注目トピックス 日本株
サイバリンクス Research Memo(7):主力の流通クラウド事業は定常収入の積上げなどから増収増益予想
配信日時:2021/10/08 15:17
配信元:FISCO
■今後の見通し
1. 2021年12月期の業績見通し
サイバーリンクス<3683>の2021年12月期通期の連結業績については、2021年5月に上方修正を発表した。上方修正後の連結業績として、売上高13,341百万円(前期比4.4%増)、定常収入6,688百万円(同4.1%増)、営業利益791百万円(同14.5%減)、経常利益824百万円(同13.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益556百万円(同13.8%減)としている。
セグメント別では、主力の流通クラウド事業は定常収入の積上げなどから増収増益予想だが、官公庁クラウド事業では防災行政無線デジタル化工事需要等が一服することから減収減益予想となっている。また、モバイルネットワーク事業は、端末販売台数の回復により増収増益予想となっている。なお、トラスト事業は投資が先行することから損失を計上する予想となっている。ただし、これらはかなり厳しく見た予想であることから、各事業の進捗によっては全体の業績が上振れする可能性もありそうだ。
2. セグメント別見通し
(1) 流通クラウド事業
セグメント売上高は3,991百万円(前期比6.1%増)、セグメント利益は458百万円(同44.0%増)と予想している。主力の「@rms」等のサービス提供拡大により定常収入は3,332百万円(同4.7%増)と増加する見込みで、セグメント利益率は11.5%を見込んでいる。
当初は、2021年12月期上期に研究開発投資が集中することに加え、展示会への出展費用等が発生することから、上期のセグメント利益は減益となるものの、下期は定常収入の積上げにより利益率が改善することに加えて定常収入以外の案件も相対的に多く見込まれることから、通期で増益となる下期偏重型の予想であった。しかしながら、2021年12月期上期が増益で着地したこと、また、第2四半期からずれ込んだ案件や当初計画で見込んでいなかった案件の売上を計上する見込みであることから、通期予想を上方修正した。
(2) 官公庁クラウド事業
セグメント売上高は6,150百万円(前期比1.4%減)、定常収入は2,703百万円(同3.7%増)、セグメント利益は406百万円(同35.7%減)と予想している。防災行政無線デジタル化工事需要等が一服する見込みであることに加え、先行投資を進め、減収減益を見込んでいる。
防災行政無線デジタル化工事及びGIGAスクール関連案件が上期で完了したことから、下期は子会社の大型システム導入案件等で売上の落ち込みをカバーする計画だが、セグメント利益は軟調の見込み。一方、デジタル庁発足を契機に、国・自治体業務のデジタル化が急速に進むと考えられることから、これらの関連案件に迅速に対応するため、システム開発を進める方針である。併せて、今後成長が見込まれる校務クラウドサービス「Clarinet」や総合防災サービスの開発・導入にも注力する。なお、第2四半期からずれ込んだ案件の売上を計上する予定であるものの、地方自治体における業務のデジタル化に関する案件については現時点において国の事業予算の規模が不透明であるため、通期予想を下方修正した。
(3) トラスト事業
セグメント売上高は134百万円(前期比824.2%増)、定常収入44百万円(同323.4%増)、セグメント損失169百万円(前期は80百万円の損失)と予想している。
2021年8月から政府電子調達(GEPS)に接続している「マイナトラスト委任状」の安定稼働に注力する。一方で、不動産取引決済のデジタル化をはじめ、マイナンバーカードを利用した簡易かつ確実な認証サービスのほか、企業間の契約や官公庁における申請等のデジタル化に貢献する新たなサービスを早期にリリースするため、引き続き大胆な研究開発投資を実行していく方針だ。
(4) モバイルネットワーク事業
セグメント売上高は3,066百万円(前期比11.0%増)、定常収入609百万円(同2.4%減)、セグメント利益374百万円(同7.1%増)と予想している。
緊急事態宣言を受けて営業時間の短縮等を実施した前期に比べて販売台数は回復することが見込まれるが、下期は、キャリアのインセンティブ制度が変更されること等により利益率が低下する見込み。一方で、店舗の拡充や応対品質の維持・向上に努めることで、顧客ロイヤルティを高めていく方針である。これらの結果、通期では増収増益を見込んでいる。
なお、「ahamo」については、リアル店舗とネット販売という視点では同社にネガティブな面も否定できないが、一方で他のキャリアとの相対比較の視点では、ドコモに対する消費者心理の改善に寄与しており、同社にとってポジティブな要素もあるようだ。
3. 株式市場再編への対応
同社は、2022年4月から導入される東京証券取引所の新市場区分として、プライム市場への移行を選択している。新市場区分における上場維持基準への適合状況に関する一次判定の結果は、「流通株式数」「流通株式比率」「売買代金」の各項目についてはプライム市場の上場維持基準を充たしている一方で、「流通株式時価総額」については基準を充たしていない旨の通知を受けた。「流通株式時価総額」の充足へ向け同社では、2021年2月に公表した中期経営計画の着実な履行に加え、情報開示の充実、ESG関連施策の推進といったコーポレートガバナンスの充実により、企業価値向上を図る。なお、コーポレートガバナンス充実に向けた取り組みとしては、2021年8月より英文開示を開始したほか、ESG関連施策として、健康優良法人の認定取得(2021年3月)、サステナビリティ委員会の設置(2021年7月)、サステナビリティの取り組み開示(2021年9月)を進めている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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1. 2021年12月期の業績見通し
