後場の投資戦略ニュース一覧

後場の投資戦略 トヨタら円安恩恵企業業績が下支え [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;31954.48;+352.83TOPIX;2325.26;+14.58[後場の投資戦略] 日米の金融イベントは波乱なく通過し、決算関連に目線が集中する形となっている。円安効果で市場予想を上回るトヨタが本日も続伸となっており、円安で恩恵を受ける輸出企業は改めてスポットがあたっている。財務省が10月に為替介入を実施しなかったことを公表し、ドル・円は一時1ドル=151円台に突入し、上値を試す展開となっている。神田財務官の円安けん制発言を受け、やや円高方向に戻したものの、下値は1ドル=150円台にかたまりつつあり、日経平均にとっては下支えとなりそうだ。 また、昨日発表された10月ADP雇用統計では市場予想を下回る結果となり、明日発表の米雇用統計も9月のような雇用市場の過熱感を示唆するような結果とはならない公算が大きい。中東情勢についても報道を追う限り戦線拡大など最悪な事態は想定しづらい状況にあり、外部要因への懸念は一旦あく抜けとなりそうだ。後場は引き続き利益確定売りが出やすいと思われるが、来週のSQ週に向けて終値で32000円台に乗せてくるか注目したい。(二階堂千穂) <AK> 2023/11/02 12:24 後場の投資戦略 米株高引継ぎ買い優勢の展開、幅広い業種が上昇 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;31475.62;+616.77TOPIX;2302.13;+48.41[後場の投資戦略] 本日の東京株式市場は買いが先行し、日経平均株価はシカゴ先物にサヤ寄せする格好でスタートした。昨日の米株式市場で主要指数が上昇したことが東京市場の株価の支えとなっているほか、外為市場で1ドル=151円30銭台と昨日15時頃と比べ1円10銭ほど円安・ドル高に振れたことが輸出株などのポジティブ要因となっている。さらに、警戒されていた日銀金融政策決定会合を通過したことで、買い安心感が強くなった。そのほか、決算発表も佳境となっており、本日は好業績及び好業績見通しを発表した企業中心に注目が集まっている。アジア市況では香港ハンセン指数や上海総合指数がともにプラス圏で推移している点もやや追い風となっている可能性がある。 さて、後場の日経平均はプラス圏維持も上値の重い展開が続くか。米株先物やアジア市況の動向に注意しておきたいが、米国で米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表とパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の記者会見などを控えていることから、これを見極めたいとして積極的な買いを見送る向きが広がりそうだ。また、今週は重要イベントに加えて、米国で10月雇用統計やISM製造業、非製造業景況指数などの各種経済統計の発表も控えており、戻り待ち狙いの売りも入りやすいだろう。テクニカル面では、25日移動平均線が上値抵抗線として意識されているか。ただ、FOMC通過後のアク抜けの可能性も考えられるため、積極的には売り込みづらく、売り買いが交錯する展開も想定されそうだ。決算発表を終えた好業績及び好業績見通しを示した銘柄中心に個人投資家の物色意欲が続きそうだ。(山本泰三) <AK> 2023/11/01 12:21 後場の投資戦略 金融イベント前に模様眺めムード強い [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;30649.44;-47.52TOPIX;2236.04;+4.80[後場の投資戦略] 昨晩、日本経済新聞社が本日の金融政策決定会合で1%を超える金利上昇を容認する案が有力と報道し、ドル・円は一時1ドル=148円台まで円高方向に振れた。本日の国内債券市場は長期金利が一時0.955%と高水準を更新し、政策修正へ構える格好となっている。金融政策に大幅な変更はないとみられているが、イールドカーブコントロール再修正に関する議論についてどのような内容になるか関心が高まっている。本日の大引け後に植田総裁の記者会見が行われるため、後場もこの会見を見極めたいとして積極的な売買は控えられそうだ。本日も決算関連で好悪材料入り混じっており、一方向に相場が傾くことは想定しづらい。 ただ、「ハロウィンに株を買え」と投資格言もあるが、昨日は押し目待ち狙いの買いや重要イベント前の先回り的な買いも見られ、日本株の底打ち期待は根強いよう。一方で、寄り付き前に発表された経済指標では、失業率、有効求人倍率など9月の雇用関連指標ではほぼ市場予想通りであったが、9月鉱工業生産(速報値)は予想を大幅に下回る前月比+0.2%上昇だった。市場コンセンサスでは2.5%程度の上昇を見込んでおり、金利上昇により設備投資を控える企業姿勢もかいま見える。また、中国政府版の製造業購買担当者景気指数(PMI)が2か月ぶりに好・不況の分かれ目となる50を下回っており、これを受けてハンセン指数は下落している。植田総裁の発言内容次第ではどちらにも転びやすい局面ではありそうだ。(二階堂千穂) <AK> 2023/10/31 12:26 後場の投資戦略 マイナス圏で軟調に推移 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;30609.48;-382.21TOPIX;2231.23;-23.42[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は売りが先行した。イスラエルがパレスチナ自治区ガザへの地上作戦を拡大すると発表して中東情勢の悪化が懸念されているほか、今週は日銀金融政策決定会合や米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えており、買い手の乏しい展開が続いている。また、前週末の日経平均の上昇は自律反発狙いの買いが入ったに過ぎず、買い進むには手掛かり材料に乏しい。そのほか、アジア市況で香港ハンセン指数や上海総合指数がともに軟調に推移している点も投資家心理の重しとなっている。 さて、後場の日経平均はマイナス圏で軟調な展開が続くか。アジア市況で軟調さが続いている一方で、米主要株価指数先物はプラス圏で推移しており日経平均の下支え要因となる可能性がある。ただ、今週は重要イベントに加えて、米国で重要指標となる10月雇用統計やISM製造業、非製造業景況指数などの各種経済統計の発表も控えているため、様子見姿勢が強まりそうだ。また、中東情勢の一段の深刻化は依然リスクとして警戒が必要で、後場も決算発表を終えた銘柄中心に注目が集まろう。ひとまず、日経平均は引き続き24日安値の30551.67円を下回らないか注視しておきたい。決算の予定では、明日31日には半導体関連の決算が集中し、1日には国内時価総額トップのトヨタ自<7203>が決算を発表する。(山本泰三) <AK> 2023/10/30 12:10 後場の投資戦略 自律反発狙いの買いが優勢 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;31072.93;+471.15TOPIX;2255.79;+31.54[後場の投資戦略] 本日の東京株式市場は買いが先行した。昨日の日経平均が600円を超す大幅安となったことから自律反発狙いの買いが入っているほか、今週から発表が本格化している3月決算企業の上半期決算への期待感が株価の下支え要因となっている。ただ、昨日の米株式市場で主要指数が下落したことは国内の投資家心理の重しとなっているか。また、来週は日銀の金融政策決定会合、米連邦公開市場委員会(FOMC)が予定されており、週末要因も相まって積極的な買いを見送る向きが多いのか、前日の下落分は取り戻していない。そのほか、アジア市況は香港ハンセン指数や上海総合指数はともに堅調に推移している。 本日、取引開始前に発表された10月の東京都区部消費者物価指数(CP)は、生鮮食品を除くコアCPIが前年同月比2.7%上昇(前月2.5%上昇)した。また、生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIは同3.8%上昇と(前月3.9%上昇)から伸びが縮小したが、市場予想の同3.7%上昇は上回った。そのほか、賃金動向が反映されるサービス価格は同2.1%上昇と、1994年2月(2.2%上昇)以来の高い伸びとなった。国内の長期金利も0.86%台で日銀が上限に設定している1%に近づいており、市場では政策修正への思惑が強まっている。31日の日銀金融政策決定会合で物価見通しや日銀関係者の発言には注目しておきたい。 さて、後場の日経平均は上げ幅を広げる展開となるか。アジア市況で堅調さが続き、米株先物の動向次第では、引き続き決算が好調だった銘柄中心に買い戻しの動きが継続する可能性がある。上海総合指数は節目の3000ptを上回れるか注目しておきたい。一方で、米国および国内の企業決算が本格化するなか、週末要因も相まって様子見ムードが強まる可能性もある。中東情勢においても、イスラエルのガラント国防相が26日に「条件が整えばパレスチナ自治区ガザへの地上侵攻が実施される」と述べたほか、イランのアブドラヒアン外相が「イスラム組織ハマスとイスラエルの戦争が広範囲に広がった場合、米国も影響は避けられない」と警告したという。総じて、外部環境の不透明感は依然としてくすぶっており、上値の重い展開となる可能性も想定しておきたい。(山本泰三) <AK> 2023/10/27 12:19 後場の投資戦略 米ハイテク株下落の流れ引き継ぐ [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;30602.44;-667.48TOPIX;2219.03;-35.37[後場の投資戦略] 国内株式市場は前日好調に推移していた反動もあり、ほぼ全面安となっている。