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冨士ダイス Research Memo(7):次世代自動車分野で高機能新素材を展開、差別化製品で需要獲得へ
配信日時:2025/07/16 12:07
配信元:FISCO
*12:07JST 冨士ダイス Research Memo(7):次世代自動車分野で高機能新素材を展開、差別化製品で需要獲得へ
■中長期の成長戦略
以下では主に成長分野、成長戦略に沿った施策について見ていく。
2. 成長分野に向けた製品開発
(1) 次世代自動車関連
冨士ダイス<6167>は重要施策のなかで脱炭素・循環型社会の形成に貢献する製品を積極的に開発・市場投入する方針であるが、とりわけ業容拡大においては最大需要先である自動車産業向けの対応が非常に重要となる。そのため二次電池、モーターコア、高熱膨張レンズ用金型などへの注力を続けている。
二次電池ケース成形用金型について、同社は従来から角型対応は進めていたが、円筒型については米国IRA法により主力納入先の米国移管が発生し痛手を被った。このため、精密金型加工技術を生かし角形LIB用も本格的に手掛けていく。車載用角型LIBの市場は、トヨタ自動車<7203>(51%)とパナソニック ホールディングス<6752>(49%)が合弁会社として設立したプライムプラネットエナジー&ソリューションズ(株)において拡張が進行、2024年に約7GWh/年の能力増強がなされた。現状、HEV向けが堅調も、2026年以降、兵庫県の拠点を中心に「次世代パフォーマンス版」と位置づける高性能なリチウムイオン電池の生産を開始する計画があり、関連会社であるプライムアースEVエナジー(PEVE)の福岡拠点と合わせ、年間合計9GWhの生産能力が計画されており、今後の拡大が期待される。
同社はモーターコア製造用抜き金型では日系モーターコア製造メーカー各社向けに展開しているが、同市場は国内外に多くの競合が存在している。現在、HEV向けが多いが、今後EV向けの拡大を見据え、新材種「フジロイVG48」を投入。EVではモーターの高出力化への要望に応じ積層数を拡大するために電磁鋼板の薄板化が必要となり、現在の0.2〜0.3mmが採用され、同社では市場動向を見越した新材種開発も進んでいる。メーカーでは、積層方式が従来のカシメから接着方式もしくは外装ダボ方式などで対応する動きがある。また、大口径化などで、高硬度電磁鋼板に対応する必要もある。高硬度電磁鋼板では優れた耐摩耗性や耐チッピング性及び耐凝着性も必要とされる。同社のVG48は従来品に対し破壊靭性や耐摩耗性に優れた長寿命化につながる新材種であり、放電加工に微小クラックを生じ難く、強度向上が可能。今後、メーカー認定が進めば大きく拡大が見込める。同社はモーターコア金型材種のラインナップを拡充し、ユーザーの選択肢を増加させシェア拡大を図る。
ワイヤーカット放電加工機において加工液に水を利用する長時間の水切りワイヤー放電加工に対応した製品としては「フジロイ VG51」がある。同製品は汎用材種と比較して耐食性、靭性に優れ、特に水切り加工の周長が長い加工に生じやすい腐食を抑制できる製品となっている。従来の油性は高い絶縁性から放電の安定性があり、特に微細加工や高精度な放電制御が必要な場面で滑らかで均一な仕上げ面ができ、製品の品質が高まる点から、特にナノレベル加工精度分野では油が使われた。さらに油は防錆効果から、ワークピースや加工機内部部品の腐食を防ぐことができた。一方、油は引火性があり火災リスク、また、廃油処理などの問題があった。このようななかで水の絶縁性を向上させる添加剤や薬剤が開発され、安定した放電制御から放電の精度が油に近づき、防錆成分や腐食抑制の薬剤も導入され防錆性能が向上、さらに多くの国や地域で環境規制が強化され、環境負荷の少ない水加工の採用が推進され、水仕様が増えている。今回開発したフジロイVG51は長時間の水切りワイヤー放電加工を行っても腐食が浅く小さくて済む。今後、ワイヤーカット放電加工では精密かつ複雑加工を要求される長時間加工の金型製作が増えるとみられVG51は差別化商品として売上拡大が期待される。
電磁鋼板に代えてアモルファス合金帯鋼による高性能のモータ開発が進んでいることに対しても新材種を開発している。モータ出力はトルクと回転数の積に比例し、モータ体格は最大トルクで決まるため、高速回転化を図れば、同出力で小型・軽量化が可能だ。ただし、高速回転化の難題は、渦電流が増大し鉄損が増えモータ損失が増大してしまう。これを解消するため鉄損が通常の鉄の1/10と小さい鉄(Fe)とシリコン(Si)、ホウ素(B)からなるアモルファス金属製の薄板が注目された。アモルファス金属は硬くて脆く、加工が難しい。このためこの薄板鋼板を打抜くために、WC粒度をナノサイズまで微細化し、非常に高い硬さと抗折力を両立したナノ微粒子超硬合金「フジロイFS06」(初版掲載2023.5.10)を投入、各社からの引き合いが増加している。さらに「フジロイFS06」をベースとしながら、新材料開発を進めていく。いずれにしても同社は上記の差別化された製品群を加え、モータコア向けでさらなる売上拡大を見込んでいる。
