注目トピックス 日本株
kubell Research Memo(6):EBITDAが好調に進捗。売上高も堅調推移(2)
配信日時:2025/09/22 12:06
配信元:FISCO
*12:06JST kubell Research Memo(6):EBITDAが好調に進捗。売上高も堅調推移(2)
■kubell<4448>の業績動向
3. 主要KPIハイライト
全社ベースのARR(年間経常収益)は87.2億円(前年同期比13.3%増)に達しており、同社のビジネス全体が安定した成長軌道にあることが確認できる。また、導入社数は93.6万社(同12.5%増)に上っており、順調にプラットフォームとしての規模を拡大している。なお、導入社数の定義については、ビジネスチャットサービス「Chatwork」の契約企業とBPaaSやその他のサービスを利用している企業の合計である。
SaaSドメインに関しては、ARRが77.7億円(前年同期比8.6%増)であり、登録ID数は775.2万ID(同9.9%増)とされている。DAU(Daily Active User:1日当たりのサービス利用者数)も121.5万(同5.4%増)と、機能改善やコミュニケーション強化によるアクティブ率向上施策が奏功している。さらに、課金ID数は82.2万ID(同9.0%増)に達している。今後はアカウント発行の簡略化、初期価値体験の向上、ネットワーク効果最大化施策によってユーザー基盤の一層の拡大とエンゲージメント向上が見込まれる。1課金ID当たりの平均単価であるARPUは713.6円(同0.3%減)と微減したが、これは低単価プラン比率の上昇が主因であり、エンタープライズプラン販売強化や値引き契約見直しによって改善余地がある。課金ID解約率は0.88%(同0.23ポイント減)と低水準で推移している。プロダクト価値の向上施策として、足元ではエンタープライズプランのサービス強化を検討している。SaaS市場ではサービス拡充とそれに伴う値上げが常道であるが、同社サービスは競合と比較しても安価であり値上げ余地は十分にある。加えて、「タクシタ」などのサービスの利用が進むことでプロダクトに対する粘着性も高まり、値上げもより一層受け入れられやすくなるのではないかと弊社では見ている。
一方で、BPaaSドメインにおいては、ARRが9.5億円(前年同期比76.0%増)と急成長を記録しており、新たな事業領域としての可能性が強く示唆されている。売上高も464百万円(同85.7%増)と顕著な伸びを示しており、今後の成長に向けた基盤構築が着実に進んでいることがわかる。
4. AIエージェント時代におけるSaaSへの影響
AI技術の急速な進化を背景として、「AIエージェント時代」の到来が注目されている。これは複数のLLM(大規模言語モデル)が協調して作業を行い、高度な成果物を生み出す新しい仕組みである。従来の生成AIは単一の入力に対して単一の応答を返す構造であったが、AIエージェントはプロンプトを受け取ると自動的にワークフローを構築し、複数のAIが連携してタスクを遂行する点に大きな違いがある。代表的な事例として「Deep Research」や営業支援、開発エージェントなどが挙げられている。
このような技術の進化により、今後はユーザーがSaaSの画面を直接操作するのではなく、AIエージェントがAPI経由でSaaSを操作する構造にシフトしていくと考えられている。その結果、SaaSベンダーがユーザーとの直接的な接点を失い、「SaaS is Dead」といった議論が広がりつつある。これに対して同社の「Chatwork」は、コミュニケーションSaaSという特性上、ユーザー同士の直接対話自体に価値があるため、AIエージェントによる代替が非効率であるという独自のポジションを有している。さらに、「Chatwork」はチャット形式で構成されており、プロンプト入力との親和性も高いため、将来的には「Chatwork」上でプロンプトを通じてAIエージェントが稼働するという世界観の構築も視野に入っている。これにより、AIエージェント時代においても「Chatwork」は引き続き高い有用性を保ちつつ進化するポテンシャルを持っている。
また、AIエージェントの登場は、BPaaS領域の進化を大きく加速させる契機になると見込まれている。日本国内における中小企業向けのBPO市場は約42兆円規模という巨大市場であるが、従来は労働集約型であったため、利益率が低いという課題を抱えていた。今後はAIの進化によりAIワーカーが登場し、この構造が大きく変化すると予想されている。
