注目トピックス 日本株
富士ソフト Research Memo(5):顧客の価値向上に資する多彩なICTサービス・プロダクトを提供(2)
配信日時:2021/10/04 15:25
配信元:FISCO
■富士ソフト<9749>の事業内容
3. 存在感を増す狭義のプロダクト・サービス
SI事業のプロダクト・サービスは、狭義のプロダクト・サービスとアウトソーシングに区分される。狭義のプロダクト・サービスの2021年12月期上期の売上高は前年同期比17.6%増、営業利益は同5.1%増と伸長、全社に占める構成比は売上高で前年同期比3.0ポイント増の37.0%、営業利益が同0.7ポイント増の39.2%となり、大きな存在感を示している。ただ、四半期ごとの受注獲得モメンタムは大型受注の反動や一部商材の特需一巡を受けて減速(2020年12月期第4四半期:前年同期比24.1%増→2021年12月期第1四半期:同11.0%増→同第2四半期:同22.8%減)し、2021年12月期上期末受注残高は前年同期末比25.9%減となっている。
狭義のプロダクト・サービスは、1)自社プロダクト(ペーパーレスシステムの「moreNOTE」、情報化社会における総合教育ソリューションの「みらいスクールステーション」、個人所有のスマートフォンなどを会社の業務で活用するツールである「smartBYOD」、コミュニケーションロボットの「PALRO」、SIMフリー向けモバイルルータ「FS030W、FS040W」、テレワークにおけるコニュニケーションロスなどのデメリットを軽減するツールである「FAMoffice」等)、2)ライセンスビジネス(マイクロソフト製品、AWS、VMware等)、3)物販等(PC、サーバー等)、から成る。
2021年12月期上期の前年同期比増収率を見ると、自社プロダクトが1%減(2020年12月期通期38%増)、ライセンスビジネスが11%増(同46%増)、物販等が37%増(同14%減)となった。
自社プロダクトの減速は、コロナ禍を受けたリモートワーク需要の高まりが追い風となった「SIMフリー向けモバイルルータ」に対する特需一巡によるところが大きく、好調が続くライセンスビジネスではクラウド・仮想化分野であるAWSやVmware関連事業の2桁伸長が牽引役となっている。なお、物販等の大幅増は前年に受注した大型案件の売上計上によるものである。
ライセンスビジネスについては、Windows7のサポート終了(2020年1月14日)特需のピークアウト後も販売拡大が継続している。加えて、Microsoft365(旧Office)や各種クラウドサービスといったICTプロダクトのサブスクリプションモデル化(売り切り商売ではなく、利用期間に応じて料金を徴収するビジネスモデル)の進展により、従来以上に事業の安定性が高まっている可能性がある。なお、同社の場合、ライセンス製品の導入サポートに関わる売上は自社プロダクトに計上され、厚い利幅を確保しているもようである。
こうしたなかで、同社はPCのライフサイクル管理に関する全ての作業(PCの選定・レンタル、キッティング、管理・サポート、更新プログラム適用等)をワンストップで対応する「デスクトップフルサービス」の提供を本年8月2日からスタートした。この自社サービスではMicrosoft365の導入/利活用を推奨しており、狭義のプロダクト・サービス全般をグロースし収益性を高める力を持つ。また、マイクロソフトがサブスクリプションモデルであるWindows365(企業向け仮想デスクトップ=クラウドPC)のサービス提供を本年8月2日から始め、次期OSであるWindows11の提供も開始(同10月5日予定)される。過去に見られたような特需的な市場の動きが起こるかはさておき、同社の「デスクトップフルサービス」の立ち上げにとって大きな追い風に成り得よう。
また、長期的な人材育成に裏打ちされた同社の一連の取り組みは、事業パートナーからも高く評価されている。2019年以来の具体的な実績は以下の通りである。
マイクロソフトからは、「Microsoft Japan Partner of the Year 2019」のModern Deviceアワード、「Microsoft Japan Partner of the Year 2021」のMicrosoft Teamsアワードを受賞している。
世界最大のITクラウドサービスを運営するAmazon Web Services(AWS)からは2019年に「政府機関コンピテンシー」と「IoTコンピテンシー」、「マネージドサービスプロバイダ」の認定(前者2つは国内初)を取得、2020年には特に優れた実績を残したパートナーだけに与えられる「APNプレミアコンサルティングパートナー」とオンプレミス環境からAWSへ移行するための総合的なスキルと実績が必要な「移行コンピテンシー」、「AWS well-Architectedパートナープログラム」、「Oracleコンピテンシー」の認定を取得、2021年にはAWS の卓越した技術力と継続的な情報発信が評価され同社の技術者が「APN Ambassadors/APN AWS Top Engineers」に選出されている。
IT仮想化市場で世界一のシェアを誇るVMwareからは、2020年からの新しいパートナー制度においてデータセンター仮想化、ネットワーク&セキュリティ、デジタルワークスペースという3つのカテゴリー(全5カテゴリー)で最上位認定である「Principal」を取得、VMware 2020パートナーオブザイヤー賞(アジアパシフィック及び日本地域のクラウドプラットフォームトランスフォーメーション部門)を2021年には2021 VMware APJ Partner Innovation Awardを相次いで受賞している。