昨日は米国市場で特に大手ハイテク株中心のナスダック100指数が前日比-2.47%と今年最大の下げとなっており、国内ハイテク株も軟調となっている。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)が-4.12%と大幅下落となったことで、国内半導体銘柄へも売りが波及している。 後場は今晩発表される米7-9月期国内総生産(GDP)速報値、米9月耐久財受注など経済指標発表を見極めたいとして、積極的な売買は控えられそうだ。7-9月期の実質GDP速報値は前期比年率4.3-4.4%増が市場予想コンセンサスとなっており、想定通りであれば約2年ぶりの高水準となる。昨日発表の米9月新築住宅販売件数の好調な結果で米長期金利が再び5%へ接近しており、警戒感は強いだろう。決算発表も好悪入り混じる結果となっており、なかなか物色手掛かりとしづらい。週末要因もちらつき、ひとまず日経平均においては24日安値の30551.67円を下回らないかを注視したい。(二階堂千穂) <AK> 2023/10/26 12:36 後場の投資戦略 米株高引継いで買い優勢の展開 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;31466.92;+404.57TOPIX;2269.14;+28.41[後場の投資戦略] 今日の東京株式市場は買いが先行した。前日の米株高を引き継いでおり、ハイテク株比率が高いナスダック及び主要な半導体関連銘柄で構成されるフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が上昇したことが、東京市場でハイテク株や半導体関連株の株価支援要因となっている。また、今後本格化する3月決算企業の上半期決算への期待感に加えて、前日の日経平均が日足で長めの下ひげを形成したことから、テクニカル的に下値は堅いとの見方もあった。そのほか、アジア市況では香港ハンセン指数や上海総合指数が上昇しており、これらも追い風となっている。ただ、ハンセン指数が2%を超える上昇となっている中、上海総合指数の上昇は限定的で節目の3000ptには届いておらず上値は重い。 さて、後場の日経平均は上げ幅を広げる展開となるか。アジア市況の動向や米株先物の推移を見極めつつ、直近軟調に推移していた銘柄中心に買い進む動きが継続するか注目しておきたい。一方で、長期金利の上昇は一服しているものの、日米長期金利の先高観や中東情勢の緊迫化など警戒材料が払しょくできていない。そのほか、時間外でのアルファベット株の急落に加えて、全米自動車労組(UAW)のスト収束は見通せておらず、UAWは各社が収益源とする主力工場をスト対象に加え始めている。総じて、外部環境の不透明感が依然として漂っているものの、本日は幅広い銘柄で買い戻しが続きそうだ。(山本泰三) <AK> 2023/10/25 12:19 後場の投資戦略 一時30500円手前まで下落 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;30828.59;-170.96TOPIX;2224.59;-14.22[後場の投資戦略] 本日の東京株式市場は荒い値動きとなっている。外部環境が不安定で相場全体においては買い材料が見いだせない状況が続いている。そのようななか、決算発表を物色材料にと関連銘柄に多く目が向けられているが、IT・電気関連の決算発表で先陣を切るニデック<6594>が車載事業の伸び悩みがネガティブ視され大幅反落となった。決算発表ラッシュ出だしで出鼻をくじかれる形となってしまったことで、投資家心理は悪化し前場は前半大きく下げた。ただ、30500円手前で反発し、半値戻しとなった。 中東情勢や米国政治不安などに加え、EMS(エレクトロニクス機器の受託製造サービス)世界最大手、台湾・鴻海精密工業(ホンハイ)傘下の富士康科技集団(フォックスコン)に対し、中国当局が税務当調査に入ったと伝わり、中台関係の悪化も懸念材料として台頭してきた。外部環境は引き続き予断を許さない状況となっており、後場も決算関連などに手掛かりを見出すこととなりそうだ。(二階堂千穂) <AK> 2023/10/24 12:42 後場の投資戦略 マイナス圏での軟調推移続く [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;31007.12;-252.24TOPIX;2246.23;-9.42[後場の投資戦略] 本日の東京株式市場は売りが先行した。前週末の米株安を引き継いだほか、中東情勢の緊迫化や米財政運営の先行き不透明感なども依然として払しょくできておらず、買い進む動きは乏しい。また、米長期金利の上昇はやや一服しているものの、依然として高水準を維持するなか、積極的な押し目買いの動きは限られそうだと見ている向きも多いようだ。ただ、節目の31000円が徐々に接近してきているなか、同水準では一定の買い戻しが向かう可能性もある。そのほか、アジア市況では上海総合指数などが下落していることも、重しとなっている。上海総合指数は、前週末に付けた年初来安値を下回っており、国内景気や米中関係への不安が続いている。 さて、後場の日経平均はマイナス圏での軟調もみ合い展開が続くか。今週はFRB高官が金融政策に関する発言を自粛する「ブラックアウト期間」に入るため、要人発言がなく手掛かり材料は乏しいとみられている。さらに、米国で主要企業の決算が本格化するほか、国内でも主要企業の決算発表控えていることもあり、様子見姿勢が強まると買い進む動きは想定しにくい。企業決算への期待が下支えする可能性もあるが、外部環境の不透明感が懸念材料となる中、引き続きアジア市況の動向や米株先物の推移を見極めたいか。総じて、手掛かり材料に乏しい中、マイナス圏でこう着感の強い展開となりそうだ。(山本泰三) <AK> 2023/10/23 12:19 後場の投資戦略 買い材料乏しく軟調推移続く [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;31266.84;-163.78TOPIX;2255.52;-8.64[後場の投資戦略] 今日の東京株式市場は売りが先行した。昨日の米株安を引き継いだほか、中東情勢の緊迫化や米国による対中半導体規制強化への懸念、米財政運営の先行き不透明感なども払しょくできず、週末要因も相まって買い進む動きは乏しい。また、アジア市況では、香港ハンセン指数や上海総合指数が下落し、上海総合指数が心理的な節目とされる3000を割っていることも警戒材料となっている。ただ、昨日の日経平均が600円を超す大幅安となったことで自律反発狙いの買いが入りやすく、下げ幅は限定的となっている。なお、取引開始前に発表された9月の全国消費者物価指数(CPI)は、生鮮食品を除く総合指数が前年同月比2.8%上昇した。QUICKがまとめた市場予想の中央値は同2.7%上昇だった。 さて、後場の日経平均はプラス圏に浮上できるか。FRBのパウエル議長は次回のFOMCでは政策金利を据え置く姿勢を示したが、その後は追加利上げの可能性があると強調している。利上げがすでに終結したと推測する市場の見方をけん制しており、FRBの金融政策も先行きが見通しにくい。午後からはアジア市況の動向に加えて、米株先物の推移を見極めたく、引き続き買い進む動きは限定的となりそうだ。テクニカル面では、サポートラインが見当たらず、31000円も視野に入ってきている。総じて、手掛かり材料に乏しい中、個別に材料が出た銘柄中心に注目しておきたい。(山本泰三) <AK> 2023/10/20 12:25 後場の投資戦略 日経平均は大幅反落、米株安横目に下げ幅を広げる展開 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;31446.99;-595.26TOPIX;2261.96;-33.38[後場の投資戦略] 本日の東京株式市場は売りが先行した。前日の米主要株価指数が下落したことが東京市場の株価の重しとなったほか、日米長期金利の上昇に加えて中東情勢の緊迫化や米国による対中半導体規制の強化、米財政運営の先行き不透明感など警戒材料が多く、売り手優位の状況が続いている。また、中国・香港市場も主要株価指数が大きく下落しており、投資家心理の重しとなっている。なお、取引開始前に発表された9月の貿易収支は624億円の黒字で、QUICKがまとめた民間予測の中央値は4250億円の赤字だった。黒字は3か月ぶりで、中国向けの食料品の輸出額が98億円と前年同月比で58%減少したようだ。 さて、後場の日経平均はじりじりと下げ幅を広げる展開か。取引開始前に発表された対外及び対内証券売買契約などの状況(週間)によると、海外投資家は10月8-14日に国内株を3週連続で買い越しており、買越額は1兆2599億円だったが、直近のネガティブ材料を打ち消すような内容ではなかった。他方、バイデン大統領は、ガザの病院での爆発についてイスラエルの責任ではないことを示唆する米国防総省の証拠を確認したようだ。ただ、アラブ諸国の指導者らは18日にヨルダンで予定されていたバイデン大統領との首脳会談をキャンセルしており、中東の地政学リスクは不透明感がぬぐえない。午後からは引き続きアジア市況の動向に加えて、米株先物の推移を見極めたい。テクニカル面でも、サポートラインが見当たらず、下値模索の展開を示唆しているか。総じて、手掛かり材料に乏しい中、後場も売り優勢の展開となりそうだ。(山本泰三) <NH> 2023/10/19 12:26 後場の投資戦略 節目の32000円近辺でもみ合う [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;31974.29;-66.00TOPIX;2287.98;-4.10[後場の投資戦略] 今日の東京株式市場は、やや売りが優勢となった。