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ソフトバンク Research Memo(1):前期は大幅な増収増益、売上高・営業利益は中期経営計画を1年前倒し達成
配信日時:2025/08/26 17:00
配信元:FISCO
*17:00JST ソフトバンク Research Memo(1):前期は大幅な増収増益、売上高・営業利益は中期経営計画を1年前倒し達成
■要約
ソフトバンク<9434>は、コンシューマ、エンタープライズ、メディア・EC、ファイナンス、ディストリビューションなどデジタルテクノロジーを軸に多様な事業を展開する企業である。現在は、国内における通信キャリア事業にとどまらず、AI、IoT、金融、eコマースなど、通信を成長させながら通信以外の領域を拡大している。具体的に、コンシューマ向けでは、ワイモバイルがバリューキャリア部門で携帯電話サービス顧客満足度No.1(※1)、エンタープライズ向けでは法人向けネットワークサービス顧客満足度No.1(※2)。SNSでは国内利用率No.1を誇る「LINE」(※3)、決済領域では国内QRコード決済取扱高・回数No.1となる「PayPay」(※4)など日本トップクラスのICTサービスを提供している。親会社であるソフトバンクグループ<9984>は世界のAI企業へ投資する投資会社であるが、同社は主に日本において通信やIT事業を行う事業会社として棲み分けがなされている(ソフトバンクグループは2025年3月末時点で議決権所有割合40.3%を保有)。
※1:J.D. パワー2024年携帯電話サービス顧客満足度調査。バリューキャリア部門4,600人の回答による。
※2:J.D. パワー2024年法人向けネットワークサービス顧客満足度調査。従業員数1,000名以上企業867件の回答による。
※3:総務省情報通信政策研究所 令和5年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する報告書<概要>(2024年6月)
※4:一般社団法人キャッシュレス推進協議会の開示資料(2024年の国内QRコード決済利用動向調査結果)から「PayPay」の比率を集計、PayPay調べ。
1.業績動向と今期見通し
2025年3月期の売上高は6兆5,443億円(前期比7.6%増)、営業利益は9,890億円(同12.9%増)で着地し、中期経営計画目標を1年前倒しで達成した。主要5セグメントすべてが増収増益となっている。コンシューマ事業は物販等売上及びモバイル売上の増加、エンタープライズ事業はデジタル化に伴うソリューション需要が増加した。ディストリビューション事業は法人向けICT関連商材及び継続収入商材の堅調な増加、メディア・EC事業はLINEヤフーグループにおいて子会社の支配喪失に伴う利益を計上したことや広告売上が増加したことなどが寄与した。ファイナンス事業はQRコード決済やクレジットカードの決済取扱高の増加。特に「PayPay」を含むファイナンス事業は赤字が続いていたが、2024年度に黒字化を果たして今後の上場も視野に入る重要な事業へと転換した。2026年3月期の業績予想は、売上高6兆7,000億円(前期比2.4%増)、営業利益1兆円(同1.1%増)と増収増益基調を維持、当期純利益で5,400億円(同2.6%増)と過去最高を目指す。全報告セグメントで増益を見込む中でも、2027年3月以降の次期中計における事業成長のための生成AI等への成長投資を両立していく方針である。
2.市場動向と類似企業比較
「携帯・スマートフォン市場」は、人口減少と価格競争の激化により市場成長が頭打ちとなり、従来のような高収益体制の維持が困難になっている。通信回線自体は技術的な差別化が難しく、インフラの整備が一巡した段階では明確な差異を打ち出すことが困難な「コモディティ」商品である。このため、サービス品質以外での競争優位を築きにくく、価格競争に陥りやすい構造的課題を抱えていた。かつては業界全体で暗黙の了解として過度な値下げを避け、収益性を維持する動きがあったが、政府の介入によって状況は大きく変化し、大手通信キャリアは料金体系の見直しを迫られた。これにより、従来のような高収益を前提とした通信ビジネスモデルは揺らぎ、収益構造の転換が求められる状況となったなか、国内の人口減少によって携帯契約者数の絶対的な成長余地も限られており、ユーザーあたりの単価(ARPU)も低下傾向にある。こうした状況下で、通信事業者各社は事業の主戦場を「通信」から「非通信」へと移す動きを加速させている。「非通信市場」とは、具体的には金融(FinTech)、eコマース、エンタメ、広告、デジタルプラットフォーム、クラウド・AIソリューション、エネルギーインフラ、医療・教育ICTなど、多岐にわたる分野を指しており、通信インフラと顧客基盤を生かした周辺領域への多角化が進められている。特に同社では、「PayPay」「LINE」「Yahoo! Japan」といった日本有数のサービスを有しており、盤石な顧客基盤は国内大手キャリアの中でもリードしている。また、直近はAIに積極投資するなど、大手キャリア内でも通信・非通信領域ともに着実な成長を果たしている。