企業向けインテリジェントオートメーション分野におけるグローバルリーダーであるBlue PrismからRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の技術力等が評価されシルバーデリバリープロバイダー認定を取得、2021年には顧客への導入支援実績と技術の高さが評価され「コーポレートテリトリー ベストパートナー アワード」を受賞している。
また、プロダクト・サービスの範疇を超える動きながら、2021年8月31日にGPUコンピューティングにおける世界的なリーディングカンパニーである米国NVIDIAの日本法人であるエヌビディア合同会社(以下、NVIDIA)が新たに設立した「NVIDIA DXアクセラレーションプログラム」に国内初のパートナーとして参画することを発表した。NVIDIAから同社は「日本トップクラスのAI開発、インテグレーション実績を有する」と高く評されている。「NVIDIA DXアクセラレーションプログラム」はDXやAIに課題を感じている企業に対しNVIDIAとビジネスコンサルタントやAIエキスパート、システムインテグレータ等の同プログラムパートナーが連携し、企業の成長戦略に合致したDX施策の立案から開発や運用までを支援することを目的とするものである。
独立系SIerとして特定のハードウェアに縛られない柔軟なシステム構築力を強みの1つとする同社が、リモート教育関連製品やコミュニケーションロボット、モバイルルータ等のハードウェアを含む自社ブランド・プロダクトを投入していることは、ユニークな挑戦に見える。また、リモートワーク用社内ツールの外販は、典型的なドッグフーディング事例として注目できよう。同社のコアコンピタンスである「技術力と提案力」を注ぎ込んだ自社プロダクトにより、新たな付加価値の創造に取り組む戦略は「挑戦と創造」という社是に沿った動きと言え、会社側は「投資局面後の収益性については高い水準を求めている」としている。
この点、これまで全社水準を下回って推移してきた狭義のプロダクト・サービスのセグメント利益率が、2018年12月期の2.9%から2020年12月期には6.4%と3.5ポイントもの大幅改善を示し、利益率が高い自社商材の特需一巡に利益率が低い物販の増加が重なった2021年12月期上期においても7.0%と高水準を維持していることは特筆に値しよう。
品質強化のための先行投資等を受けて子会社サイバネットシステムの収益性が改善したことに加え、区分内の売上高ミックスも良化している。採算性に幅がある商材のスポット的な売上計上に左右されるため、セグメント利益率の短期的な変動に一喜一憂する必要はないものの、今後の推移については期待を持って見守りたい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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3. 存在感を増す狭義のプロダクト・サービス
SI事業のプロダクト・サービスは、狭義のプロダクト・サービスとアウトソーシングに区分される。狭義のプロダクト・サービスの2021年12月期上期の売上高は前年同期比17.6%増、営業利益は同5.1%増と伸長、全社に占める構成比は売上高で前年同期比3.0ポイント増の37.0%、営業利益が同0.7ポイント増の39.2%となり、大きな存在感を示している。ただ、四半期ごとの受注獲得モメンタムは大型受注の反動や一部商材の特需一巡を受けて減速(2020年12月期第4四半期:前年同期比24.1%増→2021年12月期第1四半期:同11.0%増→同第2四半期:同22.8%減)し、2021年12月期上期末受注残高は前年同期末比25.9%減となっている。
狭義のプロダクト・サービスは、1)自社プロダクト(ペーパーレスシステムの「moreNOTE」、情報化社会における総合教育ソリューションの「みらいスクールステーション」、個人所有のスマートフォンなどを会社の業務で活用するツールである「smartBYOD」、コミュニケーションロボットの「PALRO」、SIMフリー向けモバイルルータ「FS030W、FS040W」、テレワークにおけるコニュニケーションロスなどのデメリットを軽減するツールである「FAMoffice」等)、2)ライセンスビジネス(マイクロソフト製品、AWS、VMware等)、3)物販等(PC、サーバー等)、から成る。
2021年12月期上期の前年同期比増収率を見ると、自社プロダクトが1%減(2020年12月期通期38%増)、ライセンスビジネスが11%増(同46%増)、物販等が37%増(同14%減)となった。
自社プロダクトの減速は、コロナ禍を受けたリモートワーク需要の高まりが追い風となった「SIMフリー向けモバイルルータ」に対する特需一巡によるところが大きく、好調が続くライセンスビジネスではクラウド・仮想化分野であるAWSやVmware関連事業の2桁伸長が牽引役となっている。なお、物販等の大幅増は前年に受注した大型案件の売上計上によるものである。
ライセンスビジネスについては、Windows7のサポート終了(2020年1月14日)特需のピークアウト後も販売拡大が継続している。加えて、Microsoft365(旧Office)や各種クラウドサービスといったICTプロダクトのサブスクリプションモデル化(売り切り商売ではなく、利用期間に応じて料金を徴収するビジネスモデル)の進展により、従来以上に事業の安定性が高まっている可能性がある。なお、同社の場合、ライセンス製品の導入サポートに関わる売上は自社プロダクトに計上され、厚い利幅を確保しているもようである。
