追加データを取得中であり、今後は同社から医療機関(治療施設)に提案していく予定である。なお実用化には数年程度かかる見込みとしている。
(2) バリューチェーン事業の拡大
同社は“フロー型バリューチェーンビジネス”として、再生・細胞医療のコンサルティング、細胞培養加工施設の運営管理、細胞加工技術者の派遣・教育システムの提供といった、特定細胞加工物を取り扱ううえで必要な一連の知見やノウハウを提供している。アカデミア(大学、研究機関)を中心として施設運営管理業務をリピート(継続受託)するとともに、新たに再生・細胞医療分野へ参入を企図しているアカデミアや製薬企業の様々なニーズに合わせたサービスに取り組み、販売強化につなげていく。2022年9月期第2四半期はバリューチェーン事業が拡大したが、なかでも「施設運営管理」は顧客と2022年度の契約を更新し安定売上を確保した。また、「再生医療関連サービス」も、固定顧客からの売上が順調に推移している。
(3) CDMO事業の加速
同社はCDMO事業において、国内外製薬企業やバイオベンチャー企業に対し、今後アプローチを強化していく。ヤンセンファーマとの契約締結に次ぐ、治験製品受託製造の第2・第3の案件獲得に向け、製薬企業・大学病院を中心に顧客開拓活動を推進している。
(4) 国内外の企業とのアライアンス活動強化
同社は、2019年10月に台湾Medigen Biotechnology Corp.(MBC)とガンマ・デルタT細胞培養加工技術のライセンス契約を締結し、技術移転を完了した。この技術を用いたがん免疫細胞治療は台湾当局の承認後、MBCが提携する医療機関である新光醫院が台湾当局へ申請している。台湾国内で免疫治療を受診できる申請が許可※されれば、台湾のがん患者が現地医療機関で同社の細胞培養加工技術を用いたがん免疫細胞治療を受けられるようになる。また、世界各国の医療法制度に応じて現地の医療機関に再生・細胞医療が健全に提供されるよう、同社が培った技術と経験を積極的にライセンス供与していく。さらに、日本での治療を待ち望んでいる多数の患者もおり、同社は日本で円滑に受診・治療できる仕組みを構築していくとしている。
※ 台湾政府の登録手続き作業がコロナ禍により一時ストップしているが、コロナ禍が終息すれば手続きは再開される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
<EY>
1. 細胞加工業の進捗と今後の取り組み
細胞加工業は、特定細胞加工物製造業がコロナ禍により医療インバウンド患者などが激減し苦境となっているが、一方で、バリューチェーン事業の需要拡大、CDMO事業の立ち上げにより、2022年9月期第2四半期は増収に寄与した。
特定細胞加工物製造は、コロナ禍により加工件数が急減し、4~5期前の月間ピーク時に比べ月間で約1/3まで落ち込んだ。そして、2020年9月期第3四半期には細胞加工件数は下げ止まり、以降は徐々に回復傾向にあった。しかし、2022年1月以降の新型コロナウイルス(オミクロン株)による第6波の影響で2022年9月期第2四半期は一転して減少傾向となった。2022年6月に政府はコロナの似水際対策を大幅に緩和したが、医療インバウンド患者に依存せずとも売上が拡大できるよう、新たな細胞加工の品目や受託メニューの拡大を図っていく考えである。
また、CDMO事業は、かねてより進めていたヤンセンファーマとの治験製品製造における技術移転が完了し、メディネット<2370>と治験製品受託製造に関する契約を締結(2021年5月)、同年6月よりヤンセンファーマが日本国内で実施する国際共同治験(第III相臨床試験:CARTITUDE-4)の日本国内で試験に用いる治験製品製造工程の一部の製造受託を開始した。本製造受託を皮切りに再生医療等製品全般の受託製造へ本格拡大していく。