次世代自動車向けでは自動運転に関連し、光学ガラスレンズ成型用バインダレス超硬合金の他、高熱膨張・低比重硬質合金(TR合金)の中国市場での拡販に取り組み、成果が出始めている。同社は「粉末冶金技術と超精密加工技術」を組み合わせることにより、一眼レフカメラなどに使用されるガラスレンズ用の成形金型を市場に展開していた。このなかでユーザーから自動化機器(自動車、ドローン、監視システム)の実用化に伴い、バインダレス超硬合金をはじめ、高熱膨張・低比重硬質合金の需要が高まっていた。具体的には同レンズがADAS(先進運転支援システム)に用いられるLiDAR(レーザー光検出による距離計測機)向けに採用が広がり始めていると推測される。赤外線透過レンズガラスの熱膨張係数(9MK-1以上)は一般ガラス(6〜8MK-1)より大きい。従来のバインダレス超硬合金製金型(4〜5MK-1)ではレンズ成形する際、レンズと金型の熱膨張係数差によりレンズが割れる問題が生じていた。同社はこの問題に対し、高熱膨張係数(8MK-1以上)と、従来材料と同等の鏡面性を兼備した新硬質材料、高熱膨張・低比重硬質合金(TR合金)を開発し、市場投入した。実際、EV/PHEV販売台数世界トップのBYDでは高級EV車「HanEV」に前方3個、後方3個、計6個のLiDARを搭載、標準装備化している。また、中国ではレベル4の完全自動運転タクシーが2023年にサービス開始され、一般車両でも運用が始まりつつある。さらに、諸外国でも実証実験が相次いでおり、本格的な生産拡大が期待される。なお、同合金は地上側の検知にも利用されると見られるほか、防犯監視カメラ向け赤外線レンズ用金型用途などにも利用されることから大径品対応も確立している。2024年から販売を始め、今後、特に中国での需要が旺盛になると見込んでいることから、生産能力増強も必要となる状況で期待が膨らむ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
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以下では主に成長分野、成長戦略に沿った施策について見ていく。
2. 成長分野に向けた製品開発
(1) 次世代自動車関連
冨士ダイス<6167>は重要施策のなかで脱炭素・循環型社会の形成に貢献する製品を積極的に開発・市場投入する方針であるが、とりわけ業容拡大においては最大需要先である自動車産業向けの対応が非常に重要となる。そのため二次電池、モーターコア、高熱膨張レンズ用金型などへの注力を続けている。
二次電池ケース成形用金型について、同社は従来から角型対応は進めていたが、円筒型については米国IRA法により主力納入先の米国移管が発生し痛手を被った。このため、精密金型加工技術を生かし角形LIB用も本格的に手掛けていく。車載用角型LIBの市場は、トヨタ自動車<7203>(51%)とパナソニック ホールディングス<6752>(49%)が合弁会社として設立したプライムプラネットエナジー&ソリューションズ(株)において拡張が進行、2024年に約7GWh/年の能力増強がなされた。現状、HEV向けが堅調も、2026年以降、兵庫県の拠点を中心に「次世代パフォーマンス版」と位置づける高性能なリチウムイオン電池の生産を開始する計画があり、関連会社であるプライムアースEVエナジー(PEVE)の福岡拠点と合わせ、年間合計9GWhの生産能力が計画されており、今後の拡大が期待される。
同社はモーターコア製造用抜き金型では日系モーターコア製造メーカー各社向けに展開しているが、同市場は国内外に多くの競合が存在している。現在、HEV向けが多いが、今後EV向けの拡大を見据え、新材種「フジロイVG48」を投入。EVではモーターの高出力化への要望に応じ積層数を拡大するために電磁鋼板の薄板化が必要となり、現在の0.2〜0.3mmが採用され、同社では市場動向を見越した新材種開発も進んでいる。メーカーでは、積層方式が従来のカシメから接着方式もしくは外装ダボ方式などで対応する動きがある。また、大口径化などで、高硬度電磁鋼板に対応する必要もある。高硬度電磁鋼板では優れた耐摩耗性や耐チッピング性及び耐凝着性も必要とされる。同社のVG48は従来品に対し破壊靭性や耐摩耗性に優れた長寿命化につながる新材種であり、放電加工に微小クラックを生じ難く、強度向上が可能。今後、メーカー認定が進めば大きく拡大が見込める。同社はモーターコア金型材種のラインナップを拡充し、ユーザーの選択肢を増加させシェア拡大を図る。
