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ラクトJPN Research Memo(9):乳製品専門商社から複合型食品企業への進化を目指す(2)
配信日時:2025/08/18 11:09
配信元:FISCO
*11:09JST ラクトJPN Research Memo(9):乳製品専門商社から複合型食品企業への進化を目指す(2)
■ラクト・ジャパン<3139>の中長期の成長戦略と株式還元
2. 中期経営計画「NEXT-LJ 2025」の進捗状況と株式還元
(1) 基本方針と主要施策
2023年11月期~2025年11月期の3ヶ年は、長期ビジョン達成のためのファーストステップとして成長に向けた基盤固めに注力する計画である。事業成長に向けて「Base 既存ビジネスの『進化』」「Growth アジア事業の拡大」「Challenge 次世代ビジネスの構築」の3つの基本方針と、各基本方針において事業成長を実現する施策、それを支える経営基盤の強化策を掲げた。
既存ビジネスの「進化」においては、「サプライソースの多様化による安定供給」「ベストマッチングを生み出すコンサルティング営業」「日本産食材の輸出」によって事業成長を実現する方針だ。ポイントとなる重点施策は「サプライソースの多様化による安定供給」だ。気候変動による世界各地域での酪農・畜産品の生産量の変動やウイルス、地政学的な供給リスクを避けるために、乳原料・チーズ部門はもちろんのこと、食肉食材部門においてもグローバルな調達ネットワークをさらに拡充し安定供給を図る。乳原料においては、新規サプライヤーの開拓及び既存サプライヤーとの連携強化が進んでいる。日本産食材の輸出については、国産脱脂粉乳の輸出の実績をベースに乳製品や健康食品などの輸出を開始している。
アジア事業の拡大については、「チーズ製造販売事業の拡大」「現地営業体制の強化、販売エリアの拡充」「宗教や多様な食文化に対応した高付加価値製品の開発」によって事業成長を実現する方針だ。ポイントとなる重点施策はアジアでの「チーズ製造販売事業の拡大」だ。2026年11月期に稼働予定のシンガポール新工場は、工場・設備の増設余地を残す予定であり、シンガポール新工場を起点として、将来はアジアの3工場の合計で現在の3倍近い15千トンの製造販売を目指す。新工場完成までは、現工場だけに負荷がかからないように、タイ工場の機能強化・生産性向上を図り、両工場のバランスをとりながら需要が拡大するアジアでの供給体制を維持していく。2025年11月期は6,300トンまで販売数量を拡大する計画であったが、価格競争が激化するなかで収益を重視した営業を進めることもあり、目標を5,900トンまで引き下げた。需要が高まっているシュレッドチーズなどのナチュラルチーズ加工品の販売も拡大する。プロセスチーズは原料となるナチュラルチーズに熱を加えて加工製造するため、プロセスチーズ製造ラインとナチュラルチーズ加工ラインが併設されている強みを活かせる。また、宗教上の問題をクリアし、多様な顧客ニーズに対応するためにビーガンチーズなどの高付加価値商品や小売向け商品など新商品の開発・製造を進めている。
次世代ビジネスの構築については、「機能性食品をはじめとした新たな商材の開発」「製造・加工の川下分野の拡充」「酪農などの川上分野への関与」によって事業成長を実現する方針である。ポイントとなる重点施策は「機能性食品をはじめとした新たな商材の開発」だ。機能性食品原料部門は、スポーツニュートリションや健康志向の機能性食品として需要が拡大するプロテイン食品市場において、原料となる高たんぱく原料の販売をさらに拡大する計画である。商材の開発に当たっては、高たんぱく原料と様々な機能を持つ食品原料との組み合わせを提案して差別化を図る戦略だ。事業展開に当たっては、主にECサイトで販売するブランドオーナーやスポーツジムに対して、OEM生産を行う協力企業と提携・協業して製品を企画・開発・提案していくビジネスモデルを既に構築している。今後は、市場に参入してくる一般の食品メーカーとも提携・協業して事業領域を拡大する方針だ。アジアにおいても、日本の機能性食品は注目されており、今後はアジア向けの輸出など、三国間貿易も視野に入れている。2024年11月期より機能性食品原料の輸出販売を開始している。酪農などの川上分野への関与については、海外のサプライヤーと連携した飼料原料の開発・製造や、日本とアジアの酪農家の人的交流などにより持続可能な酪農・畜産業への貢献を果たしていく方針である。