米長期金利が上昇し、ナスダック総合指数や主要な半導体関連銘柄で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が下落したことが、東京市場でハイテク株や半導体関連株の重しとなった。また、米国の対中半導体規制の強化や中東の地政学リスクなど外部環境の不透明感が引き続き市場の警戒材料となっている。一方で、国内外金利の上昇を材料に金融株が上昇し、米国経済統計の結果を受けて鉱業や石油株も堅調に推移し、指数を下支えしている。今月下旬からは、国内企業の決算発表も本格化するため、期待感も広がっているか。 国内の長期金利は一時0.81%を付け、約10年2カ月ぶりの水準になった。米長期金利が急上昇したことに加えて、30・31日に開く日銀金融政策決定会合で2023年度・2024年度の物価見通しを上方修正する公算が大きいとの報道が債券の売りにつながっている。関係者によると、生鮮食品を除くコアCPIの見通しは、23年度が2.5%から3%に、24年度については従来の1.9%から2%以上への引き上げが視野に入るという。日銀は、賃金上昇を伴う形での2%物価目標の持続的・安定的実現を目指しているが、植田日銀総裁は前回会合後の会見で、現状はまだ目標に至っていないと認識を示していた。今月の同会合で、これらの認識に変化が出てきているか、注目しておきたいところだ。 さて、後場の日経平均はマイナス圏での軟調推移が続くか。前日には、ガザの病院が空爆されたことを受けて、バイデン大統領が18日に予定していたヨルダン訪問を延期することとなった。イスラエル軍はガザの病院への空爆に対する関与を否定しているが、中東の地政学リスクは引き続き不透明感が広がっている。また、今晩は米国でテスラやネットフリックスなどが決算を発表予定で、これらの決算を見極めたい動きも広がりそうだ。手掛かり材料に乏しい中、節目の32000円近辺でもみ合う展開を想定しておきたい。(山本泰三) <AK> 2023/10/18 12:17 後場の投資戦略 再び節目32000円を下回る [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;31944.31;+285.28TOPIX;2285.36;+11.82[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、前日の米株高を足掛かりに反発スタートとなったものの上値は重く、再び32000円を下回って前引けを終えた。前日の米国株式市場は上昇し、中東情勢をめぐる外交的努力に一定の評価を示した形とはなった。昨日発表されたNY連銀製造業景況指数は前月から低下ししたものの、市場予想は上回っていたことから、特にネガティブ視はされなかったようだ。 ただ、イラン外相が戦線拡大を示唆するなど、決して楽観視できない状況が続いている。ドル・円は1ドル=150円手前で膠着状態となっているが、ここのところ日本の為替介入の有無に関し、鈴木財務相や神田財務官の発言が報道で取り上げられており、急激な動きには警戒したい。今晩は米国で9月小売売上高の発表を控えており、後場はこれを見極めたいとして大きな動きは控えられそうだ。引き続き個別の動きが見られている決算関連に注目するのも一手だろう。(二階堂千穂) <AK> 2023/10/17 12:31 後場の投資戦略 先行き不透明感強まり節目の32000円を下回る [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;31786.78;-529.21TOPIX;2279.29;-29.46[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、引き続き先週の大幅なリバウンドに対する反動に加えて、米ハイテク株安を受けて東京市場でも半導体関連株など値がさハイテク株を中心に売りが広がっている。また、中東情勢の一段の緊迫化なども警戒されているようだ。そのほか、原油先物価格の上昇でインフレが再燃するとの懸念も台頭している。中国・上海株式市場も、中国景気の先行きや中東情勢を巡る不透明感が根強く、軟調に推移している。 中東の地政学リスクは引き続き不安定材料として横たわっている。地上戦への移行で戦線の拡大が懸念されており、ブルームバーグ・エコノミクスによれば中東で紛争が拡大すれば世界的なリセッション(景気後退)につながる恐れがあるとの見方もある。イスラエルはパレスチナ自治区ガザでの「大規模な地上作戦」を準備していることを明らかにしており、実際に地上侵攻すればイランの関与を招く可能性がある。一方で米国は、ここ数日にイランと非公式ルートで協議を実施しているようで、ブリンケン米国務長官は16日にイスラエルを再び訪問して協議を実施する予定。バイデン米大統領も、イスラエルのネタニヤフ首相との電話会談での招待を受けて、数日中の同国訪問を検討しているという。ひとまず、イスラエルの地上侵攻の動向を注視して見守る必要があろう。 さて、後場の日経平均はマイナス圏での軟調推移が続くか。東証業種別株価指数もほとんどの業種が前営業日比で下落、プライム市場では1584銘柄と86%が下落しており、引き続き好決算を発表した企業への物色が中心となりそうだ。一方で、東証マザーズ指数は10月4日につけた安値677.80ptを下回って年初来安値664.36ptをつけた。米長期金利は4.6%台まで下落しているものの、ナスダックの大幅安や原油価格が上昇してインフレ長期化への警戒が広がったこと、中東情勢の不透明感などを受けて新興株を手掛けにくい地合いが続いている。後場のマザーズ指数は、下値模索の展開となろう。(山本泰三) <AK> 2023/10/16 12:18 後場の投資戦略 インフレ長期化懸念や米金利高が重しに [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;32356.76;-137.90TOPIX;2313.23;-29.26[後場の投資戦略] 日経平均株価は昨日までの3営業日で1500円近く上昇しており、本日は短期的な戻り待ちの売りが出やすかった。また、米9月CPIが予想をやや上回る伸びとなったほか、米長期金利が一時4.7%まで上昇するなど、国内の投資家心理にネガティブに働いている可能性がある。一方、昨日はダウ平均が一時350ドル近く下落した後に下げ幅を縮める展開となったことが東京市場で一定の安心感となった。さらに、国内で小売り・サービスを中心とする消費関連株の四半期決算発表がピークとなっており、好業績銘柄への物色意欲が相場の支えとなっている。 なお、米9月の消費者物価指数は前年同月比3.7%上昇(予想3.6%上昇)と予想をやや上回ったものの8月から横ばいとなった。変動が大きい食品とエネルギーを除いたコアCPIは同4.1%上昇と8月の4.3%上昇から6か月連続で伸びは鈍化した。全体的には、エネルギーコストが押し上げたほか、住居費や自動車保険、スポーツイベントのチケットといった娯楽サービスの価格上昇も反映された。直近では、FRB関係者のハト派発言が注目されるようになったが、9月のFOMCでは19人の政策決定当局者のうち12人が年内の追加利上げを支持する意向を示していることもあり、今後の姿勢に再度注目が集まろう。そのほか、CME FedWatch ツールでは、11月会合での利上げ確率は9.8%とほとんどが政策金利の据え置きを想定している。 さて、後場の日経平均はマイナス圏での軟調推移が続くか。中国や香港指数などのアジア市況も軟調に推移しており、米株価指数先物の値動きに注目しておきたいところ。東証業種別株価指数も全業種が前日比で下落しており、好決算を発表した個別株中心に物色が続きそうだ。テクニカル的には、25日移動平均線上方で推移しており、後場に同線で踏みとどまれるか注視しておきたい。一方で、東証マザーズ指数は朝方に節目の700ptを下回ると大きく下げ幅を広げており、米長期金利の上昇がバリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株の重しとなっている。後場では新興株も一部の好決算銘柄に物色が継続するか注目が集まりそうだ。(山本泰三) <AK> 2023/10/13 12:25 後場の投資戦略 米金利低下によるハイテク株上昇が下支え [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;32323.28;+386.77TOPIX;2330.63;+22.79[後場の投資戦略] 本日の東京株式市場は、前日の米国市場での米長期金利の低下を受けたハイテク株上昇が下支えとなり、半導体銘柄を中心に大幅上昇となった。ただ、日経平均が昨日までの2日間で900円を超す上げとなったことから、短期的な戻り待ちの売りが出やすかった。 なお、取引開始前に発表された8月の機械受注統計は、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)が前月比0.5%減だった。判断は10ヶ月連続で「足踏みがみられる」とされた。また、日本銀行の野口旭審議委員は本日新潟で行われた講演で、金融政策運営について「当面の使命は粘り強い緩和の継続」と述べた。現行の大規模緩和政策の必要性を改めて示しており、日本銀行の金融政策転換はまだ先とみられる。 米国では本日(日本時間21:30)9月消費者物価指数(CPI)が発表予定となっており、後場はこれを見極めたいとして小動きとなりそうだ。小売セクターから好決算で物色されて大幅反発銘柄も目立っており、本日決算発表が行われる松屋<8237>などは注目しておきたい。(二階堂千穂) <AK> 2023/10/12 12:33 後場の投資戦略 短期筋主導のなか戻り一服も意識 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;31917.48;+170.95TOPIX;2311.24;-0.95[後場の投資戦略] 本日の東京株式市場は、前日に日経平均が今年最大の上げ幅を記録した直後にもかかわらず、急伸の反動をこなして底堅い動きを見せている。