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ラクトJPN Research Memo(3):商社とメーカー機能のハイブリッド経営で事業領域拡大(1)
配信日時:2025/08/18 11:03
配信元:FISCO
*11:03JST ラクトJPN Research Memo(3):商社とメーカー機能のハイブリッド経営で事業領域拡大(1)
■ラクト・ジャパン<3139>の事業概要
同社は、乳製品原料、機能性食品原料、食肉及び食肉加工食品などの食品原料を輸入する独立系の食品専門商社であり、乳製品原料の輸入販売事業をベースに事業領域を拡大し、着実な成長を続けてきた。単一セグメントで事業部門は、乳原料・チーズ部門、食肉食材部門、機能性食品原料部門、アジア事業(乳原料販売部門)、アジア事業(チーズ製造販売部門)、その他で構成される。なお、今後の成長が期待される機能性食品原料部門は、2023年11月期までアジア事業・その他に含めていたが、事業規模の拡大に伴い、2024年11月期より独立した部門として売上高、販売数量を開示した。2025年11月期中間期の連結売上高構成比は、乳原料・チーズ部門が65.8%、食肉食材部門が12.1%、機能性食品原料部門が4.0%、アジア事業(乳原料販売部門)が13.0%、アジア事業(チーズ製造販売部門)が3.3%、その他が1.8%となっている。
1. 乳原料・チーズ部門
海外から乳原料やチーズを輸入し、国内の乳業・食品・菓子・油脂・飲料・飼料メーカーなどに販売している。乳原料は、生乳から派生した全粉乳、脱脂粉乳、バター、クリーム、ホエイや、それに砂糖や油脂などを加えて一次加工した乳調製品を取り扱う。乳調製品は、アイスクリームやヨーグルト、乳飲料などの乳製品のほか、パンや菓子など加工食品の原料として幅広い食品に使用されており、粉乳調製品、バター調製品、ココア調製品など取扱品目は500種類超に及ぶ。チーズは、ナチュラルチーズ(主にゴーダ、チェダー、モザレラ、クリームチーズなど)を輸入し、国内乳業メーカーなどにプロセスチーズ※やシュレッドチーズなどの原料として販売している。これだけのラインアップの商品を取り扱う商社は日本で唯一といっていいだろう。
※ プロセスチーズ:数種類のナチュラルチーズに乳化剤などを加えて加熱して溶かし、再び成形したチーズで、加熱によって乳酸菌や酵素が死滅するので、カビが生えにくく保存性に優れる。また、数種類のナチュラルチーズを混合し消費者の嗜好に応じた味を作ることができる。
乳製品原料は海外との内外価格差が大きく、国内生産者保護の観点から非関税措置により輸入が制限されてきたが、1988年に日米交渉によってプロセスチーズ、アイスクリームなどの乳製品の一部について輸入数量制限が撤廃された。その後、1993年に妥結した多国間貿易交渉(GATTウルグアイ・ラウンド)において、指定乳製品など※の1995年からの関税化と関税率の削減が合意された。この合意に基づき、1) 日本がWTOに約束している輸入最低数量(生乳換算で13.7万トン/年)のバター・脱脂粉乳などの(独)農畜産業振興機構によるカレント・アクセス輸入、2) 民間需要者などに一定数量に対し低関税が割り当てられる関税割当輸入、3) 定められた関税を支払えば誰でも指定乳製品などを輸入できる一般輸入、の3つの輸入形態が整備された。その後、日豪EPA(経済連携協定)、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(通称TPP11))、日EU・EPA(日EU経済連携協定)、日米貿易協定が次々と発効され、関税割当の数量拡大及び関税の低減が進んでいる。
※ 指定乳製品など:畜産経営の安定に関する法律で定められた規格に適合する、脱脂粉乳、バター、ホエイ及び調製ホエイ、練乳などの乳製品を指し、関税化により輸入が認められている。
国内の生乳生産量は、酪農家の廃業などにより中長期的に減少傾向にある。一方、国内の乳製品需要は、健康志向の高まりから機能性ヨーグルトの定着や食生活の変化などにより堅調に推移している。2023年度の国内消費量1,170万トン(生乳換算)のうち、国内生産量は732万トン、輸入量は455万トンと、輸入比率は約38%である※。同社は乳製品の輸入自由化を背景に、原料の需給ギャップを埋め、円滑な原料調達を支える「オーガナイザー」として存在価値を発揮してきた。また、日本の販売先に対しては多様化する開発ニーズや乳製品原料の製品特性に対応し、サプライヤーに対しては高品質・高付加価値原料の開発・製造を提案していく「ビジネスパートナー」として独自の地位を築いた。