これら3つの基本方針の下、事業成長を実現するために、事業提携などM&Aを活用することも視野に入れ、幅広く施策を検討している。また、経営基盤強化に向けては、サステナビリティへの取り組みも強化している。サステナビリティ活動を担うサステナビリティ推進タスクチームを全社横断的なメンバーに再編成し、6つのマテリアリティの推進進捗管理を進めながら、2024年9月には「環境ポリシー」「持続可能な調達ポリシー」「情報セキュリティポリシー」「労働安全衛生ポリシー」の4つのポリシーを制定した。また、同年10月にはサステナビリティ推進部を新たに設置し、推進タスクチームとともに、長期的な事業リスク及び機会と対応について検討し、経営会議に提案していく体制を整えた。さらに、気候変動への適応及び環境負荷の軽減への取り組みとしてTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づく気候変動関連の情報、Scope1,2,3排出量の算定、削減目標の設定を進め、継続的に公表していく。そのほか、人材開発の強化、ガバナンスの高度化、情報システムの整備を進める方針で、2024年12月に人材採用・育成の強化、働きやすい職場づくりを目指して人材開発室を新設したほか、既に新人事制度の本格運用と本社の基幹システムの刷新準備が進捗している。
(2) 数値目標
中期経営計画は、2025年11月期で連結売上高200,000百万円、連結経常利益4,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益2,900百万円、ROEは10%以上、配当性向は20~25%、連結自己資本比率は30~35%を目標とした。売上高は2023年11月期で160,000百万円、2024年11月期で180,000百万円を計画していたが、2023年11月期実績は158,328百万円、2024年11月期実績は170,907百万円と計画を下回って推移した。経常利益は、2023年11月期で3,200百万円、2024年11月期で3,600百万円を計画し、2023年11月期実績は2,847百万円と計画を下回ったが、2024年11月期実績は4,320百万円と計画を上回り、中期経営計画の最終目標である4,000百万円を1期前倒しで達成した。各指標も、ROE12.1%、配当性向25.3%、連結自己資本比率33.8%と、中期計画の最終目標を達成した。2025年11月期は、売上高では188,000百万円と計画を12,000百万円下回る見通しだが、経常利益は6,000百万円と計画を大きく上回る水準だ。また、配当性向は中期経営計画の目標20~25%からステージを上げて30.2%を目指しており、今回期初に20.0円増配を計画していたが、業績の上方修正に伴い52.0円増配の132.0円に修正した。配当性向は30.2%を確保する計画だ。
また、2025年11月期より、社内では事業部門ごとにROICの導入を本格的に開始した。併せて人事制度も刷新し、従業員の評価基準にROICを加え、資本効率に対する従業員の意識改革に取り組んでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本 章弘)
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2. 中期経営計画「NEXT-LJ 2025」の進捗状況と株式還元
(1) 基本方針と主要施策
2023年11月期~2025年11月期の3ヶ年は、長期ビジョン達成のためのファーストステップとして成長に向けた基盤固めに注力する計画である。事業成長に向けて「Base 既存ビジネスの『進化』」「Growth アジア事業の拡大」「Challenge 次世代ビジネスの構築」の3つの基本方針と、各基本方針において事業成長を実現する施策、それを支える経営基盤の強化策を掲げた。
既存ビジネスの「進化」においては、「サプライソースの多様化による安定供給」「ベストマッチングを生み出すコンサルティング営業」「日本産食材の輸出」によって事業成長を実現する方針だ。ポイントとなる重点施策は「サプライソースの多様化による安定供給」だ。気候変動による世界各地域での酪農・畜産品の生産量の変動やウイルス、地政学的な供給リスクを避けるために、乳原料・チーズ部門はもちろんのこと、食肉食材部門においてもグローバルな調達ネットワークをさらに拡充し安定供給を図る。乳原料においては、新規サプライヤーの開拓及び既存サプライヤーとの連携強化が進んでいる。日本産食材の輸出については、国産脱脂粉乳の輸出の実績をベースに乳製品や健康食品などの輸出を開始している。
アジア事業の拡大については、「チーズ製造販売事業の拡大」「現地営業体制の強化、販売エリアの拡充」「宗教や多様な食文化に対応した高付加価値製品の開発」によって事業成長を実現する方針だ。ポイントとなる重点施策はアジアでの「チーズ製造販売事業の拡大」だ。2026年11月期に稼働予定のシンガポール新工場は、工場・設備の増設余地を残す予定であり、シンガポール新工場を起点として、将来はアジアの3工場の合計で現在の3倍近い15千トンの製造販売を目指す。新工場完成までは、現工場だけに負荷がかからないように、タイ工場の機能強化・生産性向上を図り、両工場のバランスをとりながら需要が拡大するアジアでの供給体制を維持していく。2025年11月期は6,300トンまで販売数量を拡大する計画であったが、価格競争が激化するなかで収益を重視した営業を進めることもあり、目標を5,900トンまで引き下げた。需要が高まっているシュレッドチーズなどのナチュラルチーズ加工品の販売も拡大する。プロセスチーズは原料となるナチュラルチーズに熱を加えて加工製造するため、プロセスチーズ製造ラインとナチュラルチーズ加工ラインが併設されている強みを活かせる。また、宗教上の問題をクリアし、多様な顧客ニーズに対応するためにビーガンチーズなどの高付加価値商品や小売向け商品など新商品の開発・製造を進めている。