先週4日に30500円割れまで急落した日経平均は、9月15日終値からわずか3週足らずの間に3000円超も下落した。この間に、商品投資顧問(CTA)などトレンドフォロー型ファンドの短期筋の持ち高は一気にネットロング(買い越し)からネットショート(売り越し)へと転じたとの試算もある。 ポジションが身軽になった状態で、米雇用統計を無難に消化し、警戒されていた米長期金利も低下に転じたことで、短期筋は一気に再び買い越しに転じてきているもよう。前日の先物手口などをみても、ドイツ証券やバークレイズなどシステマティックな売買を主体とする向きと思われる買い越しが目立った。ただ、前日10日の東証プライムの売買代金は3兆円台半ばにとどまっており、日経平均が今年最大の上げ幅を記録した割には物足りない水準だ。買いの主体はあくまで短期筋に限定され、実需筋はまだ先行きに懐疑的なようだ。 日経平均は32000円近くまで上昇してきたことで戻り一服感なども意識されやすいところ。32000円は累積売買代金からみて商いが最も集中している価格帯で、この水準では戻り待ちの売りも出やすくなってくる。また、東京証券取引所が公表している空売り比率(規制あり・規制なし合計)は6日の43.3%から10日には38.0%まで低下。過去の推移をみてもボトム圏に近い水準にまで低下しており、ここからの一段の株価上昇には追加材料が必要だろう。 今晩は注目の米9月卸売物価指数(PPI)が発表される。総合は前年同月比+1.6%と8月(+1.6%)から横ばいの一方、モメンタムを示す前月比は+0.3%と8月(+0.7%)から鈍化する見込み。食品・エネルギーを除いたコア指数は前年同月比では+2.3%と8月(+2.2%)から小幅に加速する予想も、前月比では+0.2%と8月(+0.2%)と同じ伸びにとどまる見込みだ。総じてインフレの鈍化基調を再確認する結果が予想されており、予想通りの結果となれば、株式市場のリバウンド機運の追い風となりそうだ。 一方、9月以降の米長期金利の急上昇を巡っては、米景気に対する楽観的な見方やFRBの「Higher for Longer(より高く・より長く)」のスタンスを反映したものという考え方のほか、米中長期債の発行規模拡大に伴う需給の悪化や政局混迷に伴う信用リスクの高まりを反映したものとの考え方もある。後者の見方がより強く働いた結果であるのであれば、米長期金利の動向についてはまだ予断を許さない。 つなぎ予算の成立で一時的に回避されている米政府機関の閉鎖の先行きは、マッカーシー前下院議長の解任により先行き混沌としている。新しい下院議長の選任に手間取れば、再び米政府機関の閉鎖が懸念され、信用リスクの高まりを通じた米長期金利の上昇が再燃する可能性もある。 イスラム組織「ハマス」によるイスラエルへの攻撃を発端とした中東情勢の混乱についても、今のところは相場への影響は限定的だが、今後の動向次第ではイランに対する原油輸出規制の強化や石油輸送海路の遮断などのリスク要素がくすぶる。原油市況が左右する米長期金利への影響も注視する必要があろう。目先は短期強含みも、中長期ではまだ楽観には傾きにくい状況が当面続きそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2023/10/11 12:14 後場の投資戦略 米株高受けて買い優勢の展開 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;31766.75;+772.08TOPIX;2311.30;+47.22[後場の投資戦略] 今日の東京株式市場は買いが先行した。東京市場が3連休中の先週末6日と昨日9日の2日間で、米株式市場でダウ平均が大幅高となった流れを引き継いだ。また、小売り・サービスを中心とする消費関連株の四半期決算発表が本格化しており、好業績銘柄に対する物色意欲が株価を支える要因となった。ただ、中東地域での戦闘激化を受けた原油価格の上昇が、物価上昇や企業業績圧迫の要因となるとの警戒感も広がっている。なお、取引開始前に発表された8月の国際収支状況(速報)によると、経常収支は2兆2797億円の黒字。前年同月に比べ1兆6050億円黒字幅が拡大した。 一方で、新興市場は上値の重い展開となっている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位銘柄などで構成される東証グロース市場Core指数は上昇スタート後にプラス圏で推移しているが、日経平均株価と比較すると上げ幅は限定的となっている。米長期金利は4.6%台まで下落しており、前週大幅に下落した新興株を買い戻す動きが継続している。ただ、今週は、11日に9月の米卸売物価指数(PPI)、12日に9月の米消費者物価指数(CPI)の発表が控えており、これらを見極めたいとして積極的な買いを見送る向きもある。前引け時点での東証グロース市場Core指数は1.94%高、東証マザーズ指数は1.00%高となった。 さて、国内休日中の7日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃した。戦闘の詳細は報道を注視しておきたいが、中東情勢の緊迫化を受けて、金やドルなどの安全資産に注目が集まっている一方で、株式も底堅い動きとなっている。先週末発表された雇用統計の結果や米連邦準備制度当局者のハト派的発言が好感されているほか、地政学リスクの高まりが金利据え置きにつながるとみられている。CME FedWatch ツールでは、次回FOMCでの金利据え置きが86.4%まで上昇、利上げ確率は13.6%まで低下している。 一方で、原油相場が急伸したことでインフレ高止まりを巡る懸念も強まっている。今回の出来事がすぐに供給への脅威になるわけではないとみられているが、イラン関与の疑いが伝えられる中でイランに対する報復の可能性が高まれば、ホルムズ海峡を巡る懸念が強まる恐れがあるという。世界の石油供給量の3分の1近くを占める中東で先行き不透明が強まっており、今後の金融市場への影響は読みにくい。今週は重要インフレ指標の発表も控えており、楽観視して株式を買い進む動きは手控えた方がよさそうだ。 さて、10月5日に発表された最新週(9月25日~9月29日)の投資部門別売買動向によると、海外投資家は現物株を4週連続で売り越した。売り越し金額は776億円となるなか、個人投資家は2週連続で現物株を買い越している。引き続き、海外投資家の売り越しスタンスにブレーキが掛かるか注目される。後場の日経平均はプラス圏での堅調推移を継続できるか。本日は幅広いセクターが堅調に推移しており、プライム市場の主力株中心に物色が継続するか注目しておきたい。(山本 泰三) <AK> 2023/10/10 12:08 後場の投資戦略 神経質ななか米雇用統計を見極めへ [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;30998.80;-76.56TOPIX;2268.23;+4.47[後場の投資戦略] 本日の東京株式市場は動きの乏しい展開。今晩の米雇用統計の発表を前に様子見ムードが強まっている。米9月雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比+17万人と8月(+18.7万人)から小幅に伸びが鈍化する見込み。一方、平均時給は前年同月比+4.3%と8月(+4.3%)から横ばいが予想されているが、モメンタムを示す前月比は+0.3%と8月(+0.2%)から加速する見込みだ。また、失業率は3.7%と8月(+3.8%)から低下する予想。全体的に労働市場の堅調を再確認することが事前の予想として織り込まれているため、投資家の警戒感は既に相応に高まっていると思われ、市場予想並みの結果にとどまれば、あく抜け感から株式の買い戻しが先行しそうだ。 一方、投資家の先行きに対する警戒度合いを示す恐怖指数、米VIX指数は3日、4日と連日で一時警戒モードの基準値とされる20を上回った。終値ではいずれも20を下回り、5日は18.49へと低下しているが、下向きから横ばいに転じつつある200日移動平均線を上回った状態が続いており、投資家の警戒感はくすぶっている。神経質な状態のなか、米雇用統計が市場予想を上振れてしまえば、素直にリスク回避の動き、すなわち金利上昇・株価下落が再開すると考えられるため注意が必要だ。 ほか、ここ最近、米長期金利の上昇に対して底堅さが見られていた半導体株が本日総じて弱い動きになっていることが気がかりだ。米オープンAI社が独自のAIチップを製造する見込みとの一部報道を受け、米エヌビディアの業績に対する懸念が台頭したことが背景にあるようだ。今晩の米国市場で雇用統計が上振れる可能性に加えて、米エヌビディアをはじめとした半導体株の下落もリスクとして意識されるなか、連休明け後の東京市場への警戒感は高まっている。後場も日経平均は上値の重い展開が続きそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2023/10/06 12:22 後場の投資戦略 目先は新興株のリバウンド妙味が高いか [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;30886.51;+359.63TOPIX;2250.93;+32.04[後場の投資戦略] 米長期金利が低下し、目先の安心感が生まれている。米9月ADP雇用リポートの民間雇用者数は市場予想を大きく下回り、2021年1月以降で最も小幅な伸びにとどまったほか、賃金上昇ペースの鈍化基調も引き続き確認できた。3日に発表された米8月雇用動態調査(JOLTS)の求人件数が予想を大幅に上回ったことが警戒感を誘っていたが、調査対象が広く調査時期の新しいADPの方で労働市場の逼迫緩和が確認できたことはポジティブだろう。 米9月ISM非製造業景況指数も景況感の拡大を示す50以上を維持した一方、市場予想にほぼ一致したほか、新規受注の項目が今年に入ってからの最低水準にまで低下したことで、こちらもインフレ鈍化の基調を確認する株式市場にとってポジティブな結果となった。 