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プロパスト Research Memo(5):2025年5月期は、保有物件の積極的な売却により増収増益決算
配信日時:2025/08/14 13:05
配信元:FISCO
*13:05JST プロパスト Research Memo(5):2025年5月期は、保有物件の積極的な売却により増収増益決算
■プロパスト<3236>の業績動向
1. 2025年5月期の業績概要
2025年5月期の日本経済は、緩やかに回復しているが、米国の通商政策の影響、物価上昇の継続、金融資本市場の変動等により不透明感が強まった。同社が属する不動産業界においては、弱含みの動きが見られた。先行指標となる新設住宅着工戸数の季節調整済み年率換算値は2025年4月が626,000戸(前月比42.0%減)と、3ヶ月ぶりの減少に転じた。また、首都圏マンションの初月契約率は同年5月には57.9%となり、好不況の分かれ目とされる70%を下回った。
このような状況のなか、同社は、事業のリスク管理をより強化し、財務体質のさらなる健全化を図るため、在庫の削減や回転率を重視し、総資産圧縮に注力した。賃貸開発事業及びバリューアップ事業においては、より厳選した新規物件の取得を行うとともに、保有物件の積極的な売却を進めた。この結果、2025年5月期の売上高は27,839百万円(前期比19.5%増)、営業利益は3,334百万円(同9.1%増)、経常利益は2,826百万円(同8.9%増)、当期純利益は1,957百万円(同7.5%増)と、増収増益決算となった。期初には増収減益を計画していたが、売上高は計画比3.9%増、営業利益も同67.5%増と、計画を大きく上回って着地した。外国人投資家による需要が強く、想定より高く売れる物件が出てきたことや、今後の経済環境を考えて資産を減らす方向に舵をとり、在庫の削減を行ったことが好決算の理由である。ただ、売上総利益率や営業利益率など、収益性指標は低下した。
セグメント別では、分譲開発事業は、売上計上する引渡物件がなく、売上高はゼロ(前期は3,755百万円)、営業利益もゼロ(前期は443百万円)であった。同事業では、首都圏市場全体で地価や建築費が上昇し販売価格が高くなり、土地の取得が困難になったことや、高水準の収益確保が難しくなったことから、近年は同社全体に占める売上高・営業利益のウェイトは低下している。
賃貸開発事業では、首都圏を中心に用地取得から賃貸マンション建築・販売まで行っており、外神田プロジェクト、蔵前2プロジェクト及び初台2プロジェクト等、19プロジェクト(前期も19プロジェクト)を売却した。中国、香港、台湾、シンガポール等外国人投資家による需要が強かった。この結果、売上高は18,002百万円(前期比4.5%増)となった。また、依然として高い収益性を維持しており、売却物件の地域優位性が評価されているものの、建築コストの増加により原価が増加した結果、前期比では収益性が低下したため、営業利益は3,278百万円(同7.0%減)となった。資材コストは落ち着いてきたが、人手不足が続いている状況だ。また、前期にはプロジェクトのなかに想定以上の利益が生じた物件もあり、高い利益率を達成した反動もあった。この結果、営業利益率は前期の20.5%から当期は18.2%に低下した。ただ、同事業の同社全体に占める比率は、売上高で64.7%(前期は73.9%)、営業利益で71.2%(同81.6%)であり、引き続き同社の業績を支える事業となっている。
バリューアップ事業では、中古のマンションを購入し、外観や設備が経年劣化した不動産に対して効率的に改修を行ったり、築年の浅い物件においても、賃料の見直しや居住率のアップを目的としてリーシング活動を行ったりすることにより収益性を向上させ、既存の建物の付加価値を高めたうえで売却している。具体的には八雲2プロジェクト及び中里プロジェクト等の18プロジェクト(前期は5プロジェクト)を売却した。分譲開発事業の落ち込みをカバーするとともに、財務体質のさらなる健全化を図るため、次期に販売予定だったプロジェクトを早期に販売して在庫を減らした。その結果、売上高は9,824百万円(前期比323.5%増)、営業利益は1,324百万円(同278.1%増)と大幅な増収増益となった。ただ、営業利益率は前期の15.1%から当期は13.5%に低下している。また、同事業の同社全体に占める比率は、売上高で35.3%(前期は10.0%)、営業利益で28.8%(同8.1%)に拡大した。
2. 財務状態及びキャッシュ・フローの状況