3. 今後の見通しと株主還元
同社は、「Beyond Carrier」を成長戦略として掲げ、通信キャリアの枠を超えた事業を創出して企業価値最大化を図っていく。通信事業の持続的な成長を図りつつ、「DX・ソリューション」「ファイナンス」「メディア・EC」「新領域」など非通信領域の多岐にわたる分野で積極的に事業を展開していく方針である。ただ、既存の通信事業もグループ事業との連携を強化することで差別化を図り競争力を強化し、加えてグループ事業のサービス利用者数の拡大やユーザーエンゲージメント向上といったシナジーを創出していく。今後注力する領域は、次世代社会インフラの提供、具体的には「AIデータセンター」「国産LLM(Sarashina)」「ソブリンクラウド」「クリスタル・インテリジェンス」などとなる。このようにAIへの積極投資など成長への布石を着実に打ちながらも、同社の7月30日時点の総合利回り(配当利回り+優待利回り)は8.6%と高水準となっている。中長期的な成長と株主還元の両方を重視しており、高水準の株主還元を維持する方針を示している。同社の株価は2023年以降右肩上がりに上昇しており、インカムゲインのみならずキャピタルゲインも得られる状況だった。業績が回復基調にあり業績予想も達成して利益も着実に回復している。同社の株主還元について、営業利益1兆円を超えた分は何らかの形で株主還元する可能性はまだ残っている。
■Key Points
・2025 年3 月期は中期経営計画を1年前倒しで達成、2026年3月期1Qも順調
・競合比較で非通信領域では一歩リード、「Beyond Carrier」を成長戦略として掲げる
・総合利回り(配当利回り+優待利回り)8%超え、高水準の株主還元を維持する方針で還元余地も残る
(執筆:フィスコアナリスト 山本 泰三)
<FA>
ソフトバンク<9434>は、コンシューマ、エンタープライズ、メディア・EC、ファイナンス、ディストリビューションなどデジタルテクノロジーを軸に多様な事業を展開する企業である。現在は、国内における通信キャリア事業にとどまらず、AI、IoT、金融、eコマースなど、通信を成長させながら通信以外の領域を拡大している。具体的に、コンシューマ向けでは、ワイモバイルがバリューキャリア部門で携帯電話サービス顧客満足度No.1(※1)、エンタープライズ向けでは法人向けネットワークサービス顧客満足度No.1(※2)。SNSでは国内利用率No.1を誇る「LINE」(※3)、決済領域では国内QRコード決済取扱高・回数No.1となる「PayPay」(※4)など日本トップクラスのICTサービスを提供している。親会社であるソフトバンクグループ<9984>は世界のAI企業へ投資する投資会社であるが、同社は主に日本において通信やIT事業を行う事業会社として棲み分けがなされている(ソフトバンクグループは2025年3月末時点で議決権所有割合40.3%を保有)。
※1:J.D. パワー2024年携帯電話サービス顧客満足度調査。バリューキャリア部門4,600人の回答による。
※2:J.D. パワー2024年法人向けネットワークサービス顧客満足度調査。従業員数1,000名以上企業867件の回答による。
※3:総務省情報通信政策研究所 令和5年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する報告書<概要>(2024年6月)
※4:一般社団法人キャッシュレス推進協議会の開示資料(2024年の国内QRコード決済利用動向調査結果)から「PayPay」の比率を集計、PayPay調べ。
1.業績動向と今期見通し
