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巴川コーポ Research Memo(2):事業ポートフォリオ転換し新たな成長目指す
配信日時:2025/09/17 16:02
配信元:FISCO
*16:02JST 巴川コーポ Research Memo(2):事業ポートフォリオ転換し新たな成長目指す
■会社概要
1. 会社沿革並びに事業概要
巴川コーポレーション<3878>は、初代社長井上源三郎氏が電気絶縁紙の国産化の志を抱き1900年初頭より研究開発に着手、国産化に初めて成功し、1914年6月に巴川製紙所を創業したことに始まる。電気絶縁紙、電気通信用紙の研究、開発を行い1917年に会社設立、1955年には創業精神の「誠実」「社会貢献」「開拓者精神」を至上の行動規範とし、以来、新技術を多数開発することで発展してきた。創業精神はバリュー(価値観)を表すものとして維持しつつ、ミッション(存在意義)を「感動こそが、持続可能な価値と考える。これまでも、これからも新製品・新技術開発に挑戦し、人や社会に新しい喜びを提案しつづける」、ビジョン(ありたい姿)を「グローバル視点の提案型ソリューションパートナーへ。前例にとらわれず、組織の壁を超え、チームと個の力を掛け合わせ、新たな感動を創造する。」として経営理念を再定義し、2024年1月に株式会社巴川コーポレーションに商号変更した。巴川の名称は継承しつつ、事業ポートフォリオの転換を推進する意思を込めて、既存の事業領域を規定する「製紙」を含めないものにした。
同社は、将来ビジョンと事業展開をわかりやすく伝達するために、2024年3月期より、事業セグメントの名称の一部変更を行った。新区分による2025年3月期の売上高構成比はトナー事業36.1%、半導体・ディスプレイ関連事業19.0%、機能性シート事業32.5%、セキュリティメディア事業11.6%、新規開発事業0.1%、その他の事業0.7%となっている。一方、新製品の開発と試作試験段階の製品販売のみであるため820百万円の営業損失となっている新規開発事業を除いた営業利益の構成比は、トナー事業40.4%、半導体ディスプレイ関連事業38.2%、セキュリティメディア事業14.9%、機能性シート事業2.8%と、トナー事業と半導体・ディスプレイ関連事業で全体の8割弱となっている。なお新規開発事業は利益の獲得を意図していない。
同社グループとして1,312名(2025年3月期末)の従業員を有する。トナー事業が433名と全体の33.0%を占め、半導体・ディスプレイ関連事業が229名、機能性シート事業が345名、セキュリティメディア事業が122名、新規開発事業が59名という構成になっている。また製造拠点は、同社及び子会社が集中する静岡県が中心になっているが、セキュリティメディア事業は昌栄印刷(株)の大阪及び川崎工場、反射防止フィルムはTOPPAN・TOMOEGAWAオプティカルフィルム(株)の滋賀及び静岡工場で製造している。海外にも製造の拠点を持っており、中国2工場でトナー、インドで絶縁紙の製造を行う。そのほか主な子会社としては、生分解性接着剤の調合・製品製造を行う(株)NichiRica、紙袋やフレコン等の製造・販売を行う三和紙工(株)等がある。
トナー事業と半導体・ディスプレイ関連事業が収益の2本柱
2. 事業内容
現在、トナー事業、半導体・ディスプレイ関連事業、機能性シート事業、セキュリティメディア事業、新規開発事業の5事業を主な事業分野として活動している。
(1) トナー事業
トナー事業は、複合機・プリンター用トナー、粉体関連製品などの化成品を事務機器メーカー、複合機メーカーなどへ販売して、同社において最大の売上高、利益を稼ぎ出している。
同事業の歴史は古く、1958年4月に同社と日本電信電話公社電機通信研究所、岩崎通信機<6704>の3社による協同研究に始まり、1965年にはオフセットマスター用の乾式トナーとして上市、その後1970年に湿式トナー生産を開始し売上を拡大させた。現在、複写機・プリンター用トナーの専業メーカーとして売上高ベースで世界大手の地位を確立、世界シェアでは事務機大手の内製メーカーが上位を占めるなかで同社は4.2%を確保している。ただし最近は、中国企業の台頭、世界的なペーパーレス化によるプリンター・複合機などの成熟化で事業が伸び悩んでいる。このため同社は生産能力の適正化を目指し、2020年9月にモノクロトナー事業を行う米国工場を閉鎖、日本と中国の3工場からタイムリーに製品を提供する体制を整えた。これにより成熟市場におけるNo.1メーカーとしてシェアアップを目指している。なお2025年3月期における色別の売上高構成比はモノクロが44%、カラー53%、その他4%となっている。
(2) 半導体・ディスプレイ関連事業