ワイヤーカット放電加工機において加工液に水を利用する長時間の水切りワイヤー放電加工に対応した製品としては「フジロイ VG51」がある。同製品は汎用材種と比較して耐食性、靭性に優れ、特に水切り加工の周長が長い加工に生じやすい腐食を抑制できる製品となっている。従来の油性は高い絶縁性から放電の安定性があり、特に微細加工や高精度な放電制御が必要な場面で滑らかで均一な仕上げ面ができ、製品の品質が高まる点から、特にナノレベル加工精度分野では油が使われた。さらに油は防錆効果から、ワークピースや加工機内部部品の腐食を防ぐことができた。一方、油は引火性があり火災リスク、また、廃油処理などの問題があった。このようななかで水の絶縁性を向上させる添加剤や薬剤が開発され、安定した放電制御から放電の精度が油に近づき、防錆成分や腐食抑制の薬剤も導入され防錆性能が向上、さらに多くの国や地域で環境規制が強化され、環境負荷の少ない水加工の採用が推進され、水仕様が増えている。今回開発したフジロイVG51は長時間の水切りワイヤー放電加工を行っても腐食が浅く小さくて済む。今後、ワイヤーカット放電加工では精密かつ複雑加工を要求される長時間加工の金型製作が増えるとみられVG51は差別化商品として売上拡大が期待される。
電磁鋼板に代えてアモルファス合金帯鋼による高性能のモータ開発が進んでいることに対しても新材種を開発している。モータ出力はトルクと回転数の積に比例し、モータ体格は最大トルクで決まるため、高速回転化を図れば、同出力で小型・軽量化が可能だ。ただし、高速回転化の難題は、渦電流が増大し鉄損が増えモータ損失が増大してしまう。これを解消するため鉄損が通常の鉄の1/10と小さい鉄(Fe)とシリコン(Si)、ホウ素(B)からなるアモルファス金属製の薄板が注目された。アモルファス金属は硬くて脆く、加工が難しい。このためこの薄板鋼板を打抜くために、WC粒度をナノサイズまで微細化し、非常に高い硬さと抗折力を両立したナノ微粒子超硬合金「フジロイFS06」(初版掲載2023.5.10)を投入、各社からの引き合いが増加している。さらに「フジロイFS06」をベースとしながら、新材料開発を進めていく。いずれにしても同社は上記の差別化された製品群を加え、モータコア向けでさらなる売上拡大を見込んでいる。
次世代自動車向けでは自動運転に関連し、光学ガラスレンズ成型用バインダレス超硬合金の他、高熱膨張・低比重硬質合金(TR合金)の中国市場での拡販に取り組み、成果が出始めている。同社は「粉末冶金技術と超精密加工技術」を組み合わせることにより、一眼レフカメラなどに使用されるガラスレンズ用の成形金型を市場に展開していた。このなかでユーザーから自動化機器(自動車、ドローン、監視システム)の実用化に伴い、バインダレス超硬合金をはじめ、高熱膨張・低比重硬質合金の需要が高まっていた。具体的には同レンズがADAS(先進運転支援システム)に用いられるLiDAR(レーザー光検出による距離計測機)向けに採用が広がり始めていると推測される。赤外線透過レンズガラスの熱膨張係数(9MK-1以上)は一般ガラス(6〜8MK-1)より大きい。従来のバインダレス超硬合金製金型(4〜5MK-1)ではレンズ成形する際、レンズと金型の熱膨張係数差によりレンズが割れる問題が生じていた。同社はこの問題に対し、高熱膨張係数(8MK-1以上)と、従来材料と同等の鏡面性を兼備した新硬質材料、高熱膨張・低比重硬質合金(TR合金)を開発し、市場投入した。実際、EV/PHEV販売台数世界トップのBYDでは高級EV車「HanEV」に前方3個、後方3個、計6個のLiDARを搭載、標準装備化している。また、中国ではレベル4の完全自動運転タクシーが2023年にサービス開始され、一般車両でも運用が始まりつつある。さらに、諸外国でも実証実験が相次いでおり、本格的な生産拡大が期待される。なお、同合金は地上側の検知にも利用されると見られるほか、防犯監視カメラ向け赤外線レンズ用金型用途などにも利用されることから大径品対応も確立している。2024年から販売を始め、今後、特に中国での需要が旺盛になると見込んでいることから、生産能力増強も必要となる状況で期待が膨らむ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
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