米10年債利回りは4日のアジア取引時間の間に一時4.8%台後半まで上昇し、連日にわたって2007年以来の高値を更新したが、その後低下に転じ、5日のアジア時間においては4.70~4.71%台まで低下している。 ここまでの米長期金利の上昇スピードは非常に速かったうえ、米10年債利回りは大台の5%近くまでいったん上昇しただけに、さすがに騰勢一服となったように見える。また、米30年債利回りについては5日の米国時間に一時5%を超えたが、その後は低下に転じ、現在は4.84%台まで低下してきている。ここから、金利上昇については目先の達成感が台頭しているようにも見受けられる。 明晩は米雇用統計が発表される。米ADP雇用リポートでいったん警戒感は和らいでいるが、米ADP雇用リポートと米雇用統計の相関性は低く、米雇用統計が予想を上回る可能性は十分にある。東京市場については来週月曜日が祝日で休場となることもあり、明日は米雇用統計と連休中の空白リスクが意識されやすい。明日には再び警戒感が高まる可能性があり、この点は留意しておくべきだろう。 本日はバリュー(割安)・グロース(成長)などのスタイル別の指数や大型・中小型といったサイズ別の指数間において株価パフォーマンスにあまり大きな差は出ていない。10月に入ってからの利益確定売りがとりわけ厳しかった自動車や銀行、電力などのセクターが本日は大きく上昇していることで、ややバリュー株指数の方が、上昇率が大きいが、差はそこまで大きくない。 一方、市場別でみると、差が明確に表れており、本日はマザーズ指数が日経平均や東証株価指数(TOPIX)を大幅に上回る株価パフォーマンスを見せている。マザーズ指数は前日までに大きく下落し、年初来安値圏にあっただけに買い戻しが強めに入っている様子。それでもまだ25日移動平均線から下方乖離率5%を小幅に割ったに過ぎない。米長期金利の上昇に短期的なピークアウト感が見られるなか、明日の米雇用統計が余程大きく上回らない限りは、目先はマザーズ指数のアウトパフォームが期待できそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2023/10/05 12:31 後場の投資戦略 米長期金利の上昇はいつまで続くか [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;30634.89;-603.05TOPIX;2229.76;-45.71[後場の投資戦略] 米長期金利の上昇が止まらず、株式市場ではリスク回避の動きが強まっている。米10年債利回りは3日、4.8%台に到達し、連日で2007年以来の高値を更新している。4日現在、時間外取引では4.82%まで上昇してきている。米労働省の8月雇用動態調査(JOLTS)の求人件数が上方修正された前月分から小幅ながら減少するとの予想に反し、大幅に増加したことが米連邦準備制度理事会(FRB)の追加利上げ観測を高めた。日本の10年債利回りも連日で0.780%と約10年ぶりの水準で推移している。 一方、東京株式市場では前日と同様、景気敏感・バリュー(割安)株の方がハイテク・グロース(成長)株より下落率の大きいことが目立っている。セオリー通りであれば、長期金利の上昇は株価バリュエーションが高く、金利に対する感応度の高いグロース株の方により大きなネガティブな影響をもたらす。 しかし、10-12月期に入ったことで、機関投資家は前四半期(7-9月期)に株価パフォーマンスの良かったバリュー株に利益確定売りを出すなど持ち高調整を進めているもよう。対して、前四半期に株価パフォーマンスの冴えなかったグロース株についてはこうした影響が小さく、これが金利上昇下でのセオリーに反した物色動向につながっているようだ。歯止めのかからない米長期金利の上昇は株式市場にとってネガティブな材料でしかないが、グロース株の金利上昇に対する底堅さが見られている点はポジティブに捉えられる。 米10年債利回りの動向については予断を許さないが、これまでの上昇ペースが非常に速かったことで、次の大台となる5%が近づいてきたこともあり、目先は騰勢が一服となる可能性もある。米商品先物取引委員会(CFTC)によると、投機筋は米10年債に対するポジションについて2021年後半以降、徐々に売り持ち高を増やしてきて、今年5月以降は過去10年を振り返る限り最大の売り持ち状況が続いている。投機筋が債券の売り持ち高を積み増す余地が少なくなっていると推察されるなか、今後は買い戻しによる債券価格の上昇(金利の低下)も予想される。 今晩の米9月ADP雇用リポートでは雇用者数の伸びが15万人と前月(17万7000人)から減少が予想されている。米8月JOLTS求人件数の予想外の上振れにより予断を許さない状況とはいえ、事前に警戒感がかなり高まっている分、予想通りに前月からの減少となれば、目先の安心感から株式の短期的な買い戻しが誘発されそうだ。 仮に米ADPの雇用者数も予想に反して前月から増加した場合には、もう一段の金利上昇・株価下落のリスク回避の展開が起こり得る。ただ、そうしたネガティブなシナリオが実現した場合には、週末の米雇用統計に対する警戒感は一段と高まる分、株式のさらなる下落余地は短期的には限られてくると考えられ、短期トレードのリスクリワードには妙味が出てこよう。 他方、つなぎ予算を成立させ米政府機関閉鎖回避にこぎつけたマッカーシー下院議長が共和党内の保守強硬派からの反発で解任されるなど、米政治情勢は混迷の様相を深めてきている。この問題については先行きをなかなか予想しづらく、引き続き株式市場のリスク要因としてくすぶる。(仲村幸浩) <AK> 2023/10/04 12:16 後場の投資戦略 物色動向の変化に期待 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;31365.92;-393.96TOPIX;2292.04;-22.40[後場の投資戦略] 本日の東京株式市場は大きく続落。前日の日経平均は一時500円超も上昇した後、午後に急失速し、結局97円安と下落して終えた。高値からの下げ幅は600円を超えた。本日もそうした悪い流れを引き継ぐ形で日経平均は500円近い下落となっている。 日経平均は25日線や75日線の主要な移動平均線を大きく下放れてきている。また、週足では13週線に続き26週線も下回ってきており、テクニカルな悪化が鮮明になっている。心理的な節目の31500円も8月21日以来、割り込んできており、商品投資顧問(CTA)などの短期筋の売りに拍車がかかるような状況だ。 東京証券取引所によると、9月22日申し込み時点の信用取引の買い残高(東京・名古屋2市場、制度信用と一般信用の合計)は3兆7562億円と、8月4日以来の年初来高水準にまで積み上がっていたため、個人投資家の手仕舞い売りなども広がっていそうだ。 米10年債利回りは2日、4.67%と先週末(4.58%)から大きく上昇。一時4.7%台に乗せ、2007年以来の高水準を記録した。日本の10年債利回りも本日一時0.780%まで上昇し、高値を更新してきている。日米長期金利の上昇に加えて個人投資家による手仕舞い売りを背景に、東京株式市場では新興株が特に厳しい下げに見舞われていて、マザーズ指数は年初来安値を更新している。 米長期金利の上昇の背景としては、米財務省による中長期債の発行規模拡大などの中長期的な需給環境の緩みに加えて、全米自動車労組(UAW)のストライキ、依然としてくすぶる米政府機関の閉鎖への懸念など多くの要素が絡んでいるだろう。 また、前日は、米9月ISM製造業景況指数が49.0と、市場予想(47.9)や8月(47.6)を大きく上回ったことも米長期金利の上昇に影響を及ぼした。生産の項目が拡大・縮小の境界値である50を超える52.5にまで上昇し22年7月以来の高水準を記録したほか、雇用の項目も51.2と4カ月ぶりに50を超えた。 一方、仕入れ価格の項目は43.8と8月(48.4)から大幅に減少した。また、米長期金利の上昇に大きく影響していた原油市況については、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格(期近物)が9月28日に一時1バレル=95ドルを超えたものの、足元では88ドル台にまで下落してきた。それにもかかわらず、足元で米長期金利の上昇ペースに歯止めがかからないのは気がかりだ。 今週は週末の米雇用統計に加え、今晩の米労働省の雇用動態調査(JOLTS)、明晩の米9月ADP全米雇用リポートなど雇用関連の指標が相次いで発表される。これらの指標で労働市場の逼迫緩和が改めて示唆されれば、米長期金利の上昇が一服し、株式市場が持ち直すことも考えられるが、目先は金利動向に神経質な状況が続こう。 一方、物色動向に関してはやや変化が出てきた。本日の東京株式市場では、原油市況の下落もあり資源関連を中心に景気敏感株・バリュー(割安)株の下落が目立つ。9月末の配当権利取りを狙った動きが一巡したタイミングで、日米の長期金利が上昇しているなかでも景気敏感・バリュー・高配当利回り銘柄の下落が目立つのは物色の変化を感じさせる。 また、日米長期金利が大きく上昇しているにもかかわらず、東京株式市場でのハイテク・グロース(成長)株の下落率は比較的軽微で、むしろ底堅い印象すら抱かせる。むろん、それまでの下落率が大きかったということもあるが、米ナスダック総合指数については4日続伸と金利高に逆行しており、こうした動きは注目に値しよう。今週の米雇用関連の指標で労働市場の軟化、米長期金利の上昇一服が確認されれば、ハイテク・グロース株への物色シフトが一段と進む可能性がありそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2023/10/03 12:23 後場の投資戦略 米政府機関閉鎖回避や日銀短観受けて投資家心理改善 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;32305.66;+448.04TOPIX;2350.21;+26.82[後場の投資戦略] 10月2日の日経平均は前週末比244.35円高の32101.97円と大幅反発でスタートした。