半導体・ディスプレイ関連事業は、半導体実装用テープ、半導体関連部品、光学フィルムを3本柱に事業を営んでいる。電子部品材料半導体実装用テープ、半導体関連部品はICメーカーやリードフレームメーカー、光学フィルムはFPDフィルムメーカーなどへ販売している。同事業の中心はICチップ搭載用リードフレーム固定接着テープを核とする半導体実装用テープで、同事業の売上の56%を占める。開発中だった「新型静電チャック」は開発方針見直しとなり、金属繊維不織布シートを組み込んだ製造装置用部材が成長の柱となろう。FPD向け光学フィルムは、コストの重荷を背負う時期が続いたが、現在は損益分岐点を下げ、収益率は高くないが利益は確保できている。ただし受注変動から収益が安定しない事業となっている。半導体・ディスプレイ関連事業における売上構成比32%となっている。
(3) 機能性シート事業
機能性シート事業は、祖業の電気絶縁紙を含む製紙2,600百万円(構成比23%)、磁気乗車券などを含む塗工紙1,580百万円(同14%)、機能性不織布1,930百万円(同17%)、ガムテープ2,310百万円(同21%)、紙加工2,770百万円(同25%)で構成されている。同事業は継続的な製紙事業の縮小により損失が続いていたが、2022年3月に大型抄紙機をすべて停機し、小型抄紙機で小回りのきく体制を整えた。このような努力もあり、ようやく2025年3月期に黒字転換を果たした。なお機能性不織布関連については成長分野として伸ばす方針にある。
(4) セキュリティメディア事業
セキュリティメディア事業は、有価証券印刷やICカード、ポイントカード、プリペイドカードなどの製造、加工及び情報処理関連を展開している。2020年3月に昌栄印刷を連結子会社化し、2021年3月期より新セグメントとなった。
(5) 新規開発事業
新規開発事業は、主にiCas関連製品及びGREEN CHIP関連製品の開発と販売を行っており、事業部に移管する前に新製品が上市されたものなどを売上計上している。iCasは同社の強みである「抄く(抄紙技術)」と「塗る(塗工技術)」に電気物性のノウハウを融合させ、熱・電気・電磁波をコントロールし、電気電子機器・部品の故障・誤作動防止に貢献する製品群である。製品ブランド名「iCas」(アイキャス)は「Insulation」(絶縁)、「Conduction」(伝導)、「Absorption」(吸収)、「Solution」(解決)の頭文字を列記したもので、2015年に統一ブランドとして創設した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
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1. 会社沿革並びに事業概要
巴川コーポレーション<3878>は、初代社長井上源三郎氏が電気絶縁紙の国産化の志を抱き1900年初頭より研究開発に着手、国産化に初めて成功し、1914年6月に巴川製紙所を創業したことに始まる。電気絶縁紙、電気通信用紙の研究、開発を行い1917年に会社設立、1955年には創業精神の「誠実」「社会貢献」「開拓者精神」を至上の行動規範とし、以来、新技術を多数開発することで発展してきた。創業精神はバリュー(価値観)を表すものとして維持しつつ、ミッション(存在意義)を「感動こそが、持続可能な価値と考える。これまでも、これからも新製品・新技術開発に挑戦し、人や社会に新しい喜びを提案しつづける」、ビジョン(ありたい姿)を「グローバル視点の提案型ソリューションパートナーへ。前例にとらわれず、組織の壁を超え、チームと個の力を掛け合わせ、新たな感動を創造する。」として経営理念を再定義し、2024年1月に株式会社巴川コーポレーションに商号変更した。巴川の名称は継承しつつ、事業ポートフォリオの転換を推進する意思を込めて、既存の事業領域を規定する「製紙」を含めないものにした。
同社は、将来ビジョンと事業展開をわかりやすく伝達するために、2024年3月期より、事業セグメントの名称の一部変更を行った。新区分による2025年3月期の売上高構成比はトナー事業36.1%、半導体・ディスプレイ関連事業19.0%、機能性シート事業32.5%、セキュリティメディア事業11.6%、新規開発事業0.1%、その他の事業0.7%となっている。一方、新製品の開発と試作試験段階の製品販売のみであるため820百万円の営業損失となっている新規開発事業を除いた営業利益の構成比は、トナー事業40.4%、半導体ディスプレイ関連事業38.2%、セキュリティメディア事業14.9%、機能性シート事業2.8%と、トナー事業と半導体・ディスプレイ関連事業で全体の8割弱となっている。なお新規開発事業は利益の獲得を意図していない。