2025年5月期末の資産合計は、前期末比1,705百万円減の30,182百万円となった。これは主に、現金及び預金が3,540百万円増加した一方で、保有物件の売却を積極的に進めて、仕入を抑制した結果、販売用不動産と仕掛販売用不動産が合わせて5,183百万円減少したことによるものである。負債合計については、前期末比3,433百万円減の18,007百万円となった。これは主に、保有物件の売却と借入金の返済を積極的に進めたことに伴い、借入金(長期借入金と短期借入金等の合計)が3,825百万円減少したことによる。純資産合計については、前期末比1,728百万円増の12,175百万円となった。これは主に、当期純利益の計上等により利益剰余金が1,821百万円増加したことによる。
利益の積み上げにより、自己資本比率は40.1%(前期比7.6ポイント上昇)と、中期的目標としていた30%台を大きく上回った。同社では、今後は自己資本40%台を確固たるものにし、厳しい経営環境下でも生き残れる会社となることを目指す方針だ。また、D/Eレシオ(負債資本倍率)は1.36倍(同0.60ポイント低下)、流動比率も250.0%(同11.5ポイント低下)で、短期的な資金繰りに困らない十分な支払い能力を確保している。こうした強固な財務内容は、不動産の仕入などの事業面や金融機関からの借入において有利に働くと考えられる。
現金及び現金同等物(以下、資金)の2025年5月期末残高は、前期末より3,621百万円増加し、6,568百万円となった。各キャッシュ・フローの状況について見ると、営業活動により獲得した資金は、7,641百万円となった。これは、主に税引前当期純利益で2,822百万円を獲得し、保有物件の積極的な売却により棚卸資産が5,184百万円減少したことに加え、法人税等の支払いが877百万円発生したことによる。投資活動により獲得した資金は、53百万円となった。これは、主に定期預金の預入により133百万円の支出が発生したものの、定期預金の払戻により219百万円を獲得したことによる。財務活動により支出した資金は、4,064百万円となった。これは、主に物件の取得に伴う新たな融資契約締結により、借入金を14,418百万円獲得した一方で、物件の売却や借入期間の終了などに伴う借入金の返済により、18,241百万円の支出が発生したことによるものである。
以上から、企業が生み出した利益のなかで、自由に使える資金を示すフリー・キャッシュ・フローは、前期より9,501百万円増加して7,694百万円となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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1. 2025年5月期の業績概要
2025年5月期の日本経済は、緩やかに回復しているが、米国の通商政策の影響、物価上昇の継続、金融資本市場の変動等により不透明感が強まった。同社が属する不動産業界においては、弱含みの動きが見られた。先行指標となる新設住宅着工戸数の季節調整済み年率換算値は2025年4月が626,000戸(前月比42.0%減)と、3ヶ月ぶりの減少に転じた。また、首都圏マンションの初月契約率は同年5月には57.9%となり、好不況の分かれ目とされる70%を下回った。
このような状況のなか、同社は、事業のリスク管理をより強化し、財務体質のさらなる健全化を図るため、在庫の削減や回転率を重視し、総資産圧縮に注力した。賃貸開発事業及びバリューアップ事業においては、より厳選した新規物件の取得を行うとともに、保有物件の積極的な売却を進めた。この結果、2025年5月期の売上高は27,839百万円(前期比19.5%増)、営業利益は3,334百万円(同9.1%増)、経常利益は2,826百万円(同8.9%増)、当期純利益は1,957百万円(同7.5%増)と、増収増益決算となった。期初には増収減益を計画していたが、売上高は計画比3.9%増、営業利益も同67.5%増と、計画を大きく上回って着地した。外国人投資家による需要が強く、想定より高く売れる物件が出てきたことや、今後の経済環境を考えて資産を減らす方向に舵をとり、在庫の削減を行ったことが好決算の理由である。ただ、売上総利益率や営業利益率など、収益性指標は低下した。
セグメント別では、分譲開発事業は、売上計上する引渡物件がなく、売上高はゼロ(前期は3,755百万円)、営業利益もゼロ(前期は443百万円)であった。同事業では、首都圏市場全体で地価や建築費が上昇し販売価格が高くなり、土地の取得が困難になったことや、高水準の収益確保が難しくなったことから、近年は同社全体に占める売上高・営業利益のウェイトは低下している。