こうしたなかで、同社はPCのライフサイクル管理に関する全ての作業(PCの選定・レンタル、キッティング、管理・サポート、更新プログラム適用等)をワンストップで対応する「デスクトップフルサービス」の提供を本年8月2日からスタートした。この自社サービスではMicrosoft365の導入/利活用を推奨しており、狭義のプロダクト・サービス全般をグロースし収益性を高める力を持つ。また、マイクロソフトがサブスクリプションモデルであるWindows365(企業向け仮想デスクトップ=クラウドPC)のサービス提供を本年8月2日から始め、次期OSであるWindows11の提供も開始(同10月5日予定)される。過去に見られたような特需的な市場の動きが起こるかはさておき、同社の「デスクトップフルサービス」の立ち上げにとって大きな追い風に成り得よう。
また、長期的な人材育成に裏打ちされた同社の一連の取り組みは、事業パートナーからも高く評価されている。2019年以来の具体的な実績は以下の通りである。
マイクロソフトからは、「Microsoft Japan Partner of the Year 2019」のModern Deviceアワード、「Microsoft Japan Partner of the Year 2021」のMicrosoft Teamsアワードを受賞している。
世界最大のITクラウドサービスを運営するAmazon Web Services(AWS)からは2019年に「政府機関コンピテンシー」と「IoTコンピテンシー」、「マネージドサービスプロバイダ」の認定(前者2つは国内初)を取得、2020年には特に優れた実績を残したパートナーだけに与えられる「APNプレミアコンサルティングパートナー」とオンプレミス環境からAWSへ移行するための総合的なスキルと実績が必要な「移行コンピテンシー」、「AWS well-Architectedパートナープログラム」、「Oracleコンピテンシー」の認定を取得、2021年にはAWS の卓越した技術力と継続的な情報発信が評価され同社の技術者が「APN Ambassadors/APN AWS Top Engineers」に選出されている。
IT仮想化市場で世界一のシェアを誇るVMwareからは、2020年からの新しいパートナー制度においてデータセンター仮想化、ネットワーク&セキュリティ、デジタルワークスペースという3つのカテゴリー(全5カテゴリー)で最上位認定である「Principal」を取得、VMware 2020パートナーオブザイヤー賞(アジアパシフィック及び日本地域のクラウドプラットフォームトランスフォーメーション部門)を2021年には2021 VMware APJ Partner Innovation Awardを相次いで受賞している。
企業向けインテリジェントオートメーション分野におけるグローバルリーダーであるBlue PrismからRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の技術力等が評価されシルバーデリバリープロバイダー認定を取得、2021年には顧客への導入支援実績と技術の高さが評価され「コーポレートテリトリー ベストパートナー アワード」を受賞している。
また、プロダクト・サービスの範疇を超える動きながら、2021年8月31日にGPUコンピューティングにおける世界的なリーディングカンパニーである米国NVIDIAの日本法人であるエヌビディア合同会社(以下、NVIDIA)が新たに設立した「NVIDIA DXアクセラレーションプログラム」に国内初のパートナーとして参画することを発表した。NVIDIAから同社は「日本トップクラスのAI開発、インテグレーション実績を有する」と高く評されている。「NVIDIA DXアクセラレーションプログラム」はDXやAIに課題を感じている企業に対しNVIDIAとビジネスコンサルタントやAIエキスパート、システムインテグレータ等の同プログラムパートナーが連携し、企業の成長戦略に合致したDX施策の立案から開発や運用までを支援することを目的とするものである。
独立系SIerとして特定のハードウェアに縛られない柔軟なシステム構築力を強みの1つとする同社が、リモート教育関連製品やコミュニケーションロボット、モバイルルータ等のハードウェアを含む自社ブランド・プロダクトを投入していることは、ユニークな挑戦に見える。また、リモートワーク用社内ツールの外販は、典型的なドッグフーディング事例として注目できよう。同社のコアコンピタンスである「技術力と提案力」を注ぎ込んだ自社プロダクトにより、新たな付加価値の創造に取り組む戦略は「挑戦と創造」という社是に沿った動きと言え、会社側は「投資局面後の収益性については高い水準を求めている」としている。
この点、これまで全社水準を下回って推移してきた狭義のプロダクト・サービスのセグメント利益率が、2018年12月期の2.9%から2020年12月期には6.4%と3.5ポイントもの大幅改善を示し、利益率が高い自社商材の特需一巡に利益率が低い物販の増加が重なった2021年12月期上期においても7.0%と高水準を維持していることは特筆に値しよう。
品質強化のための先行投資等を受けて子会社サイバネットシステムの収益性が改善したことに加え、区分内の売上高ミックスも良化している。採算性に幅がある商材のスポット的な売上計上に左右されるため、セグメント利益率の短期的な変動に一喜一憂する必要はないものの、今後の推移については期待を持って見守りたい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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