2025年3月期の売上高は6兆5,443億円(前期比7.6%増)、営業利益は9,890億円(同12.9%増)で着地し、中期経営計画目標を1年前倒しで達成した。主要5セグメントすべてが増収増益となっている。コンシューマ事業は物販等売上及びモバイル売上の増加、エンタープライズ事業はデジタル化に伴うソリューション需要が増加した。ディストリビューション事業は法人向けICT関連商材及び継続収入商材の堅調な増加、メディア・EC事業はLINEヤフーグループにおいて子会社の支配喪失に伴う利益を計上したことや広告売上が増加したことなどが寄与した。ファイナンス事業はQRコード決済やクレジットカードの決済取扱高の増加。特に「PayPay」を含むファイナンス事業は赤字が続いていたが、2024年度に黒字化を果たして今後の上場も視野に入る重要な事業へと転換した。2026年3月期の業績予想は、売上高6兆7,000億円(前期比2.4%増)、営業利益1兆円(同1.1%増)と増収増益基調を維持、当期純利益で5,400億円(同2.6%増)と過去最高を目指す。全報告セグメントで増益を見込む中でも、2027年3月以降の次期中計における事業成長のための生成AI等への成長投資を両立していく方針である。
2.市場動向と類似企業比較
「携帯・スマートフォン市場」は、人口減少と価格競争の激化により市場成長が頭打ちとなり、従来のような高収益体制の維持が困難になっている。通信回線自体は技術的な差別化が難しく、インフラの整備が一巡した段階では明確な差異を打ち出すことが困難な「コモディティ」商品である。このため、サービス品質以外での競争優位を築きにくく、価格競争に陥りやすい構造的課題を抱えていた。かつては業界全体で暗黙の了解として過度な値下げを避け、収益性を維持する動きがあったが、政府の介入によって状況は大きく変化し、大手通信キャリアは料金体系の見直しを迫られた。これにより、従来のような高収益を前提とした通信ビジネスモデルは揺らぎ、収益構造の転換が求められる状況となったなか、国内の人口減少によって携帯契約者数の絶対的な成長余地も限られており、ユーザーあたりの単価(ARPU)も低下傾向にある。こうした状況下で、通信事業者各社は事業の主戦場を「通信」から「非通信」へと移す動きを加速させている。「非通信市場」とは、具体的には金融(FinTech)、eコマース、エンタメ、広告、デジタルプラットフォーム、クラウド・AIソリューション、エネルギーインフラ、医療・教育ICTなど、多岐にわたる分野を指しており、通信インフラと顧客基盤を生かした周辺領域への多角化が進められている。特に同社では、「PayPay」「LINE」「Yahoo! Japan」といった日本有数のサービスを有しており、盤石な顧客基盤は国内大手キャリアの中でもリードしている。また、直近はAIに積極投資するなど、大手キャリア内でも通信・非通信領域ともに着実な成長を果たしている。
3. 今後の見通しと株主還元
同社は、「Beyond Carrier」を成長戦略として掲げ、通信キャリアの枠を超えた事業を創出して企業価値最大化を図っていく。通信事業の持続的な成長を図りつつ、「DX・ソリューション」「ファイナンス」「メディア・EC」「新領域」など非通信領域の多岐にわたる分野で積極的に事業を展開していく方針である。ただ、既存の通信事業もグループ事業との連携を強化することで差別化を図り競争力を強化し、加えてグループ事業のサービス利用者数の拡大やユーザーエンゲージメント向上といったシナジーを創出していく。今後注力する領域は、次世代社会インフラの提供、具体的には「AIデータセンター」「国産LLM(Sarashina)」「ソブリンクラウド」「クリスタル・インテリジェンス」などとなる。このようにAIへの積極投資など成長への布石を着実に打ちながらも、同社の7月30日時点の総合利回り(配当利回り+優待利回り)は8.6%と高水準となっている。中長期的な成長と株主還元の両方を重視しており、高水準の株主還元を維持する方針を示している。同社の株価は2023年以降右肩上がりに上昇しており、インカムゲインのみならずキャピタルゲインも得られる状況だった。業績が回復基調にあり業績予想も達成して利益も着実に回復している。同社の株主還元について、営業利益1兆円を超えた分は何らかの形で株主還元する可能性はまだ残っている。
■Key Points
・2025 年3 月期は中期経営計画を1年前倒しで達成、2026年3月期1Qも順調
・競合比較で非通信領域では一歩リード、「Beyond Carrier」を成長戦略として掲げる
・総合利回り(配当利回り+優待利回り)8%超え、高水準の株主還元を維持する方針で還元余地も残る
(執筆:フィスコアナリスト 山本 泰三)
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