※ 出所:個人投資家説明会資料
2. 食肉食材部門
食肉食材部門では、豚肉(チルド及びフローズン)をメインに、鶏肉及び鶏肉加工品、生ハム・サラミなどの食肉加工品を世界各地から輸入し、国内のハム・ソーセージメーカーをはじめとする食品メーカー、及び卸売・小売店に供給している。豚肉は、豚の育成から加工までトレーサビリティを担保した一貫生産を行う米国トップクラスの大手食肉加工メーカーのSeaboard Foods LLCをメインサプライヤーとしながら、カナダやスペインなどのサプライソースを確保し、仕入先の多様化を進めている。生ハム、サラミなど食肉加工品は欧州の主要な産地からブランド力のある高品質な商品を輸入し、大手スーパーなどに販売ルートを持つリパックメーカー(原料である生ハムの原木を販売用途に合った形・サイズに加工し、袋詰めするメーカー)などに販売している。また、多様化する販売先のニーズに応え、牛肉や鶏肉などの取扱品目を拡充し事業の多角化を進めている。
3. 機能性食品原料部門
新たな成長の柱として機能性食品原料販売に注力している。2015年に機能性表示食品制度がスタートして以来、「食と健康」「食の機能性」が注目され、ヨーグルト、ガム、チョコレートなど多くの食品で機能性を謳った商品が登場し消費者の健康志向が高まった。同社では、2020年4月に事業開発本部を新設し、乳由来の高たんぱく原料などの機能性食品原料の輸入販売を開始した。プロテイン原料を中心としてスポーツニュートリション業界、美容・健康業界、介護業界、食品業界向けに需要が伸びており、乳由来の高たんぱく原料をはじめ、様々な機能を持つ食品原料の取り扱いを拡充し、機能性原料の組み合わせを提案して差別化を進めている。また、ECサイトでプロテイン製品を販売する、工場を持たないブランドオーナーやスポーツジムなどに対して、同社が調達した原料を用いて、OEM生産が可能なパートナーとともに乳製品の特性を活かした最終商品の企画・開発を提案するなど、付加価値を高めたビジネスも展開している。今後は、乳由来の原料に加え、植物由来原料やゼラチン・コラーゲンなど、健康に資する機能を訴求できる原料にこだわり、取扱商品の幅を広げ事業を拡大する計画だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本 章弘)
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同社は、乳製品原料、機能性食品原料、食肉及び食肉加工食品などの食品原料を輸入する独立系の食品専門商社であり、乳製品原料の輸入販売事業をベースに事業領域を拡大し、着実な成長を続けてきた。単一セグメントで事業部門は、乳原料・チーズ部門、食肉食材部門、機能性食品原料部門、アジア事業(乳原料販売部門)、アジア事業(チーズ製造販売部門)、その他で構成される。なお、今後の成長が期待される機能性食品原料部門は、2023年11月期までアジア事業・その他に含めていたが、事業規模の拡大に伴い、2024年11月期より独立した部門として売上高、販売数量を開示した。2025年11月期中間期の連結売上高構成比は、乳原料・チーズ部門が65.8%、食肉食材部門が12.1%、機能性食品原料部門が4.0%、アジア事業(乳原料販売部門)が13.0%、アジア事業(チーズ製造販売部門)が3.3%、その他が1.8%となっている。
1. 乳原料・チーズ部門
海外から乳原料やチーズを輸入し、国内の乳業・食品・菓子・油脂・飲料・飼料メーカーなどに販売している。乳原料は、生乳から派生した全粉乳、脱脂粉乳、バター、クリーム、ホエイや、それに砂糖や油脂などを加えて一次加工した乳調製品を取り扱う。乳調製品は、アイスクリームやヨーグルト、乳飲料などの乳製品のほか、パンや菓子など加工食品の原料として幅広い食品に使用されており、粉乳調製品、バター調製品、ココア調製品など取扱品目は500種類超に及ぶ。チーズは、ナチュラルチーズ(主にゴーダ、チェダー、モザレラ、クリームチーズなど)を輸入し、国内乳業メーカーなどにプロセスチーズ※やシュレッドチーズなどの原料として販売している。これだけのラインアップの商品を取り扱う商社は日本で唯一といっていいだろう。
※ プロセスチーズ:数種類のナチュラルチーズに乳化剤などを加えて加熱して溶かし、再び成形したチーズで、加熱によって乳酸菌や酵素が死滅するので、カビが生えにくく保存性に優れる。また、数種類のナチュラルチーズを混合し消費者の嗜好に応じた味を作ることができる。