賃貸開発事業では、首都圏を中心に用地取得から賃貸マンション建築・販売まで行っており、外神田プロジェクト、蔵前2プロジェクト及び初台2プロジェクト等、19プロジェクト(前期も19プロジェクト)を売却した。中国、香港、台湾、シンガポール等外国人投資家による需要が強かった。この結果、売上高は18,002百万円(前期比4.5%増)となった。また、依然として高い収益性を維持しており、売却物件の地域優位性が評価されているものの、建築コストの増加により原価が増加した結果、前期比では収益性が低下したため、営業利益は3,278百万円(同7.0%減)となった。資材コストは落ち着いてきたが、人手不足が続いている状況だ。また、前期にはプロジェクトのなかに想定以上の利益が生じた物件もあり、高い利益率を達成した反動もあった。この結果、営業利益率は前期の20.5%から当期は18.2%に低下した。ただ、同事業の同社全体に占める比率は、売上高で64.7%(前期は73.9%)、営業利益で71.2%(同81.6%)であり、引き続き同社の業績を支える事業となっている。
バリューアップ事業では、中古のマンションを購入し、外観や設備が経年劣化した不動産に対して効率的に改修を行ったり、築年の浅い物件においても、賃料の見直しや居住率のアップを目的としてリーシング活動を行ったりすることにより収益性を向上させ、既存の建物の付加価値を高めたうえで売却している。具体的には八雲2プロジェクト及び中里プロジェクト等の18プロジェクト(前期は5プロジェクト)を売却した。分譲開発事業の落ち込みをカバーするとともに、財務体質のさらなる健全化を図るため、次期に販売予定だったプロジェクトを早期に販売して在庫を減らした。その結果、売上高は9,824百万円(前期比323.5%増)、営業利益は1,324百万円(同278.1%増)と大幅な増収増益となった。ただ、営業利益率は前期の15.1%から当期は13.5%に低下している。また、同事業の同社全体に占める比率は、売上高で35.3%(前期は10.0%)、営業利益で28.8%(同8.1%)に拡大した。
2. 財務状態及びキャッシュ・フローの状況
2025年5月期末の資産合計は、前期末比1,705百万円減の30,182百万円となった。これは主に、現金及び預金が3,540百万円増加した一方で、保有物件の売却を積極的に進めて、仕入を抑制した結果、販売用不動産と仕掛販売用不動産が合わせて5,183百万円減少したことによるものである。負債合計については、前期末比3,433百万円減の18,007百万円となった。これは主に、保有物件の売却と借入金の返済を積極的に進めたことに伴い、借入金(長期借入金と短期借入金等の合計)が3,825百万円減少したことによる。純資産合計については、前期末比1,728百万円増の12,175百万円となった。これは主に、当期純利益の計上等により利益剰余金が1,821百万円増加したことによる。
利益の積み上げにより、自己資本比率は40.1%(前期比7.6ポイント上昇)と、中期的目標としていた30%台を大きく上回った。同社では、今後は自己資本40%台を確固たるものにし、厳しい経営環境下でも生き残れる会社となることを目指す方針だ。また、D/Eレシオ(負債資本倍率)は1.36倍(同0.60ポイント低下)、流動比率も250.0%(同11.5ポイント低下)で、短期的な資金繰りに困らない十分な支払い能力を確保している。こうした強固な財務内容は、不動産の仕入などの事業面や金融機関からの借入において有利に働くと考えられる。
現金及び現金同等物(以下、資金)の2025年5月期末残高は、前期末より3,621百万円増加し、6,568百万円となった。各キャッシュ・フローの状況について見ると、営業活動により獲得した資金は、7,641百万円となった。これは、主に税引前当期純利益で2,822百万円を獲得し、保有物件の積極的な売却により棚卸資産が5,184百万円減少したことに加え、法人税等の支払いが877百万円発生したことによる。投資活動により獲得した資金は、53百万円となった。これは、主に定期預金の預入により133百万円の支出が発生したものの、定期預金の払戻により219百万円を獲得したことによる。財務活動により支出した資金は、4,064百万円となった。これは、主に物件の取得に伴う新たな融資契約締結により、借入金を14,418百万円獲得した一方で、物件の売却や借入期間の終了などに伴う借入金の返済により、18,241百万円の支出が発生したことによるものである。
以上から、企業が生み出した利益のなかで、自由に使える資金を示すフリー・キャッシュ・フローは、前期より9,501百万円増加して7,694百万円となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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