次世代ビジネスの構築については、「機能性食品をはじめとした新たな商材の開発」「製造・加工の川下分野の拡充」「酪農などの川上分野への関与」によって事業成長を実現する方針である。ポイントとなる重点施策は「機能性食品をはじめとした新たな商材の開発」だ。機能性食品原料部門は、スポーツニュートリションや健康志向の機能性食品として需要が拡大するプロテイン食品市場において、原料となる高たんぱく原料の販売をさらに拡大する計画である。商材の開発に当たっては、高たんぱく原料と様々な機能を持つ食品原料との組み合わせを提案して差別化を図る戦略だ。事業展開に当たっては、主にECサイトで販売するブランドオーナーやスポーツジムに対して、OEM生産を行う協力企業と提携・協業して製品を企画・開発・提案していくビジネスモデルを既に構築している。今後は、市場に参入してくる一般の食品メーカーとも提携・協業して事業領域を拡大する方針だ。アジアにおいても、日本の機能性食品は注目されており、今後はアジア向けの輸出など、三国間貿易も視野に入れている。2024年11月期より機能性食品原料の輸出販売を開始している。酪農などの川上分野への関与については、海外のサプライヤーと連携した飼料原料の開発・製造や、日本とアジアの酪農家の人的交流などにより持続可能な酪農・畜産業への貢献を果たしていく方針である。
これら3つの基本方針の下、事業成長を実現するために、事業提携などM&Aを活用することも視野に入れ、幅広く施策を検討している。また、経営基盤強化に向けては、サステナビリティへの取り組みも強化している。サステナビリティ活動を担うサステナビリティ推進タスクチームを全社横断的なメンバーに再編成し、6つのマテリアリティの推進進捗管理を進めながら、2024年9月には「環境ポリシー」「持続可能な調達ポリシー」「情報セキュリティポリシー」「労働安全衛生ポリシー」の4つのポリシーを制定した。また、同年10月にはサステナビリティ推進部を新たに設置し、推進タスクチームとともに、長期的な事業リスク及び機会と対応について検討し、経営会議に提案していく体制を整えた。さらに、気候変動への適応及び環境負荷の軽減への取り組みとしてTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づく気候変動関連の情報、Scope1,2,3排出量の算定、削減目標の設定を進め、継続的に公表していく。そのほか、人材開発の強化、ガバナンスの高度化、情報システムの整備を進める方針で、2024年12月に人材採用・育成の強化、働きやすい職場づくりを目指して人材開発室を新設したほか、既に新人事制度の本格運用と本社の基幹システムの刷新準備が進捗している。
(2) 数値目標
中期経営計画は、2025年11月期で連結売上高200,000百万円、連結経常利益4,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益2,900百万円、ROEは10%以上、配当性向は20~25%、連結自己資本比率は30~35%を目標とした。売上高は2023年11月期で160,000百万円、2024年11月期で180,000百万円を計画していたが、2023年11月期実績は158,328百万円、2024年11月期実績は170,907百万円と計画を下回って推移した。経常利益は、2023年11月期で3,200百万円、2024年11月期で3,600百万円を計画し、2023年11月期実績は2,847百万円と計画を下回ったが、2024年11月期実績は4,320百万円と計画を上回り、中期経営計画の最終目標である4,000百万円を1期前倒しで達成した。各指標も、ROE12.1%、配当性向25.3%、連結自己資本比率33.8%と、中期計画の最終目標を達成した。2025年11月期は、売上高では188,000百万円と計画を12,000百万円下回る見通しだが、経常利益は6,000百万円と計画を大きく上回る水準だ。また、配当性向は中期経営計画の目標20~25%からステージを上げて30.2%を目指しており、今回期初に20.0円増配を計画していたが、業績の上方修正に伴い52.0円増配の132.0円に修正した。配当性向は30.2%を確保する計画だ。
また、2025年11月期より、社内では事業部門ごとにROICの導入を本格的に開始した。併せて人事制度も刷新し、従業員の評価基準にROICを加え、資本効率に対する従業員の意識改革に取り組んでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本 章弘)
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