McKinsey & Company, Inc.のレポート「Beyond the hype: Capturing the potential of AI and gen AI in tech, media, and telecom」においても、BPOはAIによる再定義が進む分野として挙げられており、グローバル市場においても、Market.Usが公表する「AI In BPO Market」によれば、AIを活用したBPOは2024年から2033年にかけて年平均成長率34.3%という高成長が見込まれている。これまでの同社におけるBPaaSでは、チャットを通じてオペレーターがSaaSを運用代行してきたが、今後はAIエージェントがその中心となっていく。オペレーターは、AIエージェントの活用と運用にシフトし、そのための教育コストも大幅に削減可能となる。この構造変化により、BPaaSの提供コストは下がりつつ、スケーラビリティは飛躍的な向上が期待される。
5. 財務状況
2025年12月期中間期末の資産合計は、前期末比136百万円減の5,977百万円となった。流動資産は、同176百万円増の4,202百万円となった。主な要因としては、売掛金が53百万円減少した一方で、現金及び預金が385百万円増加した。固定資産は同313百万円減の1,775百万円となった。主に、ソフトウェアが167百万円減少した。負債合計は同218百万円減の4,296百万円となった。流動負債は、同22百万円減の3,803百万円となった。主に、1年内返済予定の長期借入金が105百万円、契約負債が20百万円増加した一方で、未払法人税等が71百万円減少した。固定負債は、同195百万円減の493百万円となった。主に、長期借入金が224百万円減少した。純資産合計は同81百万円増の1,680百万円となった。主に、資本金が61百万円、資本剰余金が61百万円増加した一方で、利益剰余金が14百万円減少した。自己資本比率は同2.0ポイント上昇の28.1%となった。EBITDAや営業利益の黒字化により現金及び預金は増加傾向にあり、財務基盤の改善が進んでいると弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木 稜司)
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3. 主要KPIハイライト
全社ベースのARR(年間経常収益)は87.2億円(前年同期比13.3%増)に達しており、同社のビジネス全体が安定した成長軌道にあることが確認できる。また、導入社数は93.6万社(同12.5%増)に上っており、順調にプラットフォームとしての規模を拡大している。なお、導入社数の定義については、ビジネスチャットサービス「Chatwork」の契約企業とBPaaSやその他のサービスを利用している企業の合計である。
SaaSドメインに関しては、ARRが77.7億円(前年同期比8.6%増)であり、登録ID数は775.2万ID(同9.9%増)とされている。DAU(Daily Active User:1日当たりのサービス利用者数)も121.5万(同5.4%増)と、機能改善やコミュニケーション強化によるアクティブ率向上施策が奏功している。さらに、課金ID数は82.2万ID(同9.0%増)に達している。今後はアカウント発行の簡略化、初期価値体験の向上、ネットワーク効果最大化施策によってユーザー基盤の一層の拡大とエンゲージメント向上が見込まれる。1課金ID当たりの平均単価であるARPUは713.6円(同0.3%減)と微減したが、これは低単価プラン比率の上昇が主因であり、エンタープライズプラン販売強化や値引き契約見直しによって改善余地がある。課金ID解約率は0.88%(同0.23ポイント減)と低水準で推移している。プロダクト価値の向上施策として、足元ではエンタープライズプランのサービス強化を検討している。SaaS市場ではサービス拡充とそれに伴う値上げが常道であるが、同社サービスは競合と比較しても安価であり値上げ余地は十分にある。加えて、「タクシタ」などのサービスの利用が進むことでプロダクトに対する粘着性も高まり、値上げもより一層受け入れられやすくなるのではないかと弊社では見ている。
一方で、BPaaSドメインにおいては、ARRが9.5億円(前年同期比76.0%増)と急成長を記録しており、新たな事業領域としての可能性が強く示唆されている。売上高も464百万円(同85.7%増)と顕著な伸びを示しており、今後の成長に向けた基盤構築が着実に進んでいることがわかる。