同社グループとして1,312名(2025年3月期末)の従業員を有する。トナー事業が433名と全体の33.0%を占め、半導体・ディスプレイ関連事業が229名、機能性シート事業が345名、セキュリティメディア事業が122名、新規開発事業が59名という構成になっている。また製造拠点は、同社及び子会社が集中する静岡県が中心になっているが、セキュリティメディア事業は昌栄印刷(株)の大阪及び川崎工場、反射防止フィルムはTOPPAN・TOMOEGAWAオプティカルフィルム(株)の滋賀及び静岡工場で製造している。海外にも製造の拠点を持っており、中国2工場でトナー、インドで絶縁紙の製造を行う。そのほか主な子会社としては、生分解性接着剤の調合・製品製造を行う(株)NichiRica、紙袋やフレコン等の製造・販売を行う三和紙工(株)等がある。
トナー事業と半導体・ディスプレイ関連事業が収益の2本柱
2. 事業内容
現在、トナー事業、半導体・ディスプレイ関連事業、機能性シート事業、セキュリティメディア事業、新規開発事業の5事業を主な事業分野として活動している。
(1) トナー事業
トナー事業は、複合機・プリンター用トナー、粉体関連製品などの化成品を事務機器メーカー、複合機メーカーなどへ販売して、同社において最大の売上高、利益を稼ぎ出している。
同事業の歴史は古く、1958年4月に同社と日本電信電話公社電機通信研究所、岩崎通信機<6704>の3社による協同研究に始まり、1965年にはオフセットマスター用の乾式トナーとして上市、その後1970年に湿式トナー生産を開始し売上を拡大させた。現在、複写機・プリンター用トナーの専業メーカーとして売上高ベースで世界大手の地位を確立、世界シェアでは事務機大手の内製メーカーが上位を占めるなかで同社は4.2%を確保している。ただし最近は、中国企業の台頭、世界的なペーパーレス化によるプリンター・複合機などの成熟化で事業が伸び悩んでいる。このため同社は生産能力の適正化を目指し、2020年9月にモノクロトナー事業を行う米国工場を閉鎖、日本と中国の3工場からタイムリーに製品を提供する体制を整えた。これにより成熟市場におけるNo.1メーカーとしてシェアアップを目指している。なお2025年3月期における色別の売上高構成比はモノクロが44%、カラー53%、その他4%となっている。
(2) 半導体・ディスプレイ関連事業
半導体・ディスプレイ関連事業は、半導体実装用テープ、半導体関連部品、光学フィルムを3本柱に事業を営んでいる。電子部品材料半導体実装用テープ、半導体関連部品はICメーカーやリードフレームメーカー、光学フィルムはFPDフィルムメーカーなどへ販売している。同事業の中心はICチップ搭載用リードフレーム固定接着テープを核とする半導体実装用テープで、同事業の売上の56%を占める。開発中だった「新型静電チャック」は開発方針見直しとなり、金属繊維不織布シートを組み込んだ製造装置用部材が成長の柱となろう。FPD向け光学フィルムは、コストの重荷を背負う時期が続いたが、現在は損益分岐点を下げ、収益率は高くないが利益は確保できている。ただし受注変動から収益が安定しない事業となっている。半導体・ディスプレイ関連事業における売上構成比32%となっている。
(3) 機能性シート事業
機能性シート事業は、祖業の電気絶縁紙を含む製紙2,600百万円(構成比23%)、磁気乗車券などを含む塗工紙1,580百万円(同14%)、機能性不織布1,930百万円(同17%)、ガムテープ2,310百万円(同21%)、紙加工2,770百万円(同25%)で構成されている。同事業は継続的な製紙事業の縮小により損失が続いていたが、2022年3月に大型抄紙機をすべて停機し、小型抄紙機で小回りのきく体制を整えた。このような努力もあり、ようやく2025年3月期に黒字転換を果たした。なお機能性不織布関連については成長分野として伸ばす方針にある。
(4) セキュリティメディア事業
セキュリティメディア事業は、有価証券印刷やICカード、ポイントカード、プリペイドカードなどの製造、加工及び情報処理関連を展開している。2020年3月に昌栄印刷を連結子会社化し、2021年3月期より新セグメントとなった。
(5) 新規開発事業
新規開発事業は、主にiCas関連製品及びGREEN CHIP関連製品の開発と販売を行っており、事業部に移管する前に新製品が上市されたものなどを売上計上している。iCasは同社の強みである「抄く(抄紙技術)」と「塗る(塗工技術)」に電気物性のノウハウを融合させ、熱・電気・電磁波をコントロールし、電気電子機器・部品の故障・誤作動防止に貢献する製品群である。製品ブランド名「iCas」(アイキャス)は「Insulation」(絶縁)、「Conduction」(伝導)、「Absorption」(吸収)、「Solution」(解決)の頭文字を列記したもので、2015年に統一ブランドとして創設した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
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