シカゴ日経225先物清算値(12月限)は、大阪比195円安の31825円。直近で重しとなっていた需給イベントを通過したほか、米政府機関の閉鎖を回避するためのつなぎ予算案が可決されたことでひとまず投資家心理が改善する流れとなっている。また、日銀が朝方発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)の改善が引き続き買いを誘っている。 一方で、新興市場は上値の重い展開となっている。グロース市場の時価総額上位銘柄などで構成される東証グロース市場Core指数は上昇スタート後にプラス圏で推移しているが、マザーズ指数は上昇スタートも上げ幅を大きく縮小してマイナス圏に転落している。東証プライム市場の主力株に注目が集まっているほか、米長期金利が依然として高水準で推移しており新興株を積極的に買い進む動きは限定的となっている。前引け時点での東証グロース市場Core指数は0.27%高、東証マザーズ指数は0.46%安となった。 さて、日銀は本日2日、9月の全国企業短期経済観測調査(短観)を発表した。大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、前回の6月調査(プラス5)から4ポイント改善してプラス9となり2四半期連続で改善した。供給制約の緩和で生産の回復が進む自動車や石油・石炭製品が大きく改善し、非製造業も新型コロナウイルスの影響が和らいで国内観光やインバウンド(訪日外国人)需要が回復している宿泊・飲食サービスなど幅広い業種で改善が続いた。 また、米政府機関の閉鎖問題については、米議会が30日に政府機関の閉鎖を回避するため11月17日までのつなぎ予算案を可決した。長期的な政府機関閉鎖となった場合には、米連邦準備制度理事会(FRB)の取り組みに支障が出ると予想されていたが、なんとか土壇場で回避する見通しとなった。上記2つの要因から本日の東京市場では投資家心理が改善して、日経平均は堅調に推移している。 ただ、つなぎ予算が成立してもその失効時に向けては再度、政府閉鎖の懸念が再燃する可能性もあるなど不透明感は長期化の様相とみられている。また、全米自動車労働組合(UAW)のスト長期化の可能性に加えて、足元では10年債利回りが高水準で推移しており、原油価格も再び上昇している。雇用統計をはじめ米経済指標の公表を控える中、積極的に買い進む動きは想定しにくい状況にあろう。 米国ではガソリン価格高騰が支出を妨げ、クレジットカードの支払い延滞率も過去10年余りで最も高くなっているという。また、10月からはコロナ禍で停止していた学生ローン返済が再開する予定で、さらには、S&Pグローバル・レーティングの先月のリポートによれば、サブプライム自動車ローンの60日以上の延滞率は7月に過去最高水準に達したようだ。米国の消費動向には注目が必要だが、経済や金融市場にとってマイナスとなる材料が多々くすぶっており、当面不透明感が存在していることは9月から10月に切り替わったいまだからこそ再度頭の片隅に置いておきたい。 さて、9月28日に発表された最新週(9月19日~9月22日)の投資部門別売買動向によると、海外投資家は現物株を3週連続で売り越した。売り越し金額は9131億円となるなか、個人投資家は買い越しに転じている。年金基金の売買動向を反映するとされる信託銀行は3週連続の売り越しとなった。今後は、海外投資家の売り越しスタンスにブレーキが掛かるか注目される。後場の日経平均はプラス圏での堅調推移を継続できるか。日銀短観を受けて自動車関連や銀行株など、プライム市場の主力株中心に物色が継続するか注目しておきたい。(山本 泰三) <AK> 2023/10/02 12:26 後場の投資戦略 買い先行もマイナス圏に転落、原油価格の動向に注視 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;31836.24;-36.28TOPIX;2329.24;-16.27[後場の投資戦略] 9月29日の日経平均は146.12円高の32018.64円と反発して取引を開始した。昨日の米株市場でフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が1.77%上昇したことで、東京市場の半導体関連株の株価を支える要因となった。また、日経平均は先週初19日から昨日まで、8営業日で1600円を超す下げとなっており押し目買いも入りやすかった。ただ、機関投資家などによる四半期末に伴うリバランス(資産の再配分)売りが出やすいとの見方もあり、前場中ごろにはマイナス圏に転落した。 一方で、新興市場は堅調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇スタート後に上げ幅を広げる展開となっている。米国株の上昇を受けて東京市場の新興株も一旦の買い戻しの動きが優勢か。時価総額上位銘柄中心に注目が集まっており、指数をけん引する形となっている。ただ、米長期金利が依然として高水準で推移しており、積極的に買い進む動きは想定しにくい。前引け時点での東証グロース市場Core指数は1.87%高、東証マザーズ指数は1.02%高となった。 さて、WTI原油先物価格は去年8月以来、およそ1年1か月ぶりに1バレル=95ドル台まで上昇した。原油価格の上昇が続くと世界的なインフレ再燃につながるため、市場関係者は直近の原油価格の上昇に注目している。そこで本日は、簡単に原油価格上昇の要因を抑えておきたい。 産油国の状況を確認してみると、サウジアラビアやロシアは年末にかけて自主減産の継続を明らかにしており、需給を引き締める要因となっている。具体的に、サウジアラビアは現行の日量100万バレルの原油の自主減産を12月まで3カ月延長すると表明。ロシアも年末にかけて輸出量を30万バレル減らすと発表している。 また、米国の原油在庫に注目してみると、民間や公的部門ともに大幅に減少していることが明らかになっている。一つの要因として、インフレ対策として国家の原油を放出して上がり続ける原油価格を抑制していた。実際、米エネルギー情報局(EIA)が27日発表した週間在庫統計で米原油在庫は、220万バレル減(市場予想32万バレル減)の4億1630万バレルとなった。一方で、直近は原油の在庫を積み増す動きがみられており、これ以上在庫を減少させる動きにはなりづらくなっている。 さらに、米国のシェール石油の生産低迷も需給ひっ迫の一因となっており、今後は北半球の気温が低下し暖房需要が増加する、石油の需要シーズンを迎えることも原油相場には追い風となる可能性がある。また、景気懸念がくすぶるなかでも中国の原油需要は強く、9月中旬に発表された8月の精製処理量は日量208.7万トンと過去最大となったようだ。このように、需給を引き締める要因が数多く存在している。 一方で、イランの産油量がここにきて増加に転じてきている。今年8月には、OPEC加盟国とロシアなどの非加盟国で構成する「OPECプラス」の協調減産が続いているものの、イランの増産によりOPECについては生産量が増えた形となった。足元の需給がひっ迫していることは変わりないが、来年にかけてはイランの産油量が原油価格に一定の影響を及ぼす可能性がありそうだ。イランの産油量には注視しつつ、今後の原油の需給動向を見守っていきたい。 さて、ヘッジファンド運営会社ブリッジウォーター・アソシエーツの創業者で資産家のレイモンド・ダリオ氏はCNBCとのインタビューで、米経済の「有意の減速」が起きると考えていると述べたようだ。「米国が債務危機に陥るだろう」と述べるなか、経済成長率がゼロ近くに低下する可能性があると語ったという。こういったインタビューの内容も、今後の相場動向を予測するうえでは、意識しておきたい。 後場の日経平均はプラス圏に回復することができるか。週末や月末要因で積極的に買い進む材料に乏しい中ではあるが、半導体関連の一角や個別材料株中心に物色が継続するか注目しておきたい。(山本 泰三) <AK> 2023/09/29 12:19 後場の投資戦略 日米長期金利の上昇で配当落ち後もバリュー優位か [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;31813.01;-558.89TOPIX;2344.05;-35.48[後場の投資戦略] 前日の日経平均は配当落ち前の時点から32000円を割り込むなど大きく下落していたが、午後は配当再投資を意識した買い戻しでプラス圏に浮上した。本日も配当落ちの影響を除けば前日終値から小幅な下げにとどまって底堅さを見せていた。しかし、前引けにかけては急速に地合いが悪化し、日経平均は32000円を大幅に割り込んで前場を終えている。日経225先物の水準を見る限り、午後の日経平均は配当落ちを考慮しても32000円割れの推移が見込まれ、投資家心理の悪化が懸念される。 長期金利の上昇に歯止めがかからない状況が気掛かりだ。米10年債利回りは27日、一時4.64%と2007年10月以来の高水準を記録した。在庫減少を背景にWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格(期近物)が一時94.17ドルと昨年8月下旬以来の高値まで上昇したことが影響した。また、米8月耐久財受注が予想を大幅に上回る伸びとなったことで、米連邦準備制度理事会(FRB)が高水準の政策金利を据え置く期間が長期化することも意識されたようだ。 さらに、米政府機関の閉鎖リスクが依然としてくすぶっていることも信用リスクの上昇を通じて米長期金利の上昇に拍車をかけているもよう。米議会の予算交渉は引き続き難航しており、閉鎖リスクは日に日に高まっているようで予断を許さない状況だ。 全米自動車労組(UAW)と米大手自動車メーカーとの労使交渉も引き続き懸念材料だ。UAWは交渉に大きな進展がなければ、29日にはストライキを拡大する計画と報じられている。