4. AIエージェント時代におけるSaaSへの影響
AI技術の急速な進化を背景として、「AIエージェント時代」の到来が注目されている。これは複数のLLM(大規模言語モデル)が協調して作業を行い、高度な成果物を生み出す新しい仕組みである。従来の生成AIは単一の入力に対して単一の応答を返す構造であったが、AIエージェントはプロンプトを受け取ると自動的にワークフローを構築し、複数のAIが連携してタスクを遂行する点に大きな違いがある。代表的な事例として「Deep Research」や営業支援、開発エージェントなどが挙げられている。
このような技術の進化により、今後はユーザーがSaaSの画面を直接操作するのではなく、AIエージェントがAPI経由でSaaSを操作する構造にシフトしていくと考えられている。その結果、SaaSベンダーがユーザーとの直接的な接点を失い、「SaaS is Dead」といった議論が広がりつつある。これに対して同社の「Chatwork」は、コミュニケーションSaaSという特性上、ユーザー同士の直接対話自体に価値があるため、AIエージェントによる代替が非効率であるという独自のポジションを有している。さらに、「Chatwork」はチャット形式で構成されており、プロンプト入力との親和性も高いため、将来的には「Chatwork」上でプロンプトを通じてAIエージェントが稼働するという世界観の構築も視野に入っている。これにより、AIエージェント時代においても「Chatwork」は引き続き高い有用性を保ちつつ進化するポテンシャルを持っている。
また、AIエージェントの登場は、BPaaS領域の進化を大きく加速させる契機になると見込まれている。日本国内における中小企業向けのBPO市場は約42兆円規模という巨大市場であるが、従来は労働集約型であったため、利益率が低いという課題を抱えていた。今後はAIの進化によりAIワーカーが登場し、この構造が大きく変化すると予想されている。
McKinsey & Company, Inc.のレポート「Beyond the hype: Capturing the potential of AI and gen AI in tech, media, and telecom」においても、BPOはAIによる再定義が進む分野として挙げられており、グローバル市場においても、Market.Usが公表する「AI In BPO Market」によれば、AIを活用したBPOは2024年から2033年にかけて年平均成長率34.3%という高成長が見込まれている。これまでの同社におけるBPaaSでは、チャットを通じてオペレーターがSaaSを運用代行してきたが、今後はAIエージェントがその中心となっていく。オペレーターは、AIエージェントの活用と運用にシフトし、そのための教育コストも大幅に削減可能となる。この構造変化により、BPaaSの提供コストは下がりつつ、スケーラビリティは飛躍的な向上が期待される。
5. 財務状況
2025年12月期中間期末の資産合計は、前期末比136百万円減の5,977百万円となった。流動資産は、同176百万円増の4,202百万円となった。主な要因としては、売掛金が53百万円減少した一方で、現金及び預金が385百万円増加した。固定資産は同313百万円減の1,775百万円となった。主に、ソフトウェアが167百万円減少した。負債合計は同218百万円減の4,296百万円となった。流動負債は、同22百万円減の3,803百万円となった。主に、1年内返済予定の長期借入金が105百万円、契約負債が20百万円増加した一方で、未払法人税等が71百万円減少した。固定負債は、同195百万円減の493百万円となった。主に、長期借入金が224百万円減少した。純資産合計は同81百万円増の1,680百万円となった。主に、資本金が61百万円、資本剰余金が61百万円増加した一方で、利益剰余金が14百万円減少した。自己資本比率は同2.0ポイント上昇の28.1%となった。EBITDAや営業利益の黒字化により現金及び預金は増加傾向にあり、財務基盤の改善が進んでいると弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木 稜司)
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