細胞加工業の事業構造は特定細胞加工物製造業の“1本足打法”にであったため、今回のコロナ禍の影響で大打撃を受けた。その教訓を生かし、環境変化に強い事業構造への転換・拡大を推進している。事業戦略は、1)非がん治療領域への領域拡大(細胞種と品目数の拡大)、2)バリューチェーン事業の拡大加速、3)CDMO事業の育成強化、4)国内外の企業とのアライアンス活動強化の4つとなる。CDMO事業の拡大強化のため、細胞培養加工の環境・体制整備として専門人材の採用(細胞加工技術者等40名程度)、資金調達(第18回新株発行、調達985百万円)を実施した。また、事業目標については「売上拡大と黒字回復」を目指す。一時的な黒字化だけにとどめず医療インバウンド患者依存の事業体質を改め、同社のコア事業として持続的安定成長型事業構造を確立することに主眼を置いている。
(1) 特定細胞加工物の売上拡大
再生・細胞医療に取り組む製薬企業、大学、医療機関、研究機関等から受託製造する特定細胞加工物における細胞種・品目数の取り扱いを増やしていくほか、「ネオアンチゲン樹状細胞ワクチン」の受託製造を推進していく。がんの治療に用いられるネオアンチゲン樹状細胞ワクチンは、患者自身のがん組織を用いてがん細胞の遺伝子異常を解析し、患者自身のがん固有の抗原(目印)を特定しワクチンを作製するため、少ない副作用で高い効果(免疫反応)が得られる。すなわち “オーダーメイドがんワクチン”とも言える。瀬田クリニック東京を中心とする同社の契約医療機関で提供している。同社は以前から、患者自身の組織を用いて治療に合わせた細胞加工の製造受託を行っており、今後も最新の「がんの個別化医療」に貢献しつつ、業績拡大に向け推進していく。
2022年5月には、第19回日本免疫治療学会で「脂肪由来間葉系幹細胞」に関わる細胞加工技術を確立したことを発表した。様々な疾患に対して臨床応用されており、間葉系幹細胞治療への期待は大きい。脂肪由来間葉系幹細胞の提供計画数は年々増加傾向にあり、間葉系幹細胞を用いた再生医療提供医療機関は281施設が登録されている。現在、安全性確認や追加データを取得中であり、今後は同社から医療機関(治療施設)に提案していく予定である。なお実用化には数年程度かかる見込みとしている。
(2) バリューチェーン事業の拡大
同社は“フロー型バリューチェーンビジネス”として、再生・細胞医療のコンサルティング、細胞培養加工施設の運営管理、細胞加工技術者の派遣・教育システムの提供といった、特定細胞加工物を取り扱ううえで必要な一連の知見やノウハウを提供している。アカデミア(大学、研究機関)を中心として施設運営管理業務をリピート(継続受託)するとともに、新たに再生・細胞医療分野へ参入を企図しているアカデミアや製薬企業の様々なニーズに合わせたサービスに取り組み、販売強化につなげていく。2022年9月期第2四半期はバリューチェーン事業が拡大したが、なかでも「施設運営管理」は顧客と2022年度の契約を更新し安定売上を確保した。また、「再生医療関連サービス」も、固定顧客からの売上が順調に推移している。
(3) CDMO事業の加速
同社はCDMO事業において、国内外製薬企業やバイオベンチャー企業に対し、今後アプローチを強化していく。ヤンセンファーマとの契約締結に次ぐ、治験製品受託製造の第2・第3の案件獲得に向け、製薬企業・大学病院を中心に顧客開拓活動を推進している。
(4) 国内外の企業とのアライアンス活動強化
同社は、2019年10月に台湾Medigen Biotechnology Corp.(MBC)とガンマ・デルタT細胞培養加工技術のライセンス契約を締結し、技術移転を完了した。この技術を用いたがん免疫細胞治療は台湾当局の承認後、MBCが提携する医療機関である新光醫院が台湾当局へ申請している。台湾国内で免疫治療を受診できる申請が許可※されれば、台湾のがん患者が現地医療機関で同社の細胞培養加工技術を用いたがん免疫細胞治療を受けられるようになる。また、世界各国の医療法制度に応じて現地の医療機関に再生・細胞医療が健全に提供されるよう、同社が培った技術と経験を積極的にライセンス供与していく。さらに、日本での治療を待ち望んでいる多数の患者もおり、同社は日本で円滑に受診・治療できる仕組みを構築していくとしている。
※ 台湾政府の登録手続き作業がコロナ禍により一時ストップしているが、コロナ禍が終息すれば手続きは再開される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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