政府閉鎖とともに米経済成長の下押しリスクとなりうるほか、米金融政策の先行き不透明感を強める可能性もあり、注意が必要だ。 米長期金利のハイペースでの上昇基調を受け、国内の10年債利回りも28日、0.750%と直近の高値を更新してきている。日本銀行の金融政策を巡っては先週に金融政策決定会合を終えたばかりだが、こちらも先行き不透明感が強まっているといえる。 WTI原油市況が昨年8月下旬以来の高値まで上昇したことに加え、日米の金融政策スタンスの違いを背景にした円売り・ドル買いが続いており、ドル円は遂に1ドル=149円台を突破、昨年10月以来の150円超えが目前に迫っている。輸入物価への反映には3カ月ほどのタイムラグがあるとされているが、原油高と円安により年末近くから国内で輸入インフレが再燃することは必至といえる。日銀は今後、物価上昇の趨勢はいったん落ち着いていくと予想しているが、こうした見通しとは乖離が生じる状況になっており、政策不透明感を高めることにつながりそうだ。 個別に目を向けると、当面はバリュー(割安)・高配当利回り銘柄の物色が続きそうだ。本日の配当落ちに伴い、バリュー・高配当利回り銘柄の物色が一巡することが予想されたが、日米の長期金利の上昇基調を背景にグロース(成長)株対比で選好される状況が維持されそうだ。実際、本日配当落ちを迎えた鉄鋼や銀行セクターなどの主力銘柄の動きを見ると、総じて底堅い動きを見せている。 また、27日の米国市場の引け後に発表された半導体メモリー大手のマイクロン・テクノロジーの決算は、9-11月期の損益見通しが市場予想以上の赤字幅となり、市況底入れ・株価回復を期待していた投資家を失望させる内容だった。同社株価は時間外取引で一時5%程下落した。こうした背景も日米長期金利の上昇とともにハイテク株を敬遠させることにつながり得ると考えられ、バリュー・高配当利回り銘柄の選好を長期化させることになりそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2023/09/28 12:28 後場の投資戦略 金利上昇や需給懸念などが重し [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;32163.71;-151.34TOPIX;2363.24;-8.70[後場の投資戦略] 本日の日経平均は続落し、一時32000円を割り込んだ。その後に同水準を回復しているが、明日の配当落ち分を考慮すると、現値水準のままでは明日には再び32000円を割り込むことは避けられないだろう。 今週は需給要因が重なる。年金基金の配当再投資に伴う先物買い需要が日経225先物で1500億円強、TOPIX 先物では9000億円強と見込まれている一方、日経平均の構成銘柄の入れ替えに伴い、日経平均の既存採用銘柄では4000億円ほどの売り需要が予想されている。日経平均型に限っていえば、超過の売り需要が見込まれ、日経平均の下落が意識されやすいが、日本株全体でみれば超過の買い需要が予想されているということになる。 しかし、ここにきて俄かに年金基金が上昇した日本株のウェイトを引き下げるために配当再投資を見送るのではないかとの懸念が一部で浮上している。実際にそうなると、約1兆円の先物買い需要が剥落することになり、日本株全体の需給面での重しとなるため、気掛かりな話だ。 米株式市場ではダウ平均が200日移動平均線を下回ったほか、ナスダック総合指数とS&P500種株価指数が26週移動平均線を下回ってくるなど、トレンドの悪化が鮮明になっている。加えて、米VIX指数や日経平均VIなどのボラティリティーインデックスが大きく上昇してきており、リスクパリティ戦略(各資産のリスクの割合が均等になるように資産を保有する運用手法)ファンドによる機械的な売りなども増加してきているようだ。 ほか、米政府機関の閉鎖リスクもくすぶっている。格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスは、米政府機関が閉鎖されれば米国の信用格付けにネガティブに反映されるだろうと指摘している。すでに節目の4.5%を超えて金利先高観が強まっている米10年債利回りのさらなる上昇に拍車をかけるようなことになれば、相場の一段の調整は避けられないだろう。 一方、足元で米経済指標の下振れが目立ってきた。つい先日まで強い米経済を受けてソフトランディング(軟着陸)期待が高まり、景気後退予想を取り下げる機関の動きなども見られていたが、ここ最近は金利上昇を受けて再び米住宅市場に関する指標などが悪化してきている。前日に発表された8月新築住宅販売件数も予想を下回り、5カ月ぶりの水準に減少した。 また、コンファレンスボードが発表した9月の米消費者信頼感指数では今後6カ月の見通しを反映する期待指数が73.7と、5月以来の水準に低下。期待指数の80割れは1年以内の景気後退入りを示唆するとの見方もあるようで、金利先高観と景気後退懸念の強まりという株式市場にとって嫌な組み合わせが見られている。 本日の東京株式市場では、電気・ガスや海運、鉄鋼、ゴム製品などのバリュー(割安)セクターの下落が目立つ一方、米長期金利が上昇するなかでも電気機器のハイテクセクターの底堅さが目立っている。明日の配当落ちに加えて、月末および四半期末のリバーサル(株価の反転)を見越した持ち高調整の動きとみられる。 しかし、米長期金利の上昇と景気減速懸念が同時に強まってきているなか、リバーサルに伴うハイテク株買いがどこまで続くかは不透明だ。同様の理由から配当落ち後にバリュー株が早々に持ち直すかも期待しにくいところ。円安が進行しているなかでも、自動車株に代表される輸送用機器セクターが続落している点からも投資家の懸念が窺える。10月に入れば季節性から相場の復調を期待する声も多いが、先行きについては引き続き慎重なスタンスが求められると考える。(仲村幸浩) <AK> 2023/09/27 12:15 後場の投資戦略 日米長期金利は早々に上昇再開、売買代金の減少が気掛かり [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;32379.85;-298.77TOPIX;2373.81;-11.69[後場の投資戦略] 本日の日経平均は反落し、前日の上昇分をほぼ吐き出す格好となっている。米10年債利回りは25日、一時4.56%まで上昇、終値ベースでも4.53%と節目の4.5%を上回り、2007年10月以来の高水準を記録している。先週末に一服したと思われた米長期金利の上昇が早々に再開したことで、前日に買い戻しが入ったハイテク・グロース(成長)株が再び売られ、日経平均の重しとして働いている。 日本の10年債利回りも26日、0.745%と21日に付けた2013年9月以来の水準を回復している。先週末の取引終了後に行われた日本銀行の植田和男総裁の会見では、マイナス金利政策の解除に関して踏み込んだ発言がなかったこともあり、金融引き締め懸念が後退したとの見方が一時強まった。これを受け、週明け前日の東京市場ではハイテク・グロース株が買い戻される一方で銀行セクターを中心に景気敏感・バリュー(割安)株の一角に利益確定売りが広がった。しかし、こうした流れは一日にして反転している。 そもそも、先週末の植田総裁の会見については、各種メディアが多方面で「金融引き締め懸念は後退」との解釈を報じていたが、個人的には、会見中の植田総裁は歯切れの悪さが目立った印象で、政策の先行き不透明感を強める内容に見受けられた。また、植田総裁は会見内で「(物価上昇率について)下がり方がすこしゆっくりめかなという雰囲気はある」と、物価高が想定より長引いていることを認めるような発言もしていた。内容としては今後のデータ次第では十分に政策変更が前倒しされる可能性も感じさせるような内容だったと思われる。 実際、日本の10年債利回りが再び高値を回復してきているほか、米長期金利の上昇ペースに対する為替の円安ペースは緩やかなものになっている。財務省による為替介入への思惑が当然に影響しているだろうが、日銀の追加政策修正観測の高まりも依然として根強いと見受けられる。 やや気掛かりなのはドル円が1ドル=149円目前に迫る水準にまで上昇(円安・ドル高)しているにもかかわらず、自動車をはじめとした輸送用機器セクターが本日軟調に推移していることだ。10月下旬以降の中間決算で上方修正が特に期待されるセクターだが、足元で円安との連動性が薄れてきているのは、円安による業績上振れを大方織り込み切った動きとも考えられ、この先は注意深く見守りたい。 ほか、売買代金の減少も気になる。前日の東証プライム市場の売買代金は3兆1000億円台と、9月11日以来の水準に減少した。今週27日には配当・株主優待の権利付き最終売買日を迎えるにもかかわらず、本日も前引け時点での東証プライムの売買代金は1兆5000億円台と低調だ。 前週に日米の金融政策イベントを通過し、やや手掛かり材料難であるほか、前週までに配当権利取りの動きが一巡していたとも考えられるが、それらを差し引いてもこの売買代金の減少ぶりは気になる。日米の長期金利の上昇が続くなか、投資家心理が悪化していると推察され、今後の金利動向からは一段と目が離せなくなった。(仲村幸浩) <AK> 2023/09/26 12:19 後場の投資戦略 自律反発の買い広がる 本文[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;32590.33;+187.92TOPIX;2382.79;+6.52[後場の投資戦略] 9月25日の日経平均は前週末比114.85円高の32517.26円と5日ぶり反発でスタートした。シカゴ日経225先物清算値(12月限)は、大阪比5円安の32265円。本日の日経平均は前週の大幅な下落を受けて、いったんは自律反発が意識される展開となっている。そのほか、上海総合指数や香港ハンセンなどアジア市況は軟調に推移している。 新興市場も買い手優位の状況が続いている。