乳製品原料は海外との内外価格差が大きく、国内生産者保護の観点から非関税措置により輸入が制限されてきたが、1988年に日米交渉によってプロセスチーズ、アイスクリームなどの乳製品の一部について輸入数量制限が撤廃された。その後、1993年に妥結した多国間貿易交渉(GATTウルグアイ・ラウンド)において、指定乳製品など※の1995年からの関税化と関税率の削減が合意された。この合意に基づき、1) 日本がWTOに約束している輸入最低数量(生乳換算で13.7万トン/年)のバター・脱脂粉乳などの(独)農畜産業振興機構によるカレント・アクセス輸入、2) 民間需要者などに一定数量に対し低関税が割り当てられる関税割当輸入、3) 定められた関税を支払えば誰でも指定乳製品などを輸入できる一般輸入、の3つの輸入形態が整備された。その後、日豪EPA(経済連携協定)、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(通称TPP11))、日EU・EPA(日EU経済連携協定)、日米貿易協定が次々と発効され、関税割当の数量拡大及び関税の低減が進んでいる。
※ 指定乳製品など:畜産経営の安定に関する法律で定められた規格に適合する、脱脂粉乳、バター、ホエイ及び調製ホエイ、練乳などの乳製品を指し、関税化により輸入が認められている。
国内の生乳生産量は、酪農家の廃業などにより中長期的に減少傾向にある。一方、国内の乳製品需要は、健康志向の高まりから機能性ヨーグルトの定着や食生活の変化などにより堅調に推移している。2023年度の国内消費量1,170万トン(生乳換算)のうち、国内生産量は732万トン、輸入量は455万トンと、輸入比率は約38%である※。同社は乳製品の輸入自由化を背景に、原料の需給ギャップを埋め、円滑な原料調達を支える「オーガナイザー」として存在価値を発揮してきた。また、日本の販売先に対しては多様化する開発ニーズや乳製品原料の製品特性に対応し、サプライヤーに対しては高品質・高付加価値原料の開発・製造を提案していく「ビジネスパートナー」として独自の地位を築いた。
※ 出所:個人投資家説明会資料
2. 食肉食材部門
食肉食材部門では、豚肉(チルド及びフローズン)をメインに、鶏肉及び鶏肉加工品、生ハム・サラミなどの食肉加工品を世界各地から輸入し、国内のハム・ソーセージメーカーをはじめとする食品メーカー、及び卸売・小売店に供給している。豚肉は、豚の育成から加工までトレーサビリティを担保した一貫生産を行う米国トップクラスの大手食肉加工メーカーのSeaboard Foods LLCをメインサプライヤーとしながら、カナダやスペインなどのサプライソースを確保し、仕入先の多様化を進めている。生ハム、サラミなど食肉加工品は欧州の主要な産地からブランド力のある高品質な商品を輸入し、大手スーパーなどに販売ルートを持つリパックメーカー(原料である生ハムの原木を販売用途に合った形・サイズに加工し、袋詰めするメーカー)などに販売している。また、多様化する販売先のニーズに応え、牛肉や鶏肉などの取扱品目を拡充し事業の多角化を進めている。
3. 機能性食品原料部門
新たな成長の柱として機能性食品原料販売に注力している。2015年に機能性表示食品制度がスタートして以来、「食と健康」「食の機能性」が注目され、ヨーグルト、ガム、チョコレートなど多くの食品で機能性を謳った商品が登場し消費者の健康志向が高まった。同社では、2020年4月に事業開発本部を新設し、乳由来の高たんぱく原料などの機能性食品原料の輸入販売を開始した。プロテイン原料を中心としてスポーツニュートリション業界、美容・健康業界、介護業界、食品業界向けに需要が伸びており、乳由来の高たんぱく原料をはじめ、様々な機能を持つ食品原料の取り扱いを拡充し、機能性原料の組み合わせを提案して差別化を進めている。また、ECサイトでプロテイン製品を販売する、工場を持たないブランドオーナーやスポーツジムなどに対して、同社が調達した原料を用いて、OEM生産が可能なパートナーとともに乳製品の特性を活かした最終商品の企画・開発を提案するなど、付加価値を高めたビジネスも展開している。今後は、乳由来の原料に加え、植物由来原料やゼラチン・コラーゲンなど、健康に資する機能を訴求できる原料にこだわり、取扱商品の幅を広げ事業を拡大する計画だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本 章弘)
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