サイバーリンクス<3683>の2021年12月期通期の連結業績については、2021年5月に上方修正を発表した。上方修正後の連結業績として、売上高13,341百万円(前期比4.4%増)、定常収入6,688百万円(同4.1%増)、営業利益791百万円(同14.5%減)、経常利益824百万円(同13.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益556百万円(同13.8%減)としている。
セグメント別では、主力の流通クラウド事業は定常収入の積上げなどから増収増益予想だが、官公庁クラウド事業では防災行政無線デジタル化工事需要等が一服することから減収減益予想となっている。また、モバイルネットワーク事業は、端末販売台数の回復により増収増益予想となっている。なお、トラスト事業は投資が先行することから損失を計上する予想となっている。ただし、これらはかなり厳しく見た予想であることから、各事業の進捗によっては全体の業績が上振れする可能性もありそうだ。
2. セグメント別見通し
(1) 流通クラウド事業
セグメント売上高は3,991百万円(前期比6.1%増)、セグメント利益は458百万円(同44.0%増)と予想している。主力の「@rms」等のサービス提供拡大により定常収入は3,332百万円(同4.7%増)と増加する見込みで、セグメント利益率は11.5%を見込んでいる。
当初は、2021年12月期上期に研究開発投資が集中することに加え、展示会への出展費用等が発生することから、上期のセグメント利益は減益となるものの、下期は定常収入の積上げにより利益率が改善することに加えて定常収入以外の案件も相対的に多く見込まれることから、通期で増益となる下期偏重型の予想であった。しかしながら、2021年12月期上期が増益で着地したこと、また、第2四半期からずれ込んだ案件や当初計画で見込んでいなかった案件の売上を計上する見込みであることから、通期予想を上方修正した。
(2) 官公庁クラウド事業
セグメント売上高は6,150百万円(前期比1.4%減)、定常収入は2,703百万円(同3.7%増)、セグメント利益は406百万円(同35.7%減)と予想している。防災行政無線デジタル化工事需要等が一服する見込みであることに加え、先行投資を進め、減収減益を見込んでいる。
防災行政無線デジタル化工事及びGIGAスクール関連案件が上期で完了したことから、下期は子会社の大型システム導入案件等で売上の落ち込みをカバーする計画だが、セグメント利益は軟調の見込み。一方、デジタル庁発足を契機に、国・自治体業務のデジタル化が急速に進むと考えられることから、これらの関連案件に迅速に対応するため、システム開発を進める方針である。併せて、今後成長が見込まれる校務クラウドサービス「Clarinet」や総合防災サービスの開発・導入にも注力する。なお、第2四半期からずれ込んだ案件の売上を計上する予定であるものの、地方自治体における業務のデジタル化に関する案件については現時点において国の事業予算の規模が不透明であるため、通期予想を下方修正した。
(3) トラスト事業
セグメント売上高は134百万円(前期比824.2%増)、定常収入44百万円(同323.4%増)、セグメント損失169百万円(前期は80百万円の損失)と予想している。
2021年8月から政府電子調達(GEPS)に接続している「マイナトラスト委任状」の安定稼働に注力する。一方で、不動産取引決済のデジタル化をはじめ、マイナンバーカードを利用した簡易かつ確実な認証サービスのほか、企業間の契約や官公庁における申請等のデジタル化に貢献する新たなサービスを早期にリリースするため、引き続き大胆な研究開発投資を実行していく方針だ。
(4) モバイルネットワーク事業
セグメント売上高は3,066百万円(前期比11.0%増)、定常収入609百万円(同2.4%減)、セグメント利益374百万円(同7.1%増)と予想している。
緊急事態宣言を受けて営業時間の短縮等を実施した前期に比べて販売台数は回復することが見込まれるが、下期は、キャリアのインセンティブ制度が変更されること等により利益率が低下する見込み。一方で、店舗の拡充や応対品質の維持・向上に努めることで、顧客ロイヤルティを高めていく方針である。これらの結果、通期では増収増益を見込んでいる。
なお、「ahamo」については、リアル店舗とネット販売という視点では同社にネガティブな面も否定できないが、一方で他のキャリアとの相対比較の視点では、ドコモに対する消費者心理の改善に寄与しており、同社にとってポジティブな要素もあるようだ。
3. 株式市場再編への対応
同社は、2022年4月から導入される東京証券取引所の新市場区分として、プライム市場への移行を選択している。新市場区分における上場維持基準への適合状況に関する一次判定の結果は、「流通株式数」「流通株式比率」「売買代金」の各項目についてはプライム市場の上場維持基準を充たしている一方で、「流通株式時価総額」については基準を充たしていない旨の通知を受けた。「流通株式時価総額」の充足へ向け同社では、2021年2月に公表した中期経営計画の着実な履行に加え、情報開示の充実、ESG関連施策の推進といったコーポレートガバナンスの充実により、企業価値向上を図る。なお、コーポレートガバナンス充実に向けた取り組みとしては、2021年8月より英文開示を開始したほか、ESG関連施策として、健康優良法人の認定取得(2021年3月)、サステナビリティ委員会の設置(2021年7月)、サステナビリティの取り組み開示(2021年9月)を進めている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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