マザーズ指数は上昇スタート後じりじりと上げ幅を広げてプラス圏で推移、グロース市場の時価総額上位銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落スタート後にプラス圏に浮上する展開となっている。米長期金利の上昇に一服感が台頭していることはバリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株の追い風となっている。また、マザーズ指数は前週一時1月4日以来の年初来安値水準まで大きく下落しており、自律反発狙いの買いが続きやすいだろう。前引け時点での東証グロース市場Core指数は0.30%高、東証マザーズ指数は0.54%高となった。 さて、日銀は前週末に、金融政策決定会合で長短金利操作を柱とする現在の大規模な金融緩和の維持を決定した。前回の7月会合で0.5%から事実上1%に引き上げた長期金利の変動許容幅は、今回据え置いている。植田日銀総裁は金融政策を修正する時期について「到底決め打ちできない」と発言し、「引き締めが遅れて2%を超えるインフレ率が持続するリスクよりも、拙速な引き締めで2%を実現できなくなるリスクの方が大きい」との認識を変更していない姿勢がうかがえた。これを受けて本日は、金利上昇に伴い貸出の利ざやが拡大するとの期待から買われていた銀行株中心に売られる一方で、前週軟調に推移していた半導体関連株などに買い戻しの動きが広がっている。 一方、米連邦準備理事制度(FRB)は、前週の連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標の据え置きを決めたが、年内あと1回の追加利上げと政策金利をより高い水準で長く維持する可能性を示唆していた。今週29日に個人消費支出(PCE)価格指数が発表されるが、食料品とエネルギーを除くコア指数の上昇率が前年同月比3.9%(前月4.2%)と、約2年ぶりに4%を割り込む見通しとなっている。 ただ、インフレが鈍化傾向にある一方、4-6月期GDP確定値は改定値の2.1%成長から2.3%成長に上方修正される見通しとなっている。インフレの鈍化が滞る、もしくは予想以上の成長率に上方修正された場合には、年内の追加利上げ観測が強まる可能性があろう。また、米10年債利回りは依然として高水準に達しているほか、VIX指数も17.20と高水準で推移している。さらには、政府機関閉鎖の可能性、原油高などのリスク要因も目立ってきており、米株式市場を中心に相場動向には注視する必要がある。 そのほか、アメリカの元財務長官で経済学者のサマーズ氏が、Bloombergのインタビューでソフトランディングの可能性とスタグフレーションの可能性について語っている。米国の失業率が再度4.1%を超えそうななか、ローンの滞納率の増加について指摘している。また、「ここ数十年に起こったすべての景気後退の前には人々がソフトランディングについて語っていた。」と述べている。こういったインタビューの内容も、今後の相場動向を予測するうえでは、意識しておきたい。 さて、9月22日に発表された最新週(9月11日~9月15日)の投資部門別売買動向によると、海外投資家は現物株を2週連続で売り越した。売り越し金額は2781億円となるなか、個人投資家も現物株を2週ぶりに売り越した。年金基金の売買動向を反映するとされる信託銀行も2週連続の売り越しとなった。さて、後場の日経平均はプラス圏での堅調推移を継続できるか。積極的に買い進む材料に乏しい中ではあるが、個別株中心に物色が継続するか注目しておきたい。(山本 泰三) <AK> 2023/09/25 12:21 後場の投資戦略 引け後の植田総裁会見に注目 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;32287.46;-283.57TOPIX;2363.88;-19.53[後場の投資戦略] 米10年債利回りは21日、4.49%(20日は4.41%)へと連日で上昇し、2007年11月以来の高値を更新した。これを受け、国内外の株式市場でハイテク・グロース(成長)株の売りが継続している。金利の上昇にどこで歯止めがかかるか不透明ななか、当面はハイテク・グロース株の戻りは鈍いと考えられる。長期目線以外では押し目買いには慎重に臨んだ方がよいだろう。 本日の昼頃には日本銀行の金融政策決定会合の結果が公表される。前回会合でイールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)の微調整を行ったばかりであるため、さすがに今回は政策の現状維持が大方の予想とされている。しかし、9日に読売新聞が報じた植田日銀総裁へのインタビューを契機にマイナス金利政策の解除など追加の政策修正観測が高まっている。15日には総裁の発言と市場の解釈の間にはギャップがあるとする内容の報道もあったが、日本の長期金利も高値を更新するなか、こうした思惑はくすぶっている。 こうしたなか、注目されるのは植田総裁の会見だ。踏み込んだ発言がなく無難に終われば、あく抜け感から円安・株高が進みそうだが、マイナス金利解除を示唆する発言などがあれば、投機筋の円買い戻しに伴い円高が進む可能性もある。その場合、本日の前場のように、これまで値持ちの良かった景気敏感・バリュー株の利食い売りが続くと考えられ、物色としては手掛かり難に追い込まれかねない。足元で軟化してきている株式市場がここで持ち堪えるのか、それとももう一段の調整を迎えるのか、方向性を見極めるにあたって本日の植田総裁の会見は注目材料となろう。 後場の日経平均は上値の重い展開が続きそうだ。植田総裁の会見は引け後になるため、昼頃に現状維持の結果が伝わっても、会見内容を見極めたいとの思惑から買い戻しは限定的になりそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2023/09/22 12:07 後場の投資戦略 日米長期金利の高値更新でバリュー優位は長期化か [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;32647.72;-376.06TOPIX;2387.46;-18.54[後場の投資戦略] 前日の米ナスダック指数の大幅続落を受け、本日の東京株式市場ではハイテク・グロース(成長)株を中心に売られ、日経平均が1%を超える下落率となっている。日経平均は33000円の節目も大きく割り込み、配当落ち後の水準を示す日経225先物は32500円も下回っている。 前日に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果は、ある程度は予想されていたとはいえ、事前の予想以上にタカ派な内容だった印象だ。最新の政策金利見通しによると、今年の年末時点の政策金利中央値は5.6%と、前回6月時点から変わってはいない。ただ、FOMC参加者19人のうち12人が年内あと1回の利上げを支持していることが示され、インフレの鎮静化を確実にしたいFRBの姿勢が窺えた。また、来年末の政策金利中央値は5.1%と前回の4.6%から大きく引き上げられ、来年に想定される利下げ幅は縮小している。 経済成長率の見通しは、今年は+2.1%と前回の+0.4%から大幅に引き上げられたうえ、来年も+1.5%と、減速はするものの、まずまずの水準の成長が予想されていることが示された。失業率の予測については、来年は4.1%と前回の4.5%から引き下げられ、底堅い労働市場が続く見通しになっている。 米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は会見で、経済のソフトランディング(軟着陸)を基本的なシナリオにしているわけではないと発言したが、見通しは全体的に雇用は堅調、経済成長は続くというソフトランディング達成への自信を深めたような内容になっている。 一方、インフレ率の見通しについては、FRBの目標である2%の達成は2026年とかなり先に予想されている。ソフトランディングの確度が高まった分、インフレとの闘いは長期化、より難しいものになるとの考えが示唆されている。 金利先物市場はFOMC直前の時点では、来年末の政策金利中央値を4.6%程度と予想していたため、今回の5.1%にまで引き上げられたFRBの見通しはタカ派といえる。FRBの「Higher for Longer(より高く、より長く)」がこれまで以上に強く意識される結果となった。 しかし、FOMCの後も金利先物市場が予想する来年末の政策金利中央値は4.76%と、あまり上がっておらず、FRBの予測とは乖離がある。年内の追加利上げの確率についても、FOMC前よりはやや上昇したが、現時点では5割未満にとどまっており、織り込み具合は大きくは進展していない。今後発表されるデータ次第では追加利上げの確率が高まり、これに伴い、金利上昇・株価下落が進む余地があると思われる。 米10年債利回りは19日の時点ですでに8月高値を上回って4.36%まで上昇していたが、前日はFOMC結果を受けて4.41%へとさらに上昇した。米長期金利は2007年11月以来の高水準を記録しているが、上述したように、現値水準からもう一段、金利に上昇余地があるというのは、株式市場にとって強い逆風になるとみられる。 国内の10年債利回りも本日、0.745%と約9年8カ月ぶりの水準を記録している。本日はハイテク・グロース株が大きく下落しているが、日米長期金利の高値更新で金利先高観がさらに強まっているなか、当面これらの関連株は下値模索の展開、よくてもレンジ推移となりそうだ。 一方、本日の東京株式市場では、前日の高寄り後の失速で中間配当取りを目的とした買いの一巡が意識されていた景気敏感・バリュー(割安)株の一角で堅調さの継続が確認されている。米国で弱い経済データが確認され、長期金利が明確に低下に転じるまでは、バリュー株優位の展開が想定以上に長期化する可能性が高そうだ。(仲村幸浩) <AK> 2023/09/21 12:14

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